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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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5-11.新年の儀(2)

1日目も2日目もひたすら笑顔。

挨拶は王子の背後にいるので、声を掛けられることはない。

食事のときも、王族の末席にいるので、声をかけられることはない。

お茶のタイミングで、興味を示してくれた人が儀礼的に自己紹介をしてくれて、その返礼の意味で自己紹介を返すことはあった。


事情通は『幸運な関所のメイドごときがっ』って感じで、

非常に上から目線で挨拶の口上を述べると、私が返礼の挨拶を返す間もなく、さげすむような視線を送って話を打ち切ってくれる。


事情通でない人からすると、『何で伯爵令嬢が新年の儀に?』と、頭の中が?だらけになって、自分の困惑を隠すための儀礼的な作り笑いを作って、表面上の挨拶を交わしたあと、別の話し相手を見つけに移動していく。


そりゃ、至極当然の反応だと思うんだよね。

だって、<王族への挨拶>なんだから、意味の無い人物と会話するのは<時間がもったいない>もんね。

私だって、悪気なくルナ様を連れまわしてるとき、光の粒を捕まえられなくて、『何で私は見ず知らずの迷子の世話をしてるの?』とか、思ってたもんね。


お互いに分かり合えない世界で生きてるのだから、

そのことに文句を言っても仕方ないし。

婚約の儀の場で堂々と文句を言われたら、

『どうしてくれよう?』とは思うけど、

それにしたって、私がどうこうできるものじゃないんだから、

その嫉妬を甘んじて受け入れるべきだけだもんね。

笑顔を振りまいて、気付かないふりしてるのがベストな対応だよ。


ーーー


3日目は、ちょっとした事件が起きたよ。


午前中のパレードでさ、オープンカーならぬ、幌無しの馬車で皆に手を振る訳でしょ。

で、私は王子と二人の馬車の上から手を振る訳。

当然王子に注目が集まるから、その脇で笑顔を振りまいているだけでいいの。

刺身のツマみたいなもん。刺身を引き立てる、台座みたいな感じ。

ワザワザ好き好んで食べたりしないわけよ。


でもね?

明らかに、私の方を見て指さしてる人が何人もいる訳。


最初は王子を指さしてるんだと思ったの。

王子が顔を向けて手を振った側の観衆が『わ~~』って感じで反応するし、

そのたタイミングで指さしたり、手を振り返したりする。


だけど、王子がそっちを見て無くて、私が手を振ってるタイミングで、私の方を指差す人が居る訳よ。

なんか、違和感を感じて、前後の馬車の誰かを指差してるのかと思えば、方角も違うし、反応のタイミングも違う。

明らかに私の方に向かって指さして、何かを囁いてるのね。

このときは、『自意識過剰になるぐらい疲れてるのかな?よく食べて寝た方がいいな~

』ぐらいに思っていたの。


ところがさ、昼食を挟んでいろいろなギルドの人とか商人が挨拶に来るでしょ?

ここで事件が発生したわけ。


『あちらの方を紹介してい欲しい』


って、いろいろな人が王族の方達へ仲介してもらって、私に挨拶しにくるわけ。


いやいやいや・・・。

<情報統制>が効いていれば、私は<運だけの関所のメイド>であって、単なるお飾りな訳よ?

そもそも、婚約の儀が執り行われていないのだから、<私が王子の婚約者である>という事実すら、庶民の間では判明してないわけ。

で、万事屋ギルドとか、魔道具屋で買い物したときに身バレしてたかっていうと、面識のあるおばさん達では無いし。

<情報統制>にしたって、モリスやレイさんが指揮してくれて、私が直接ギルド長にお願いした訳で無いのだから、ここも身バレする要素が無い。

何せ写真もインターネットも無い時代で、本人は大航海中なんだから、噂と現物の一致のさせようがない訳でさ。


精々自分の領地では領主として振舞っていたから、多少は顔を知られているかもしれない。

けど、地盤が異なる見知らぬ人から<王族に紹介してもらってまで会いたい人物>って、明らかにオカシイ事態になってる。


なんでこうなった?

ま、話を聞かないとね。


「あの、失礼ですが、親族の方に<タコ丸>の神技を持つ方はいらっしゃいませんか?」と。


やっちゃった感が満載で、脇汗がダラダラながれるんだけど、

無言で微笑んで『なんのことでしょう?私にはわかりませんわ』風に首をかしげる。


多くの人は、<当方の勘違い>か<見知らぬ別人>と受け止めてくれるようで、それ以上王族関係者に疑義を申し立てるような状況にはならず、引き下がってくれた。


ところがさ、一人しつこい人がオジサンが居て、畳みかける様に話を続けるの。


「そうですか、知らない振りをされる訳ですね。


私は王室御用聞きの商人ですので、調理場への出入りや執事やメイドの方達のことを良く知っているんですよ。


あの<タコ丸>なる露店は、王室の執事やメイドによって営まれていて、あの場に貴方そっくりの王室では見かけない方いらっしゃった。そして、今あなたは王室関係者でもないのにこの新年の儀に同席されているのでしょう?


話はそれだけではないのですよ。

あの<タコ丸>の露店は魔術のようなもので、何もない所から売り物の<タコ丸>が出現していた。もはや神業であると町中の噂になっていましたよ。


いやいや、何も言わなくていいです。私は貴方が何者かを分かった上でこの機会に挨拶に伺っていますので。

あの晩、暗くなり、月の妖精の降臨が始まる頃になって、露店が忽然と姿を消しました。それだけでなく、あの晩に限り、数十年に一度といわれるレベルでの月の妖精の降臨が起きました。


私の憶測が正しいかメルマの商人と連絡をとって、今日になって漸く情報が得られました。エスティア王国全土にあのような降臨があった訳でなく、この辺りのみだったのだそうですよ。それこそ、光の柱が立っているがごとくメルマの方からも異様な光景が見られたのだそうです。


結論は1つです。

妖精の長ルナ様、どうか私にもご加護を頂けないでしょうか?」


と、私が口を挟む隙すら与えずに、最後まで滔々(とうとう)と喋り終えた。


もうね、もうね、もうね。

いろいろ合ってるよ。そして、いろいろ間違ってるよ。

王子が聞いたら、信じかねないよ。


『ヒカリそうだったのか?』


みたいなね。


「ほう、ヒカリ、お前はルナ様だったのか。なるほど。」


って、いつのまにやら来ていた王子が横から口を出す。


「リチャード王子、臣下の者としてその様なごとは笑って流すことができますが、こちらの商人様は本気で信じておられるようですので、婚約の儀が終わるまでは妙な噂が広まらぬよう、控えて頂いた方がよろしいかと。」


「ふむ。そうだな。確かに余計な誤解は与えぬ方が良いな。

商人殿、2日後には分かることだが、こちらの女性は私の妻になる者だ。

明後日から始まる婚約の儀にて皆に正式にお披露目をする。


そして、私の婚約者は本人を目の前にして申し訳ないが、それほど多くの力を持ち合わせていない。そのため、伯爵の爵位を与えられるように強力な著名人を集めて全力で支援して頂いている。

例えば、ステラ・アルシウス卿は、各種魔術を得意とする。魔術の使えない一般的な人からみれば、魔術を駆使して<タコ丸>を出現させたかのようにみえていたとしても、それは演出であったかもしれぬ。それが本当の<神技>であったにしろ、傍目には、実際に何が起こっていたのか判らなかったであろう。


その露店の手伝いを許可したのは私だ。だが、<ルナ様の降臨の儀>に備えて、夕方には撤収するように指示を出していたのも私だ。そこの指揮権はこの子にはないのだから、私がルナ様を操れることになるな。


そして、最後にルナ様の降臨の儀のときは、私とヒカリで迷子の親を探して一晩中歩き回っていた。庶民の変装はしていたものの、何軒かの商店で聞き込みも行っているので、<迷子の親探しをしていた人物がいたか>確認をすれば、城下町でそのような情報がすぐに見つかるだろう。


商人殿、ここは私に免じて一歩譲って頂くというのはどうだろうか?」


「ハハッ!大変失礼しました。

王族の皆様が本年もご健勝でありますことお祈り申し上げます。

また、内密な婚約の儀の話に関しましては口が裂けても口外致しませぬ故、なにとぞ今後とも王室とのお付き合いさせていただく許可を頂ければと思います。」


「それは、王子である私が決めることではない。執事長たちによからぬ噂が立たぬよう、気を付けて行動する方が良いのだろうな。」

「ハハッ。本日はこれにて失礼させて頂きます。」


ふぅ。

王子がいてくれてよかったよ。

うんうん。


ーーーー


その夜の寝室で・・・。


「ヒカリは、ルナ様だったのか?」

「え?」


「今日の商人の話だ。俺が助けに入っただろ?」

「ルナ様にそういう口のきき方する?」


「ほ、本当であられましたか。大変失礼しました。ご容赦の程、賜れますでしょうか!」

って、ベッドから降りて片膝をついて、頭を下げて服従の姿勢をとる。


「あ、ごめん。嘘。ベッド入って。」


王子がこわごわと頭を上げてくると、ベッドの脇を見下ろして声をかけている私と目が合う。モソモソと服を直す仕草でバツの悪さを隠すと、普段通りの威厳を持った態度でベッドに入ってくる。


「あのな?」

「なに?」


「お前は何者だ?あの商人の言うことはまんざら嘘でもないぞ?」

「関所のメイドだっけ?」


「まず、人間か?」

「人間の定義が難しいけど、トモコさんやユッカちゃんが人間なら私も人間だよ。」


「妖精の長ではないんだな?」

「王子の言うところの妖精の長が何かわからないけど、私は自分で自分が妖精の長では無いと思ってるよ。」


「なんで、そんな回りくどい言い回しなんだ?」

「王子が私のことを信じないから、私は王子が何を知りたいか判らないんだよ。」


「俺はヒカリが人間であれば結婚したいし、俺の子を無事に生んでほしいと思う。それだけだ。」

「私は人間だし、王子と私の子を無事に出産したいと思ってるよ。」


「なら、なんで<タコ丸>が新年の儀で大きな話題になっているんだ?ルナ様の大降臨と同じレベルで話題に上がっている状況だそ?

同じ日に大きな奇跡が重なるとか、それは単なる偶然でなく、そこに関連があるかもと考えてもおかしくないだろ。」

「<タコ丸>は王宮の執事さんやメイドさんたちが頑張ってたからでしょ?ルナ様の気まぐれは私はしらないよ。<タコ丸>に釣られて降りてきたのかもしれないし。」


「なら、<ヒカリのタコ丸>が今回の奇跡の原因でいいな。」

「そうじゃないけど、そうだとすると明らかに私はルナ様じゃないことが証明されるね。」


「ああ、そうなるな。」

「王子が信じてくれてよかった。」


「ルナ様が<タコ丸>を発明した、美味しい物好きな妖精かもしれない。」

「もしそうなら、常に美味しい物を食べているのだから、ルナ様降臨の奇跡を起こす必要は無いね。」


「そうか。ヒカリが<タコ丸>を作っている以上は、ヒカリがルナ様であると考えるのは辻褄が合わないな。」

「うん。」


「ヒカリ、父がご立腹だ」

「当然何を言い出すの?」


「タコ丸の件を父は知らなかった。恥をかいたそうだ。」

「露店を出す許可証は貰ってあるよね。」


「そうじゃない。<タコ丸>を王室の執事やメイドが販売していて、その<タコ丸>を安価に庶民に振舞っているイベントをしている絶賛の声が上がる中で、父は何が起こっているか判らないし、<タコ丸>が何であるかもしらない。

わかるか?」


「<ホットミース>とレナードさんの許可みたいな感じ?」

「ああ。その腹を収めるには<タコ丸>が必要だ。明日は準備の日だから作って貰えるか?」


「無理じゃない?」

「何でだ?材料も道具もあって、作り方も簡単じゃないか」


「タコがないんだよね。」

「無い訳ないだろ。関所で<タコ丸>を食べたときには、確か桶1杯もあれば10人で食べても十分に賄えたはずだ。今回は大型のタコを3匹ぐらい運んでいただろ?あれだけで風呂2-3杯にはなる。1000人分といってもおれは驚かないぞ?」


「一人10個で1000人なら1万個。一人30個なら3万個は無くなるね。」

「待てよ。

お前のその計算は正しいし、その量であれば流石にタコが無いというのは認める。

だがな?10人がかりで桶1杯を焼き上げるのに結構な時間がかかる。

お前とアリアが作った砂時計でいうところの5分ぐらいかかる。

1回50個、1時間で12回。つまり、1時間で600個しかつくれない。半日で6000個だ。

3万個作るには、1分以内に50個を焼き上げて販売までこなす必要があるな?

おれは何か間違ってるか?」


「間違ってないよ。全部合ってる。だからタコが無くなったんだもん。」

「いや、お前が合ってないだろ。1分で50個。二人作業としても1分で25個だ。

どうやったらあの作業が2秒で焼き上げられるんだ。ドロドロの生の粉で形にならないだろ。」


「火力上げるのと、遠赤外線の輻射熱も上げれば、表面を黒焦げにせずに中まで加熱することはできるよ。」

「ステラ様なら、そのような意味不明な言葉の羅列を理解して、その加熱調理ができるかもしれないが、ステラ様は居なかっただろ。」


「ルシャナ様とニーニャにコンロを作って貰ったから大丈夫。それもユッカちゃん仕様で、大火力迄出せるように設定して貰った。普通に使ったら黒焦げモードだね。」


「ルシャナ様って誰だ?」

「シルフのお母さん。火の魔法が凄いの。」


「俺は知らない。シルフも知らない。風の妖精か?」

「シルフはステラが買った奴隷さん。小さな子だね。たまたまお母さんに出会う機会があったから、一緒に行動してもらってる。」


「良く判らないが奴隷の親子が再会出来て良かったな。」

「うん。いろいろ協力してくれてる。」


「すまん。話を元に戻す。ルシャナ様の火力をユッカちゃんが使いこなすんだな?」

「うん。」


「あの子は例の子だよな。だが、まだ幼いよな。<身体強化>は使えるのか?」

「私の師匠だから、なんでも出来るよ。」


「あの子は<タコ丸>が好きだったな。」

「うん。」


「あの子が露店で<タコ丸>を売ると言ったのか。」

「そう。許可証だしてくれたよね。」


「うちの執事たちが、<タコ丸>の支援をしていたんだよな。」

「そうだね。」


「ヒカリは何をしてたんだ?」

「師匠の隣で、<タコ丸>を焼く手伝いをしてた。私の方が背が高いし大人っぽいから、目立って注目されても仕方ないね。」


「どこにもヒカリの奇跡なんかないじゃないし、ヒカリの指揮でもアイデアでもないな。」

「そうだね。安心した?」


「なんか、すまん。」

「ううん。そんなもんだよ。私はお飾りでも上手く行くんだよ。」


「それで、父の立腹はどうすればいい?」

「フウマにさせたら?タコ獲ってきて、王宮の調理場でゴードンと作れば良いよ。」


「あいつに出来るのか?」

「あ~。わかんない。ユッカちゃんとか飛竜さんなら出来る。」


「俺の飛竜さんに頼めるのか?」

「<タコ獲ってきて>みたいな、訳の分からないことを言わなければ大丈夫」


「待て待て待て。無いのはタコなんだろ?何が不味いんだ?」

「ああ、もう!」


「待て待て待て、なんでお前が怒るんだ?俺はどうしたらいいんだ。」

「言葉で説明しても判らないんだよね~」


「ほう。俺には理解できないというか。」

「魔法と一緒だからね。事細かく説明してどうにかなるものと、ならないものがあるし。魔法使いが魔法を使うためにはいろいろ努力してるんだよ。」


「俺とお前は分かり合えないと?」

「う~ん。婚約解消とかないなら、見せてあげるよ。見て感じることなら王子でもできるし。どうしよう。」


「タコを獲ってくるぐらい、婚約解消を迫る程の重要なことではないだろ?」

「やっぱ止めよう。寝よう。王様がご立腹の方が丸く収まる気がする。」


「今のは独り言か?決定か?」

「決定だよ。」


「おまえなぁ?ここはエスティア王国。その国王が恥かいて立腹していて、その家臣に問題解決に当たらせてる訳だろ?」

「私は聞いて無いし、私は問題と思ってないし、私も恥ずかしい思いをさせられてる側だし、原因を作ったのは許可証出した王子と支援した執事さん達とユッカちゃんだよね。」

「ヒカリな?連帯責任って言葉もあるし、チームワークって言葉もある。まして封建制度での上位職の命令は絶対だ。」

「ああ、それはそうだねぇ。どうしよっかなぁ~。」


「何をどうするんだ。」

「私が臣下である伯爵として、その問題解決の任に当たるってことでいいのね?」


「いや、そんなことを言ってるつもりはない。父の我儘の話をしてるだけだ。」

「ま、いいや。明日同じ話になっても嫌だから先に寝てて。」


「え?どういうことだ。」

「うん。一人でちょっと行ってくるよ。他の人を起こすの嫌だから、タコはこの部屋に置くよ。」


「待て待て待て。俺もいく。何かできるだろ。」

「じゃ、ベッド温めて待っててくれればいいよ。じゃね。」


って、先ずは<光学迷彩>を発動。次に<重力軽減>して足音を消す。

で、服をベッドの脇に脱ぎ捨てて裸になったら出発だ。


「待て待て待て。姿消して、裸になって何するんだ?」

「先に寝ててもいいけど、そこの窓は鍵かけないで。そこから戻るから」


って、扉じゃなくて窓を開けて外にでる。

新月で星明りしか無くて真っ暗だから、私の光の妖精の子に出て来て貰って、

一気に海まで飛ぶ。


<<ナビ、ごめん。そういうことだから婚約の儀の前に余計な揉め事出さないように追加でタコが欲しい>>

<<承知。索敵範囲に入り次第、<タコ>の位置を右目に投影予定>>

<<ありがと。いつもの調子でお願いね>>


う。寒いね。

体内の油脂成分を皮膚表面に層状に固めて空気の断熱層を形成。これで結構暖かく成れる。

裸で透明な膜につつまれてる状態だけどこれが結構保温効果高くて、人間の発熱って凄いんだって思うよ。自分の体温が外部に放出されないって、ある意味危険なんじゃないかい?ちょっと汗ばんできたよ。


ま、防寒対策万全にして、膜を硬化させたことで空気抵抗と空気中の微粒子からのダメージを最小限に軽減させて、あとは推進方向に対してなるべく風の抵抗を受けないように姿勢を整えてから一気に加速する。


うひゃ~。頭のてっぺんがバリバリと風切る音と圧力が凄いよ。時速100kmでも生身には風圧が凄いのに、時速200km近くまで出したりしなければよかった。人間本体側がいろいろ無理だよ。

今度やるときは、もうちょっと工夫しないとね。


後はいつも通りに海に到着して、2mぐらいの手ごろなサイズのタコを一匹捕まえて、さっさと凍らせて飛んで持ち帰る。素手だし、風の抵抗も大きいから今度は速度控えめでね。


王宮の出発した窓を目指して降下するんだけど、王子が灯り点けて窓開けて待ってる訳。心配してくれてるのは嬉しいけど、そこに居ると邪魔なんですけど。


しょうがないから、うちの妖精の子を光らせたまま先に侵入させて、王子を窓際から室内へ戻す。王子が妖精に釣られて部屋の奥へ戻ったところで、窓から侵入して、凍ったタコを床に転がしてから<光学迷彩>解除。


王子は部屋の隅に飛んで行った私の妖精の子を不思議そうに見てる。話しかけようとしないのは、話しかけられる存在ってことを知らないからだろうね。


「王子、ただいま。何してるの?」


って、後ろ向きに窓を閉めて、脱ぎ捨てた服を改めて着衣する。表面の皮脂成分は解除して、汗まみれの体はピュアして飛ばす。


「ヒカリ、お前、裸で寒くなかったのか?でも、これはヒカリの香りだから汗かいたのか?こんな氷の塊を運んでいるのにか?」

「うん。ちょっとした運動になったね。その氷は朝までなら融けない温度にしてあるから、今度こそ寝ようね。」


「あ、あのな、今、この部屋に光の妖精が入ってきたんだ。そこの隅に居るんだけど、ひょっとしたらルナ様かもしれない。って、どこ行った?」

「う~ん。いなくなっちゃったみたいだね。騒がしくすると部屋の外の衛兵さんが気にするよ。寝ようよ。」


3日目は疲れたね。

明日は準備の日だからゆっくり寝てたいよ。




いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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