5-07.新年の準備(2)
「ヒカリ、俺なりに気を遣って、いろいろ準備してきたことがあるんだが、聞いてくれるか?」
「ハイ」
「日程だろ、移動手段だろ、招待客のリストだろ、宿泊施設だろ、料理の準備。
ここまでは話したよな?」
「ハイ」
「新年の儀で献上する手土産はどうするんだ?あと、婚約の儀の贈答品。そして、それぞれの衣装の話だ。」
「え?」
「『え?』じゃないだろ。臣下の者が王族への挨拶に出向くんだぞ?手ぶらで行くつもりだったのか?」
「結婚の儀の準備はいろいろしてくれてるみたいだけど、新年の儀と婚約の儀は聞いてない。」
「おまえさ?庶民の誕生会やなんやは、サプライズだって何だって良いさ。それは演出も含めてのイベントだからな。
王族への挨拶の品ってのは、奇を衒ったアイテムだとか、誰も見たことも無い得体の知れない物とかはNGだぞ。<誰が見ても素晴らしい>って、直ぐに判るような物でないといけないんだ。
かといって、金貨とかそういう珍しくもないものを積み上げても、それはそれで人としての深みが無いと思われる。」
「難しいねぇ~。考えたことも無かったよ。どうしよっか。」
「準備してなかったのか?」
「誰にも言われなかった。
もう、面倒だから結婚の儀に奏上するものを、今回前倒しで持って行こうか。」
「何があるんだ?」
「ステラの毛皮、ニーニャの剣、アリアのガラス食器、あとなんだろ?毛織物は難しいかも?」
「あ・・・。」
「王子、どうしたの?」
「うちの親父から『ロマノフ家の剣が欲しい。なんとか出来ないか?』と、言われている。母、レナード、俺が持っていて、国王だけ持ってない。ニーニャ殿の都合は確認できるのか?」
「そろそろ昼休みの休憩に戻って来るんじゃないかな。一緒に聞いてみよっか?」
「ああ。是非頼む。」
ーーーー
領主の館から一般食堂の方へ移って、みんなが昼食を取りに来るのを待つ。古代から中世にかけての時代では1日2食が普通の食習慣だったらしいけど、うちの関所では3食のルールを押し付けてる。税金が安い分、その食生活へのゆとりと領主の命令に忠実であろうとするのはいいよね。
急激に人数が増えつつあっても、何故かその辺りの意識は新規移住者にも浸透してくれてるのはありがたいよ。
「ヒカリ様、おはようございます。今から食事ですか?」と、アリア
「ヒカリ、いつまで寝てるんだぞ。王子が寝過ぎだと心配してたんだぞ」と、ニーニャ。
「二人とも、おはよ。王子にさっき起こされたよ。
で、ちょうど二人に相談があって、ここで待ってたんだよ。
二人はこの後の都合は大丈夫?」
「空は飛べないし、飛空艇もまだ完成しない。それで大丈夫ならいいいんだぞ。」と、ニーニャ。
「ヒカリ様、私はニーニャ様と一緒に作業しておりましたので、ヒカリ様の都合とニーニャ様の都合に合わせられます。
それより、リチャード様との会食中だったのではございませんか?」と、アリア。
「うんうん。さっきゴードンの所でご飯を食べつつ、新年の儀とかの計画を練ってたんだけどね。『献上品が無い』ってことが王子と確認中に分かって二人に相談に来たの。」
「二人とも、突然の事で済まないが、ヒカリを手伝って貰えないか?」
「婚約の儀のお二人へのプレゼントはニーニャ様と私で準備が進んでおります。それが献上品に代わるのであれば、それを確認して頂いても宜しいでしょうか」と、アリア。
「アリアはこれを見越して、ルシャナ様にお願いをしていたんだぞ。私なんかより将来を見据えて行動してるんだぞ。」と、ニーニャ。
「ええと、ええっと、うんと。二人ともありがとう。私は二人の気持ちが嬉しいから何でも良いんだけど、一応、王族としての見地からの意見も王子に聞きたいから、出来れば内容か現物を確認させてくれるとありがたいんだけど。」
と、私から王子に意見を求める。
「二人とも、ヒカリのためにいろいろ準備を進めてくれていて有難く思う。礼を言わせて頂く。
婚約の儀の方は、期待しつつのその現物を確認させて頂くとしてだ。
もう一つ献上品に関する問題があって、新年の儀では臣下が王家へ献上品を差し出して、挨拶を行う儀式がある。今年からヒカリは男爵ではなく、伯爵の地位に就いているのであるからして、他の貴族に負けない程度の献上品を差し出す必要がある。
いま、ヒカリと話をしていた一つの候補として、王族へロマノフ家の装具を奏上するという案だ。」
と、王子が少し緊張した面持ちで、ニーニャの方を向いて語り掛ける。
私は黙って、ニーニャとアリアの反応を伺う。
「リチャード王子、少々確認させて頂きたいことがございます。
ロマノフ系の装具は、銘の入った贈答用と、銘を入れない個人の用途に合わせた実用性重視の品とがございます。もし、銘の入っていない専属装備品を考えておられるなら、新年の儀や婚約の儀には間に合いませぬ故、今回の献上品としては不適切な品となります。
ここは理解されていることで宜しいでしょうか?」
と、ニーニャが敬語で王子に話しかける。
へぇ。確かに私が貰ってるナイフとか他の装備品とかでもニーニャの銘が入って無かったね。ユッカちゃんが使ってるオリハルコンの剣とかもニーニャの銘が入って無いね。それって、それなりに本気の実用に耐えうる品ってことで、敢えて銘をいれずとも、分かる人には判る性能ってことなんだろうね。
とすると、「贈答用の銘入り」って、何なんだ?
「ニーニャ・ロマノフ卿、私の無知を埋めて頂き感謝します。今お話があるまで私の父である国王向けの専用装備を考えておりました。
ですが、あと5日程度で新年の儀の挨拶が始まりますため、専用装備が見込めないこと理解しました。
そこで、もう一つご提案頂いております、『贈答用の装具』とは、どういった内容になるのでしょうか。」
「贈答用は実用性よりも、見栄え重視であるため、過度な装飾を施したり、コーティングに関しても耐久性や耐魔法性能ではなく、汚れが付着しにくく、埃を寄せ付けず、錆びないことを目的としたコーティングを施す品となります。
すなわち、『材料さえあれば誰でも作れる展示専用の装具』となります故、そこに箔をつける意味で、ロマノフ家の銘を入れさせて頂く形となります。」
ニーニャが王子を正面に捉え、伝えたい内容を伝えられているか表情から探りを入れている。
これって、ニーニャとしてみれば、ロマノフ家の装具じゃなくても誰でも作れるし、偽物が出回る可能性もあるわけだから、敢えて銘を入れる意味って、その装具と銘を見せびらかすだけの表面上の内容であって、それを献上品として求めるか確認してるんだろうね。私としては、ニーニャにそんなお願いはできないけど、王子の提案を無下に拒絶出来る訳もないからねぇ。
王子が真意を理解して返事をしてくれると助かるんだけどね。
「ニーニャ殿、大変申し訳ございませんでした。私の愚考に恥じ入るばかりでございます。今回の新年の儀や婚約の儀で、ニーニャ様に装具を納めて頂く必要は全くございません。日を改めて、父の我儘にお付き合い頂けるかどうかの相談にのって頂ければと思います。」
「リチャード王子、承知いたしました。装具ではないもので何かお役に立てればと思いますが、他に候補はございますでしょうか。」
「先ほど、ヒカリから『ステラ様の毛皮、アリアさんのガラス食器』との候補は頂いておりますが、毛皮に関してはヒカリの衣装との比較になってしまうため、別の機会でも良いかと考えております。
そのため、お二人が婚約の儀に準備して頂いているものと、アリアさんのガラス細工とで何か良い提案があれば伺いたい次第です。」
「あの、ヒカリ様、ガラス食器は準備が着々と進んでおりますが、それは結婚の儀の会食迄に間に合わせるということで、試作品の段階の物が多数あるだけです。もしその中から1点を選んでいただいたとしても、残り5日程度では王族のパーティーで並べるだけの数が足りません。1種類で約100枚のセットが必要と想像されます。」
「あ、アリアありがとうね。形や材質だけでなく、色や装飾を施すことまで考えてくれているからね。流石に一部だけちょっととか思ったけど、装飾用の展示物にでもしない限り、数量が揃えきれないよね。そしたら、『なんのためのガラス食器』ってことで、とても残念な献上品になっちゃうね。」
「ヒカリ、他に何か無いのか?」
「そうだねぇ。ゴードンとも相談だけど、<醤油>と<米料理>とかは、かなり貴重な品物になると思うよ。」
「ヒカリ、それは大丈夫なのか?
『ちょっと、醤油を買ってくる』
なんて言って、2か月も留守にされると困るんだが。」
「普通の船だと半年でも厳しいだろうし、遭難もしちゃうから止めた方が良いよ。」
「それはトレモロ・メディチ卿の所有する船と乗組員が優秀であって、ヒカリ単独では、ままならないってことで良いんだな?」
「いろいろと違う。だけど、今のままでは定期的に醤油を買いに行くことになるね。
ドリアードさんに手伝って貰って、ここの領地で大豆やお米が栽培できるようになれば大丈夫だよ。」
「ヒカリがアジャニアに行かなくて済むなら、是非そのドリアードさんに支援して頂く方向で検討して欲しい。」
「ステラが住んでる場所を知ってるらしいから、今度連れてってもらおうと思うよ。
いいかな?」
「アジャニアとか大航海でないなら良いぞ」
「多分違う。結婚の儀や出産イベントが終わったらドリアードさんに会いに行くことを優先で考えるね。」
「ああ、わかった。そんなに貴重な<醤油>や<米料理>なんだが、
新年の儀に献上品として差し出す量はあるのか?」
「私のを分けてあげるよ」
「おまえ、その言い方は、<醤油は全部私の物>って、聞こえるんだが?」
「だって、私のお土産は<醤油>だけだもん。」
「モリスとかゴードンとか関所の仲間が大勢いるのだろ?それぞれに何か異国の地のお土産を持って帰るなどの気の利かせようは無かったのか?」
「う~ん。<味噌>とか<お酒>かな。それと、そういうの作る職人さんは連れてきたよ。」
「もういい。<醤油>を見せくれ。それとニーニャ殿とアリアさんの食事が終わり次第、婚約の儀でプレゼントする予定していたものを見せて欲しい。」
「<醤油>と<お米>で作った料理をゴードンに頼んでくるよ。その間に、ニーニャとアリアとお話しててくれる?」
「あ、ああ。ここで待つよ。」
ーーーー
<醤油>は樽で冷蔵庫に入れて運んできた分と、ユッカちゃんの鞄に小分けにして入れてきた分があるから、10人家族想定で2~3年は十分に賄えると思ってる。その一部をお裾分けしてもいいと思うし、2年もあれば、大豆栽培の成功と職人さんによる醤油の醸造が始まってると期待したいよね。
エーテルさんにお願いすれば、天然酵母の作成とかパンの熟成も上手く行ったし、割と楽観的に見てる部分があるんだよね。問題は素材の調達になる訳だけどさ。
とりあえず、ゴードンには<焼きおにぎり>を公の食堂に運んで貰う様に頼んでおこうっと。
「王子、お待たせ。ゴードンに頼んできたよ。」
「ああ、ご苦労。
いま、ニーニャ殿とアリアさんに話を聞いていたんだが、
ヒカリの船で、ヒカリの考えた道具で、ヒカリの考えた推進方法で、ヒカリが海図を作成したのか?」
「う~ん。
イワノフさん達が作った船で、ニーニャが設計して取り付けた艤装で、アリアとニーニャが作った方位磁針と砂時計で現在位置を確認して、シルフが良い天候を維持できるようにお願いしてくれて、それをトレモロさんがまとめて指揮してくれただけだよ。」
「ヒカリは?」
「<おねがい>しただけ。」
「何もしてないじゃないか。」
「私は今回の航海で何もしてないよ。<醤油>をお土産に持って帰ってきただけ。」
「そうか、安心した。ヒカリが余計なお願いをして、皆を混乱させてないか心配だったんだ。」
「どちらかというと、皆は私が妊娠してることを気遣ってくれて、私がいろいろ動き回らないように配慮してくれてたみたい。皆様には感謝してます。」
「皆のおかげで航海が無事に済んで良かったな。」
「うんうん。」
そんな航海の話をしていると、ゴードンが<焼きおにぎり>を熱々の状態で持って来てくれた。昼からはこっちの食堂でいろいろ指揮をとるから、別に構わないっていうけど、突然で迷惑かけちゃったね。
今はユッカちゃんとか居ないから、私が食べ方を教えてあげる。
それにしても、この香ばしい香りは秀逸だね。
「王子、どう?」
「ヒカリ、これが醤油なのか?」
「お米と醤油の相乗効果だよ。醤油だけでもいろいろな物への調味料として使えるんだけどね。」
「どれくらいの量があるんだ?」
「夕食会のメンバーで楽しむだけなら2年分はあると思う。」
「献上品の見栄えは大したことないが、晩餐会などで持て成すときに効力を発揮するだろう。一つはこれで行こう。予め父には説明をしておく。できれば、見栄えの良い器を用意してくれると良いかもしれない。」
「ガラスに入れても、真っ黒なだけだから見栄えはしないよ。」
「そこは任せる。昼食が終わったら、婚約の儀のプレゼントを拝見させて頂きたい。」
「はい。こちらに。」
と、アリアがポケットから何か手のひらサイズの塊を取り出す。
そこには半球より少し平べったくした、大きなエメラルドが嵌っていた。
淵はなんだろ?金より鈍く光るこの感じはチタン?あ、高純度なオリハルコンかな。
「これは何だい?」
「エメラルドのペンダントでございます。2つで一対を成します」
ニーニャがもう片方を取り出して、アリアが持っている片割れと組み合わせた。
そうすると、綺麗な一つのエメラルドのペンダントのような宝石が組み上がった。
それにしても大きいね。ユッカちゃんのおかあさんが持ってたペンダントにはピンポン玉ぐらいのが嵌っていたけど、これはそれより大きいんじゃないかな?
「ヒカリはこれを<おねがい>していたのか?」
「ううん。初めてみるよ。」
「とするとなんだ?これはひょっとしてサプライズの贈り物だったんじゃないのか?」
「多分そうだね。」
「お二人とも済まない。どうか許して欲しい。」
「「王子様におかれては、お気になさらぬよう」」と、二人。
「しかし、これは見事だ。それもこの2つの石の勘合からすると、元は1つの大きさの石を敢えて2つに分けて、別々に象嵌を施した様にうかがえる。
そうだとすると、とてつもなく大きな石で国宝級の価値があったはずだ。
ストレイア帝国でもこの大きさは持っていないはずだ。」
「あ。」
「ヒカリ様の想像の通りです。」
「そうなんだぞ。あのときからアリアは準備を始めていたんだぞ。」
「やっぱり、ヒカリなのか?」
「いや、ルシャナ様にお礼を貰う際に、アリアが<エメラルド>を欲しがってたから、何でかな~って思ってた。
王子と私の誕生石だったんだね。それも1つの石を切って分割迄して。
もうね、もうね。」
あ~。なんだろ?妊娠すると涙腺が緩むのかな。
泣けてきちゃったよ。
こんな大きな天然石で、ルシャナ様から貰えるまたとない機会だったのに、それを私達へのプレゼントを優先してたなんてさ。
ああ・・・。
「ヒカリ、どうしたんだ?」
と、泣きだす私をみて、王子が私の事を覗き込む。
「王子、あのね。今回の大航海はいろいろ大変なこともあったの。
あるとき、困難を解決したお礼に貴重な鉱物を貰えるチャンスがあったんだけど、それは二度と得られないであろう希少なチャンスだったの。
それをアリアは私たちのために使っちゃったの。
お金では手に入らない鉱物を手に入れられるチャンスだったのに。
アリアは錬金術師として養父の膨大な支援をしてもらってるだけでなく、本人も色々な物質を作ったり、研究したりしてたの。
だから、どんな鉱物でも手に入るチャンスを捨てるってことはさ・・・。」
「ヒカリ様、ヒカリ様、大丈夫です。大丈夫なんです。ルシャナ様には他にもいろいろ頂いておりますし、ニーニャ様からも鉱石や素材を分けて頂いております。
私はヒカリ様のお役に立てる方法を考えただけなのです。心配して頂かなくて大丈夫です。」
「ヒカリ、お前凄いな。」
「な、なにが。(グシュグシュ)」
「一緒にいる仲間から大切にされてるんだな。俺もそういう仲間が欲しいと、お前に嫉妬したよ。」
「王子にも王族や御三家の方達がいるでしょ?あと、私の奴隷さん達で近衛騎士団を結成するって言ってたよね。」
「そうじゃないんだ。おれは身分に支えられた状態であって、王族の地位がなければ人が本当に慕ってくれているのか判らない。それに近衛騎士団もお前のために力を貸してくれるに過ぎないと思っている。」
「私は王子の物だから、王子が皆にお礼を言えば良いよ。」
「わかった。ニーニャ殿とアリアさんのお二人には何か1つ好きな褒美をとらせる。爵位も男爵までなら自由に与える権限がある私にはある。」
「でしたら、私としては世界じゅ(あー、ニーニャまって!)」
「ヒカリなんなんだぞ?」
「醤油の原料の栽培の支援要請するために、ドリアードさんにところへ行くことを王子が許可してくれたの。だから、そこは大丈夫」
「であれば、私の故郷へヒカリ殿を招待させて頂きたいかと思います。当然ながら、結婚の儀や子育てがある程度落ち着いた後でのお願いになります。」
「ニーニャ様がヒカリに付いてくれてるのであれば安心です。こちらとしてもドワーフ族との友好関係のために、是非ともお願いしたい。
アリアはどうだろうか?」
「できれば、ミチナガ様とのご結婚を許可頂きたいです。」
「ヒカリ、それは誰だ?」
「アジャニアの人。前にも言ったよね。」
「いや?フウマの恋人がアジャニア人とは聞いたが、他は知らぬぞ。」
「フウマの恋人のご主人様です。」
「科学教の末裔とかなんとかの人か。」
「「はい。」」と、アリアと私で頷く。
「私の一存ではなんともいえないが、非公式の範囲では全く問題ない。
もし、アジャニアとの外交上の問題がでるとなると、エスティア王国には外交権が無く、ストレイア帝国の裁量が必要にある事案だ。」
「王子、アリアはミチナガ様のここでの永住権が欲しいのだと思うよ。身分証明書みたいなやつ。それを貰ったうえでの婚姻届けになると思う。」
「ヒカリの領地に客人を迎えたり、移民が増えることは私が許可するまでもない。」
「身分証明書は、このあとモリスに書かせて、私がサインをしよう。それで良いだろうか?」
「ありがたき幸せにございます」
「王子、残りの準備は衣装になるの?」
「ああ。概略は終わりだが、衣装の確認が残っているな。
その他は詳細になるが、式段取りなんかがある。ヒカリは初めてだろうから、ある程度教えておいた方が良いと思ったんだが、その辺りはどうだ?」
「詳細の段取りについても教えて欲しいし、打ち合わせもしておきたいです。
でも、今日直ぐに漁に行かないとだから、夕食会のときにお話を伺っても良いです?そのときならステラも居るから、衣装の話とかもできると思う。」
「わかった。その間、俺は何してれば良い?」
「自由にここを見学してていいよ。前に来てくれた頃よりいろいろ進んでると思うし。
モリスか、ニーニャか、アリアに案内してもらって。ステラは午後は先生してるから忙しいと思う。」
「そうか。ところで、フウマはどうした?」
「アジャニア語とストレイア帝国語の先生をしてる。あと、学校の先生の補助とか。」
「フウマは、領主の運営補助とかおまえの護衛として付かせていたよな。」
「みんなが凄すぎて、私一人じゃ運営できないし。護衛はクロ先生が付いてくれてるからその辺りはみんな心配してない。」
「全然わからないな。」
「私も全然全分かって貰えてないと思うよ。
だから案内付きなら自由に見学して良いよ。
見知らぬ偉い人が歩き回ると、領民の皆が警戒しちゃうからね。
私の漁は日があるうちの方が楽だから、ユッカちゃん誘ってちょっと行ってくるね。」
「わ、わかった。よろしく頼む。」
「じゃ、また後でね。」
いつも読んでいただきありがとうございます。
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