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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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287/334

5-03.力試し大会(ヒカリサイド)

「おねえちゃん、おはよう。」

「ユッカちゃん、おはよう。あれ?なんか張り切ってる?」


「ちゃんと準備運動してきたよ!」

「え?」


「今日は、力試しの大会があるんでしょ?」

「え?」


「みんな、参加するって。モリスさんが<夕食会>の後、関所で働いてる人に連絡をしたんだよ」

「いや、私はちょっとした力比べするをするつもりだけだったんだけど・・・。」


「一緒にご飯を食べてる人は、全員参加するって。」

「流石に<妖精の長>達はダメでしょ。」


「わかんない。きいてみる。でも、お妃様もエルフのおねえちゃん達も参加するって。」「いやいやいや。あの人達、<飛竜の血>飲んでるし。弓とか得意そうだし。」


「みんなガッカリするよ?」

「わ、わかった。力試しの大会はやろう。夕食会のメンバーが本気出せるように2部構成にしようね。」


「おねえちゃん、大好き!みんな喜ぶよ!」

「そ、そっか。じゃ、いつもの体操してからご飯にしようか。」

「うん!」



って、何?

人族のちょっと腕が立つぐらいの人を相手に、<飛竜の血>飲んだ人達が本気で力試しとかするの?

ちょっと、モリスに確認しておこう。


<<モリス、ちょっと良い?>>

<<はい。<力試し大会>の準備で忙しいですが、込み入ったことでなければ。>>


<<いや。そんなに本腰入れた大会にしなくても。普通の人じゃ相手にならないよね。>>

<<いいえ。昨日、ヒカリさんが鹿を狩りしてきました。

なので、<本気の大会>であるかと思い、全ての領民に対して通知し、急用のある人以外は全員に参加して貰います。

領主直々の命令として、伝えらえる範囲で昨晩中に通達しておきました。>>


<<あ、あれ?私のせい?>>

<<ヒカリさん、昨日の仲裁であのようなことするのは、それなりの理由があってですよね。ハントもリダも茫然としてました。

あ、ちょっと手配があるので、食事はゴードンに依頼してください。

賞品は領主の資産から適当に出しますのでご了承ください>>


あ、あれ?

どうして、こうなった?

<一人前の狩人>って、そういうもんでしょ。

なんか、モリスが冷静に怒ってる気がするけど。

ま、いっか。


ーーーー


「おねえちゃん、賞品はクジラ?<タコ丸>?それとも、<焼きおにぎり>?」

「え?」


「モリスさんが、『優勝者には領主から素敵なプレゼント』だって。」

「そ、そう。私が決めるんだ。」


「うん。やっぱり、<タコ丸>!おねえちゃん、新鮮なタコを取ってきてね?」

「ユッカちゃん、取るじゃなくて、獲るだと思うんだよ。あんな大きなタコは普通に戦ったら死んじゃうからね?」


「<タコ丸><タコ丸>やっほ~!」

「いや、ユッカちゃん、『やっほ~』っていうか、優勝の賞品でしょ?」


「モリスさんが『本気出して良い』って、言ってた。」

「じゃ、私も本気出す。」


「ダメ。おねえちゃんは賞品を出す人。参加したらダメ。」

「え?私も参加したい!」


「ダメダメダメ。おねえちゃんはズルいからダメ。あと本気出したらラナちゃんに怒られるけどいいの?」

「ズルくは無いけど、ラナちゃんに怒られるのはちょっと不味い。」


「お姉ちゃんは、見てるだけ~」

「はい、はい。分かりました。」


「お姉ちゃん、そこは『仰せのままに』とか、『御意に』とか、『畏まりましたユッカ様』とか言うんだよ。あと、『ハイ』は1回って、お母さんが言ってた。」

「ハイ、ユッカ様の仰せのままに!」


「じゃ、おねえちゃん、タコの準備お願いね?」

「はい。」


なんなんだ~。

鹿は捕まえると怒られるのに、タコは捕まえてきていいの?

まぁ、いいけどさぁ。

初めての頃より強くなってるから、獲ってこようかな。

そういえば、大航海のときも飛竜のタカさんと一緒にタコを獲ってきたよね。

あれはいつだったっけ。

まぁ、いいや。


さて、フウマにお願いしてみようかな。


<<フウマ、タコが欲しいんだけど。>>

<<冷蔵倉庫には無いから、海行ってきたら?>>

<<いや、フウマに頼めないかな~って。>>

<<僕は力試し大会の準備があるし、シズクの協力もしたいし>>

<<分かった。なんとかします。>>


あっさり振られた。領主とかってこんな扱い?


タコかぁ。タコねぇ。

久しぶりにナビのナビゲーション使って、タコでも獲ってこようかな。

ひょっとして、ユッカちゃんが『タコ丸は100人前でお願い』とか言わないよね?


いや、言うね。言わない訳が無い。

ナビに大き目のタコを探して貰おう。そうしよう。


ーーーー


ナビと久ぶりに連携して獲物をゲットだね。

おなかちょっと出てきてるけど裸ね。

もう、面倒だから2-3匹凍らせて海岸に置いておく。

ついでに、カニとか海老とかごっそりと集めて固めておく。

5個ぐらいの氷のブロックにしたら、重力軽減、光学迷彩からの飛行術。


もう、異世界とかファンタジー感がまるでないね。

どちらかっていうと、

縁日の仕入れしている的屋てきや女将おかみさんだよ。

これらを冷蔵倉庫に入れて、早速ゴードンと打ち合わせだ。


ゴードンもこの騒ぎを知ってるみたいで、

ちゃんと私が来るのを待ち構えていてくれたよ。

流石だね。


「ヒカリさん、今日のイベントで出す食事は何にしましょう?」

「領民100人前のパーティー。海鮮は今沢山とってきた。お酒は知らないから任せる。

必要そうなら、メルマ辺りで何個か樽を仕入れてくださいな。

あ、あと、タコ丸はユッカちゃんの要望だから、誰か専属で仕込めるだけ仕込んだ方が良いかも。ステラかルシャナ様にお願いすれば、コンロの台数は増やしてくれるよ。」


「承知しました。ところでルシャナ様とは、どなたですか?」

「ふくよかな格好した、銀の錫杖持ったお母さん。シルフのお母さんになるね。」

「左様でございますか。今後ともよろしくお願いします。」


「うんうん。流石に100人前の料理とタコ丸同時は難しいもんね。みんなでがんばろっか。」

「ハイ!」


ーーーー


「ゴードン、なんか外が随分と賑やかだね」

「そうですね。大きなイベントらしくて、皆が驚いています。

流石はヒカリ様ですね。」


「いや、私じゃないよ。ここでタコ丸と海鮮料理作ってるじゃん?」

「いいえ。皆様がヒカリ様のイベントだと仰ってます。

大会の参加者集めたり、力比べの道具を集めたり、賞品を準備したりと

皆様忙しそうです。」


「あ、えとね?それ私が案を出した訳でも、指揮してる訳でもないって。」

「そういうことにしておきましょう。次は何の準備をしましょうか?」


「うん。タコ丸は作り置きにするとフニャフニャになっちゃうの。でもたくさん作らないといけないから、2通りを考えてるよ。


1つはタコ丸を焼いて作って、冷ましておく。それを食べる前に油でカリッと揚げて熱々にして出す。そうすると油で揚げるだけだから、一度に大量に作れるし、カリカリな食感が楽しめて良いんだよね。


2つ目は、タコ丸の具材を利用して、鉄板に大きく広げて焼いて提供する。これだと、両面焼いてから切り分けるだけだから、一度に大量生産できるんだよ。


ゴードンどう?」


「ヒカリ様、何故もっと早くそのような調理方法を教えてくれなかったのですか?」

「え?だって、タコ丸を作るときは、いつも突然大量に作ることになるから、準備なんかしてる時間ないでしょ。今回みたいに作戦考える余裕とか無いし。」


「ヒカリ様は暫く冒険も領主も辞めて、調理場で各種レシピの開発と提供に当たるべきです。

婚約の儀は大丈夫でしょうけれど、結婚の儀は人数と品数が大変なことになります。今から準備を進めても遅いぐらいですよ。」


「あ、うん。とりあえず、冷蔵倉庫の拡張はお願いしたよ。材料さえあれば、あとは何とでもなるもんだよ。味付けも調味料やソースを変えることで真新しさを演出できるしね。

飾り付けなんかは、うつわを変えて、花を添えるだけで皆を驚かせることができるよ。」


「ヒカリ様、花を召し上がるのですか?」

「え?」


「いま、器に花を添えると仰いましたよね。」

「あ、食べない。今度一緒に作ろう。木の皿とかとは全然違う演出になるから。」


「食べないのに花を添えるのですか。良く判りませんね。」

「うん。それより、今日の準備を乗り切っていこう!」

「ハイ!」


ーーーー


「ヒカリ様、そろそろ開会の挨拶を皆にして頂きたいのですが。」


と、突然モリスが調理場にやってくる。


「え?」


「領主が主催で領民の殆どを集めているのですから、顔見世のまたとない機会です。」

「分かった。それで、私は<情報操作>の影響下ではメイドらしく振舞えばいいの?どんな前提で挨拶すればいいのかな?」


「<情報操作>の内容としましては、

リチャード王子に見初められたメイドが関所の男爵の地位を与えられた設定です。

また、その運営のサポートとして各種著名な支援者が関所に招かれており、その強力な支援者の活躍により、爵位が伯爵迄上がったという設定となっております。」


「なるほど。そしたら私は、『みなさんの支えでこの領地を良いものにしましょう』みたいな挨拶をしておけば良いかな?」

「十分でございましょう。それ以上にアレンジして頂いても結構です。」

「わかった。じゃ、やろっか。」


気安く引き受けてみた物の、100人からの異世界人の前での挨拶とかしたことないよね。それに、自分の領民ってのはさ、私を支えてくれる人になるって訳だから、それ相応の振る舞いをしておきたいよね。

そういった意味で、今日の挨拶は領主としてかなり重要なイベントなんじゃないの?

いつもの『ま、いっか』とか、軽く済ませられない緊張感が出てきたよ。


ーーーー


「この関所を中心に暮らす領民の皆様、本日は大変お忙しい中、突然のイベントにお集まりいただきありがとうございます。私は領主のヒカリ・ハミルトンと申します。


私は貴族としての家督を継いだわけでなく、幸運に恵まれた成り上がり者でございます。そのため、領主としての指揮を執れるようにと、多くの著名人を招いてアドバイスを頂きながら成長していきたいと考えております。

また、本日お集まりいただいている皆様のお力によって、この領地をより良い物になるように運営して参りたいと考えておりますので、ご協力頂けましたら幸甚でございます。


さて、その様な領民の皆様への日ごろの感謝の気持ちを込めて、ささやかなイベントを開催させて頂くこととしました。

競技は3つあり、短距離走、重い荷物を運ぶ力試し、弓を用いての的当てとなっております。これらの能力は日々の鍛錬と領民の皆様が充実された生活をされるうえで基本的な能力であると考えております。

そのため、入賞者には賞品を、参加いただいた方達にはささやかながら参加賞を贈呈する予定でございますので、振るってご参加ください。


また、力試しイベントの授賞式の後には、<魔術の指導会>を開催予定です。著名なエルフ族の方の指導は、稀な機会と思いますので、少しでも興味のある方には是非ともご参加頂ければと思います。


それでは、大変挨拶が長くなりましたが、これより第一回領主主催の力試しイベントを此処に開催することを宣言します!」



(わーわー)

(ぱちぱちぱち・・・)

(領主様、いいぞ~)

(ワイワイ、ガヤガヤ・・・)


うん。一応ちゃんと喋れたかな。

あとは、みんなにお任せして、ゴードンと一緒に<タコ丸>の準備に戻らないとね。


ーーーー


「ヒカリ様、午前中の2つの競技は無事に終了し、参加者への賞品も配布が終わりました。これから領民へ昼食を振舞いたいと思うのですが準備は如何でしょうか?」


「モリス、お疲れ~。

っていうか、なんか本当に疲れてそうだよ?

何かトラブルでもあったの?」


「あ、いえ。特に問題ありません。

皆様に昼食をだす旨伝えており、待たせてあります。

私にも手伝えることがあれば、お申しつけください。」


「そう。

じゃさ、屋外にコンロというか竈を作ってよ。

あと鉄板の大きいので、その下から加熱できるようにルシャナ様かステラにお願いして。場所は力試しをしてる場所で作っちゃえば良いよ。」


「承知しました。早速手配させて頂きます。」


「ゴードン、既に作り終わってる<タコ丸>と、油で揚げる鍋を持って行ってね。

あと、<タコ丸>の具材とお肉とか海老とかも持って行って、鉄板の上で広げて焼き始めてくれる?」

「承知しました。ヒカリ様もご一緒していただけるので?」


「うん。ちょっと、海鮮でいいのが入ったからエビチャーハンでも作ろうかなって。」

「ヒカリ様?」

「なに?」


「初めて聞く名前の料理ですね。」

「え?」


「<チャーハン>とは、何でしょうか?」

「ああ。パスタの代わりにアジャニアから貰って来たお米を使った料理だよ。」


「ヒカリ様、私は辛抱して次の機会を待つことにします。

ですが、ユッカちゃんは怒り出しますよ?」


「ええ?だって、

<タコ丸スペシャル>だよ?

<海鮮お好み焼き>だよ?

みんなでワイワイ食べたら楽しくて美味しさ倍増だよ?

十分凄いと思うんだよ。」


「なら、今日は領民や夕食会の皆様とご一緒にその凄い料理を召し上がるべきです。」


「わ、わかった。エビチャーハンは夕飯にしよう。後で作り方を教えるからよろしくね?」

「承知しました。」


ーーーー


「姉さん、この鉄板はなんだい?」と、フウマ。

「お姉ちゃん、タコ丸は?」と、ユッカちゃん。


「ええと、今、ニーニャとステラとモリスで、鉄板用のコンロと、油で揚げる鍋を準備してくれてるはず。


料理の方は、私とゴードンで作るよ。今日は大量に作る必要があったから、質より量で行くことにしたからね。


1つ目の料理は鉄板の方で作るよ。

タコ丸の材料を元に、肉の薄切りとか、エビとか、卵とかを載せて焼くのね。大人数で一度に食べるには結構良いと思う。沢山、大量にできるからね。

味付けは、海鮮や肉の味でも行けるんだけど、物足りない人は、塩、醤油、トマトソース、あとチーズとかでお願い。


2つ目の料理は、油の鍋の方で、予め作ってあったタコ丸を揚げ直すの。1個1個焼くのは時間がかかるけど、油で揚げるなら一度に沢山出来るからね。

そんな感じで手伝ってくれる?」


「姉さん、調理は分かったけど、100人以上の人がどうやって食べるんだい?椅子もテーブルも無いし、食器も無いよ。」


「モリス、うつわは?流石に食堂の木皿だけでは足りないでしょ。」


「関所の食堂から調達した分で50人前。領主の館の台所から20人前。残りはアリアとミチナガ様にお願いしてあった賞品の器を転用しようかと思っています。」


「まぁ、ちぐはぐだけど良いね。葉っぱだと熱いし、使い捨てのプラスチック容器とか無いしね。フォークも無かったら、箸を使って貰えば良いよ。」


「ヒカリ様、プラスチックとか、使い捨て容器とか、はしとか、そういうのは今度でお願いします。今はご覧の通り大変忙しい状況ですので。」


「あ、うん。でも、箸は使い勝手良いから大航海メンバーはそっちでも良いと思うよ。今晩にでもモリスにも教えてあげるよ。」


ーーーー


「ヒカリさん、大好評でございます。」

「あ、モリスお疲れ様。どんな感じで好評なの?」


「午前中のイベントは領主の招待客が一般領民の優勝者を軽く凌駕されてまして、凄さと拍子抜けが合わさったような複雑な状況でした。


しかし、この昼食イベントは好評ですね。『レシピが知りたい』とか『ここの食堂で食べられるのか』とかとかです。参加賞の食料品なんかよりも大人気ですね。

それと、器として使用した大理石のお皿も大好評です。『金貨何枚なのか?』『今回の優勝賞品になるのか』などなどです。

如何致しましょうか?」


「え?」


「いや、ですから、食堂のメニューに加えるかの話と、今回のイベントの優勝賞品に大理石の皿を追加するかという話です。」


「午前中は短距離走と力試しだよね。何を配ったの?」

「小麦、ジャガイモなどの食料と、調理用のナイフになります。」


「参加賞は?」

「ジャガイモの小袋になります。と、言いましても一人5㎏はありますので、総量で500㎏の大判振る舞いになりますが。」


「お皿は?」

「ミチナガ様とアリアとでお昼までに50枚を用意して頂きました。」


「配ると不味いかな?」

「マリア様とご相談になるかと。」


「そんなに貴重?」

「平らな石板ですら貴重なのです。それを内側をくり抜くとなると、かなり硬度のある金属で丁寧に彫り上げて、今度は大理石以上に硬度のある石で共に磨くことで滑らかに仕上げる必要があります。

その全ての工程をすっ飛ばして、ガラスのようにキラキラと光り滑らかな大理石の器を半日で50枚を仕上げる技術は存在しません。」


「ガラスとどっちが貴重?」

「ガラスは華美であり、壊れることによる儚さもあります。

一方、大理石の実用性は硬度による強度がございますので、半永久的に使用可能です。

水も油も漏れず、スープなどを入れても大丈夫な容器は金属以外にはありません。」


「あれ?ワインとか入れてるかめとかはどうなってるの?」

「焼き煉瓦より軽い粘土を焼いてますので、簡単に割れてしまいます。作りが悪いと水もしみだしてきますので、他の粘土で隙間を補修したりします。」


うわぐすりの技法は無いの?」

「それが何か判りませんが、粘土は粘土です。」


「じゃ、とりあえず、全数回収して、食堂の皿として使いつつ、マリア様と贈答品としてどの程度の価値があるか聞いてみよう。」

「器の件は承知しました。<タコ丸(改)>は、如何致しましょうか?」


「タコを獲ってくる人がいれば、後は馬車で冷蔵輸送するだけだね。

他には作る手間が掛かるけど、食堂に人を雇えば販売は出来そうだね。

ゴードンに手間賃とってまで食堂のメニューに加えられるか確認してみてくれるかな?」

「承知しました。販売権の許可についてはマリア様経由でレナード様かそのお知り合いに頂くようにします。」


「う。販売権も必要なのね?」

「大理石の皿も製造技術の申請後、国家の秘匿技術として認められるとそう簡単に製造や販売が出来なくなります。」


「そんなに凄いこと?代替技術があるって、さっき言ってたよね?」

「可能かどうかの話であって、貴族の装飾品として使用するのは構いませんが、一般的に安易に普及させることができる器として大理石は使用しません。」


「ひょっとして、空気搬送システムとかもそういう話だった?」

「レイ様と情報を共有させて頂いている中で、その様な輸送方法があることを伺っております。ロメリア王国の指揮権がエスティア王国に無ければ、国家機密の漏洩により、四肢切断や幽閉の刑罰に処せられますね。」


「モリス、他には?」

「基本的にマリア様が機転を利かせて頂いておりますので、後付けでの申請書類作成や情報操作は完了しております。他に問題ごとを起こされてなければですが。」


「エビチャーハン」

「何ですか?それは。」


「今日の夕飯。まだ、デビュー前。」

「マリア様に試食して頂く形で提供されて、その後考えるので良いかと思います。」


「わ、わかった。夕飯での試食の準備を進めるよ。」

「午後の部は<弓による的当て>と<ステラ様による魔術指導会>がありますが、ご観覧されないのでしょうか?」


「ゴードンに夕ご飯の準備をしておいて貰えれば、観戦できるかも。」

「折角のイベントですので、午後は是非とも観覧してくださいませ。」


「わかった。モリスの助言に従うよ。」

「ご理解頂き、ありがとうございます。昼食の片づけと共にゴードンにはその旨伝えておきます。」

「うん。いろいろありがとうね。」


いや~、どうなのよ?

エビチャーハンだよ?

大理石の皿だって、陶器よりは実現性あるだろうし。


それにしても釉薬ってまだ時代としてないんだっけか?

焼き煉瓦の技術も無くて高温炉もなかったから・・・。

ちょっと、慎重に行動しないと不味いね。


ーーーー


モリスの助言に従って、午後から観戦。

そういえば、弓使いの名人のハントさんが来るのかな?


最初は的当ての試技からだった。

あれ、フウマはなんで私の所で一緒に観戦になってる?

ユッカちゃんとかエルフの子らが一生懸命的まとを用意してたり、ステラやモリスが受付とか順番整理をしてるよ。


「フウマは手伝わないの?」

「午前中いろいろ頑張ったからね。」

「そう。夕食会のメンバーは女性が多いから、フウマも手伝ってくれれば良いのに。」

「じゃぁ、最後の片づけを手伝うよ。」


最初は一般の領民の人達の試技からだね。

参加者は子供まで合わせて50人ぐらいらしいよ。

参加賞のジャガイモが目当てらしいから、家族総出で参加しているところもあるみたい。一人ずつ30m先の的を狙っててに行く。

狙って当てるなら、真ん中をてたいもんね。


今日初めて弓を持ったような人達では前に飛ぶのですら結構難しい。

耳の後ろぐらいまで弓のつるを引いてから、ちゃんと手首を返して方向を定めるとか普通じゃできないよね。

弓への矢のつがい方が様になってるのは10人位。

この人たちは普段から森へ入って狩りをしてるんだろね。

当然、昨日きたハントさんも残ってた。


「それでは、決勝戦を領民の方3人と領主の招待枠3人を合わせて6人で行います。

招待枠の3名はエストさん、ミストさん、そしてユッカさんです。」


領民として勝ち抜いた3人と、女性3人のエスト、ミスト、ユッカちゃんの3人が、モリスの案内に合わせて観衆に手を振る。

6人が順番に試技を始める。


領民の一位はハントさんだった。豪語するだけあって、弓の腕前は超一流で、30m先の的の金貨ぐらいの大きさに3本とも命中させて圧勝。


招待枠の3人もきっちり金貨に3本を中てて見せてた。

エルフの子らは元々能力があったとして、ユッカちゃんは凄くない?

30m先の金貨とか、全然見えないサイズだよ。

私は飛竜の血を飲んでるせいもあって、視力も向上しているけど、

領民のハンスさんの身体能力は村一番って言ってもおかしくないね。


「あ~。優勝はハントさん。そして、領主招待枠の3名も同じ得点で同点です!

ここで特別ルールとして、残った4名には50m離れた位置から同じことをして頂きたいと思います。」


(ワーワー)

(いいぞ~。もっとやれ~)


と、モリスのアナウンスを受けて、4人が20mも手前の位置に連れていかれて、試技をしてもらうことになった。

50mとか離れたちゃうと、的の大きさですら、指先のサイズだよ。的の中心ってどんな風に見えてるんだろうね?エーテルの流れで金貨の位置を追うことができれば、あとは、エーテルさんに頼んで矢をそこまで運んで貰えば当たりそうだけどね。それって、弓の競技としては反則だろうね。


ハントさんはやや上方に矢の先を向けて、円弧状に狙いをつけるみたい。後は風の流れを感じてるのか、目を瞑って、目視せずに矢を放った。結果は3発中2発が的に当たった。

当たるだけでも十分凄いと思うんだけどね。


エスト、イストは3本とも金貨に中てて、ユッカちゃんは3本的に当てた。

矢の構え方も直線的だったから、かなり強いつるの弓を使ってるんだろうね。

やっぱ、この人たちは普通の人達じゃないよ。

ところで、何で3人目がミストさんじゃないんだろ?


「あ~。エルフ族のお二人は同点です。3番目がユッカさん、4番目がハントさんでした。皆様に拍手~!!」


パチパチ~

パチパチ~

パチパチ~


「これより、遠投なる弓の競技を始めます。これは午前に行った短距離走の100mの距離を射て頂きますので、より遠くまで飛ばした者が優勝となります。

なお、実際の騎士団での実用性を兼ねて、矢は笛が付いた通常より飛びにくいものとなっておりますので、たとえ100mであっても、通常の矢であればその1.5倍ぐらいは飛距離が出るとお考え下さい。」


今度はさっき的当てでちゃんと弓矢を扱えた10人が残って、領主の招待枠4人もここから参加することになった。合計で14人の試技ってことだね。

とりあえず、笛付の矢に慣れてないってこともあるので、一人3回ずつ射て貰うことにした。


ピーピー、ぴゅーぴゅー、キーンとか、いろいろな音がするのね。

笛付の矢自体はエルフの人達も扱うし、エスティア王国の騎士団用の笛はフウマが持ってたりしたから、それを使いまわすことにしたため、音が様々なのね。

エルフ族の持ってきた笛は、どっちかといえば鳥や獣の鳴き声に近い感じ。エスティア王国のは機械的っていうか、とにかく音がうるさくて甲高い声みたいだね。

やっぱり、笛の用途や使われる環境によって技術の進化がちがうのかもね。


領民10人のうち7人は100mも飛ばせず。3人だけが100mを超えてきた。笛付で不慣れなのに大したもんなんだと思うよ。こういうのって、使い慣れていないと全然感覚が変わってくるはずだからね。


「領主の招待枠の4名は『遠投の意味が無い』とのことで、関所を出て橋を越えたメルマ方面から射るそうです。順位は関係ありませんので、笛の音が遠方より届く様をご覧ください。」


って、フウマが高い木に登って赤い旗を振る。

すると視界に入らない遥か遠くから笛の音がしてくる。

大空を舞うトンビが鳴いてるかのような感じでだね。

丁度、初速が出て上昇しているときが『ぴ~~~』って、甲高い音が響いて、その後力を失って降下するときに『ひょろろろ~~』って、力が抜けた感じ。


それでもって、ちゃんと落下点が皆が集まっている力試しの会場の中に落ちてくるのね。流石に100m超えたゴール地点じゃないけどさ。

どちらかっていうと、フウマの赤い旗の位置と同じぐらいの場所になるね。


もう、観衆からは拍手しか湧いてこない。

何せ、実際に射てる人が見えないし、とんでもなく遠い有視界外からだからね。

直線距離なら500mとかなのかな?私の背の高さでは地形や道の凸凹があって、4人の姿が見えないね。


次にフウマが赤い旗を振ると、今度は別の鳥の『チチチチチ』って、雲雀ひばりみたいな音を立てながら矢が飛んできた。大体さっきの人と同じくらいの距離だね。


3番目はエスティア王国の騎士団が使うような『キーーーン』って、単純で甲高い音の矢が飛んできて、100m地点の遥か先まで飛んで落ちた。

笛の音がエスティア王国ってことは、今のはひょっとしてユッカちゃん?力は身体強化とかできるから抜群にあるんだろうね。


そうすると最後の4番目はミストってことになるのかな?

観衆が見守る中、フウマが赤い旗を振る。

すると、フワンフワンと唸り声のような音を立てながら何かが近づいてくると、フウマが振り上げ赤い旗を射抜いて、そのまま100mのゴール地点を遥か超えたところまで飛んで行って赤い旗と共に着地した。


いやいやいや・・・。

先ずね?フウマの赤い旗は確かに的としてみれば大きいよ。

だけどさ、こっちから相手が見えなくて、有視界外から高い木の上の旗に当てて、その旗ごと100m以上飛翔し続けるってのは、どんだけの精度と威力なのよ?


領主の招待枠からの参加者であるエスト、イスト、ミスト、そしてユッカちゃんの4人が戻って来た。


「おねえちゃん、みてた?誰のが一番遠くまで飛んだ?」

「最後に射て、フウマの赤い旗を射抜いた人だよ。」

「そっか~。やっぱりミストさんかぁ。予選の的当てで出場しないくらいに実力差があったから~。そっか~。残念。」

「ユッカちゃんが3番目にキーンって音の矢を射たのだったら、2番目に遠くまで飛んでたよ。」

「ホントに、ホントに?そしたら、私2番だから、おねえちゃん、何か頂戴!賞品だよ賞品!」


「お昼ご飯に<タコ丸(改)>を皆に振舞ったよね?ユッカちゃんが<タコ丸>っていうから、ゴードンと準備頑張ったんだよ?」

「でも、入賞したから、私も何か特別な賞品が欲しい!」

「じゃ、夕ご飯に<エビチャーハン>作ってあげる」


「それ、美味しい?」

「たぶん、美味しい。」

「じゃ、私も手伝う!」

「うんうん。あとで皆で作ろうね。この後、ステラの魔術の指導会が始まるよ。」

「うん!」



「領民の優勝はハントさん~!そして、領主の招待枠の4名の試技にも拍手~~!」

と、モリスが観衆に向けて声を掛けた。


「それでは、皆様、本日の力試し大会の表彰式に移りたいと思います。

短距離走の部の優勝は領民Aさんです。

力自慢の部は優勝がドガさん

弓自慢の部は優勝がハントさん

皆様拍手~~!


そして特別に領主から何か素敵なプレゼントがいただけます!

領主様どうぞ~!!」


え?モリスそういうこと言う?

大理石の皿もダメで食事は出したし、

これ以上何しろっていうのさ?

よし、こういう無茶ぶりには、無茶ぶりで返そう。


「皆様、今日は領民の皆様に力試しイベントにご参加いただきありがとうございました。

このようなイベントは皆様に日ごろの疲れを癒して頂くとともに、細やかながら賞品を受け取って頂けたでしょうか。皆様が楽しんで頂けたようであれば、定期的にこういったイベントを開催していきたいと思います。


また、各競技の優勝者の3名には、モリスからの賞品の授与の他に、特別な賞品を獲得する権利を授けたいと思います。


1つは、帝国騎士団へ推薦される権利です。

私としましては優秀な領民が失われるのとても辛いことですが、本人の力を発揮させることと、国の強化のためにはそういった選択肢があっても良いと思われます。


2つ目は、<身体強化>の能力を教わる権利となります。

こちらは、領主の招待枠としまして、皆様と一緒に競技に参加された人達の交流と指導を受ける権利となります。ただし、多大な能力はこれまでの普通の領民としての暮らしをすることはできません。


1つ目か2つ目のどちらかを選択する権利を授けることができます。しかしながら、権利を受け取らない権利もあり、これまで通り領民の一人として皆様と一緒にご活躍して頂くことも可能になります。


決断に時間が必要と思われますので、一週間以内にモリスに返事を頂ければと思います。


皆様、今日は一日どうもありがとうございました。」


よし、なんとか乗り切ったよ!

皆が騎士団員になりたいとか言ってきたら、マリア様に一筆書いて貰おう。そうしよう。



いや~。長い一日だったねぇ。

夕食の報告会はみんな興奮冷めやらぬ中でのエビチャーハンだ。

普段の報告とか全部そっちのけだね。

なにやら午前中の部でフウマがやらかしたらしいこともこの場で初めて知ったよ。

でも、みんなが楽しんでくれたんなら結果オーライだね。

冗長ですみません。

反省してます。

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