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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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4-73.帰還(3)

帰還の報告じゃなくて、

王子の報告を聞かないとね。

「王子、あの~」

「なんだ?もう寝たんじゃないのか?」


「ちょっと寝れなくて。」

「なんだ?旅の思い出で興奮して眠れないのか?」


「う~ん。それもあるかもしれないけど、それよりもね?」

「なんだ、何か隠していることがあるのか?」


「ううん。私が留守だった間の架橋拠点の話を聞きたいかなって。」

「さっき、説明したじゃないか。」


「それは私の奴隷さん達とか、ロメリアの話でしょ。王子の話を聞いて無いよ」

「特にないな」


「特別なことはなくても、いろいろ大変だったんでしょ?」

「ヒカリに比べれば大したこと無いさ」


「あ、でも、治水工事とかどうなったの?私は着手できなかったし。」

「ああ、まぁな。長くなるし、一緒に飯でも食べながら話すか。」


「はい。是非聞かせてください。」


二人だけで夕ご飯を食べることにした。

食堂には誰も入ってこなかった。

最初はこっちの顔をチラチラ見てるだけの王子だったけど、

ご飯を少しずつ食べるにつれて、だんだんと話をしてくれはじめた。


「何でも一人でやるんだぜ?」

「計画も立てて、準備もするんだ」

「失敗は全部俺の責任になるしな。」

「問題が起こった時の判断も求められる」

「ただ、俺のミスを皆がカバーしてくれるんだ。」


「うんうん」と、顔を向けて目をみて、しっかりと話を聞いた。


「でさ、そのとき困ったことが起こったんだ。ヒカリならどうした?」

「う~ん。難しいねぇ。どうすればいいんだろ?」

「そこで俺は皆と相談して決めた訳よ。あのな・・・」


王子の英雄譚は延々と続く。

私は一生懸命に2か月分の出来事と王子の成長の葛藤の話を聞く。

とにかく、今は王子が独り立ちして得た初めての興奮体験を聞く。


そっか~。そっか~。

王子はいっぱい努力して、いろんなことを手に入れたんだ。

その苦労を話す相手も居なかったんだね。

お疲れ様。

なんか、ウルウルしてきたよ。


「ヒカリ、どうした?眠くて欠伸でもしたか?」

「ううん。違うの。共感してたら泣けてきちゃった。」


「ああ、そうなんだよなぁ。俺もコッソリ部屋で独りで泣いたんだ。皆には秘密だけどな。」

「うんうん。」


「あ~、でも、随分時間が経ったな。そろそろ寝るか。」

「レイさんの所でお風呂入って、疲れを取ってから寝る?」


「二人でか?」

「うん。二人で。」


ーーーー


「レイさん、王子とお風呂に入りたい。」

「お待ちしておりましたわ。準備が出来ております。」

「ありがとね。」


王子と二人で薄暗いロウソクのような灯りの下でお風呂に入る。

なんだか、洞窟風呂みたいな雰囲気で味わいがあるね。


「ヒカリは、こういう風呂には入るのか?」

「今日で2回目かな。」


「普段はどうしてる。女性でも汗はかくのだろう?」

「普段は<ピュア>で除去してるよ。」


「そうか。ああ、それはひょっとして。」

「なに?」


「そのだな。ヒカリと初めて会ったとき、ベッセルの所で美味しい肉を食べたときだが、ヒカリの体臭が気になったんだ。」

「え?あのときは森から荷物を運んできた日だね。臭かった?ゴメン・・・。」


「いや、そのだな。王室や貴族のパーティーに集まる婦人方は、体臭を消すために各種ハーブやこうを焚いて、その匂いを身に纏って出席をするんだ。

つまり、俺は女性の体臭を身近に嗅いだことが無かったんだ。」

「でも、メイドさんなんかもいらっしゃるでしょ?」


「王室に仕えるメイドは当然対応をしている。そのためのに給金も支給している。」

「そ、そうですか。大変失礼しました。」


「俺はそのとき、ヒカリが持ち込んだハムなんかも気になったが、女性に初めて触れた気がしたんだ。」

「あ、なんだか・・・、その・・・。ありがとう・・・。」


「2回目に会ったときは男爵主催のパーティーでメイドの格好で給仕していただろ?」

「あ、うん。割とよく覚えているよ。」


「あのときな。お前もユッカちゃんもお揃いのメイド服を着ていた。そして丹念に服には香が焚かれていたんだな。」

「そうなのかな?」


「おまえ、そのとき<ピュア>使わなかったか?」

「え?」


「ヒカリの香りがしたんだ。服から漂う香に交じって、最初に出会ったときのヒカリの体臭がしたんだよ。それが<ピュア>なのかなって、今日分かった。」

「あ~。そういえばしたかも。緊張して汗出て来ちゃったから。」


「3回目がさ。俺を救いに来てくれたときだ。今なら言えるが、それなりに凄かったぞ。<これぞヒカリ!>って判るぐらい凄かった。」

「王子、あのとき死にそうだったよね?」


「まぁな。『最後に会えて良かった』と、実際思ったさ。」

「あ、一応だけどね?レナードさんのところからユッカちゃんと二人で走ったんだからね?あの頃は飛竜も居なかったし。汗ぐらい我慢してよ。」


「それはご苦労だったな。レナードの命令か?」

「命令もあったけど、そういうものじゃないでしょ。」


「利権とか褒美か?」

「そういうことにしておくよ。」


「俺はあの死にそうな状況から救って貰えたとき、『ヒカリを手に入れたい』って思ったんだが、なかなか難しいな。」

「え?」


「おまえ、妊娠したんだろ?俺は男として負けた訳だ。」

「ええ?」


「おまえ、食事の前に<大事なこと>って、俺に報告しただろ」

「あ、え、ちょっと待ってください。」


「ちょっとって、<金貨10万枚>か?」

「いや、ええと、そうじゃなくて。何がどこで勘違いしてる?」


「何がだ?」

「私は王子以外を好きになって無いし、してないよ。」


「どういうことだ?」

「王子が初めての人だし、他の人とはしてない。」


「ヒカリ、それは・・・。」

「うん。王子の子を妊娠してる」


「おまえ、なんでそんな大事なことを?飛竜の念話でもなんでも使えただろうが?」

「あ、いや、みんなが直接伝えた方が良いって。私も気付くの遅くて・・・。」


「皆にはいつ知らせるんだ?」

「多分、王子以外はみんな知ってる。私以外はみんな知ってたし。」


「なんなんだ・・・。」

「そう。私も<なんで、この航海で何もさせて貰えないの>って、思ってたら、皆で私を庇ってたらしいよ。」


「俺たちは大丈夫なのか?」

「たぶん、私が鈍感なのが悪いです。なるべく気を付けます。」


「いや、そうじゃない。俺もヒカリに甘えてるし、気が回ってない。これからは家族を支えるために頑張ろうと思う。」

「そんなことないです。私も王族の一員として受け入れられるよう、精進したいと思います。」


「ああ。二人で上手くやっていこう。そして新しく増える家族とも一緒にな。」

「ハイ」


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