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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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26.メイドになろう

ユッカちゃんが戻ってきた。

<光学迷彩>ができることは見せたので、

次の特訓に進むか相談をしたよ。

ゆっくりとお使いしてるアリバイ作りに

城下町に前泊することにした。

で、まぁ、いろいろと……。

「おねえちゃん。ただいま」

「ユッカちゃん、お帰り。クッキー作ってるよ。もうちょっと待っててね」


「おねえちゃん、すごいすごい、すご~~~い!」

「え?何が?いつものクッキーだよ。木の実いれてみたけど?」


「膜、膜!エーテルの膜!」

「ああ~。忘れてた」


<<<光学迷彩>解除>>


「さっき、出来る様になって解除するの忘れてた。教えてくれてありがと」

「おねえちゃんの特訓もずいぶん進んだね。やったね!」

「ユッカちゃんのおかげだね」


「おねえちゃんすごい!私はおかあさんにいっぱい教えてもらったのに……」

「ユッカちゃんも、ちゃんと出来るようになったんだからすごいと思う。

ところで、ユッカちゃんに相談があるんだけど……」

「なに?」


「城下町に今日宿泊した方がいいと思う」

「なんで?明日城下町に行ってからでも、走れば間に合うよ?」


「私たちが、ゆっくり進んだことにするには、

今日のうちに城下町に着いたことが必要と思う。

明日に突然現れて、明日にレナードさんの街に着くのは

なんか、どっかで時間がオカシイって思われちゃう」

「うん~~~。おねえちゃんのいうとおりかも?」


「そしたら、準備しよっか。商人さんのところにお土産もっていったり」

「そうしよ!また砂糖もらえるかも」

「あ、あれば、もらえるかもね!」


ーーーー


昨日追い越された配達人とのすれ違いに気を付けながら城下町に向かう。

片道10kmがどうでもいい距離に思えてきてるって、なんだかねぇ……。

まだ、日が十分に明るいうちに門番に登録書の証明書を見せて通過する。

そして、先に冒険者登録所に行って、<おつかい>を二人でやってることを示す。

ちゃんと通過のサインを貰えた。

よし!これであとはレナードさんの街にいくだけだ。


「ユッカちゃん、おつかい終わり。

商人さんにお土産もっていって、2人が泊まるのに良さそうな宿の情報をきこうか」

「うん。そうしよ!砂糖!砂糖!」


「あの青年が居ないと、砂糖は只ではもらえないとおもうんだけどね?」

「いいの、いいの!いこ!」


前回お世話になった商人さんのところに来て、挨拶を試みる。


「こんにちわ~。また来ました~」

「おお。いつも元気だね。今日はなんの用だい?」

「砂糖!」

「お嬢ちゃん、ごめんよ。砂糖はまだ入荷してないんだ。

こちとら商人。あればいくらでも買ってもらいたいんだがね」


「あ、いえ。

前回いろいろオマケしてもらったので、

店主さんと、この前砂糖を戴いた青年にお土産を持ってきました」

「ほう。それは面白そうだ。見せてもらっていいかい?」

「はい。これです。」


まず、クッキー。プレーンと木の実入り。

次に、パン。これもプレーン、木の実、ドライフルーツ入り。

そして、やっぱりお肉。

今度はとれたての鹿肉を中をレアに外側を焼いて肉汁を閉じこめた。

いわゆるローストビーフの鹿肉版だね。


「ほほう……。また、ちょっと味見してみたいんだが?」

「どうぞ~」


今日は商人さんが1人でつまみ始める。

青年を呼んでくれれば、ひょっとしたかもしれないけど、

ま、それはそれ。前回がラッキー過ぎただけだ。


「相変わらず、いいもの持ってるね。

ところでお嬢さん達、今日の用事の残りとか宿の予約は終わってるのかい?」

「ええと、用事は終わってます。

ですが、私はこの街の宿の事情があまりよくわからないので、

この前親切にしてもらった店主さんに、お話しを伺いに来ました」


「ああ、名乗るのを忘れていたよ。私の名前はベッセルだよ」

「私はヒカリで、この子はユッカちゃんです」


「ヒカリさん、ユッカちゃん今後ともよろしく。

それで、今晩の予定も宿の予約も無しということでいいかい?」

「はい」


「そしたら、お願いがあるんだけど、助けて貰うわけにはいかないかな。

ちょっとしたお使いみたいなものなんだけどさ。

お礼に今晩の夕ご飯と、ちゃんとした宿を提供しようと思うんだがね」

「ええと、詳しい内容を伺ってもよろしいですか?

裕福ではないですが、夜の商売をしようとは考えておりません」


「ああ、そこは大丈夫だ。送り迎えは私が責任をもってするよ。

ちょっとした貴族のパーティーがあってね。

そこに給仕のメイドとして参加してもらえないかなと思って」

「すみません。ちょっと二人で相談しても良いですか?」

「ああ、もちろんだとも」


「ユッカちゃん、どうしよう。」

「おねえちゃんに任せる。けど、貴族のパーティーも見てみたい」

「つまみ食いはできないよ。あと、ユッカちゃんも給仕するのかな?二人とも服ないし」

「おねえちゃんしか参加できないなら、やだ!」

「わかった。きいてみるね」


ユッカちゃん付きなら、変なことになる時間の前に帰れると思う。

もし変なことになりそうなら、二人ならある程度は突破できるとおもう。

貴族のパーティーで人権とか無いかもしれないから、

自分の体は自分でまもらないとね!


「あの、すみません。

二人で給仕させてもらっても大丈夫ですか?

それと、二人とも貴族に給仕できるような服がないんですけど……」

「ああ、そうだね。二人一緒の方が安心だろう。問題無いよ。

服の方も大丈夫だ。ただし、貸すだけだから後で返してもらうよ?」

「はい。それでお願いします」


割と安請け合いしてしまった。

前回の感じからすると、ベッセルさんはかなりエライ貴族とのコネクションがある。

とすると、奴隷として捌いたりするよりは商人として長い付き合いを望んでいる様子。

バカな人は金の卵を産むガチョウを見つけて、腹を割くけど、

賢い人はガチョウにたくさん餌をやるもんだからね。


見込み違いなら私の経験と勘が悪いってことで自分を戒めるだけだ。


ーーーー


「お嬢さん達、着替えは終わったかい?」

「はい。サイズとか合ってますか?

お手伝いさんに着るのを手伝ってもらったのですが……。

どうでしょう?」


ユッカちゃんとおそろいで嬉しい。

可愛いユッカちゃんと一緒に写真をとれないのが残念。


いわゆる、一般的なメイド服だね。

全体構成は濃い紺色と白いエプロン。

頭には白のカチューシャ。ホワイトブリムてやつだね。

服は濃紺の裾の長いワンピース型。ペチコートが入っててボリューム感でてる。

前掛けには白のエプロン。腰だけでなく、肩からかけるやつね。

そして、なんと、靴と靴下が!

白いハイソックスと黒い革靴。

靴下なんか、飾り以外の何物でもないでしょ?

靴はともかく靴下なんて、ほとんどの人が履いてないし。


なんか、日本のお遊び感覚満載のメイド喫茶よりも、シックな感じでできてる。

でもさ、布すら貴重な時代に、こんな服を貸せるって半端ないね。

まぁ、貴族だし。人権無いんだろうし。深く考えちゃ負けだ。


あ、靴がちょっとキツイ。我慢我慢。

靴擦れにオロナインとかバンドエイドとか無いよね。

回復魔法があったらユッカちゃんにきいておこう……。


「いいじゃないか。

二人とも良く似合ってて可愛いよ。

借り物とは思えないぐらいぴったりだ」

「「えへへ……」」


私たちはお世辞とか知らない。

額面通り喜んでる。

いいの。いいの。可愛いは正義!


ーーーー


馬車で会場に着いた。

裏口に止まる。


「あくまで、給仕の人数合わせだから。

儀礼的なこととか、命令系統とか考えなくていいよ。

貴族の人たちから声を掛けられても、

黙ってにっこり笑って給仕長の元に戻ればいいから。

気楽に構えてね」と、ベッセルさん。

「「はい。がんばります!」」と、メイド姿が嬉しくて元気に返事をする私たち。


ーーーー


会場の裏口がから入って、控えていた執事に導かれて会場に入ると、

そこには給仕長らしき人が居て、お客様の来場に合わせて、

テキパキと細かく指示をだしてるんだよね。

既に他のメイドさんや執事さん達はキビキビと働いているの。


でも、私達には何も指示が無いの。

給仕長の傍で見てるだけ。

置物?


そんなこんなで主催者らしい挨拶が始めるギリギリのタイミングで

例の青年がやってくる。

これ、あれか。まさかのあれね?

VIPは一番最後にやってくるってやつ。

この貴族のパーティーの主催者がどんなレベルの人かは知らないけれど、

一番最後に堂々と登場できるって、この主催者よりは格上。

やっぱ、あの青年はお金持ちなんだね。


青年が来たのと同じタイミングで給仕長から私たちに声が掛かる。


『あの青年に飲み物と私たちが持ってきたお肉のスライスを届ける様に』と。


鈍感ながら今更気が付いたよ。

ベッセルさんが呼ばれてないパーティーだったんだね。

で、例の青年が出席パーティーを知ってて、

コネ使いまくって、私たちを無理やり押し込んで、

このお肉を食べさせようとしてるんだ。


「ユッカちゃん、あの人、覚えてる?」

「砂糖のお兄さんだね」


「うん。このお肉食べてもらいに行こう」

「さとう、さとう!」

「いや、そうしよう!だよね?

粗相のないように、自然に持って行こか。会話の邪魔しないようにね」

「うん!」


「飲み物をどうぞ」


私がさりげなく、飲み物を数種類載せたお盆を差し出す。

視線を合わせないように、少し頭を下げた方が恭しくていいのかな。

儀礼とかしらない。


「おにくどうぞ!」


ユッカちゃんがニッコニッコしながら、じっと顔を見つめて

両手で元気よくお肉の乗ったお盆を持ち上げて万歳する。


「あ!え?どうやってここに?」


青年が驚く。

こういう人たちって、冷静沈着を装って、堂々としてるイメージがあるんだけど、

このビックリさせてしまった状態は問題ないの?

私は青年にこっそり耳打ちをするように、


「ベッセルさんのお使いできました。例のハムとは違いますが特製のお肉です」

「そ、そうか。ちょっともらうよ」


爪楊枝?ピック?なんか刺さってる棒で一枚を食べる。

すんごい、ニンマりした笑顔だ。

こんなに貴族が感情を出して良いの?

ま、美味し物は人を笑顔にするよね。

嬉しいことは良いことだ。

うん。


「お嬢ちゃん、このお盆このまま貰ってもいいかな」

「どぞ~。砂糖のお兄さん!」

「あ。すみません。これは例の砂糖のときのお礼です」


「そうか。今日は砂糖は持ってないんだ。お嬢ちゃん、今度でいいかい?」

「うん!」


うっわ。怖いもの知らずっていいね。

こっちは、汗だらだらだよ……。

脇の下とか背中とか頭髪とかジトジトしてるよ。

ちょっとピュアしちゃおう……。


私たちとの挨拶を終えた青年はお盆を持って、

自分のお気に入りのグループらしきところへ行ってしまう。

なんか、周りから恭しく頭下げられてるし。

で、用事が済んだので給仕長のところへ戻って、終わった旨を伝える。

給仕長はコクリと頷くと会話もない。

また、待ってる。

暫くして、何やらデザートが出され始める。


給仕長から次の指示がきた。

『パンとクッキーを持って行け』と。

立食パーティーでパンなんか食べるかね?

そして、クッキーはデザートですか?

いいんです。お礼を運ぶ機会なので。

まして、この後夕食と宿まで提供してもらえるもんね。

美人局つつもたせとかなければだけど。


「デザートにパンとクッキーをお持ちしました」

「ハイ!」


ユッカちゃん、そんなに勢いよく持ち上げるとクッキーがこぼれるよ。


「ありがとう。さっきのお肉は評判よかったよ。こっちもらっていいかな?」

「「はい」」


今度は二皿とも持って行ってしまう。

ユッカちゃんには木の実入りを食べさせてあげてないけど、また作るさ。

給仕長の所に戻って、終わった旨を再び伝える。

給仕長はコクリと頷く。そして、勝手口から出ていくように指示する。

やっとおしまいだ。


ーーーー


ベッセルさんが馬車で待っていてくれた。

暇な訳ないよね。すっごい紳士的な対応。


「「終わりました~」」

「お疲れさま。あの青年に会えたかい?」

「はい。いろいろ気を遣って頂いてありがとうございました」

「うん。砂糖は今度だって」


「そうかそうか。じゃあ、また今度砂糖が入荷したら買ってもらわないとな。

さて、夕食を食べに行こう。貴族の物とは違うが我慢してくれよ」

「はい。お願いします」

「うん。おなかペコペコ~!」


なんか、こう、余りにも上手くいきすぎ。

ご飯を食べて、ベッセルさんちの客室に泊めてもらえることになった。

一応、自分たちの元の服に着替える前に二人ともピュアを忘れない。

私は緊張感の解放から、ユッカちゃんは砂糖を買ってもらえる嬉しさから、

二人ともぐっすりと眠りについたのでした。

誤字など修正です。本ストーリーへの影響はありません(たぶん)。

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