4-47.観光迷宮(1)
迷宮を観光するの?
それとも、観光客用の迷宮があるの?
どっちなんでしょうね。
冒険者登録所で許可証を貰って、
初級~上級までの迷宮の位置が描かれた地図を貰った。
ここまでは無料なんだって。
冒険者が迷宮に入ることで、経済が活性化するから
そういう斡旋も重要なんだってさ。
逆に、そうやって経済を回して欲しいからこそ、
不用心な冒険者たちが居たら注意を促す意味で試験とかしてるんだって。
そりゃ、運頼みのパーティーじゃ後から
観光協会や冒険者ギルドの補償問題になりかねないもんね。
「なんで、そんな危険な目に合わせたんだ!」
みたいなことが無いようにね。
観光迷宮に向かうメンバーは女の子だらけ。
ステラ、ユッカちゃん、ルシャナ様の3人は私より生きて帰れるから大丈夫。
ニーニャとアリアは<飛竜の血>を飲んでるのと、<念話>を使える以外は普通の人。
当然、科学とか工学の知識はあるけど、敵を倒す経験は無いからね。
食料とか準備はユッカちゃんの鞄の中にあるもので良しとして、
足りなかったら出直そうていう、本当にお気楽な感じ。
もし、魔石とかドロップしなくても生成しちゃえばいいもんね。
ーーーー
人気の無い所まできたら、
<光学迷彩>と<飛行術>を頼りに、サクッと目的の観光迷宮まで移動したよ。
門番さんに見つからない位置で解除してから徒歩で向かう。
「こんにちは。観光迷宮に入らせて貰いたいのですけど、宜しいでしょうか」と、ルシャナ様。もう、会話は常に<念話>で全員に通知してもらうことにしたよ。
「おや、お母さん。女の子ばかりですね。道に迷っちゃたのかな。
生憎だけどここは<上級観光迷宮>なんだ。
冒険者登録所で地図を貰ってから、もう一度初級や中級に行って見るよいいよ。」
と、門番のお兄さんが丁寧に対応してくれる。
「いいえ~。たぶん~ここで~いいと~おもいます~。こちら~許可証です~~。」
ひょっとして、ルシャナ様は何かイラっとすると、ゆったりと喋るのかな?
「おお!これは失礼しました。確かに冒険者ギルドが発行した本物だ。
パーティー名はルシャナさんで、3人になってるけど良かったかい?
他の3人も同じパーティーとして同行は可能だけど、
他のメンバーの面倒を見て欲しいし、
登録パーティー以外のメンバーは自己責任でお願いするよ。
ここにサインをして行って貰えるかな?」
と、日本でいうところの入山許可証みたいなのに日付と名前を書いて、
<自己責任であることに同意する>ってところにサインをもう一度する。
「お母さん、これで入場の準備はオッケーだ。
初めてだったら内部の案内をするし、
楽しみを奪われたく無いなら、一切助言は無しでも良いよ。
どうされますか?」
「大きな魔石がとれるボスに会いたいですわ」と、キビキビとルシャナ様。
「なるほど。迷宮探索よりも、魔石目当てなのですね。
最終ボスは地下20階層目に居ると言われています。
冒険者ランク5のパーティーですと、
地下5層目の途中のボス到着までに2日掛かり、
そこで数時間の戦闘をして制圧をするそうです。
そこから地下10層まで5日間を要するそうです。
地下10階のボスを倒せた冒険者パーティーは居ないみたいですね。」
<<ルシャナ様、地下20層までは誰が到達したのかと、なぜそんなに時間が掛かるのかをきいて貰えますか。罠があるとか、敵が多いとか、とても広くて複雑な迷宮なのかとかです。>>
<<承知しました>>
「門番のお兄様、どなたが20階層にボスが居ることを確認したのでしょうか。
それと、1階層ずつクリアするのに時間が掛かる理由はわかりますか?」
「ああ。昔、王宮の近衛騎士団や宮廷魔術師が大隊を組んで討伐に向かったらしいんだ。そのときの記録の情報になるね。
迷宮を進むのにかかる時間は罠や広さよりも、暗くて狭い中での魔獣との戦闘時間が掛かるみたいだよ。
敵の急所を見破りにくいし、召喚魔法も一部を除いて使えないから武器をメインとした戦闘で、サポート魔法中心になる。
戦闘時間、戦闘による疲労回復、ドロップしたアイテムの回収なんかをしていると、あっという間に時間が経過してしまうようだね。
もし、迷宮内を照らす魔道具がなく、松明を持ち込む予定だったら、かなりの数を用意しておいた方だいいよ。休憩中は灯りを小さくして節約するとかの工夫も必要だね。」
「そうでしたか。ご丁寧にありがとうございます。」と、ルシャナ様は満足そうに答える。
なるほどねぇ。
私もユッカちゃんと洞窟探検したときは、暗くてビショビショで困ったもんね。
魔道具無しで、松明で照らしながら進みつつ、戦闘をするんじゃ大変だよ。
あ。罠とか大丈夫かな。それと迷宮の地図とかもらえたりしないのかな。
<<ルシャナ様、度々(たびたび)すみません。迷宮内の地図を販売してないかと、罠とかの種類について聞いて頂けますか?>>
<<ハイ>>
「お兄さん、観光迷宮の地図とかはあるのでしょうか。あと、人が進み難いように罠とかが仕掛けてある可能性はありますか?」
「地下5階までは、ここの羊皮紙に書いてあるから写すか覚えるかするといいよ。
地下5階から先は、冒険者ギルドや戦利品を売買する店で買えるらしよ。
やっぱり、不慣れな迷宮を効率よく攻略するには情報が大事だし、
その情報がお金になるってことだね。
店の主人がお薦めするような高価な地図は、綺麗に描かれていて、罠の位置なんかも記されているらしいよ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
私は早速壁に掛けてある地下5階までの地図を眺めて、ナビにアップロードする。
<<ナビ、このMAP情報の解読と画像データの記録はできた?>>
<<地下5階までの平面図を元に、3次元データを構成します。
最短ルートの階段位置、罠の種類と位置を右目に投影可能です>>
<<ありがとう>>
「ルシャナ様、地下5階までの地図はOKです。
その先の地図を入手するのも一つの手ですが、
先ずは地下5階まで下りて、戦利品がどのようなものとか、
どれくらいの時間が掛かるのか確認したいと思います。」
「ヒカリさん、皆さん、それでは行きましょうか。」
「ハイ(ALL)」
ーーーー
門番の人に挨拶をしてから観光迷宮に入場する。
クロ先生が囚われていたブロックやタイルで四角く通路が区切られている
MAPの作成がしやすい構成になってるね。
ただし、真暗なもんですぐに私の光の妖精の子に出てきてもらった。
「ここの進むべき道を照らして欲しいの。おねがいね?」
「お母様、わかりました。」
って、私の脳内に浮かぶ地図のイメージを読み取ってか、
どんどん灯りを灯しながら先に進んでいっちゃうのね。
魔物とかいるんじゃないっけか。
<<ナビ、索敵でこのメンバーで一番弱い人に基準を合わせて、
3段階で敵の位置を表示>>
<<承知しました。地下5階のボスの部屋まで全て青。ボスが辛うじて黄色表示です>>
<<ありがと>>
「みんな、なんかうちの光の妖精さんが、案内してくれるみたい。
途中の魔物もいるみたいだけど、私達にとっては大して危険な魔物はいないから、
どんどん進もうか。」
「ハイ(ALL)」
地下2階への階段迄数百メートル。明るく魔物を居ないところを歩くだけ。
なんで弱い魔物すらいないんだろう?
って、地下二階への階段の手前に反応が重なってる訳よ。
その数50以上あるね。
「ユッカちゃん、モンハウ。あれ片付けられる?」
「おねえちゃん、モンハウって何?魔物の名前?」
「う~ん。何かのゲームで、モンスターがぎっちり集まった場所をモンスターハウスって表現して、それを<モンハウ>って、呼んでいたと思う。
あそこに、道中の敵が全部集まって、固まっちゃってるね。」
「わかった。行ってくるね。」
ユッカちゃんは、オリハルコンの剣を右手に引きずるようにして、颯爽と駆けていく。一分もかからずに50以上の敵を片付けちゃった。いろいろ重なっていたから敵の種類は分からないけど、コウモリとか骸骨とか蛇とか。やっぱりお墓や洞窟の中に住んでいそうなのが中心だった気がする。
「おねえちゃん、終わった~」
「ユッカちゃん、ありがと~」
「おねえちゃん、このまま先に進んでもいい?」
「いいけど、ここに散らばってるアイテムを拾わないと・・・。それに一人だと、もしものとき心配かな?」
「ヒカリさん、私がユッカちゃんと一緒に行きますわ」と、ニコニコしながら答える。
「ヒカリ様、この散らばってるのは私が拾います」とアリア。
「そう。じゃ、私の光の妖精に道案内してもらって、ユッカちゃんとステラで先に行っててもらおうかな。残りの4人でアイテム拾いながら進むよ。」
ということで、ニーニャが持ってきた鍛冶用の道具なんかはユッカちゃんの鞄に全部押し込んで、ニーニャのおおきなリュックサックと各自で回収する小さな革袋をいくつか手分けして準備して、別行動にすることにした。
私達は銀貨や銅貨、小さな魔石を小さ革袋に入れて、ドロップした武器や防具、魔物の体の一部残骸なんかをニーニャの大きなリュックサックにいれさせて貰うことにした。
ここまでまだ10分くらい。地下5階までなら30分も掛からないんじゃないかな?
それより、落ちてるアイテムを拾う時間の方がかかりそうだけどさ。
4人がかりで、アイテムを拾いながら進むんだけど、数が多くて嫌になるね。魔石もまとめて大き目の1個が欲しいんだけど、一番小さい欠片ばっかりなんだよね。アジャニアの通貨が無いし、下手に大きな魔石を生成できないから我慢して拾い集める。
ひたすら、集め続ける。
で、一時間ぐらいそんな作業を続けてると、小さな小部屋でステラとユッカちゃんと光の妖精が待っていた。
「あれ?どうしたの?」
「ここから先はMAPが無いって。」と、ユッカちゃん。
「ええ?もう地下5階まできたの?
ニーニャのリュックサックとか満タンになっちゃたし、小さな革袋の方も随分とジャラジャラ言ってるよ。この先、地下20階まで行くならアイテムを捨てるか、一度売りに戻った方が良いよ。」
ということで、ステラ、ユッカちゃん、ニーニャ、アリアは地下6階のMAP作成。私とルシャナ様で一度アイテムを売りに行くことにした。
ニーニャは工学的な罠を見抜けるし、MAPの細かい配置や、図の整形はアリアが得意だった。この二人は飛行術も使えないしってことで、サポートにまわってくれることになった。
「じゃ、ちょっと行ってくる。地下6階より下の地図が売ってたら買ってくるよ。そっちも気を付けてね」
「ハイ(4人)」
門番さんが居るところまで戻る帰り道にも、もう既に何匹かも魔物が復活していて、サクサクと片付けつつ、アイテム拾いながら進んだ。
今度戻って来るときは、もっと沢山袋を用意してこないとね。
ーーーー
「おや、お母さん早かったね。地下2階への入り口は見つかりましたか?」
「ええ、まぁ。ちょっと荷物が重いので減らしてきます」と、門番にそつなく答えるルシャナ様。
「気を付けていってらっしゃい。街の道具屋の場所は冒険者ギルドに聞いても良いし、冒険者ギルドでも、汎用的な荷物は引きとって貰えるよ。」
「それは、良い情報をありがとうございます。」と、二人でにっこり微笑んでサヨナラを言う。
よし!多少値段が下がってもいいから冒険者ギルドで物を捌いちゃって、とっとと迷宮に戻らないとね。
いつも読んで頂きありがとうございます。
時間の許す範囲で継続していきたいと思います。
暫くは、週に1回の更新で続けさせて頂きます。




