4-40.宿題
交渉権は手に入れたから、
あとは島を出発する準備を着々と進めないとね。
<<おねえちゃん、いまどこ?>>
<<村だよ。>>
<<お腹空いた>>
<<え?ご飯は?>>
<<鞄が無いよ。>>
<<でも、さっき、朝ごはん出してくれてたよね>>
<<アマテラスさんが、カバンを持ってってる。>>
<<ああ、そっか!忘れてた。ごめんね。直ぐ行く。>>
<<うん、待ってる!>>
いや、確かにカバンのことを忘れていたけど、
大人があんだけ居てさ。なんで子供の食事の面倒を・・・。
あ、自分もか。
そもそも妖精さんたちは食事を自分で調達する必要もないしね。
アリアだって、あんな火山で置き去りじゃ、食事の材料もないわけだし。
よし!
ごはん!ごはん!ご・は・ん!っと。
ーーー
「ユッカちゃん、おまたせ~」
「おねえちゃん、おかえり~」
「何食べたい?」
「<タコ丸>」
「船に戻れば作れるかな。タコはあったはずだし。」
「アリアも一緒に行く?」
「あ、はい。ここから動いて良ければお願いしたいです。」
「私は、動くなって言ったんだっけ?」
「アマテラス様をお待ちしないといけないかなと。」
「ヒカリ、いいわ。行ってきなさい。たまには我儘言って良いのよ。
特にアリアやユッカは。」と、ラナちゃん。
「ラナちゃん、ありがとうございます。私も一緒に行っても・・・。」
「ヒカリ、貴方が大変なのは分かるわ。
でも、全体を見て、それを人と分かち合いなさい。
そうすれば、ユッカちゃんもアリアも困らなかったはずよ。」
「ありがたいお言葉です。早速昼食を作りに行ってきます。
アマテラス様が戻られましたら、ここで待機していてください。
ニーニャ達は丸太の入手できていますので、早速作業にとりかかっているはずです。」
「その木像の運搬はどうするのかしら。
そもそも、その木像のモデルは居るのかしら。
アマテラス様の名前はいつ決めるのかしら?
ヒカリ、一人で解決しようとしてないかしら?」と、ラナちゃん。
「考えていませんでした・・・。」
「お父様と、シルフと私の3人で、アマテラス様を引き留めつつ、
ニーニャ達と連携して作業を進めれば良いかしら?」
「できれば、それでお願いします・・・。」
「ヒカリ、貴方は仲間を頼っていいの。
そして私達<妖精の長>も、貴方の仲間として考えていいわ。
だから、私たちのことも頼っていいの。判ったかしら?」
「ハイ!
それと、今、例の通訳の<ムサシ様>とトレモロさんが面談を始めています。
彼をアジャニアへ返すための交渉が必要になると思いますので、
情報を共有させていただきました。」
「わかったわ。なるべくそこに触らないようにするわ。
基本はこれまでどおり、光学迷彩と念話を併用して動けばいいわね?」
「ハイ!」
なんか、私は恵まれすぎてるのに、人を活用出来て無いってことだね。
モリスやレイさんは凄いなぁ・・・。
気を取り直して、目先のお昼ご飯に注力しよう。
ユッカちゃんと、アリアと私の3人で<光学迷彩>と<飛行術>で船まで帰還。
船の冷蔵庫とコンロを使って、手早く昼食を作り始める。
3人分なら、割と直ぐにできるんだけどね。
さて、あとは妖精さん達の分と、ニーニャ達の分を作るんだけど、
運ぶ手段が無いんだよね。
「おねえちゃん、アマテラス様が戻って来たって。」
「え?誰から?」
「シルフから<念話>が届いたよ。」
「そっか。シルフに<カバン>を船まで運んで貰えるか聞いてみて。
こっちは3人で、みんなの食事を作るからって。」
「わかった。」
ユッカちゃんが念話で話をしている最中、
アリアと二人でパスタ料理を作り始める。
これなら大量に仕上げられるからね。
「おねえちゃん、問題があるって。」
「え?なんだって?」
「アマテラス様がいろいろ拾って来たから、みんなに見せたいんだって。」
「そしたら、カバンから出して貰って、カバンだけ先に届けて貰えないかな?
カバンがあれば、そっちに食事を運んでいけるからって。」
「たくさんありすぎて、出すのが終わらないんだって。
思い出すのに時間も掛かるみたい。」
それは、あれかぁ。
あの溶岩の温泉に浸かってた話し方と一緒で、
ほわわ~んって、なっちゃってるのかな・・・。
でも、今は上陸してるんだから、ちゃんとしてるはずで・・・。
う~。なんなんだ・・・。
「じゃ、『冷めたもので良ければ、適当に運びますけど、いいですか?』ってきいてくれる?」
「『材料だけもってきて、こちらで作ればいいでしょ』って、ラナちゃんが言ってるよ。」
「分かったって伝えて。水、鍋、材料をまとめて運ぶ準備するよ。」
「うん!」
ーーーー
ニーニャ達はクロ先生に荷物を運んで貰ったらしく、もう、早速丸太を彫り始めてる。
私たちは食料抱えて飛んで戻って来たんだけど、置く場所が無い訳。
別にニーニャ達の作業が悪いんじゃなくてさ。
アマテラス様の鉱物類がゴロゴロおいてある訳。
確かに『サービスしておく』みたいなこと言ってたけど、
これさ?博物館の収納倉庫とかそういうレベル。
お土産物屋なんて状態じゃない訳。
そりゃ、何入れて来たか忘れると思うよ。
というか、良く思い出せるね。
「ヒカリさん、散らかっててすみません。
ご飯を作る場所がないですわよねぇ?」
「ああ・・・。いえいえ。ちょっとびっくりする量ですね。」
「ユッカちゃんの鞄が便利だったもので、手あたり次第入れてきましたわ。
遅くなってすみません。」
「こんなに、どうされるんですか?」
「ニーニャさん、アリアさんが使うかと思うのですけど?
運ぶのはお二人がカバンに忘れずに入れておけば問題無いですし。
もし、不要な物があれば、ヒカリさんが売って頂いても結構ですわ。」
「こんなに貰っても良いのですか?」
「ええ。それより、早く食事をする場所を確保しないといけないですね。」
「あ、はい。判りました。ここから離れたところで作ります。」
さすが、火山の中を泳いでるだけのことはあるね。
きっと私には判らない貴重なものとかもあるんだろうしさ。
こんなの、ムサシさんには絶対にみせられないよ。
「アリア、この鉱石くれるって。
でも、その前に食事の支度を手伝って貰えるかな?」
「ヒカリ様、あの・・・。」
「なに?」
「これ、養父のランドルに見せたらエライことになりますよ。」
「なんで?」
「貴重な鉱石や宝石が散見されます。大きさも見たことが無い大きなものばかりです」
「うん。私は素人だけど、そんな気がするよ。じゃ、ご飯作ろうか」
「ハイ!」
なんか、目先のことばかりして、ゆっくり考える時間が無くなってきてるね。
あ、考えるっていえば、アリアの宿題はどうなったんだろ。
ご飯作りながら聞いてみよう。
ーーーー
「アリア、ご飯作りながらで判ればいいんだけど、宿題どうなった?」
「ヒカリ様、大地と月と太陽の関係ですね?」
「うん。ニーニャとアリアが二人で考えるってことで任せちゃったやつ。」
「ハイ。証拠はありませんが、星のモデルを考えました。
太陽、大地、月がそれぞれ、自分自身で回転していたり、それぞれの星の周りを回っていればいいんです。ただ、ご飯作りながらでは説明しにくいですね。」
「ふ~ん。覚えていれば教えて欲しいのだけど、太陽も回ってるの?」
「太陽が動かない方が都合が良いですね。大地となるこの星が太陽の周りを周ってるのが良いです」
「本当に?」
「はい。太陽、月、この大地の3つと、それ以外の夜に出る小さな星は別に考えないといけません。そうしないと、辻褄が合わなくなります。」
「アリア、凄いねぇ。そこまで行けたんだ。」
「いえいえ。ニーニャ様が凄いのです。実際に球を並べたり、動かしたりして月や太陽がどう動いているか検証したのです。」
「そっか、そっか~。そうしたら、<迷子の星>の謎も判るかな」
「ヒカリ様、なんですか、それは?」
「今度モリスに詳細の位置を聞いておくよ。どの位置に現れるか軌道計算をしたことがあるらしいから。ただ、ここは随分と緯度が南側になってるから、再計算が必要かもだけどね」
「ヒカリ様、その<迷子の星>が解決できたら完成ですか?」
「うん。暫くは完成でいいと思う。次の話に進めるようになるよ。」
「やった~!頑張ります!今度、<迷子の星>について教えてください!」
「うんうん。やることいっぱいだから、一つずつ片付けて行こうね」
「ハイ!」
あとは、アマテラス様の名前と器。
それに、この島の住人が移住したいかどうかだね。
ムサシさんのことは、トレモロさんとフウマ、アルさんに任せておこう。
ーーーー
「ヒカリ、ご飯ありがとうね。ちょっといいかしら?」と、ラナちゃん。
「ラナちゃん、何でしょうか?」
「アマテラス様の器に関しては、ニーニャ達と打ち合わせしたわ。
大体の形はアマテラス様の意向も踏まえて考えてあるわ。
もう一つ、名前の方なんだけどね。3つ候補を考えたわ。
<サンドラ><ミロク><ルシャナ>よ。
どうかしら?」
「どれも良いと思います。
ふっくらと豊かな体形でしたらルシャナ。
スマートで、切れ長な眼でしたら、ミロク
ちょっと、洋風で眼がパッチリならサンドラ
で、如何でしょうか?」
「ヒカリ、貴方、アマテラス様と同じことを言うのね。」
「ええと、あの・・・。」
「アマテラス様はアジャニアのある地域や大陸の文化の影響を受けているわ。
器の形を決めるときに、同じことを言われたの。
『体形に合わせた名前を選びたいのだけど』って。
私達の居たストレイア帝国のある地域を<洋風>というらしいわ。
その理解で合ってるかしら?」
「は、ハイ。」
「それで、どうするのかしら?」
「ええと。体形はニーニャに聞かないとわからないのですが。」
「ふくよかな体形にすると言っていたわ。」
「それでしら、ルシャナになるということで宜しいでしょうか?」
「よかったわ。貴方が『洋風ボディーでサンドラが良い』と、言い出したら全てがひっくり返るところだったわ。」
「あ、いや、あの・・・。お任せしていましたので、皆さんの決定に従います。」
「そう。それなら、出発の準備ね。
ヒカリ、貴方の希望する<醤油>は、この島には無いわ。
<通訳の人>をどうするにしろ、東の大陸へ進む必要があるわ。
それで良いかしら?」
「すみません。ここの住人の意向を伺っていません。」
「連れて行くわよ。質問はあるかしら?」
「分かりました。その方向で手配を進めます。」
「他に、この島で何かすることがあるかしら?」
「<通訳の人>の件が終わっていません。」
「フウマ経由でトレモロ・メディチ卿に任せたわ。」
「承知しました。」
「今日のヒカリは素直ね。何か質問はあるかしら?」
「ライト様、指揮ありがとうございます。
自分の決断力の無さを恥じるばかりです。
精進して参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。」
「ヒカリ、貴方、勘違いしてるわ。」
「何がでしょうか?」
「貴方の指揮が不味いから、私が代行した訳ではないわ。
それだけは覚えておいて頂戴。
誰も貴方のすることに不満があるわけでもないの。
何も心配しなくていいわ。分かったわね?」
「は、はい・・・。」
あれ~。
なんだろ~。
なんか、おいてけぼり感が凄い。
でも、心配するなって。
ラナちゃんが言うのだから、良いのだろうけど・・・。
余計心配になるのはダメでしょうか。
多分ダメですね。
ちょっと、疲れちゃってるのかな・・・?
いつも読んで頂きありがとうございます。
時間の許す範囲で継続していきたいと思います。
週に1~2回の不定期更新予定です。




