4-37.通訳の人(1)
さぁ、早ければ今日中にこの村を出発できるかな?
っていうか、トレモロさん達は上陸できなかったけどいいのかね。
「おねえちゃん、朝だよ。」
「ユッカちゃん、おはよ。」
「通訳の人が、『ヤマタノオロチはどうなりましたか?』って、気にしてるよ。」
「え?昨日は下見ってことで、ニーニャと帰って貰ったはずだけど。」
「ニーニャさんと、ここまで戻ってきてるよ。」
「え?そうなの?」
「みんな、朝ごはんを待ってる。」
「私が寝坊してるってこと?」
「寝坊じゃないけど、『おねえちゃんの作戦が判らないから』って、待ってる。」
「わかった。直ぐ行く。」
いや~。
通訳の人をここに連れて来ちゃ、アマテラス様と鉢合わせだよね。
それって、ヤマタノオロチの現物とご対面になるし。
なにがどうなってるんだ?
と、取り敢えずピュアしてから、みんなと食事だ。
ーーーー
「みなさん、おはようございます。」
「ヒカリさん、おはようございます(ALL)」
「昨日は夜中まで下見だったから、
今日の予定をご飯食べながら打ち合わせってことでいいかな?」
「ハイ(ALL)」
<<ステラ、ちょっとフウマと<念話>するから、
その間、通訳の人と話を繋いでおいて。>>
<<了解しましたわ>>
ここまで順調。通訳の人も勢いで皆と一緒に返事している。
てか、アマテラス様がいないね。
ひょっとして、まだ鉱石とか拾っていてくれてる?
あ、溶岩の温泉に浸かって、気持ちよくなっちゃったかな・・・。
今、通訳人とか村人と顔を合わせるといろいろ面倒だから、
後で、<念話>通して聞いてみよう。
<<フウマ、私が起きて来るまでに通訳の人から何か聞いてる?>>
<<う~ん。
ヤマタノオロチがどうなりそうなのかと、
無事に倒せた後、鉱石の採取によって
村が食料を入手できる資金を得られるかが心配みたいだよ。>>
<<フウマは何て答えたの?>>
<<ヤマタノオロチは倒す準備に2-3日必要で、多分成功すると答えてあるよ。
鉱石の方は、<科学教>の仕掛けが残っていて、ちょっと科学に詳しい人に聞かないと、安全に採掘ができるか判らないって、曖昧に答えておいたよ。>>
<<フウマ、ナイス!>>
<<いやぁ、昨日の流れではそういう方向でしょ。
ただ、姉さんとユッカちゃんが来るまで、
勝手に食事も始められなかったから、
そこは、適当に、『皆集まって食事をするのが習慣です』とか、
適当に誤魔化しておいたよ。>>
<<それもナイス!いろいろありがとうね。>>
この後、フウマには作戦を伝えた。
・ヤマタノオロチに捧げる彫像が必要なので、大き目の木材が必要な事
・この島の住人の食料として、1週間分くらいは無償で渡せるけど、
その後の生活について、酋長含めて、どうのように生活するか決めて欲しい事。
・トレモロさんと相談してから、航海士達の夜のストレス発散が必要なら、村人と交渉するから、船に戻って確認すること。ただし、あと一週間くらいで新大陸には到着できる。
・トレモロさん達の答えが必要だったら、通訳通して、その交渉を済ませて欲しい事。
・<通訳の人>自身が何処から来て、今後どうしたいか確認すること。
<<姉さん、分かった。トレモロさんの所ヘは僕が直接行ってくるよ。他のことはステラさんに、このまま会話の流れで任せてもいいかな?>>
<<うん。こっちはOKだよ。トレモロさん達は船で待たせっぱなしだから、さりげなく抜けて、早めに確認して欲しいよ。>>
<<了解>>
この後はステラに念話で割り込んで、確認したい事を伝えた後で、
ステラと<通訳の人>の会話を追いかけることにした。
「それで・・・。ヤマタノオロチの魂を鎮めるために、偶像を捧げたいと考えていますわ。例えば、丸木舟を作るぐらいの丸太を1本採取したいのですが。」
「その程度はお安い御用だと思います。酋長に後で私から伝えましょう。
他に何かご要望はありますか?」
「今、まだ船に残っている者達がおりますので、羽を伸ばしに上陸したいかもしれませんわ。その者達とは後ほど連絡をとりますので、改めて上陸の許可と何らかのお願いをさせて頂くかもしれません。」
「なるほど、長い航海の船乗りさん達のご要望は心得ております。先日村人たちの回復をしていただいたお礼に、何なりと歓待の場を設けさせていただければと思います。」
「酋長や他の村人への確認は不要なのでしょうか?」
「昨日、ニーニャ様と飛竜で村の中心に降り立ったところ、皆様敬服しておりました。
これでヤマタノオロチを制圧したとなると、村の伝説として残るでしょう。」
「そうでしたか。我々も全力を尽くしますので、結果はしばしお待ちください。
ところで、貴方は非常に通訳が長けてらっしゃいますが、どのような境遇で異国語を学ばれたのでしょうか。」
「説明が少々長くなりますが、勘弁を。
私はここから東にある<科学教>を祭るアジャニア国に居住していました。
アジャニアは東にある大陸との交易のために約3ヶ月かけて、大きな船で航海しております。その航海は往復での期間が長いことから、周期は数年に一度でして、内容も文化交流が中心で、物物交換といった交易ではございませんでした。
そのため、ある程度の相互理解のために、言語習得を得意とする通訳担当が乗船しており、私の家族も家族ごと通訳としてその船に乗船しておりました。
ところが、7-8年前でしょうか、交流会からの帰路の折り、嵐に巻き込まれて船が難破し、この島に私は流れつきました。同船していた他の者たちや私の家族がどうなったかは解かりかねます。
また、この島の住人の言語はアジャニアとよく似た言語でしたので、私は直ぐに住人と一緒に暮らすことができました。
しかし、先日治療していただいた通り、毒物による体調不良から、アジャニア側はこの島との交易を中止してしまっているため、私はアジャニアに戻る手段が無く、途方に暮れている中、住民たちと同様にろれつが回らなくなったり、手足が痺れる等の症状が出て、死を覚悟しておりました。」と、通訳の人。
これって、凄い重要な情報なんじゃないの?
ステラ、ナイスですよ!
それに、この人を連れて帰れば、アジャニアの内情を知る人とも会えるだろうし、<科学教>の幹部ともお知り合いになれるかもしれない。
そこが判れば突破口も開けるってもんだよ。
「それはそれは、大変な苦労をされていらっしゃるのですね。
私たちは、その東方の大陸のストレイア帝国の端に位置する小さな村から、
探査の任を得て今回の大航海に出発した次第です。」
「そうでしたか・・・。
確かに、数年前に訪問した際には大航海が出来るような海運技術をお持ちでなかったと思います。南方に位置する諸島を経由しての沿岸経由での交易を行っていたかなと。」と、<通訳の人>。
<<ステラ、ステラが今回の航海では唯一精霊魔術を使える宮廷魔術師って、設定でお願い。
レベルは宮廷魔術師のちょい上ぐらいで、船旅の助けに連れてこられたって感じで。>>
<<承知>>
「はい。どうも、広く科学の知識について募集をしていたようです。また、航海の第一人者であるトレモロ・メディチ卿の発案で私にも声がかかりました。
私は簡単な妖精召喚の魔術が使えますので、水先案内や航海中の飲み水の確保を目的として、この航海を支援させて頂いております。」
「ああ、確かに彼の国は<魔術>を大変尊重されている文化でしたね。一部の<魔術師>により、技術が独占され、科学が軽んじられているため、多くの民が搾取されていました。」
<<ステラ、我慢。堪えて。>>
<<ヒカリさん、私はこう見えても貴方より年上ですわ。ご安心を。>>
「それはそれは。片田舎の簡単な魔術のみを教わった者として、大変興味深いお話ですわ。是非とも続きをお聞かせいただきたいのですが、ヤマタノオロチのこともございますので、先ずは村までご一緒させていただき、<丸太>の調達を進めたいのですが、宜しいでしょうか?」
「ああ、そうですね。綺麗な方とお話しできて光栄です。先ず、丸太の手配から進めましょう。」
と、ステラと<通訳の人>の会話が一区切りついたので、
一旦は朝食を終わりにして、各自の作業に移ることになった。
いやぁ、しかし、これは不味いよ。
<水銀中毒>を治療する技術は、そこいらの科学ではできないでしょ。
私が知ってる地球の文明とは全然別の発展を遂げた星から来たとか、
あるいは、私の生まれた何百年後の世界とかなら分かるんだけどさ。
それにしても、<水銀中毒>それ自体を判らないとしたら、
きっと、1900年代前半の文明技術とか、知識を元にしているってこと?
レーザーが兵器としてギリギリ使えて、核兵器の実証ができてるレベル。
うん・・・。
この人が、どこまで通訳担当で、どこまで<科学技術>を信奉しているのか、その辺りを確認していかないとね。
場合によって、この島で<通訳の人>として、人生を終えて貰わないといけないかもしれない。
なんか、面倒なことが増えたよ・・・。
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