4-31.ヤマタノオロチ(2)
さ、ヤマタノオロチ攻略を目指すよ
「おねえちゃん、おはよ。」
「ユッカちゃん、おはよ。
うん・・・。あれ?今、朝?」
「おねえちゃん、夜だよ。」
「よ、夜の挨拶は<おはよう>じゃないよ。」
「でも、おねえちゃんは、今起きたから、今が朝なの。」
「わ、わかった。それでいいや。で、ユッカちゃんは良く寝たの?」
「うん!いっぱい寝たよ!
これから<ヤマタノオロチ>を見に行くんだよ!」
「ええっと。ユッカちゃんが元気になったのは分かった。
でも、夜だよね?」
「洞窟の中は昼も夜も関係ないよ。」
「あ、そうだったね。じゃ、みんな揃ったら出発しようか。」
「おねえちゃんが最後。みんな待ってるよ。」
「夕ご飯は?」
「みんな、下見って言ってた。おねえちゃんが戦う気が無いって。」
「ユッカちゃん、いろいろ誤解があるけど、ま、いいや。
下見が終わったら、アリアとニーニャにも連絡取ろうね。」
「もう来てる。みんな、おねえちゃんが起きるの待ってる」
「わかった。直ぐ行く」
寝過ごした?
いや、みんなの準備が素早すぎるんじゃないかい?
それに、アリアやニーニャだって、ボートで来たわけじゃないとすると、
誰かが<飛行術>で連れてきたんだろうし。
だれだ?
まぁ、いいや。下見なら危険はないだろうし。
ーーーー
「みんな~。おまたせ~。いこっか。」
「ハイ!(ALL)」
みんな元気いっぱい。
関所から来たメンバー全員と、通訳係の人で出発。
通訳係の人以外、全員飛竜の血飲んでるから体力的には問題ない。
アリアも飲んでたのにはびっくりだ。
「ねぇ、フウマ。歩くの面倒じゃない?」
「こう、道中を苦労して辿り着くのが勇者一行の伝説に花を添えると思うんだ。」
「ねぇ、フウマ。勇者の称号も、活躍ネタも全部独り占めしていいから、とっとと行かない?」
「姉さんは、何をそんなに焦ってる?」
「フウマはここに残ればいいけど、
私は火の妖精を救出して、
その後<醤油>を取りに行って、
運が悪いと<科学教>と遭遇するから、海上を船で進まないといけないし。」
「姉さん、ヤマタノオロチのこと無視してない?」
「正直どうでもいい。<科学>がメインだったら、<科学>で返す自信はある。」
「姉さん、夢やロマンが勇者の伝説を飾るんだよ。
それがないと、語り継がれる伝説にならないじゃないか。」
「吟遊詩人を雇ってあげる。それでいいかな?」
「姉さん?」
「だって、フウマはここの島に残って、ここで勇者として暮らすんでしょ?
吟遊詩人が必要じゃん?フウマと吟遊詩人の寿命が尽きたら、そこで勇者伝説は終わっちゃうかもだけどさ。」
「そんな一代で終わるような勇者じゃ、面白くないじゃないか。」
「フウマ、飛竜のタカさんが船から飛んできてくれた。通訳の人を乗せて飛ぶよ。」
「姉さん・・・。」
「『そのとき、勇者一行は伝説の飛竜に跨って、
ヤマタノオロチの征伐に向かったのである。
しかし、このとき待ち受ける苦難に勇者一行は知る由も無かった』
って、感じでカッコよくない?」
「あ、あ・・・。姉さん、それちょっといいかも・・・。」
「うん、じゃ、皆で飛ぼう」
アリアとニーニャと通訳の人の3人をタカさんに乗せて貰って、他はそれぞれが飛行術でタカさんの後を追うことにした。
時間を節約できるなら、そうしたいもんね。
ーーー
「フウマ様、こちらが洞窟の入り口になります。
中にはあらゆる攻撃を仕掛けてくるヤマタノオロチが居ます。
私の案内はここまでで宜しいでしょうか?」と、通訳の人。
「ありがとう。今日は下見だけだけど、皆で行ってくるよ。
飛竜と一緒にここで待っててくれるかな?」
「承知しました。ご武運を!」
で、フウマが勇者だから一応先頭に立って進むんだけどさ?
普通は警戒するよね。
罠とかガスとかさ。
洞窟の分岐は大したことないだろうから、MAPはいらないだろうけどね。
「シルフ、この洞窟で合ってる?」
「入り口はこんな風になって無かったけれど、この辺りでいいよ。」
「シルフ、ちょっと待ってね?
シルフのお願いは<ヤマタノオロチを退治すること>じゃないの?
いま、『前はこんな風になってなかった』って、言ったよね?」
「僕は、<ヤマタノオロチ>のことは知らないよ。
だけど、科学教の人達が改造してアップグレードしたのが
<ヤマタノオロチ>なのかもしれない。」
「そ、そう・・・。わかった。
フウマ!科学の知識は私の方があると思うけど、フウマが先頭で進む?
それなら、私は被害に巻き込まれたくないから、
下がって様子見ていたいんだけどさ?」
「姉さん、先頭はだれでも構わないと思うんだ。
けれども、姉さんの持つ科学の知識からすると、
この洞窟に罠を張るとしたらどういうことするのかな?」
「う~ん。
画像監視、重量センサー、温度センサー、二酸化炭素検知
これらのセンサーに敵と認識できる異常を検出したら、
自動で攻撃を開始する仕組みを組み込むね。」
「姉さん、どういうこと?さっぱりわからないよ。」
「みんなでクロ先生の救出を行ったときには、
暗がりでボタン、レバー、扉といった仕掛けと共に、
魔術の印が施されていたよね。」
「姉さん、何一つ、あのときの経験が役に立たないきがする」
「先ずさ、<ナイフ使いがナイフを見せない>ってのと一緒で、
センサー=検知器が存在することを見せない。
何もない所から突然攻撃されたら、神がかりな化け物って思うでしょ?
でね?
・画像監視ってのは、
洞窟内を監視する目の役目があって、
そに異物が侵入してきたら、その異物を動作不能にさせるか、排除する。
・重量センサーってのは、
床を歩くと、歩いた重さによる重量変化を検知して、以下同様。
・温度センサーってのは、
人間や動物の30℃ぐらいの温度を検知して、以下同様。
・二酸化炭素検知センサーってのは、
人間の呼気に含まれる二酸化炭素濃度の増大を検知して、以下同様。
説明になったかな?」
「姉さん!
画像監視は、隠密行動で防げるかもしれない。
重量監視は、飛行術で防げるかもしれない。
でも、温度や二酸化炭素はどうしようもないよ。」
「まぁ、囮を使って、センサーの種類と位置を確認したら、
そのセンサーを破壊するか、攻撃する武器を破壊する。
そんな感じ。」
「姉さん、僕が囮になれってことかい?」
「そんなこと言ってないし!
てか、こういうことが予測されるから、
『私が先に進んだ方がいいんじゃないの?』
って、話なんだけどさ?」
「分かった。姉さんに任せたい。」
「ステラ、ちょっと質問。
ステラが出したり、召喚する光の妖精が、
各種敵の攻撃を受けた場合って、
消滅したり、死滅したりしちゃうの?」
「ヒカリさん、基本は自然界にいる妖精さん達の力を借りますので、
召喚の要請を解除すれば、また自然界に帰ります。
ですが、強制消滅させた場合には、その属性の力が少し弱まります。
もし、強力な力を持つ妖精を召喚して、その妖精が消滅すると、
かなり、その属性が不均衡な状態になることも想定されます。」
「ラナちゃんから貰った光の妖精の子らだと、どうなる?」
「ヒカリさん、ライト様から付与されたときのことを思い出して頂ければと思います。
魔力が母体と妖精の子で繋がっています。
ですので、妖精の子らが消滅するようなダメージを受けると、
本体である私達から、それ相応の魔力の持ち出しが生じ、
場合によっては魔力切れで意識を失うかもしれません。」
「ステラ、ヒカリ、面倒だから私が光の妖精をだすわ。
それでセンサーや攻撃の起点を確認すればいいのね?」
「ラナちゃん、私はそれで構わないですが、大丈夫ですか?」
「別に、私が死ぬわけじゃないわ。
けれど、物体を破壊するようなエネルギーは持ち合わせていないの。
あくまで偵察とか囮の役目の範囲ね。
それでいいかしら?」
「はい。それでお願いします。重量センサーはあとで考えたいと思います。
例えば、行きは反応しなかったのに、
洞窟の奥にあるお宝を背負って帰ると、
重量の差を検知して動作するような仕掛けも作れますので。」
「分かったわ。画像センサーと熱感知センサーの有無を調べればいいわね?」
「はい。」
洞窟で待機している間、光の妖精の子の力でみんなを照らしてみると、
ラナちゃんが眉間に皺をよせて、何やら苦しそうな表情をしている。
何かと戦ってるのかな?
「ヒカリ、途中までしか進めなかったわ。」
「ラナちゃん、どういうことでしょうか?」
「簡単に言えば、
レーザー光線が出る小筒のような砲台が8門ぐらいあって、八つ裂きにされたわ。
そこをすり抜けたら、今度はガラス化温度に近い2000℃の高熱が噴出して来たわ。
次に、酸と思われるミストによって、身動きが取れなくなって消滅したわ。」
「センサーの位置か、攻撃口の位置は分かりましたか?」
「ヒカリ、私だって馬鹿じゃないんだから、攻撃の起点は確認できたわ。
けれども、どこでなんのセンサーに反応していたのか
私にはわからなかったわ。」
「シルフやクロ先生も、ラナちゃんみたいな偵察妖精を出せるのでしょうか?」
「ヒカリ、僕はだせるよ。ただ、光線銃や熱風は大丈夫だけど、
その先の毒か酸のミストで進めなくなりそうだね。
風の妖精にとって、汚い空気は非常につらいんだ。」
「そっか。シルフありがと。クロ先生はどんな感じ?」
「私も闇の妖精を出すことは可能です。
しかしながら、光線銃のところで消滅させられてしまうでしょう。」
う~ん。
とすると、確かに妖精の長達の力だけでは
単純には突破できないね。
一段階ずつ突破して、攻撃を封じながら進まないと駄目かな・・・。
いつも読んで頂きありがとうございます。
時間の許す範囲で継続していきたいと思います。




