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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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222/334

4-20.時差(1)

アルバートさんが時計に宿題を解いたって。

それより、モリスと念話を通すよ。

 さて、何が聞けるかな?


「ヒカリ様は時計には2つの問題があるといいました。

 1つは船で移動中の測定誤差の問題です。

 もう一つは地政学的に、不都合な点がでるということです。


 当初は1つの地域で統一された1つの時刻を使用すれば問題無いというヒカリさんの回答に納得していたのですが、やはり、一地域で1つの時刻を使うには問題があります。

 それは、<時差>が生じるということです。この時差は、船の移動中の誤差と同じで、東西方向に遠く離れた二拠点を繋ぐ場合、太陽の移動時間が十分大きな誤差として現れるため、集合時刻の統一が行えなくなります。ここまで宜しいでしょうか?」


「離れた地点間で時差が生じることはその解釈の通りで良いと思うよ。けれども、時刻の統一には関係ないでしょ?」

「いいえ。今回の旅で分かった命題として、<大地が丸い>という説が浮上しています。この場合、球の表と裏では昼間と夜が逆転してしまうのです。」


「そんな遠い所は別の時刻を使えばいいでしょ?」

「その通りです!

 大地の大きさと太陽の移動距離に応じて、例えば1時間単位に時刻の基準線を統一して決めておくのです。その基準線から何時間ずれた位置にいるかが判れば、<時差>が何時間になるか計算できるし、複数の地点での時間を考慮することができます。」


「そんなことを管理するメリットはあるかな?」

「実際にやって見なければ判らないのですが、ヒカリ様の念話や飛竜を介しての念話を使って関所と交信するときに、既に時差が生じているはずです。

 これは、こちらが夜の暇な時間に念話を通したつもりが、相手が真夜中で寝入っている時間帯に話しかけてしまうことが起こります。予め基準時刻とのズレを時差として認識しておくことで、お互いの<念話>を通す時間帯を配慮し易くなります。」


「アルさん正解!よく自力でたどり着けたね。

 正解なんだけど、追加で質問してもいいかな?」

「お褒め頂き光栄です。それで質問とは何でしょうか?」


「太陽が大地の周りを回っているって、本当?」

「アリアの説明にもありましたように、太陽が照らしたときの大地の丸い影が月の形を変えているのですよね?」

「あ!ああ……。うん、まぁ、そこはそれでおいておこうか。今日はその質問は無しにしよう。アルバートさん、その調子で念話の習得も頑張って。

 今回の一人で謎を解いたような『ぎゅ~~~って考える行為』それが<念話>の元となる力だよ」

「はい!太陽が周ることに関しては、ヒカリ様の質問意図が判りませんが、念話の習得には精進したいと思います。」

「うん。よろしくね」


 そっか、アリアの月の観察の際に「月の満ち欠け」と「月食」を同じ扱いで議論しちゃったのは大失敗だな。一週間も経って、半月が現れればアリアが気が付くかな。あとは、関所のモリス辺りなら<惑星わくせい>に関する謎を知ってるかもしれないね。


 よし、聞いておこう。


ーーーー


<<モリス~!今、大丈夫?>>

<<此方はそろそろ夕食の準備になります。なにか、緊急事態でしょうか?>>


<<あれ?もう夕食なの?誰かお客さんでも来るの?>>

<<いいえ?いつも通りにゴードンらに指示をだして、準備をしておりますが>>


<<ああ、ごめん。既に結構時差がでてるんだね。了解です>>

<<ヒカリさんは何をされていたのですか?>>


<<こっちはもうすぐお昼ご飯の時間だよ。さっきまでアルさんと時差の議論をしていたよ>>

<<なるほど。実地で大地が丸いことを経験されているのですね>>


<<うんうん。そんな感じ>>

<<それでご用件とは?>>


<<大地が丸い理解は、既知の事実として扱って良い?>>

<<私に関しては大丈夫です>>


<<じゃ、太陽が大地の周りを回ってるのではなくて、大地が太陽の周りを回っている説があることは知ってる?>>

<<ヒカリ様、この念話は盗聴などの心配はございませんか?>>


<<え?今はモリスと1:1の通話のはず。思考を読まれるような存在も船の中だから大丈夫だと思うけど?>>

<<それでしたら問題無いと思いますが、念のためです。

 実は30年程度前にアカデミーで学んでいた頃なのですが、その論文を書き上げた者が行方不明になっているのです。学位も取得せず、一部の審査官に提出しただけで失踪したということになっています。

 私は、彼のことをよく存じ上げていましたので、その論文が問題で有ったと考えております>>


<<ふむふむ。モリスはその論文の内容を読んだの?>>

<<読みました。というか、軌道計算の部分は私も助力したのでよく覚えています。あそこまで頑張った結果を投げだして失踪するはずがないので、私はこの件を非常に警戒しているのです>>


<<なんと!モリスも命を狙われるような危険な知識を持ってるんだね?>>

<<ヒカリさんほどではありませんし、ヒカリさんがあの論文を読まずに、この内容をご存じであったことに驚きです>>


<<そっか~。危険な知識なのか~。それってさ、ドラゴンとかナイトメアと関係ありそう?>>


<<唐突に何をおっしゃるのですか?>>

<<あれ?フウマから厳格に箝口令を敷くように連絡が行ってないかな。

 出航前にちょっとした事件があってさ。

 私の存在や活動内容を一切なかったことにするんだけど、聞いてない?>>


<<『姉さんの秘密は守るように重ねて通達して』とだけ、聞いております>>


<<あ~。そっか~。

 その事件の詳細をはね?

 ストレイア帝国が先進科学の集団によって、裏から支配されてるらしいんだよ。その使徒の一人がナイトメアで、妖精の長を封印したりしたっぽいのね>>


<<ヒカリさん、それはどこの情報でしょうか?>>

<<私とステラの仮説に対して、トレモロさんの国家機密情報を合わせた感じ>>


<<あのトレモロがそう簡単に国家機密を吐露するとは思えません。何を与えましたか?>>

<<ユッカちゃんがストレイア帝国の王族の一人である証を見せた>>


<<伝説のトモコさんは異世界から来た魔女との噂でしたが……>>

<<結婚相手のハンスさんがストレイア帝国の第二だか第三王子なんだって>>


<<ユッカちゃんの利発さ、気品、そして舌の肥え方からすると、その話はまんざら嘘ではなさそうですね>>

<<まぁ、物的証拠があって、私もそれをユッカちゃんから見せて貰ってたからね。

その切り札を元に、トレモロさんから情報を引き出したよ>>


<<そうしますと、ヒカリさんとユッカちゃんはストレイア帝国へ、ことごとく敵対行為をしていることになりませんか?>>

<<悪気はないけど、そうなっちゃってるね>>


<<ヒカリさんをこの世の情報から抹殺しないと不味いですね……。

ああ、それがフウマさんから連絡のあった件ですか>>

<<うんうん。やっと話が繋がった。

 それで、科学の力を背景にストレイア帝国を操ってる集団の話と、モリスのご学友の<地動説>の話って関係ありそう?>>


<<無いか、あるか、私には判りかねます。ですが、少なくとも、我々が通ったアカデミーはストレイア帝国が設立した学校になりますので、何らかの力が働いていた可能性があります>>

<<う。それは不味いね。皆を危険に晒す可能性がある知識を広めるのは、今後の私たちの仲間の未来にとって、どうなのよ?>>


<<私は既にヒカリさんと一蓮托生ですので、ヒカリさんの自由にして頂いて宜しいかと。そもそも、ヒカリさんは<地動説>を説く必要はあるのですか?>>


<<いまさ?地図、方位、時間の概念を皆で勉強してるのね。どうしても、<大地が球体>って話が重要なんだけど、アリアがちょっと勘違いしててね。


『月の形は大地が球体で、その影で形が変わって見える』って説を主張して、『間接的な証明になってるね』なんて、私が言っちゃったもんだからさ。


 一週間後ぐらいに、月が半月になったときに、アリアは自分の仮説が間違っていたことに気が付くと思うんだ。だけど、<天動説>を知識のベースとして持っていると、そこの突破口が開けないから、<地動説>についての一般的な見解を確認しておこうと思ったんだよ>>


<<随分と面倒なことになっていますね>>

<<正直ゴメン。モリスの知識をもってしても無理なら、嘘ついてでも、辻褄合わせちゃおうかと思ったんだ。だけど、私の嘘がばれるのか、モリスに確認したんだよ>>


<<ハハハ。ヒカリさんらしいですね。

 私ならヒカリさんの説明が間違っていても、それを承知で黙っているであろうことも、分かっていたでしょうに>>


<<今さ、航海の最中でいろいろと焦ってる部分はあるんだよね。だから、面倒なことは蓋をして誤魔化そうかなって自分が居たんだよ。

 けどさ?自分にも皆にも嘘を付くのは嫌だし、自分が技術や科学を極めていく上では妥協したらいけないかなって>>


<<ヒカリさんは損な性分ですね。だからこそ、皆が放っておけずに助けてくれるのでしょう……>>

<<ほんとにそう思うよ。我ながら自分が面倒くさいね>>


<<知人の論文には<迷子の星の軌道>の報告があります。

 この星を見つけて、軌道計算をしていくと、有り得ないほど複雑な動きを設定しないと、<天動説>が成立しない。しかしながら、<地動説>を仮説として立てて、再度軌道計算をすると、<迷子の星>は太陽を周る兄弟星であることが分かったのです>>


<<ああ~。私が習ったのは、<惑星わくせい>=まどわせる星なんだって。つまり、<天動説>において、人の心を惑わせる現象だったんだって。

あるとき、太陽を周る星達を仮説として立てて、この大地もその太陽を周る星の1つとして考えることで、太陽系を考えたんだよ>>


<<ヒカリさんの世界ではそれが当たり前だったのですか?>>

<<私が居た国ではさ。義務教育ってのがあって、ちょうどユッカちゃんぐらいの年から無償で親が子供に教育を受けさせないといけないの。学校の先生がその探求した経緯迄を理解した上で、学校に通う生徒に教えているか判らないけど、私の国では10歳ぐらいの子供たちの殆どが、<地球は太陽の周りを回っている>という知識を持っているよ>>


<<ヒカリさん……。この関所を学術都市にしたいという話がありましたが、今、関所で日々の教育を施す仕組みづくりを無償でしているのは、そのためですか?>>

<<割とそうかも。これからのアリアや未来の世界を支える人を育成するためには、その人たちを支える人がたくさん必要なんだよ。全部一人で考えて行動する世界では限界があるからね>>


<<ヒカリさん、それはヒカリさんの子孫のために、そのような世界を作りたいのですか?>>

<<あ~。間接的には私の子孫なんだろうけど、私の遺伝子を継ぐ者たちのためだけに考えている訳では無いよ。

モリス、遺伝子って判る?>>


<<家系とか血筋という意味合いでしょうか?>>

<<ああ、もうちょっと細胞レベルの話だけど、ニュアンスとしては合ってる>>


<<ヒカリさん、人族はエルフや飛竜族、妖精の長のように長い時を過ごすことはできません。そして、死んだ後の世界に自分は居ません。

 ヒカリさんは、何をされようとしているのですか?>>


<<あんま、特に考えて無いよ>>

<<ヒカリさん、今日のところはそれで結構です。お時間のあるときお願いします。

 もし、必要でしたら<迷子の星>の位置と起動をお教えすることができます。アリアであれば、それを観測して、正解に辿り着けるかもしれません>>


<<モリスに相談して良かったよ。忙しいところ、ありがとうね!>>

<<いえいえ、こちらこそ>>


 さてと~~~。ストレイア帝国は相当不味いね。

 何らかの科学技術の進歩の方向性も誘導されているようだし、魔術も封じる方向で進めているみたい。それか、現象を理解して強力な魔術を使えるようになることを恐れているのかもね。

 だって、天文学とか万有引力とかその辺りから運動力学とか重力の発見に繋がるからね。<重力操作>は、私の知る範囲の科学では達成できてないからね。


 科学の勉強を進めるのと、架橋拠点の方の情報封鎖も強化しないとね。

いつも読んで頂きありがとうございます。

時間の許す範囲で継続していきたいと思います。

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