22.狩りの特訓(1)
早速二人は材料集めの旅に出たのである!
な~んて訳にはいかず、
先ずは<かくれんぼ>の特訓を開始することになった。
「おねえちゃん、朝だよ。特訓だよ」
「ユッカちゃん、おはよう。特訓のまえに寝起きのピュアしよっか」
「「せ~の~ ピュア!!」」
いいね。
これだけは毎日一緒にできるといいな。
「ところでユッカちゃん、特訓って何?」
「おねえちゃんと材料集めの冒険に行くには、おねえちゃんが冒険できるようになるの」
「うん。そうだね」
「おねえちゃん、今のままだと死んじゃうの」
「そ、そうだね」
「だから、冒険に行く前に特訓するの」
「ユッカちゃん、ありがとうね」
特訓の前に、ちょっとだけ時間をもらうことにした。
昨日は砂糖を材料にいれたけど、砂糖無しでフワフワパンが作れるか試すよ。天然酵母の供給は問題なくなったとしても、砂糖無しで作れないと大量生産・大量販売ができない。そんなオーパーツ化した食べ物は貴重だけど、みんなのためにならない。
自己満足の研究もいいけど、やっぱりみんなの役に立ちたいよ。
少なくともユッカちゃんの役には立ちたい。
砂糖要らずで、美味しくて、付加価値が付けば万々歳だ!
ーーーー
さて、特訓だ。何するんだろう?
「おねえちゃん、隠れる練習するよ」
「『かくれんぼ』のこと?」
「それでもいいよ。おねえちゃん、目をつぶって10秒数えて」
「わかった。1~2~3~・・・10!」
「もういいかい!」
「もういいよ!」
うわ、声が近い!
すぐに、見つけられるんじゃ?
と、目を開けつつ、顔を隠していた手をおろす。
……。
いない。
10秒だよね。近くで声もしたよね。
でも、いない。
意味が分からない。
いや、『かくれんぼ』だから探すんだ。
ここでナビ使ったら卑怯だし、ユッカちゃんにばれる。
ユッカちゃんにナビのことがばれると、異世界とかトモコさんのことも大変なことになる。エーテル以上に取り扱い注意だ。
とりあえず探す。
木の裏、家の裏、<なめし洞窟>の方……。
いないね……。
いや、分からんて。
これは、あれか。昨日の復習?
<<エーテルさん、嗅覚の能力向上!>>
<<エーテルさん、聴覚の能力向上!>>
鼻から息を大きく吸い込み、耳を澄ます。
「げへ、げへ!」
いろんな匂いが濃すぎる。
「おねえちゃん、なにやってんの~!」
頭にガンガン響く。音が大きすぎ。
いろいろ間違ってる。
<<エーテルさん、能力解除>>
で、さっき声がした方を見る。
何もない。
近づきながら、落ちてた棒を振り回してみる。
ひょっとしたら当たるかも?
『カツンッ』
あ、何かに当たった!
ナイフか何かで受け止められたね。
よし、この辺だ!
無闇に振り回す。
『ドンッ』
後ろから腰の辺りを両手で突き飛ばされる。
振り向きざまに、抱き着いてみる。
『スカッ』
空を切って、そのままつんのめって転ぶ。
あぶないし、痛いし……。
これ、五感でやってたら無理でしょ。
『考えるんじゃない!フォースを感じるのじゃ!』
じゃなくて、エーテルを感じればいいのかな?
「ユッカちゃん、ちょっと時間頂戴。考えるから」
「はい」
<<ナビも黙ってみてて>>
<<了解>>
う~ん、う~~ん。
エーテルは思念波で反応する。
で、魔法の媒体として存在すると。
エーテルは波に反応する……。
てことは、エーテルを波として索敵に用いれば、エーテル使用者の位置を捉えられるかも?
波の種類を考えてみる。
1.光波:粒子性と波の両方の性質をもつ。
2.電磁波:波長の長さ次第でガンマ線~マイクロ波まで。ちがったかな?
3.地震波:波っていうか力の伝搬。粗密波と定在波だね。
4.音波:定在波。媒質が無いところでは伝搬できない。
5.重力波:最近流行りだね。こんなんみつけられるってすごい。
6.海の波:定在波。潮の満ち引きは別として、基本は定在波だね。
7.津波:ソリトン。三角波。エネルギーを伝搬させる。
影が見えてないから、光の系統じゃないね。
それとも光子すら操ってるのなら結構ヤバイ技術。
某甲殻スーツで登場した<光学迷彩>が実現してるね。
いや?
だとすると……。
エーテルを纏って、あたかも視認性を下げているなら、
ユッカちゃんの周りにはエーテルの流れができているはず。
一方、何もしてない状態で自然にエーテルがあるなら、
そのエーテルの動きの差を捉えれば、『かくれんぼ』終了だ。
ふむふむ。こんな仮説を考えてみたよ。
私を中心として、エーテルの三角波を出す。 方向は全周の同心円状とする。球体の場合は次の機会に考えよう。本来何もないところに波を立てて伝搬させるのだから、その三角波は延々とエネルギーが消滅するまで進む。
ところが、そこにエーテルの膜を張ったユッカちゃんが居ると、そこの部分でエーテルの三角波が乱れるはずだよね。その乱れた場所が判れば、ユッカちゃんが見つかるはず!
<<エーテルさん、私を中心にエーテルの小さな三角波を作って伝搬させて。
そして、その波が伝搬していく様子を私に教えて>>
<<『ブワン』>>
<<『キキキイ~~ン』>>
波がでて、どっかで当たった感覚が来た。
<<もう一回!>>
今度は感覚を研ぎ澄ます。
右後ろだ!
振り向いてもう一回。
3m先になんかある。
近づいて、もう一回。
あ、右に逃げた!どっかいった!
惜しかった……。
よしよし、大体分かったよ。
分かったんだけど、これは単なる『かくれんぼ』じゃなくて、鬼ごっこも付いてるわけだね。
1つは、定期的に三角波をだせば自動で索敵ができるね。
もう1つは、ユッカちゃんの足止め手段を用意しないと。
抱き着いて捕まえてもいいんだけど、すばしっこさで敵わないもんね。
何がいいかな。あぶなくないやつ……。
柔らかくて、逃げれないもの……。
空気か水だね。
水で溺れちゃったら蘇生とかできないから空気だ。
空気の層を作って囲んでしまおう。
で、あとはユッカちゃんが使ってるエーテルの膜を解除したらおしまい。
閉じ込めた後で膜を相殺するエネルギー入れてもらえばオッケーでしょう。
<<エーテルさん、ユッカちゃんの索敵開始>>
よし、今度は直ぐ見つかったぞ。
<<検知ポイントを空気の層で囲む。上昇気流の中心に閉じ込める形で>>
よしよし。
逃げられないね。
<<ユッカちゃんを包むエーテルの膜を相殺>>
滲みながら、じわじわとユッカちゃんの姿が現れる。
二人の魔力が拮抗してるんだろうね。
「ユッカちゃん、み~~~っけ!」
「おねえちゃん!すごい!」
「えへへ。ありがと!でも、つかれたよ。」
「じゃ、ちょっと休憩してもいいよ。クッキー作ってくれるならだけど」
「はい。先生にクッキーを作るので休憩しましょう!」
私は砂糖の在庫があるうちに、特訓を終わらせないとね。
てか、小麦粉とかの材料買いに行かないと……。
これは本気でユッカちゃんと相談だ。
誤字などの修正のみ。本ストーリーへの影響はありません。




