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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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4-12.航海の準備(12)

今度こそ、トレモロさんにストレイア帝国のことをちょっと聞いてみよう。

「みなさん、お茶とお茶菓子をお持ちしました~。」

「クッキーたべよ~。みんなで食べよ~」

「航海士のみなさん、初めまして。ステラです。今後ご一緒させて頂きますわ。」


コウさんは、初めて実物のステラを見てポカ~ンとしつつも、訝し気にクッキーを眺めている。トレモロさんがひょいパクと食べているのを見て、安心したのか、コウさんもクッキーを一かじり。驚きで目が丸くなったね。

他のみんなが驚かずに普通に食べているを見て、さらに驚いている。

やったね!クッキーはここでも大勝利!


「姉さん、お茶の準備に随分と時間が掛かったね。

ステラさん、ユッカちゃん、お疲れ様でした。」



「え?みんなにクッキー食べて貰おうと作ってたら、ステラとユッカちゃんが帰ってきて合流しただけだよ。

フウマの方は、話は進んだの?」


「うん。姉さん次第ではあるんだけど、新しい航海術と船の改造を考えると一週間程度は準備に時間を掛けた方が安心って話になってる。

もし、ドラゴン対策が不要で、自由に航行して往復できるなら、この状態で出航しちゃって、航海中に各種改造とか技術の習得を進めれば良いという話でまとまっているよ。」


「トレモロさん、ストレイア帝国ではドラゴンやナイトメアについて、何か知見がありますか?」

「ひ、ヒカリさん・・・。」


「あれ?何か変なこと聞きましたか?」

「先ほども、この部屋から出ていくときに、同じことを仰ってましたよね?」


「うん、なんか纏まりが無い独り言を喋っちゃっていたかも。ごめんなさい。」

「姉さんが壊れたかと思ったよ。気分は落ち着いたのかな?」


「うんうん。ステラともちゃんと話をして、『出航前にトレモロさんに確認を取っておくべきこと』って、意見が一致したんだよ。」


「ヒカリさん、ヒカリさんは吟遊詩人のサーガや子供の御伽噺以上のレベルでの何か重要な情報をお持ちなのでしょうか?」

「あるよ。あるから困ってる。」


「ぐ・・・。私がその情報を聞くには、何を差し上げれば宜しいでしょうか?」

「う~ん、う~ん・・・。トレモロさんじゃ話にならないレベルだと思うよ。」


「や、やはり、そうでしたか・・・。」

「うん。ここに居るコウさんはともかく、私の仲間は<王国>というものを重要視してないんだよね。だから、なんていうか、<国家機密>とかどうでも良いよ。

トレモロさん、どうする?」


「ヒカリさん、それはつまり、私が国家機密を漏洩して、

その内容を皆さまが他の者へ漏らした場合に抑止力が働かないということですよね?」

「簡単に言うとそうだね。

というか、命掛かってる秘密を保有して、そのことを皆が常に意識している。

だから、無用なトラブルを避けるために、余計なことは言わないよ。」


「ヒカリさんの持つ科学技術、魔術、お仲間、それ以外にもトラブルの切っ掛けになることがあるということでしょうか?」

「私はそんな気がないんだけど、なんかそういうのに巻き込まれてるね。」


「分かりました。私はヒカリさんにお会いした時点で、あるいはヒカリさんの大切な<丸太>を勝手に買い取ってしまった時点で、運命から逃れられないのでしょう。」

「あ、<丸太>っていえば、私まだ<どこでも入れる通行証>をギルド長から貰ってないよ。」


「ヒカリさん?」

「トレモロさん、なに?」


「私が捺印しないと、ギルド長の独断では<ストレイア帝国内を行き来できる通行証>は発行されませんよ。必要があったのでしょうか?」


「え?試験を受けたって説明しましたよね?」

「いいえ。貴族の子女が<丸太>と<岩キノコ>を売り込みに来たという話をきいているのと、それが後からヒカリさんのものであったと判明しただけですが。」


「ステラ、そうだっけ?」

「私はよく覚えていませんが、トレモロさんはご存知なかったかもしれませんわ。」


「トレモロさん、エスティア王国の通行証はあるんだけど、ストレイア帝国のは無いから、将来旅をするときのために貰っておこうと思ったんだよ。」

「承知しました。後ほど人数分用意しますので、皆様のお名前をください。」


「試験は?」

「今回、私が同行させていただく航海のメンバーであれば、全員無試験で構いません。ただ、あくまでストレイア帝国内でしか通用しませんので、航海の先での新大陸では私も含めて皆で新しい通行証を入手しないといけません。」

「そう・・・。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。」

「いえいえ。ヒカリさんのお仲間の役に立てれば幸いです。」


「あ、話が脱線してごめんね。元に戻そう。

ストレイア帝国における<ドラゴン>と<ナイトメア>に関する機密事項を知りうる範囲で教えて貰えれば、こっちも相当重要な情報を出せる準備があるよ。

そして、その情報交換を終えて無いと、航海中のトラブルで喧嘩別れする可能性があるから、出来れば出航前に情報交換することをお願いしたいよ。」


「分かりました。<死を覚悟する情報>であること、予めご承知おきください。」

「あ、ちょっと待って。それなら結界を張ろう。フウマ、周囲チェックと盗聴の印が無いか確認してくれる?」

「姉さん、大丈夫。船とこの建物に異常が無いことは調べてあるよ。元からの住人やメイドの人達は判らないけどね。」

「フウマ、ありがとうね。トレモロさん、お願いします」


「はい。少々説明が長くなるかもしれませんが、ご容赦ください。

そもそもストレイア帝国の歴史は高々百数十年の歴史しかございません。

その勃興期に<とある集団の力>を借りて、帝国を築きあげました。

以来、重要な国政を決定する際には、その集団にお伺いを立てる必要があるし、周辺地域を制圧する際にも、その集団の指示に従っていたそうです。

そして、その指示に従っていれば、帝国は着実に領土を増やし、勢力を拡大することに成功しました。


しかしながら、10年ほど前でしょうか、私がストレイア帝国の侯爵の地位を得て間もないころなのですが、<とある女性の発意>により、『その集団の助力を断るべきだ』との意見が上がり、懇意にしている王子の一人がその意見に賛同しました。

何でも、その女性が言うには、

『科学とは人を支配する道具ではない。人を幸せにするために使うものだ』とのことでした。ストレイア帝国が科学の力のみに重きを置いて領地拡大をしていることに疑問を抱いていた様なのです。

また、その女性は『この世界には素敵な妖精が居て、自然と共生できる魔術がある。それをないがしろにするような行為は星の命に反する』というような意見もあったようで、<ある集団>からの支配から脱却するための方策を検討したようでした。


その女性と王子はストレイア帝国のための使命をもって、<妖精の長の探索>に向かわれました。そろそろ5年の歳月が経つ頃です。


その、<とある集団>は『ドラゴンの遣いであり、この星を平和に導く力がある』といい、その一人の使徒として<ナイトメア>と名乗る人物が派遣されていたそうです。その集団は人族と同程度の寿命らしく、初期の使徒の<ナイトメア>ほどの人物は居ないようですが、代が変わり別の使徒が派遣されている様です。


以上ですが、これは吟遊詩人のサーガではなく、史実に基づき、現在も継続している極秘事項になります。」


「トレモロさん、ありがとうね。ステラ、さっき台所で話をしていた通りだね。」

「ヒカリさんの答え合わせが良い方に正解で良かったですわ。」


「うんうん。ストレイア帝国自体が<ナイトメア>を使って支配していたり、妖精の長を封印していることに協力的だったらどうしようかと思ったよ。」


「ヒカリさん?」

「あ~~。うん。こっちも情報を開示しないとね。

ユッカちゃん、お母さんのペンダントをもう一回出して貰えるかな?」

「うん!」


って、予め準備がしてあったようで、直ぐにトレモロさんに手渡す。

トレモロさんはそれの裏側を確認して、裏書きを読んで顔つきが変わる。

そして、恐る恐るユッカちゃん、私、ステラの顔を順番に見比べる。


「ヒカリさん・・・。」

「うん。」


「そちらのユッカ様は、ハンス王子とトモコ様のご息女であられるのでしょうか。」

「そうだよ。私の命の恩人で、私の先生だよ。そして今は私の大切な家族です。」


「お二人の現在の様子をお伺いしても宜しいでしょうか?」

「私がこの国に来て、ユッカちゃんと出会ったときには既に二人はこの世を去っていました。ハンスさんは獣か魔物との戦いで傷つき倒れて、トモコさんは崖から転落したようです。ただし、それらは伝聞ですので私が直接確認した証拠はありません。

ですが、お二人の亡骸は確認させて頂いております。」


「ぐ、ぐ、ぐ・・・。うぉ~~~~!」


トレモロさんが嗚咽を漏らしながら片手を目にあてて、もう片方の手でゴンゴンと机をこぶしで殴りつける。


「メディチ卿!お気を確かに!」


コウさんが素早く駆け寄って、皮膚が破れて血が出ている拳骨げんこつを両手で抱えて制止する。


「ヒカリさん・・・。私の悔しさがお分かりいただけないでしょう。

ハンス王子は次男でありながら、次期皇帝としての評判も高い中、

『自分がこのまま国に居ると荒れる。この世のために自分の命を捧げよう』と、トモコ様と連れ立って旅に出たのです。


そもそも、ナポルの街の風土病の終結の報告を商人である私が報告に行ったところ、たまたま謁見の場にいたハンス王子が、大学への推薦状をとりつけてくれたようなものなのです。


『お父さん、こういう人がこの国に居てくれると、きっと良い国が出来るね。金貨とかでなく、この人の人生の糧になることを褒美として与えるべきだよ』


と、幼いながらも先見の明があり、私の今の地位の切っ掛けを作ってくれた方なのです。私は、国が乱れることが無いのであれば、ハンス王子にこそ皇帝の座について欲しいと願っていましたし、旅の行く末を案じておりました。

それが、志半ばで倒れたと聞いて・・・。」


「トレモロさん、お二人の亡骸は、エスティア王国内のバイロン卿の領地の森の中でお墓に入った状態で大切に保管されています。今からでも見に行けますが、如何致しましょうか?」


「ヒカリさん、申し訳ないが、今日は一人にさせて貰えますか。明日、朝食までに決めたいと思います。

コウ、皆様の寝室を手配、明日の朝ごはんの手配、ニーニャさん達の道具や材料で不足が無いかの確認をしてから、明日に備えるように。

尚、当然ながらこの部屋での会話の全ては他言無用だ。良いな?」

「ハイ!」


「トレモロさん、判りました。また明日お伺いします。

コウさん、夜も遅くなり申し訳ございません。我々は適当に相部屋で結構ですので部屋を用意頂けますでしょうか。」

「ヒカリ様、承知しました。直ちに!」


う~ん、う~ん・・・。

みんな、背負ってる物が重すぎるね。

人生の重みってやつかなぁ・・・。

私は私の大事な人が死ぬのは見たくないよ・・・。

いつも読んで頂きありがとうございます。

時間の許す範囲で継続していきたいと思います。


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