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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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4-09.航海の準備(9)

よし、船よ進め!

茹でタコと焼きマグロしかない夕飯を皆で頬張りながら、

アリアが帆の受け方と操船に関する説明を始めたよ。


「風での帆の受け方、舵の向き、そのときの進行方向

この3つの関係が重要なんです。

横に張ってある帆と、三角に縦に張ってある帆で風の受け方が変わります。

横の帆は角度が変えにくいので、なるべく向かい風では開かない方がいいかもです。」


コウはフムフムと頷く。


「よし。アリアちゃん、食事も済んだことだし、一緒にやってみようか。

ヒカリ様、出来れば風を少しだけ増やしてもらえないでしょうか。

船の帆に風を受けて、膨らむ程度でお願いします。」


「シルフ、コウさんと連携して、風の強さだけ変えてあげて」

「ヒカリ、いいよ。」


船速を落とした状態で、微調整しながら感覚を掴むみたい。

舵を切って、ゆっくりと旋回をする。

また、陸からの風が吹く。今度は完全な逆風。


そこに軽く帆を当てて、船体がよじれるのを確認する。

その、撚れた状態で舵を維持すると、

なんと、風に逆らって、斜めに進んだよ!


当然、このままだと行きたい方向である風上には進めない。

だから、右斜めに進んでいる状態から、今度は舵を思いっ切り逆側に切って、

一旦、風を全く受けずに、帆が縮んでしまった状態を経由する。

このあと、帆に風を受け直して、さっきとは逆の左斜め方向に進む。


「アリアちゃん、こんな感じか?」

「コウさん、凄いです。こんな大きな船を動かしてしまうなんて!」


「アリアちゃん、これはな?みんなの力で動かしてるんだ。

確かに舵を切ってるのは俺だが、帆の連携をして角度調整しているのは俺じゃあねぇ。

それよりなにより、<練習できる丁度いい風><目標に沿った位置に灯り>こんな操舵の練習の仕方聞いたことがねぇ。

こんな<イージーモード>で練習できるなら、本番も安心して風に向かっていけるってもんだ。」


「そうなんですか・・・。私は船が動いているのは分かるのですが、どの帆をどの角度に変えてるとか、舵をどれくらい切ってるとか全然判らないんです。」

「ああ、この船はデカイな。帆も1枚だけでなく2-3枚同時に変える必要があるし、少し間違えると風にあおられた帆の下で横に渡してある横木に巻き込まれて、ぶっ飛ばされて海の中だ。そうなったら助からねぇ。

船内を歩くときは帆を張ってる横木のことを<ブーム>っていう。ブームの動きに常に気を付けな。」

「ありがとうございます。」


「ヒカリ様、少々お願いがございます。」

「コウさん凄いね。動かすだけじゃなくて、言われた通りに初めての船を初めての方法で操舵できるなんて。」


「いえいえ。似たことはしてるんです。船の旋回を風に合わせてさせることを、今度は風上に合わせられる帆を使うだけですので。」

「そうなんだ・・・。でも応用が利くのはいいね。それで、<お願い>って何?」


「正直、この船は重いです。舵が効くのはこの微風だからです。強い風とこの船体を組み合わせると、この梶棒が折れるか、2-3人が同時にぶっ飛びます。」

「ああ、<舵輪>への変更ね。今ニーニャがやってくれてると思うよ。食事もせずに夢中になってるから期待していて良いんじゃないかな?」


「<だりん>ですか?」


コウさんはカイさんに舵の指揮を任せると、私に興味深そうに話しかけてくる。


「うん。さっき、ニーニャに改造して貰うように頼んだよ。」

「それは何なんでしょうか?」

「あれ?さっき、ニーニャに説明しているときに聞いて無かった?」

「いや、その・・・。まだ、ヒカリ様の実力を存じ上げぬときでしたので、会話に興味が無く・・・。その・・・。」


「聞き流してたし、自分がこの船を操船すると決まった訳でもないと。」

「いえ、その、メディチ卿の命令は絶対です!」


「うん。それで?」

「ヒカリ様の命令も絶対です!!」


「じゃ、もう一回だ。アリアも一緒に聞いておいて。何かの役に立つかもしれないから。」

「ヒカリ様、判りました。」


「簡単に言うと、力を得する仕組みを舵に取り入れるってことね。

今、コウさんが言っている様に、舵の角度はここの手持ちの棒の角度と1:1な訳でさ。舵を操作するには物凄い力が必要な訳でしょ。こんなおおきな船の舵を切り続けるってことは、常に力を掛けなきゃ、舵がどっかいっちゃって、船も変なところに進んじゃう訳だよね。

そこでさ。

力の得をする方法として、幾つかの方法があるんだけど、単純には、手回しのハンドルを一回転させたら、舵の十分の一ぐらい動くようにする。そうすると、舵を全部切りきるためには10回転させる必要があるね。今度、その状態から逆側に切りきるためには20回回転させることになる。

わかるかな?」


「ヒカリ様、私は分かります。シーソーとか、輪軸、動滑車など、世の中には様々な力を得する方法があります。風車や水車もその仕組みの応用だと思います。」

「アリアは流石だね。化学だけじゃなくて、物理も判るんだ。」

「いえいえ・・・。小さいころから養父にいろいろな物を見せて貰ったおかげです。」


「うんうん。経験から学んだ現象ってのは、物事を理解する手助けになるよね。

稀に先入観を植え付けてしまったために、そこから脱却できなくなる場合もあるけど、そこは客観視する訓練を積んでいれば問題にならないかな。


で、コウさんは分かるかな?」

「ヒカリ様、イメージもできますし、仕組みも理解しました。

舵を動かすのに多少の時間は掛かりますが、十分の一の力で操作できるし、舵を切る精度も10倍良くなることを意味していると思います。

ですが・・・。」


「何か問題?」

「船の舵の方角が瞬間的に判らなくなります。それと、風上への切り上がりの操船でも、船の進路と舵の方角は密接な関係がありますので、何か、舵の角度を示す方法が必要になります。」


「それだけなら、そんなに問題にならないよ。舵から来てる主軸の位置に連動させて舵の切れ角を表示させる装置をつけて貰えばいいから。

でも、今の話からすると、風向と方角の方が問題は大きい気がするね。」

「ヒカリ様、私もそう思います。何か、常に方角を示す方法が判ればいいのですが・・・。」


「一応、方位磁針は作ったんだよ。でもさ、海上の船だと揺れが酷いから、安定して方位を示し続けるには、水平方向のブレも取るような仕組みが必要だね。」


「ヒカリ様、方位磁針が何かは今度教えてください。

けれども、水平方向のブレに関しては、球体の中に水を満たせば、幾ら球体を傾けてもその水は水平で有り続けます。

例えば、中空のガラス玉を作成して、そこに水を満たしてから、<方位磁針>を浮かせれば、船上でも方位を示すことが可能になります。」


「アリア、凄い!ついでに時計も作ってくれるかな?」

「ヒカリ様、砂時計は作成が完了しています。

ただ、ひっくり返したりするのが手間なのと、一日連続で時刻を示すことが出来ないので改良が必要です。」


って、夢中で説明しているアリアの手が赤くなっていたり、黒ずんでいるところがあるよ。あれって、高温のガラスを細工中に火傷しちゃったかな?

他人のこと言えないけど、嫁入り前の体だから大事にして欲しいよ。

これじゃあ、モリスやランドルさんに申し訳が立たない。

ユッカちゃんの術式で対応できなかったら、クロ先生に強引な手を使って貰っててでもちゃんと火傷のあとが残らないようにしてもらわないと・・・。


「アリア、ちょっと手を見せて?」


ハッとなったアリアが慌てて手を後ろに隠す。


「だ、大丈夫です。なんとも無いんです!」

「うん。手の火傷は後で見せて貰うからいいや。先ずは<舵輪>と<船上で使える方位磁針>の作成だね。」

「分かりました!<方位磁針>を拝見出来れば、早速取り掛かります!」

「アリア、方位磁針はトレモロさんに預けてあるから、また明日だね。

コウさん、カイさん達から他に改良点が見当たらなければ、今日は港に戻ろう」

「はい!」


このあと、船員さん達から聞き取りを行ったところ、

「大きな帆も素早く、軽くす操作する必要があるので、向きを変えるだけの滑車だけでなくて、力が軽くなる動滑車の技術を組み込んで欲しい」ってことになった。

ニーニャの仕事がまた増えちゃったね。


う~ん。

いろいろ急ぎすぎかな・・・。

アリアに火傷させちゃってるのも不味いし、ニーニャの負担も大きい。コウさん達も不慣れな船を操船しながらの初めてのメンバーと航海だしね・・・。

ちょっと、みんなで作戦会議かな?

いつも読んで頂きありがとうございます。

時間の許す範囲で継続していきたいと思います。

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