21.パンを作ろう(2)
天然酵母もできたし、生地も膨らんだ頃かな~。
さてさて、これから焼きにはいるぞ!
「「だたいま~っと!」」
「「せ~の~ ピュア!!」」
いいね。タイミングがばっちり合ってる。
しかし、疲れた。体も頭も疲れた。
こんな動き方今までしたことが無かったからね。
心配事が1つ減って、2つぐらい増えた感じだけど、
ま、前向きに進もう。
「ユッカちゃん、これからパンを焼こうと思うけど見てる?」
「パンはクッキーの敵だよね?」
「え? いや。敵じゃない。味方というか仲間というか。
これで上手くいったら、砂糖無しにもチャレンジするから」
「ほんと?」
「たぶん」
「今度は火の山とか行くことになる?」
「それはない。でも、温泉には興味あるよ」
「温泉って?」
「う~~ん。パン作ってから一緒に話しようか。お腹すいたでしょ?」
「うん!」
仕掛けておいた鍋の蓋をあけてみる。
想像以上に膨らんでる。これって、一次発酵まで大成功。
軽く潰して、ちぎって、二次発酵。
日が暮れてるので、外では発酵できないね。
空いた鍋で料理作りつつ、傍の余熱でいっか。
なんか、かなりいい加減だ。
<鍋が無い>
「ユッカちゃん、お鍋をもう一個借りたいんだけど……」
「無いよ」
「じゃ、作った鍋のスープをどこかに移せないかな……?」
「お皿にとる?」
「でも、残りが……。パンも一緒に食べたいし」
「みじん切りのお肉混ぜたりする器ならあるよ」
「ありがと!それ借りる!」
あぶないあぶない。
調理器具も揃えたくなってきたよ。
あと、ナイフとかね。
今日の所はパンを焼こう。
鍋を洗う。火にかけて熱する。
そこに二次発酵が終わったと思われる生地を投入。
200℃ね。てきとう。てきとう。
約15分ね。てきとう。てきとう。
<計るんじゃない!感じるんだ!>
理系の研究者目指してた自分からすると、いい加減すぎる。
温度計とかキッチンタイマーとかある訳がない。
でも、砂時計ぐらいほしいね。
あ、ガラス……。
香ばしい匂いがしてきた。
「おねえちゃん!まだ?」
「わかんない!」
「おねえちゃん、おなかすいた!まだ?」
「ごめん。時間が判らないから適当で……」
「時間って、脈でかぞえるアレ?」
「え?」
「おかあさんが、しずかなときには70回で1分って教えてくれた」
「時間はそれであってる。1分もあってる。でも、1050回も数えないと……」
「エーテルさんに頼めば?ドキドキしたり走ったりした後は同じにならないけど」
「次、時間が必要なときにやってみるね。そろそろ焼けたでしょ」
鍋を持ち上げて、逆さにする。
割と簡単にとれた。
「ユッカちゃん、これが私の作りたかったパンだよ」
「あちち!これも冷ますの?」
「う~ん。冷まさなくていいけど、このままじゃ持てないし、食べられないね」
「じゃ、ちょっと冷やそう」
「エーテルさん、ちょっとパン冷やして!持てるギリギリぐらいまで!」
これって、あれだね。
時短調理とかできるね。別の意味だけど。
それはともかく。
「ユッカちゃん、どうぞ。先ずは何も無しで食べてみて。
次にバター、ハチミツとかつけてみて」
「なにこれ!外がカリカリ、中がフワフワ」
「味も見てみて」
「あま~~~い。干しブドウの香りがするよ。あと焦げた小麦粉の香り」
「カチカチの黒いパンとどっちがいい?」
「これはパンじゃないよね?ケーキなの?」
「これはパンだよ。ケーキはクッキーと同じくらい甘い。ハッ!」
「おねえちゃん、明日はケーキ焼いてくれるの?」
「むり」
「なんで?」
「砂糖が無い。他の材料もない、調理器具もない。買うお金もない」
「おねえちゃん?」
「何?」
「がんばって、一緒に集めよっ!」
「うん。一個ずつ集めるのがいいね」
な、なんか、私はパティシエールでも目指すことになるの?
いや、材料やお金を稼ぐために冒険者になるの?
冒険ができるようなるには、まずは狩人になる!
あれ、狩人になろうとしてたよね……。
今日は疲れてるんだ。
寝ることにしよう。そうしよう……。
タイトルと誤字などの修正がメインです。
※パンの焼き温度と時間を修正しました(2020/08/13)




