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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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4-03.航海の準備(3)

なんか、ちょっと不安になってきちゃったよ。

陸地や諸島を経由しない大航海の経験が無いってことは、

私がちゃんと調べて、何が起こるかを確認しないといけないってことじゃん?

ま、浮かせて飛行するんだけどさ。

一応、ナビに聞いておこうかな。


<<ナビ、大航海時代と食料について教えて>>

<<大航海時代 online における食料のことで宜しいでしょうか?>>

<<ナビ、わざとやってる?>>

<<現代日本で<大航海時代>をキーワードとして検索すると、上位のほとんどが、それに類する内容でしたが>>


<<ナビは優秀なAIだね。私の今の状態は、大型の帆船によって、大陸間を一ヶ月以上走破して交易を行うような時代の話をしたいんだけど。>>

<<日本ではそのような時代は少ないです。交易は海外の国が申し入れに来ている状況であり、日本が自国の船で大陸間を横断する交易のために大型帆船を用いて海路を開拓した時代はありません。>>

<<そうなの?海のシルクロードとか、ああいうのは無いのね?>>

<<日本列島の国主たちが日本人のために、大陸を股にかけて横断するような交易路の開拓をするプロジェクトはございません。乗組員とか派遣、派兵で一部朝鮮半島や中国へ出航したことはあります。>>


<<日本は海洋大国で、陸路だけでなく海路も発達していたんじゃないの?>>

<<一ヶ月単位で無補給で交易路を求めて探索するような記録は日本より海外での発展が目覚ましく、交易路も海外の国々が先に発展させています。>>

<<つまり、日本の平安時代~室町時代における貿易や交易は、日本主導でなくて、海外の国や商船が主導で行っていたということ?>>

<<取引を行う立場としては、お互いを対等な相手とみなしていたかもしれませんが、海図や航法を成立させ、長大な交易路を確立したのは日本ではありません>>

<<う~ん。なんか勉強になったよ。歴史とか海上交易の勉強をすることになるとは思わなかった。>>


<<航海の何を検索しましょうか?>>

<<海外の事例でもいいから、一ヶ月単位の航海を経由して交易するような場合の航海術が知りたいよ。特に食料とか水の問題ね。>>


<<航海術に関して言うのでしたら、ヒカリさんが拾って来た帆船はキャラック船に該当し、交易の積載量を増やした構造となっています。また、三角帆の採用は逆風でも進める特徴があります。ただし、キャラベル船と異なり、喫水線が深く浅瀬での座礁や転覆のリスクが高い構造となっています。>>

<<既に海路が開かれていて、浅瀬の位置とか判明している場合の大量輸送に向いてるってこと?>>

<<そうなります。新規航路開拓には不向きとされています。>>

<<分かった。そこは気を付ける。でも、逆風でも進めるのはいいね。>>

<<奴隷を使ったガレー船であれば、帆が補助で人力がメインの動力ですので、基本的な考え方が異なります。また、奴隷は売買できる資産としても活用できますし、購入すれば新しい動力を手に入れることも出来ました>>

<<私の船はそういうの無いよね?>>

<<奴隷によって漕ぐ機能はありません。参考までに、難破した際に脱出するボートの類も備わっていませんので、ニーニャやトレモロと打ち合わせをしておくと良いでしょう。>>


<<何それ、知ってたの?>>

<<放置して廃棄した際に、脱出する人達が筏やボートを使用していただろうと考えませんでしたか?>>

<<深く考えて無かったよ。なんかさ、私はとんでもないことしようとしてないかな?>>

<<主神から与えられたAIの立場としてのヒカリを評価すると、かなり命のリスクがある行為を選択していると見受けられます>>

<<それは、航海止めて、飛べってこと?>>

<<飛行船の開発に伴う特定事象との遭遇リスクを回避できるのであれば、大幅にリスクは低減できるでしょう>>

<<特定事象ってドラゴンのこと?>>

<<ピー。その単語に関する情報は閲覧権限がありません。>>


<<わかった。ナビ、ありがとうね。航海における操舵術以外で、命に係わるリスクって何があるの?>>

<<病気が多くの死因を占めます。その中でも特に大きな被害をもたらしのは、壊血病や伝染病の類になります。>>

<<壊血病の原因は?>>

<<ビタミンC不足により、発症します>>

<<なるほど。30人一ヶ月分の野菜や果物を積載するのは面倒だね。まして、冷蔵庫が無かったとすると、ゾッとするリスクを背負うことになるね。ここは注意するよ。>>


<<ナビ、伝染病と治療方法については?>>

<<基本は水不足による不清潔な状態から各種病原菌が繁殖します。また、船上ではその状態を改善する術がなく、予め水に石灰を混ぜたりすることで効果があると考えられていました。>>

<<大量に清潔な水が使えれば発症も抑制できるし、感染拡大も防げる可能性があるね。>>

<<乗船時に健康なメンバーを選出していれば、そのような対策で効果が得られます>>


<<その他は?>>

<<食料不足、食料不足に伴う船員からの不満、それらに伴う船長の補給地での置き去りなどが発生します。アルコールによるストレス緩和が試みられますが、アルコール依存症が起こるので、別の問題を引き起こします。>>

<<また、食料と欲求不満かぁ。>>

<<寄港地での風俗の乱れは、非常に激しい状態になるとの記述もあります>>

<<貞操の危機だね。女の子6人どうすればいいか、トレモロさんと相談しておく>>


<<ナビ、他にも何かあるのかな?>>

<<難破、行方不明、寄港先での襲撃、交易商品の略奪などが挙げられます>>

<<それはいいや。いざとなったら魔術でもなんでも使うことにする。でも、確かに特産品同士の交換による交易は成立できると良いね。トレモロさんと相談しておくよ。

ナビ、いろいろありがとうね。また相談するかもしれないけど、今日はありがとう。>>

<<どういたしまして>>



よしよし。

基本情報は仕入れたし、航海術のリスクよりも食生活や病気のリスクが一番高いってのは予め知っておけば準備のしようがあるね。


それにしてもだよ?

なんで私は航海の知識が無かったんだろう?日本にある昔話とかサーガ類で航海を専門に扱った内容が少ないんじゃないの?

某少年漫画誌に掲載されている海賊漫画の話もさ、航海術とか食料問題とか<神の手>によって、解決されちゃってるんだろうね。友情、努力、勝利がスローガンなんだっけか・・・。伝染病とか壊血病なんか、その3つとは無縁の話だから必要ないのかもしれない。


しかし、これは・・・。

根性と忍耐と奴隷でも解決できない問題だろうし・・・。

科学に基づく医療やその予防措置によって対応するんだろうけどさ。

トモコさんは大航海とかしてないのかね?


ーーーー


「ヒカリさん、食料の具体的な分量の前に、ヒカリさんの抱く航海のイメージについて伺っても宜しいでしょうか?」

「トレモロさん、そうなんだよね。そこが問題なんだよ。私も<なんとなくのイメージ>しか無くてさ。いざとなったらインチキすれば良いと思ってるからさ。」

「ヒカリさん、インチキというのは、新航路を開拓せずに、成果をでっちあげるという意味でしょうか?」


「ううん。もう、<飛ばす>っていうか。」

「ヒカリさん、暴力は良くないです。<ぶっ飛ばす>のは反対です。」

「う~ん。ダメだ・・・。」

「ヒカリさんが素直に諦めて頂けて幸いです。」


「フウマ、助けて・・・。」

「何、姉さん?」

「フウマ、どこから!って、このパターン前にもあったよね?」

「船の見回りをしてたよ。攻め込まれやすさとか武器の配置の確認とかね。それで、なにか用?」


「この船を飛ばす話をしたい。」

「姉さん、常識で考えよう。姉さんの嫌いな<普通>の範囲で考えよう。<飛ばす>のは無理だよ。」

「フウマですら無理なら、ニーニャとステラを連れて来よう。もう、ユッカちゃんも一緒がいいかな。」

「姉さんの好きにすればいいよ。僕の用事は済んだ?」

「時間に余裕があるなら、フウマも通訳係として一緒にいて欲しいよ。」

「姉さん、面倒なことをせずに、『全員集まれ!』って、呼んだら?」

「じゃ、呼ぶよ。ここは船内のどこの階層になるの?」

「デッキから1階層下がった食堂になるよ。」

「わかった。」


<<手を離せる人、全員集合。船のデッキの1階層下の食堂で打ち合わせするよ>>

<<了解(ALL)>>


「ヒカリさん?」

「トレモロさん、ちょっとお茶を入れながらでもいいかな?」

「<全員集まる>とは、何のことでしょうか。」

「え?ああ。フウマ、説明よろしく。」


フウマに丸投げして、皆の分のお茶を入れておこう。

お茶碗とかないから、木のコップね。

さっき、ステラがハーブティーの類をこの辺にしまっていたもんね。

水もあるし、ラナちゃんのコンロもあるし、鍋もある。

もう、関所の自室とか要らないんじゃなかろうか?


「姉さん、どこまで喋っていいの?」

「前提として、<秘密が漏れるとトレモロさんが殺されちゃう>って、ところからかな。ところでフウマ、アルさんには声かけてある?」

「たまたま、ここで待ち合わせになってる。だから僕がここに居るんだよ。

そもそもお湯が沸くまで時間があるなら、姉さんが直接トレモロさんに説明しなよ。お茶は僕がれるよ」


「フウマ、冷たいね。」

「姉さんが、<人が死ぬほどの秘密>を抱えてるからだろ?」

「それ、私のせいかな?」

「ヒカリさんのせいですわ。」

「ヒカリのせいだぞ」


「ステラ、ニーニャ、忙しいところ、また集まってきてくれてありがとう。」

「ヒカリ、もう適当でいいぞ。食料は買ってきたのか?」

「ニーニャ、ちょっと不安になって、皆で航海の仕方を確認することにしたんだよ。」

「ヒカリ、面倒だから<飛ばす>ぞ。」

「そうだよねぇ。ニーニャがそうすると思ったんだよ。」

「ヒカリ、クロ先生もラナちゃんもシルフも<飛ばす前提>で考えているぞ。」


「ステラはどうしたい?」

「ヒカリさん、空の方が景色は良いと思いますわ。でも、船上でのんびりするのも、ときがゆっくり流れて贅沢な時間を過ごせますわ。ヒカリさんはどうされたいんですか?」

「なんかさ、トレモロさんと<どんな食料をもっていくか>って、話をしてたんだけどさ。航海のイメージをトレモロさんと共有出来なくてさ。皆のイメージを確認したかったんだよ。私も面倒になったら飛べばいいと思うんだよね。」


「ヒカリ、無防備に飛び続けるのは危険よ。飛竜に索敵と上空を飛行させなさい」

「あ、ラナちゃん集まってくれてありがとう。なんで<飛竜の索敵>が必要になるの?」

「シルフから聞かなかったのかしら。<ドラゴンの巡回対策>よ。飛空船が飛んでたら撃墜されるわ。ドラゴンに見つかったら、すぐに着水して、飛竜が飛んでたことにするのよ。」


「そっか!やっぱりそのリスクが大きいよね」

「そんなの当たり前じゃない。ヒカリの嫌いな<常識>よ。」

「ラナちゃん、私は<普通>や<常識>を振りかざして他人の意見を否定する行為が嫌いなだけで、意見の相違や合意はそれぞれ在っていいと思う。

だからラナちゃんにとっての常識を私が持っていなくても勘弁して欲しいです。」


「ヒカリ、私に真面目に反論してる場合じゃないわよ。トレモロさんが不憫ふびんね。」

「あ・・・。トレモロさんすみません・・・。」

いつも読んで頂きありがとうございます。

時間の許す範囲で継続していきたいと思います。

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