表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

202/334

3-101.門出

ちょっと、旅に出るよ。

みんなとお別れの挨拶だね。

久しぶりに関所でパーティーだ。

ニーニャ達と長老を除いた妖精の長達がいないけど、関所の皆が大集合した。

ゴードンさんはどこから入手したのか、エビ、カニ、貝類、魚だけじゃなくて、イノシシ、牛も使いこなして御馳走を作ってくれていた。

そこには付け合わせのジャガイモ料理が多数並んでる。コロッケは無かったから今度教えてあげよう。

モリスが注文しておいてくれたのか、お酒もたっぷりあった。


みんなが勝利を祝ってくれたし、私が大航海に出ることに興味津々だ。

この時代だと、航海自体がとても危険な冒険に満ち溢れた物なんだろうね。

地図も方位磁針も無く、一部の学者を除いて惑星が球体であることも判らないんじゃしょうがないのかも。


「モリス、航海の準備が終わったら出かけるから、また領地代行を任せたいけど良いかな?」


「私にヒカリさんの代わりは務まりませんが、獲得された権利を運用するぐらいでしたら、微力ながら務めさせて頂きます。」

「本当はさ、モリスも一緒に来てもらいたかったんだよ。だけどさ、個別の専門性だけでなく、総合的に、なおかつ冷静に判断できるのはモリスぐらいしか居ないよ。

でも、ほら。

これからは飛竜を通じて会話できると思うし、橋の拠点に出来た小さな村にはレイさんとかレミさんがいるから、いろいろ面白いことが増えると思うんだよ。」


「ヒカリさん、私はヒカリさんにとても感謝しています。私自身だけでなく、ランドルやベッセルとの再会、そして実の息子と娘との再会。これ以上何を望みますか。」

「アルバートさんもアリアさんも、ランドルさんの教育が凄いのか実父の血の賜物なのか判らないけど、素質もあるし、成長も素晴らしいと思うよ。大切なお子さん達を預けてくれてありがとうね。」


「うちの子らは、どうも大切に育てられ過ぎた様です。学問などの知識はそれなりに積み上げたようですが、世間知らずで実践経験が少なすぎます。ヒカリさんの刺激を受けて更なる成長を遂げられれば、本人達も喜ぶでしょう。そしてそれは、養父も私も感謝する限りです。」

「うん。今回の新規航路の開拓だけど、その道のプロ達が複数集まってくれている。そのメンバーで入念な準備をしてから出かけるから、世間一般で考えられているようなリスクは無いと思うよ。どっしり構えてゆっくり待っててね。」

「ハイ!お気をつけて!」


その他、竈職人のトーマスさんには<贋金>の溶解と<金の溶出>で分離させる方法を教えたり、エルフの子らに、和紙に使える木の種類と繊維の抽出、紙漉きの方法を教えたりした。エスト達は3人いるから、ハーブの世話、革の世話、紙漉きを役割分担して進めてくれるらしい。


そして、最後に国王とお妃様に挨拶だ。


「昨日の裁定へのご助力、不躾な突然のお願いにも拘わらずありがとうございました。何の権限も権威もない若輩者ですが、皆様のご協力のおかげで無事終戦に漕ぎつけました。

とりわけ、王様とお妃様のお二人には感謝の意を示すだけでは足りません。しかしながら、皆様に喜んでいただけるような献上品が用意できておらず、大変申し訳ございません。」


「ヒカリよ。昨日も言ったが良くやった。

レナードとマリアから伝え聞いておるが、今回のサイナス周辺の領地が無くても、この関所の東側に広大な平原を発見し、その開拓と農業を実践されているそうだな。食料自給率の向上は国の根幹であり、賞賛に値する。

また、古来からの肺の病の治癒方法を確立し、その原因となる洞窟の瘴気の封しも行ったと聞く。医療技術の進歩と国民の健康維持は国力の増強において絶対な効果がある。これに関しても改めて褒美の対象として検討する。

そして、今回の<贋金>の根源を潰し、多くの贋金回収に至る道筋をみつけ、その目途を付けたことも素晴らしい。愚息のリチャードは事の重要性が判らぬようであるが、ストレイア帝国からの改善要請が届いてからでは、今回ロメリアから得た内容の数倍の賠償請求をされたであろう。その被害を事前に食い止めた賢明さには大臣に迎え入れるに十分な才能である。

現国王として、国難と事の重大さは理解している。そして、その困難な数々の事柄を解決したヒカリには国王として、また、エスティア王国に住まう一個人として感謝する。

ヒカリさん、ありがとう。」


「チャールズ国王、そのようなお言葉勿体ない限りです。エスティア王国の国民として当然の事をしたまでです。」


「ヒカリさん、いろいろありがとうね。私からもお礼を言うわ。飛竜といい、ロマノフ家の剣といい、貴方に会えなかったら手に入らなかった物と経験が沢山あるわ。」

「マリア様、お褒め頂きありがとうございます。頂いている神器のペンダントを破損してしまったり、お借りした金貨が手つかずでランドルさんのところに残したままだったりと、いろいろと失礼があり、申し訳ございません。」


「あげた物は貴方の物よ。でも、金貨を使わずに、良くもまぁ、あの橋を架けたわね。材料も人集めも尋常じゃない費用が掛かったでしょうに。」

「それに関しましては、良い仲間に恵まれたとしか・・・。」


「そう、全てを話す必要は無いわ。それで、私は貴方の新規航路開拓の冒険を支持するわ。

その理由はね・・・。

そこにいらっしゃるトレモロ・メディチ卿なら知ってるはずだけど、<新規航路開拓による利権>をストレイア帝国に捧げると、皇帝から侯爵領を割譲頂けるのよ。判るかしら?」

「マリア様、それって・・・。」

「そうよ。貴方の好きな<戦争をせずに欲しいものを手に入れるチャンス>な訳よ。頑張ってらっしゃい!」

「はい!!」


そっか、そっか・・・。

国王もちゃんと分かってたんだ。そしてマリア様は私より先を見ている。

敵わないな・・・。


「ヒカリ、ちょっといいか?」

「リチャード王子、何でしょうか?」


「昼間はすまなかった。」

「何がでしょうか?」


「俺は世の中を知らな過ぎた。そして王子という身分にあることで、周りからチヤホヤされていたということに気が付いた。」

「そうなの?それなりに頑張ってたんじゃないの?」


「ハハハ・・・。そうだよな。ヒカリから見たらそれなりだ。まだまだ必死さが足りないな。」

「ううん。王族という立場でありながら自分と向き合って、なおかつ国の将来を考えていたでしょ?」


「夢を描いてもそれを実行するだけの知識、仲間、胆力、根性などな、足りないことばかりだ。ヒカリは<夢>を確実に実現しているだろ?」

「王子と分かち合った<夢>の1つは実現したね。あと2個を実現しに行ってくるよ。」


「そこで、お願いがあるんだが?」

「なに?航海には出かけるよ。」


「お前が留守の間、ミラニア川の治水工事に関わりたい。<贋金の回収>は私より商人の方が知恵や人脈があり、上手くやってくれることになった。」

「なるほどね。じゃ、ロメオ王子と勝負だよ。」

「ああ、負ける訳には行かない。」

「イワノフには連絡しておくよ。飛竜の力を借りるか、借りないかで難易度は変わるけどどうする?」

「ロメオ王子は飛竜の力を借りずに行うんだろ?対等な条件で勝負するさ。」

「う~ん。そっか・・・。それで間に合う?」


「何がだ?」

「3ヶ月後に私が帰って来るし、その時期は雨季が来るよ。」


「王位継承するまでの10年単位の将来を考えているんだが?」

「イワノフに怒られるよ?一緒に勉強すると良いよ。私が購入したリーダー達に負けないようにがんばってね。」


「いろいろ教えて貰う。何がダメなのか体で学ぶしかない。」

「そう。それでいいんじゃないかな?<殺しちゃダメだよ>とだけ、伝えておくよ。」

「あ、ありがとう。宜しく頼む」

「うん。じゃ、いってくるね。」

「ああ、ヒカリも頑張れよ!」

「うん!」


これで思い残すことは無いかな。

さ、明日から出発の準備をしようかな。


ーーーー


「おねえちゃん、朝だよ。」

「あ、ユッカちゃん、おはよ。」


「おねえちゃん、みんなにお別れを言ってたね。」

「うん。長い航海になるからね。いくら<念話>が使えると言ってもさ、一人一人と話をしておきたいじゃん?」


「それだけ?」

「どういうこと?」


「おねえちゃんが、遠い所へ行っちゃう気がした。」

「うん。遠いと思うよ。直ぐに帰ってこれないし。」


「なんか、なんか、おねえちゃんが、自分だけの世界に入っていくみたい。」

「そ、そうかな?

でも、確かに言われてみると、<しがらみ>とか<束縛>が無い状態かもね。

何をしても自由な状態。

これは、自分で自分の世界を作って、その中で活動できるってことだね。」


「私もおねえちゃんと一緒にいていい?」

「一緒に行くに決まってるじゃん。なんか不安にさせた?」


「おねえちゃんが、<宮廷魔術師じゃない何か>を手に入れて、<私とさよならしたいのかな>って、思った。」

「ユッカちゃん、心配させてごめん!」


ぎゅ~~~って、ユッカちゃんを強く抱きしめる。


「ユッカちゃんは私にとって命の恩人だよ。私の大切な家族だよ。

ユッカちゃんが自立できるか、後見人が見つかるまでは私と一緒に暮らす。

今までは、自分や自分の家族がこの世界で暮らしていけるように精一杯頑張ってた。だって、国がなくなっちゃったら、何もできないでしょ?

でもさ、みんなのおかげでエスティア王国は存続できるんだよ!だから、私もユッカちゃんも暫く一緒に暮らせるってことじゃん!

その私の心の解放感が、ユッカちゃんを不安にさせてちゃったかもしれないね。」


「私が居ても迷惑じゃない?」

「全然。それどころか手放したくないよ。いつかユッカちゃんも自分の家族を持つことになるかもしれないけどね。」


「これからもおねえちゃんと一緒に、冒険したり、自由に研究してもいい?」

「もちろん!<自由な研究の世界>を一緒に歩こうね!」

「うん!」




ー 第一部 完 ー


いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。

これで第一部完結です。


第四章、第五章へと十分に伏線が敷かれている中で、

皆様の期待を裏切るような形での完結申し訳ございません。


作者のリアル事情により近々転居の予定がありまして、

ネット環境だけでなく、生活基盤の再構築も必要ですので、

潤沢な時間がとれないと予想されます。

その辺りを考慮して、休載ではなくて、

あくまで、一旦区切りを設けさせて頂きました。


第一章では異世界での命の大切さを知り

第二章では異世界の中で夢を見つけました

第三章では異世界と本格的に交流し、とうとう生活基盤が作れました。

そのヒカリの心の葛藤と成長を主人公視点で描いたつもりです。

僅かなりともヒカリの心に寄り添って頂けることができたのでしたら作者として幸いです。


第二部でヒカリが皆様とお会いできる日を心から願っています。


2019.02.06 tinalight


P.S.感想とか付けて貰えると、がんばっちゃうかも。

  ただ、感想への返信すら滞ってしまったらすみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ