3-90.外交の架け橋(1)
何が起きてるか意味不明。
敵に先手をとられたのは不味い。
先ずは状況把握を慎重にしないとね。
とりあえず、フウマが食堂へ案内してるのが判ったから、
食堂へ私一人で様子を伺いに向かうことにした。
「フウマ、ただいま。あれ?お客さん?」
「姉さん、お帰り。こちらロメリア王国からのお客さんだよ。
『話は責任者と直接したい』ってことで、
今、この食堂へ案内したところ。」
ロメリア王国からのメンバーは4人。
ロメオ王子、スレイ飛竜騎士団長、メトロポリタン卿、あと初めてみるけど、きっと運輸大臣の人だね。
「自己紹介や用件のお伺いは済ませた?」
「いや、それもまだ。たまたまこの拠点を歩いていたら、船で人が来たから案内しようとしただけだよ。」
「そっか、案内ありがとうね。」
<<フウマ、食事の準備のフリをして、トンネル工事から帰ってきた主要メンバー全員を至急ここに集めて。妖精の長を3人、ステラ、ユッカちゃん、ニーニャ、レミさんね。>>
<<了解>>
「大変お待たせしております。ここの架橋工事の責任者のヒカリと申します。差し支えなければ、ご用件を伺う前に自己紹介をして頂いても宜しいでしょうか」
「はい。私はロメリア王国のロメオと申します。以前、関所にてお世話になったことがあるかと思います。覚えて頂けたなら幸いです。
こちらのメンバーは順番に、
飛竜騎士団長のスレイ・スミソニアン侯爵、
運輸・建設大臣がハバロア・ルーブル侯爵、
農林大臣がコンチネンタル・メトロポリタン侯爵
となります。」
「王族自らのご丁寧な自己紹介と家臣のご紹介賜り、光栄に存じます。
ロメオ王子とは先日関所でお会いしたこと、しかと記憶にございます。
また、スミソニアン侯爵とメトロポリタン侯爵につきましては、妹のリカが大変お世話になったと伝えて聞いており、遅ればせながらこの場にてお礼申し上げます。」
長々とした儀式重視の意味のない自己紹介と挨拶がおわるタイミングで、フウマが主要メンバー7人を連れてきた。
「あ、みんな。食事の準備だよね。今、ロメリア王国からお客さんが来てて自己紹介が終わったところ。まだ用件を伺ってないから、ちょっと待っててね。」
「ハイ(ALL)」
「ロメオ王子、本日はどういったご用件でいらっしゃったのか、お伺いしても宜しいでしょうか」
「ヒカリ殿、今日はリカさんはここに居らっしゃらないのですか?」
「あの子は姉である私のことが苦手でして、なかなか一緒の部屋に入りません。私が失礼して、この場をリカに引き渡しましょうか?」
「いいえ、元気にしているでしょうか。挨拶できればと思っただけです。」
「体は元気のはずですが、心は憂いている様子です。それはロメオ王子もお分かりのことかと。」
「ヒカリ殿、本日はその件でお話が出来ればと思いまして、ロメリア王国の大臣達をお連れしました。」
「と、申しますと?」
「貴方が指揮をとられている<架橋工事>について、主たる大臣達より申し入れがあった次第です。」
「その申し入れが、今回ご訪問いただきました用件なのですね?」
「その通りです。正式な書類は持参しておりませんが、簡易的に申し入れの用件をこの場で伝えさせて頂いても宜しいでしょうか。」
「中身を聞く前に恐縮ですが、エスティア王国とロメリア王国の外交に関わる内容に発展する可能性がございますか?それとも、この場で解決が済むような簡単な内容でしょうか。」
「どちらの場合もあるとおもいます。こちらの用件・要望に同意頂ければ我々もすぐに引き下がりますし、お互いの認識の不一致などが生じるようである場合、領地を接する二国間の問題に発展することも可能性の一つとして考慮しないといけない可能性がございます。」
「そうですか。それですと、ロメリア王国の多忙な重鎮の方々に度々ご足労頂いたり、後々の禍根を残さない必要があるかと思います。
そのためには、エスティア王国としても、地方の伯爵ごときではなく、王族や侯爵にも同席頂いた方が宜しいですね。
また、第三国の王族の立ち合いも必要かと。」
「ヒカリ殿、それは構いませんが、我々としましたても、何日もこの用件でこちらに滞在する予定はしておりません。できれば、本日中には用件だけでも伝えたいのです。」
「まだ、昼食には早い時間ではございますが、お茶と簡単な食事を提供できればと思います。その間、エスティア王国側の準備する時間を少々頂くことは可能でしょうか。」
ロメリア王国側4人がアイコンタクトをとり、頷き合う。
まさか、1-2時間で王族や中立の立場の人間を連れてこれるとは思って無いんだろうね。こっちだって、<要求をのまないと、武力行使を辞さない>みたいな用件に易々と返事出来ないもんね。それって即開戦と一緒だもん。
「ヒカリ殿、それで構いません。準備ができるまでここで待たせて頂いても宜しいでしょうか。」
「はい。では、こちらは早速準備に入らせて頂きます。すぐに軽食の準備をさせますので、しばらくの間、狭い所ではございますが、御辛抱頂けすよう、宜しくお願いいたします。」
ーーーー
食堂にはロメリア王国の4人を残して、全員退席。
私の宿泊している小屋に全員、ギュウギュウに詰め込んで作戦会議だ。
「フウマ、すぐに王族2人とレナードさんの3人を迎えに行って。モリスには念話を通しておく。道中とか、私の作戦とかは<飛竜経由の念話>で共有しておいてね。」
「姉さん、わかった。直ぐ出る。」
「ステラ、すぐにトレモロさんを迎えに行って。最優先事項で協力を頼んで。道中、作戦を念話で伝えるから、トレモロさんに説明しながら移動してね。」
「わかりましたわ。早速出ます。」
「後のメンバーは、おもてなしの食事を作って、適当に歓談しようか。橋作りとか治水工事の大変さは話してもいいけど、妖精、トンネル、航海は禁句ね。
あ、ニーニャは第三国の王族ってことで、会議に参加するからよろしくね。」
「ヒカリ、私はそういうのが大っ嫌いだぞ」
「座ってるだけでいいよ。」
「寝ててもいいか?」
「お菓子食べて、眠くなったら寝てても良いよ。トレモロさんとステラが居るから大丈夫。」
「私が居る意味があるのか?」
「嘘をついたら、二国間だけでなく、帝国や大陸を跨ってその噂が広がるっていう抑止力になるよ。」
「そんなことしなくても、私はヒカリの頼み以外聞かないから大丈夫だぞ。」
「ロマノフ家全体にも伝わったら、いろいろ問題でしょ?」
「そんなことしないぞ。」
「相手にとっては、ニーニャがそれをするかしないか判らないもん。だから居てくれるだけでいいの。」
「ヒカリのためだ。我慢するぞ。」
「うん。今日の打ち合わせで戦争が終わるかもしれないからね。がんばろうね。」
モリスには情勢を話して、フウマが迎えに行くことを伝えた。飛竜を使った会話を応用すれば、<普通の念話>のことは話しなくても大丈夫だと思うんだよね。
これは緊急事態と理解して、多分協力しに来てくれると信じてる。
トレモロさんの方は、船が帰ってきて無ければ大した準備も無いだろうし、ステラのコネを使えば、ナポルの街で問題が起きるとは思えない。
さ、パスタでも作ってみんなが戻って来るまで場を凌ごう。
ーーーー
最初に到着したのは、関所から来たマリア様、リチャード王子、レナードさん。状況はモリスに伝えてあったし、来る途中でフウマ経由で飛竜さんたちを介して作戦の説明もしてあるから問題無かった。
ただ、最初の前提条件次第で会議の進む方向性が変わるし、故意に誘導する場合は、ロメリア王宮を封鎖することまでが作戦に含まれていることを改めて伝えておいた。
それほど間を置かずにトレモロさんも到着した。ステラが道中説明してくれたこともあって、割とすんなり受け入れてくれた。私が突然の我儘を言っているけど、ステラと私の一大事であることと、国際問題に発展する情報を持つことは有為であるってことで、冷静に状況を見守ってくれることで了承して頂けることになった。
さ、簡単な食事も終了して、会議の始まりだ。
「ロメリア王国からの皆様、大変長らくお待たせ致しました。エスティア王国の方3名と中立国の方3名が到着されました。
僭越ながら私がロメリア王国の方4名と共に、6名の方達を紹介をさせて頂きます。」
ロメリア王国のメンバーはこちらが用意した6人全員を良く知ってるから、こちらが紹介しないでも、かなり顔を引きつらせてたね。私みたいな小娘なんか、簡単に手玉にとれるとおもっていたのに、いきなり王族と侯爵を連れて来られちゃったもんね。
第三国代表だって、ステラ、ニーニャ、トレモロさんだから、何か理不尽な要求をしたり、契約後の約束の反故が簡単にできなくなった状況に警戒してるんだろうね。
「それでは、ロメリア王国のロメオ王子より、今回私が指揮を執らせて頂いています<ミラニア川の架橋工事>に関しまして、ロメリア王国内で問題になっている用件を述べて頂けますでしょうか」
さて、元々用意してきた台詞をそのまま喋れるかな?
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




