3-78.橋を架けよう(14)
『ヒカリは橋をかけ終わりました。めでたし、めでたし。』
って、ならないのかね?
「イワノフ、おはよう。今日は何しよう?」
「ヒカリ様、おはようございます。橋脚間のアーチの設計に入ろうと思います。」
「まだ、橋脚が全部出来て無いのにいいの?」
「河原に作った橋脚の粘土による固定は終わりました。3本すべてです。しかしながら、粘土が乾かないと、全てが台無しになります。文字通り橋が流れます。天候にもよりますが、3日~1週間かかります。
そこの乾燥が十分に行えるまで、水中に建てる二本の橋脚の準備が進められません。川の流れが変わると、既存の橋脚が流出してしまうためです。」
「うわ。それってさ、橋脚建てるだけでもあと2週間ぐらいかかるってことだよね?」
「天候も良く、良い風が吹けば3日程度で乾燥します。しかし、天候は私には操れません。念のため申し上げますが、石の上で火を焚くなどして、急激な乾燥をすると、粘土がひび割れて、そこから劣化し破壊が進みますのでお止めください。<反応するのに良い状態を持続させる>ことが重要になります。」
「分かった。天気が悪くなりそうなら何か考えないとね。他に私が手伝うことってあるのかな?」
「工事の進め方を説明させて頂きまして、問題が無ければ私が指揮をとります。」
「うんうん。良く判らないけど、話を聞くよ。」
「先ず、アーチの構造設計になりますが、半円状に煉瓦や石を並べて、上部からの加重に耐える構造とします。当然ながら、そのアーチが崩れてしまわないように、側面からそれを押さえつけるガードも作る必要があります。ただ、ガード部分は護岸工事と併用したり、隣の橋脚のアーチからの応力をお互いに合わせるとこで解消可能です。」
「何の問題も無いよう聞こえるよ。」
「アーチを組むための足場が必要になります。幅15m、長さ20m、高さ15mの足場が無いと、アーチ状の煉瓦が組み上がりません。足場の材料となる木材は運んで頂いている量で構わないのですが、足場の組み上げと煉瓦の配置、その煉瓦の乾燥でそれぞれ3日ずつかかります。足場の撤去にも3日掛かります。乾燥が完了していないと、並行作業では行えません。」
「何か、遅いね。」
「ですので、先ずは構造と工事の仕方を説明させて頂きました。」
「足場の形になる石を切り出してきて、その上で作業すると、3日ぐらい短縮できるってこと?」
「そのような、大きくて複雑な形の石を作るのは、普通はむ・・・。
あ、すみませんでした。その様な大きな複雑な石を切り出して頂ければ・・・。
あの、ヒカリ様?」
「なに?」
「アーチ型の石を切り出して、それを橋脚間に載せるのは如何でしょうか?」
「いいけど、アーチの意味あるの?」
「橋梁の荷重が分散するのと、橋梁自体の重さが軽くなります。」
「岩一枚だと、メンテナンス性とか、ひび割れたときの惨事とかないかな?」
「外装や化粧には、別の石を切り出して貼り付けます。そこは色を統一したりと、見栄え重視の作業になります。橋梁の通行部分は必ずメンテナンスが必要になりますので、従来型のアーチでも、今回の提案でも敷石は必要になります。」
「なんか、良さそう」
「アーチに使う石材に関してですが、橋脚用に5本の石を切り出して頂いてありますが、現在、2本しか使用しておりません。残り3個を上手く使えば、新たなる石の切り出しも不要と考えます。」
「設計が変わったのだから、無理しなくてもいいよ。とってこようか?」
「計算上は大丈夫です。トラブルなどで必要になりましたら、ご連絡させていただきます。」
「じゃ、それで進めようか。他に何か無ければ、私、ステラ、ユッカちゃんはお菓子作ってても良いのかな?」
「あの、それに関してなのですが・・・。」
「何か問題ある?」
「『飛竜の分が無かった』と、ユッカちゃんから連絡が入っております。」
「そうなの?ラナちゃんとユッカちゃんには沢山渡したはずなんだけど。」
「いえ、あくまで、そのような会話がされているだけで、飛竜の方達が直接不満を言っていた訳では無く・・・。」
「イワノフありがとうね。そういう不公平感は早いうちに解消しておくのが良いと思う。材料含めて調達しなおしだから、何かあったら、そんな風に説明しておいてね。」
「承知しました。」
ーーーー
<<<タカさん>、ちょっと良いですか?>>
<<ヒカリさん、なんでしょう?>>
<<昨日、クッキー食べれた?>>
<<ユッカちゃんとライト様が運ばれた食物ですな?あれなら美味しく頂きました>>
<<今、こっちに来てる飛竜さんたち、全員分あったのかな?>>
<<夜は飛竜は基本的に飛びませぬ故、全員いる場で配布頂きました。問題は無かったと考えております。>>
<<そっか。じゃ、私の勘違いかもしれない。>>
<<皆が喜んでおりました。またご相伴に預かる機会があれば幸いです。>>
<<うん。作るのは良いんだけど、材料が高価で入手し難いんだよね。潤沢に皆に配布できなくてごめんね。>>
<<ヒカリさんのお仲間達と一緒に過ごせて、飛竜族も人間達への偏見が少しずつ変わり始めています。今後ともご一緒できれば幸いです。>>
<<いろいろ手伝ってくれてありがとうね。こちらこそ、これからもよろしくね>>
あれ~?噂の出元が判らない。
まさか、ユッカちゃん自身が食べられなかったパターンなのか?
だとしたら、大事件だよ。
ーーーー
台所で何やらゴソゴソやってるユッカちゃんを発見。
「ユッカちゃん、何か探しもの?」
「あ、え、えとね。」
「砂糖?」
「う、うん・・・。」
「昨日クッキー食べられた?」
「あのね?飛竜さんが悪いんじゃないからね?私が自分で食べなかったの。」
「ユッカちゃんだけ?ラナちゃんは食べられた?」
「ラナちゃんも食べて無いよ。」
「それは大事件だね。それで砂糖を探してたんだ?」
「モリスさんからのお土産には砂糖が入って無かったんだって。」
「塩とか油の調味料はここにあるけど、砂糖はあまり買って無いんだよね。」
「買いに行く?」
「アルさんとフウマに話をしてからなら出かけられる。」
「フウマお兄ちゃんは、昨日帰ってきて無いよ。」
「え?」
「アドルフさんと<ていさつ>に行くって。」
フウマは強い子だねぇ。
肉体的にも精神的にも鍛えられたベースが違うんだろうね。
私は不甲斐ないよ。
長時間偵察すると、高濃度の鉛ヒュームで体が汚染されないように注意しておいた方が良いかな?化学物質の有毒性とか知らないだろうし。
そういえば、鉛白とか鉛丹を化粧に使っていたんだっけ。
簡易マスクをつけるだけでも、短期的には効果あるだろうからね。
「それじゃ、アルさんところに行こうか」
「アルさんは、ステラさんと服飾店の人とお話し中だよ。」
支援職としての仕事もだけど、服飾関係の素材集めではとても助かったよね。今度は工房でも作るのかな?それか、ステラの革技術とのコラボとか?あの2人が居て出す結果なんだから、きっと良く考えられているに違いない。見守ることにしよう。
「そっか・・・。ラナちゃんと一緒に3人で行く?」
「ラナちゃんは、竈の改造とか、部屋の暖房を作るって、どっかいっちゃった。」
100人分の炊事の燃料とか、部屋の暖房ってのはそれなりにエネルギーが必要だもんね。水はあるから、お湯にすることでリフレッシュも出来るだろうし、関所でイワノフやシルフが作った装置も見てるだろうから、放っておいても大丈夫かな。
「そしたら、二人で出かける?」
「おねえちゃん、ひさしぶりだね。」
「そだね。どこいこっか?」
「冒険!(にひひ)」
「いや、砂糖ならナポル辺りの港町で手に入ると思うよ」
「じゃ、砂糖を買いに行く冒険!」
「イワノフさんに言づけて出かけよっか。」
「うん!」
たまには良いよね。
ショッピングしたりとかさ。
そういう目的が曖昧な息抜きとかあってもいいと思う。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




