3-77.橋を架けよう(13)
感動の再開はさておき、橋は最後まで架けたいね。
「・・・。」
「おねえちゃん、おねえちゃん!」
「誰?」
「ユッカだよ」
「え?」
「おねえちゃん、朝だよ。みんな待ってるよ」
ああ・・・。
どうやって、寝床まで来たのか覚えてないや。
てか、あの感動の再会のあと、みんなどうした?
なんだか、頭がぼ~~っとしてるね。
「みんなはどこ?」
「昨日の食堂で、朝ごはんを食べずに待ってる。」
「私のせいで待たせてる?」
「うん。」
「すぐ行く!」
取り敢えず、どうなったか聞かないとね。
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「みんな、おはよう。」
「おはようございます(ALL)」
「ホッとしたら寝過ごしました。」
「ヒカリ、フウマとステラに礼を言うのよ。寝ぼけて歩ける訳ないじゃない。」
「フウマ、ステラ、ありがとうね。」
「姉さん、良いんだよ。ゆっくり寝られたかい?」
「ヒカリさんでもプレッシャーってあるんですね。ちょっと安心しましたわ。」
「うん。二人ともいつも助けてくれてありがとうね。
で、レイさんとレミさんは、今後どうするか決めた?」
「レミは王位を継承する。私は娼館を経営し、ヒカリ様に借金を返す。」
「私は橋が架かるまで、ここで獣人族をまとめてヒカリ様を支えます。」
「そっか。取り敢えず、喧嘩にならずに二人の生き方が重なってくれて良かったよ。
ところで、レイの借金って何だっけ?それに昨日の金貨100枚も返さないとね。」
「関所の娼館の建物、内装、装備一式の借金になります。ニーニャさんやイワノフさんを雇ってあの建物を作るとなると、金貨1000枚では全然足りません。もう暫くお待ち頂けますでしょうか?」
「あれはあげたものだから、私に返さなくていいよ。売ったり、廃棄するときは相談して欲しいけどね。」
「レミ、分かる?これがヒカリ様よ。」
「レイ姉様、よく学びたいと思います。」
「レイ、2つお願いがあるんだけど。」
「なんでしょう?」
「一つは、昨日の<獣人族の村>の権利書だけど、ちょっと預からせて欲しい。具体的には今回の戦争の終結まで。
もう一つは、関所の娼館だけでなく、昨日買ってもらった娼館の経営権を譲渡するので、管理して欲しい。この架橋地点の奴隷さんたちは、賃金が支払われてないから、取り敢えず、先払いで金貨200枚ぐらい渡せば足りるかな?」
「一つ目は承知しました。いずれ、レミを柱として村を立ち上げることとなりますので、それまでお預かりください。
二つ目は、昨日のうちにフウマ様から同様の打診を頂いております。『姉さんなら、金貨200枚ぐらいだろ』と、金額まで一致していてびっくりです。既に準備は始めています。今のお言葉で、権利の譲渡と見做しても宜しいでしょうか?」
「うん。よろしくね。私は橋に注力するよ。」
完璧じゃないけど、鞘に収まった感があるね。
元気を分けて貰ったのと、心強い味方が居るのは楽できていいね。
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「イワノフ、おはよう。お願いがあるの。」
「ヒカリ様、おはようございます。何でしょうか?」
「レイが助けに来てくれたの。
一つ目、娼館を建てて。
二つ目、海砂を取りに行かせるチームを編成して。帆布に砂を載せたら、あとは飛竜に運んで貰う。
三つ目、砂利を作成してほしいの。川の水とか使って、石を洗い流しながら、網目の大きさを利用して、必要なサイズの小石を収集する装置があるといいね。」
「ヒカリ様、
一つ目は、石を一個頂きました。それを用いて、小規模ながら徹夜で完成させました。一部のドワーフは昼間仮眠をとりますので、その旨ご了承ください。
二つ目は、ドゥエのチームが待機しております。<ござる>チームは次の橋脚の穴掘りに取り掛かっております。
三つめは、ニーニャ様から、<砂利採取装置>の手書きスケッチを頂いております。アインのチームで装置の製作と砂利収集を実行させています。
尚、クワトロのチームには昨日に引き続き、護岸工事のための石の敷き詰め作業をさせています。」
「私がすること無くなった?」
「飛竜と連絡を取って頂ければ、しばらく肉体労働は不要です。材料の運搬も不要です。ユッカちゃんも、昨日のうちに、ほぼ石の切り出しが終わっております。」
「寝てても良い?」
「ダメです。」
「何か問題でもあるの?」
「『お菓子が欲しい。ヒカリを使うな。』と、指示が出ています」
「え?」
「ヒカリ様に向かって『バカ』と、言える唯一の方からの指示です。」
「わかった。材料とか道具とかあるのかな?」
「材料はあるようです。竈は調理場をご利用ください。道具はニーニャ様がお土産に寄越したものと、昨日徹夜で作らせたものが準備できております。」
「何か、素晴らしく手際が良くない?」
「『ヒカリ様を殺せる唯一の方』と、関所に居たときから、最重要人物に指定されています。」
「ああ、死ぬ死ぬ。死んだ。その情報は正しいよ。」
「私の仕事は間に合ったでしょうか?」
「私がお菓子を作れれば大丈夫だよね。多分間に合うよ。」
「それでは、橋の工事の指揮に戻らせて頂きます。」
「うん、そっち本命でよろしくね。」
「ハイ」
ーーーー
「ステラ、ユッカちゃん、今日は工事関係お休みだって。飛竜さんだけ指示してって。」
「それは良かったですわ。ラナちゃんが長老から沢山のお土産をもらってきて、『ステラ、それを使いなさい』って、馬車に案内されまして。量が凄くて、整理に時間が掛かりそうなんですの。」
「わかった。ユッカちゃんとお菓子作ってても良いかな?」
「是非是非~。私にも分けてくださいな。」
「もちろんだよ。」
「ユッカちゃん、何作ろう?」
「クッキーとパン」
「クッキーは砂糖があれば作れる。パンは天然酵母が無いと作れない。」
「クッキーとパスタ」
「パスタは、製麺機があれば作れる。ニーニャのお土産にあるか、イワノフさんが作ってくれてれば出来るよ。」
「クッキーとクジラのパスタ」
「じゃ、砂糖と製麺機を確認しに行こう!」
「うん!」
砂糖と製麺機は見つかった。
先ずは、クッキーを大量に作ろうか。
製麺機で作る麺は、支援職の人に作って貰おう。
で、鯨のパスタか・・・・。
<<ナビ、助けて!>>
<<なんでしょう?>>
<<クジラを使ったパスタを作りたいの>>
<<少々お待ちを。>>
クジラの赤身はマグロとか牛肉みたいなもんだから、和風が合うのかな。
素敵なレシピが見つかると良いんだけど。
<<お待たせしました。<大和煮>又は<クジラベーコン>を用いたレシピになります。詳細の報告をしましょうか?>>
<<ううん。知ってるとおり、こっちにあるのは肉の塊か部位だけなんだよね。赤身部分を使って、牛肉やマグロ代替にするしかないかな。そっち系で再検索お願い>>
<<承知しました>>
牛肉で醤油が使えないから、何で味を調えようかな?
簡単には玉ねぎと、塩、胡椒でいけるはず。さらにキノコ加えてもいいね。
あとは、トマトーソース煮なんだろうけど、鯨とトマトが合うかは微妙だね。臭みを取るようにレモンとかでスッキリ感出せば良いかな?
<<お待たせしました。和風キノコソース、玉ねぎとキノコ和え、トマト煮込みなどがありました。詳細を報告致しますか?>>
<<それは、牛肉?マグロ?どっちで検索かけた?>>
<<牛肉になります>>
<<そっか。ありがとね。醤油が無いから、暫く和風は諦めるよ。玉ネギで肉を柔らかくして、キノコと塩胡椒でソース作る。>>
<<また何か御用があれば、お申しつけください>>
<<うん。頑張るよ。>>
100人分近い製麺って大変なんだね。10人いても製麺機が一台しかないから、順番に工程作って流れ作業で上手く捌いているのは流石だね。キノコや玉ねぎの下ごしらえと、タンパクとしてのクジラを上手く活用してくれてる。
任せておいても行けそうだね。
こっちは、竈1個を占有してクッキー作りにいそしむ。
なんだかんだで、桶一杯分を焼き上げた。
ユッカちゃんも、ラナちゃんも笑顔だよ。
他のみんなには、ケチってる訳じゃないけど一人1個ずつのプレゼント。
こんなに人数居たら、全員が好きなだけとか食べられる訳ないよ。
たまに、飛竜さんから<念話>の連絡あったぐらいで、指示を出せば特に問題無し。
やっと順調に工事がまわり始めたね。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




