3-76.橋を架けよう(12)
レイさんとラナちゃんを急いで探さないと!
<<もしもし、ラナちゃん?>>
「何か用?」
<<今どこですか?>>
「ここよ。」
<<そこが判らないから、聞いてるのでしょ?>>
「貴方、耳はついてるのかしら?」
「え?」
顔をあげると、そこにラナちゃんとレイさんが居た。
「フウマに聞いたら、モリスと<念話>通してるって言うから、待ってたのよ?」
「今、モリスから二人がここに来るって聞いて、でも遅いから心配になって・・・。」
「ヒカリ様、お元気ですか?いろいろ苦労されてると伺っています。」
「レイも来てくれてありがとうね。朝には関所を飛竜で出発したって聞いたんだけど。」
「ラナちゃんの行動力と飛竜操作が素晴らしいので、ちょっと寄り道をしてきました。」
「寄り道?」
「ええ、トロニアまで足を延ばして、娼館の候補を当たってきました。丸ごと購入してしまった方が、管理し易いですよ」
「何故トロニアなのかとか、何故丸ごとなのかとか、そんなの後でいいや。二人とも遠くまで下見して来てくれてありがとう。感謝するよ。」
「ヒカリ、金貨100枚をちゃんとレイに返すのよ?」
「ヒカリ様、関所に建てて頂いた娼館の返済一部として、今回はお納めください。」
「いや、金貨は足りてるんだよ。娼館運営の知恵が無くてね。
それでレイさんに話を聞ければと思ったのだけど。」
「ヒカリは本当にバカね。それともレイの実力を軽んじてるのかしら。」
「え?まさか?」
「はい。丸ごと購入しました。ラナちゃんと飛竜さんのおかげです。」
「いや、あの・・・。目立つよね?」
「ヒカリ様、ラナちゃんの力を甘くみると怒られますよ。ヒカリ様が普段されてるような、<透明化><催眠><浮遊>の魔術を使って、契約後、馬車ごと移動しました。」
「私のことは良いわ。レイの実力は並大抵じゃないわね。今晩からでもここで経営できるわよ。」
「レイ、ラナちゃん、ありがとう・・・。他に感謝以外のいい言葉が見つからないよ・・・。」
「あと、ニーニャのナイフとスコップに、私がコーティングを施したものが10本ずつあるわ。ニーニャにお礼を言っておくのよ?その他のお土産は後でいいわね。」
あ、ダメだ・・・。
泣けてきちゃった。
喋れない。
「う、う・・・。う・・・。」
「ヒカリ、何泣いてるのよ。嫌なら持って帰るわよ?」
「みんなぁ。みんあ・・・。あいがと・・・。」
「ヒカリ様、大丈夫ですわ。みんなを呼んでお茶にしましょ。」
ーーーー
ステラ、フウマ、アルさん。ユッカちゃん、レイ、ラナちゃん、そして私の7人でお茶をすることになった。
「フウマ、ヒカリが泣くの。何とかしてくれるかしら?」
「ラナちゃん、姉さんなりに、いろいろ大変だったんだよ。
みんなに会えてホッとしたんだと思うんだ。今日は許してあげて。
ところで姉さん、モリスにはちゃんと連絡した?」
「あ、まだ。」
「僕がしとくよ。姉さんはレイさんの話をよく聞いておいて。」
「ハイ」
「ヒカリ様、今回ここへ来た目的は2つあります。
1つ目は、ここでの娼館設営の支援に来ました。
2つ目は、獣人族のレミという人物についてです。
2つ目は私の個人的な事情ですし、いろいろ面倒な話もありますので後回しにしましょう。
早速、娼館経営について説明します。
金貨100枚で購入したのは、
<権利書><衣服><各種機材><消耗品一式><移籍費用>となります。
今回、権利書が結構高価なものでして、
<ストレイア帝国にもロメリア王国にも娼館を出してよい権利>となっています。
運営に必要な経費としまして、
管理者1名、娼婦9名の賃金が必要になります。
一ヶ月の賃金は、管理者が金貨2枚、その他は金貨1枚で十分です。
食費、居住費を差し引いた残りを与えれば良いです。
その他に機材の補充や、消耗品一式の調達があり、今回の規模と質から、一ヶ月で金貨10枚あれば足りるでしょう。管理者に先払いで与えてください。
そのような状況ですので、小屋や水回りの設備を整えてあげれば、今日からでも営業できます。
何か質問はございますか?」
「2つ目の方が気になる。先にそっちを聞きたいかな。」
「そうですか。もし、娼館の経営で詳細が必要でしたら、その都度確認ください。
2つ目に関しては自分語りになってしまって、申し訳ございませんが、少々説明するお時間をください。
獣人族の王国がストレイア帝国に制圧された話はヒカリ様はご存知だと思います。その制圧される前に、妹は執事と共に旅に出かけていて、王族皆殺しの難を逃れていた可能性があるのです。
私自身は当時まだ幼いながらも、妹が居たことを覚えていますし、海を見に行くと出かけて数日帰ってきておらず、姉ながら相手がいなくてとても寂しい状況でした。思い返すと、帰路が既に制圧されていたか、軍隊の行軍をみて、咄嗟に避難していたのかもしれません。
敗戦後、私は人族の奴隷として生きていく覚悟を決めました。それは私が王族の最後の生き残りの可能性があり、獣人族が再起するためのシンボルになるためにも、必要であろうと考えたからです。
ですが、『レミという獣人がレイを探している』とモリス様から伺いまして、関所の娼館をランに預けて、こちらに参った次第です。
もし、ここに居る獣人が私と血の繋がる妹のレミだとしたら、私は王位継承権を譲ろうと思っています。」
「レイさん、ちょっといいかな?」
「なんでしょうか?」
「獣人族の王位継承権って言うけど、レイさんとレミさん以外には居なかったのかな?
「私の知る限り、兄弟はいませんでした。レミと二人きりです。父が国外で妾に子を産ませていたかもしれませんが、今はそれを証明する手段はありませんし、王位継承順位は私が一番で、レミが二番目になります。」
「わかった。ありがとね。ここからは答えにくい質問かもしれないのだけど、
<もし、レミさんがレイの実の妹だとしたら>
レイさんは、今後どうしていきたい?」
「レミが妹でしたら、私は王位をレミに渡して、人族の娼館経営者として生きます。性奴隷にされていた期間がありますので、私が王位につくと、見知らぬ人が王族の地位を狙って雨後の筍のように、頻出するでしょう。それでは獣人族の纏まりが付かなくなります。それに、獣人族のシンボルとしての耳と尻尾もありませんしね。」
「一応、念のための確認だけど、そこの判断に惰性、諦めといった気持ちは無く、
『とにかく、獣人族の復興が第一。そのためなら全てを投げだす覚悟がある』
そういうことでいいかな?」
「ハイ」
うん。迷いは無さそうだね。
なら、あとはレミさんを説得できるかどうかだ。
先ずは、二人の気持ちを大事にしていこう。
「レイさん、ここの娼館の話の前に、レミさんと会って貰っても良いかな?」
「ハイ」
ーーーー
アルさんがレミさんを連れてきた。
<関所からお客さんが来てる>ってことで、<レイさんが来てる>とは、伝えてない。
さて、どんな反応になるかな?
レミさんは部屋に入ると、目が丸くなる。
気付いたんだろうね。
さて、何を言うかな?
「ヒカリ様、関所からの二人のお客様は、そちらの二人の女性でしょうか?」
「そうだよ。何か変かな?」
「あ、いえ。<紋章>が無いですから。」
「<紋章>って?」
「ヒカリ様もステラ様もユッカちゃんも<紋章>を身に着けています。そこの成人女性と小さな子は<紋章>を身に着けていません。」
「え?まさか、額の涙型の模様のこと?」
「それのことです。耳と手にもありますね。関所から来た女性にそれが無いのは、何か私を試そうとしていますか?」
「ラナちゃん・・・。」
「ヒカリ、その人は<獣人族の長>の家系ね。だから見えるのよ。」
「レイさん、私達の額に何か見える?」
「はい。飛竜と出会った頃からでしょうか、素敵な飾りの彫を入れたのかと。」
「試すようでごめんね。耳にある形と色はどんなのかな?」
「渦を巻いた緑色ですね。」
「そっか、そっか。貴方達姉妹だよ。」
「ヒカリ様、ありがとうございます。」
「ヒカリ様、私には何のことだか判りません。その関所からのお客人は本当に関所から来たのでしょうか?」
「うん。関所から来たレイさんだよ。私のピンチを助けに来てくれたんだ。」
「わ、わたしは、関所から来ていない姉さんに似た人物を見破れるか、確かめる試験と考えました。そのため、<紋章>の有無を尋ねました。
ヒカリ様の治める領地の女性全てが、その<紋章>を所持している訳では無いのですね?」
「そうだよ。というか、そもそも皆には見えないんだよ。」
「「うそ?」」
「うん。二人は特別な存在だよ。大切な姉妹が会えて良かったね。」
「「ヒカリ様、ありがとうございます」」
「ヒカリ、感動の出会いを邪魔する様で悪いけど、マリア、リチャード、レナードの3名の署名入りの権利書がここにあるわ。
<バイロン卿領地の南東部の森をハミルトン卿に譲渡する。そこに獣人族の村を設立することを許可する>
読めるかしら?」
「はい。」
「あら、また泣くのね?」
「ハイ・・・。」
なにさ、なにさ、なんでみんなカッコイイのさ・・・。
私なんか、橋一つ架けられてないのにさ。
でも、今日は嬉しい事ばかりだ・・・。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




