3-65.橋を架けよう(1)
よし!橋だ!
実際、橋ってどうするの?
水が流れてるのにさ。
また、ナビに相談しようかな。
<<ナビ、久しぶり!>>
<<シュークリームは如何でしたか?>>
<<あれも、母親と作ったことがあったんだよ。スワン型は初めてだったけどね。>>
<<そうでしたか。今日は何の御用でしょう?>>
<<幅が100mぐらいある川への橋の架け方。石とか木で組む方法を知りたい>>
<<少々お時間をください>>
<<うん>>
<<お待たせしました。基本的に、川の河口のような平地に架ける橋でよろしいですね?>>
<<うん>>
<<まず、日本での検索結果としまして、
橋を架けるガイドライン資料がありました。pdfファイルで100ページを超えます。街道との接続や川の形状までを調査してから橋の設計を始めるようです。また、過去の橋の流出の写真などもあり、如何に基本設計が重要かを示しており、そのためのガイドラインの様です。
そのような参考情報はさておき、
この状況で幅100mの橋が簡単に作れる物とは思えませんが、
1つ参考になるのが、日本の錦帯橋でしょうか。
土台が石組で、その上に木でアーチを組んでいます。
川幅が狭い物でよろしければ、長崎県の眼鏡橋とか通潤橋が参考になります。
海外の物ですと水道橋の多くが石造りのアーチで谷を越えています。
ただし、大きな川で橋が流されない工夫は別に必要になります。>>
<<基本思想は分かった。イワノフ達と相談するよ。また何かあったら助けてね。>>
<<承知しました。くれぐれも敵国領地であることをお忘れなく>>
<<ありがと。気を付けるよ。>>
まぁ、そうだよね。
街道から外れた場所とか、三日月湖ができるような曲がりくねった場所に橋をかけても流出しちゃうよね。ここは橋を架けるポイントとして重要だよ。
あとは、吊り橋を平地でかけようにも、ワイヤーとか無いわけだから、石をアーチに多段で組むしかないよね。石造りの錦帯橋みたいのを、水で流されない構造で作って、そこに馬車迄通させると。
これはエライことだね。
ーーーー
「フウマ、アルさん、お待たせ。イワノフさん達を連れてきたよ。」
「姉さんお帰りなさい。関所のみんなは元気だった?」
「なんかいろいろ大変なことになってたよ。」
「飛竜でみんなで移動してくるぐらいの変化があったことは分かるさ。
飛竜さん達の食事はどうするの?」
「自分たちで狩りできるらしい。」
「農家の羊とかそういうのに手を付けなければいいけど。」
「石を運ぶとき以外は休んでてもらえるし、石をたくさん運ぶことになったら、
どこからか肉類の調達をしないとね。」
「了解。ランドルさんにはそういう風に伝えておくよ。」
「で、イワノフさん達は現場の下見と、必要な石の見積もり。
フウマ達は、炊き出しと人集めをしてもらう。
ステラとユッカちゃんと私は、そういうのが決まったら石を切り出したり運搬係。クロ先生は私の護衛ってことで、手に余裕がある時はサポートしてもらうかも。
材料となる岩や木材の切り出しは、こないだ領地マーカーで囲ったトンネル予定位置を考えてるよ。
私達4人は自由に動けるから、フウマが直接連絡くれば、そのとき手伝いにいける。
石の切り出しが終わった後は、イワノフさん達の傍でサポートかな。」
「了解。メトロポリタン卿からは、<治水事業>、<炊き出し>、<人集め>、<岩石等の採掘事業(但し貴金属を除く)>の4点の許可は貰ったよ。
当然ながら、ミラニア川東岸が姉さんの領地であることは教えて無いよ。」
「二人ともありがとうね。これで問題無く動けるね。」
「ランドルさんから、
『ミラニア川の西側から食料や人を調達するとき、橋が架かれば後々の治水事業が捗る』って、言われてる。馬車が通れるぐらいの橋が架かるといいね。」
「うん。結構しっかりした橋にしないとね。
イワノフさん達と相談だけど、アーチを組んで、その上を平らにするには結構な石段が必要になると思う。アーチを低くすると、今度は水がちゃんと抜けなくて、橋梁を水流で流すことになっちゃうからね。
川の流れに逆らわないような、船の形をしたような水を切り易い橋脚を並べて、その上にアーチを作っていく。複数のアーチをちゃんと埋めつつ、馬車が対面通行できるぐらいの幅を確保しないとね。
それと、橋の建設位置はこっちで勝手に決めても大丈夫な雰囲気かな?
渡し船を生業としてる人たちの利権を奪うことになるから、何らかの生活保障をしてあげないといけないと思うんだけど。」
「まず、地形的に架橋しやすい場所を選んで、既存の街道とは別に新街道を作って、なだらかなスロープで橋と接続すればいいと思うよ。
船を使うか橋を使うかは利用者に任せればいい。そして、関所みたいに通行料を取れば、船を使う人も残るだろうし、通行料の利権を譲渡してもいいだろ?
あと、ロメリア王宮での王子の提案に関しては、なかなか賛同する意見がないみたいだよ。
『どうせ壊れる。船に任せておけ』みたいな。
だから、ロメオ王子と橋の建設位置で揉める心配は起こらないから、姉さんが自由に決めていよ。」
「よし、じゃ、その線で進めよう。
明日から早速、手分けして動こうか。
アルさん、人脈を駆使して、人を集めてね。人を集めるための人を集めてもいいから。いろいろよろしくね。」
「承知しました。」
「じゃ、橋を架ける場所の下見と、工事するための仮住まいを建てに行こうか」
「姉さん、関所みたいに石造りの屋敷を作る?」
「いや、木でいいと思う。新街道を整備したら、交通の便も変わるだろうし。下手に大きな建物を建てちゃうと、後々移設が面倒になるきがするよ。」
「木造で100人を想定して用意するけど、いいかな?」
「たぶん。あと飛竜が安心して休める場所も必要だよ。」
「屋根は必要?」
「要らないけど、人が勝手に寄ってくると起こされるでしょ?鬱陶しいじゃん?」
「分かった。飛竜の姿が外から見えない程度の壁ってことで、そこもランドルさんと調整を進めるよ。」
「うん。」
ーーーー
「イワノフ、これから橋を架けるための下見をしたいけど、いいかな?」
「ヒカリ様、ニーニャ様より
『ヒカリの言うことを何でもきくんだぞ。でも、どんな無理なことでもヒカリと相談してみるんだぞ』
と、指示頂いております。なので、今からの下見にもお付き合いさせて頂きます。」
「う、うん。嫌なことは嫌って言ってもいいんだよ?」
「はい。我々3人はヒカリ様のご指示に従います。」
「うん。じゃさ、率直に聞くよ。この100mの川幅に石で橋を架ける。
何が必要かな?無理な事でも言って見て。」
「無理を前提で言うならば、半径が50mの円弧の石を切り出して、ここに置けば良いです。」
「なるほどね。確かに橋が架かるよ。でもさ、半径50mってことは、高さも50mだよね。普通の人は、その橋を使えないと思うけど、どう?」
「それは考えていませんでした。」
「じゃ、もうちょっと具体的に条件を付けよう。
幅は馬車が十分にすれ違えるぐらい。
手すりなんかもあって、転落防止ができるといいね。
洪水のような状況でも橋梁も橋脚も流されない耐久性が必要。
橋の高さは川岸から自然なスロープで馬車の往来ができる斜度であること。
どうだろう?」
「作ったことはありませんが、眼鏡橋を複数段に組み合わせれば可能です。
水道橋では複数アーチの技術がありますが、橋脚や加重に対する耐久性より、高低差の精度が重要になります。」
「うんうん。その技術でここの川に橋を架けることを考えよう。
とすると、アーチの下部が洪水発生時の川面より高い位置にしないと、
水害発生時に橋本体が流されちゃうかもね?」
「はい。1円弧が20mぐらいのスパンのアーチを架けて、おおよそ5スパンで幅100mを渡す構造とします。
このとき、円弧の半径は10mになりますので、川岸からのスロープで十分に対応可能と考えます。
川と川岸の接続部での耐久性を向上させるため護岸工事をするか、
橋の手前の水流を誘導するか、川底を掘り下げておくとよいと思います。
ただし、橋脚周辺の偏流による<洗い掘り>による地盤流出要件も設計にいれる必要がありあます。」
「川底って掘れるの?」
「普通には、
川の中で柵を立てて、橋脚の大きさだけ水の流れを迂回させます。そうしてできた水の無い所を掘り下げて、石と粘土で橋脚を構築します。
別の方法としては、
ヒカリ様が川の流れを止めて、川底の泥を攫って掘り下げます。
そして、橋脚サイズの大きな一枚岩を置くと頑丈な橋脚になります。
尚、橋脚の形は細身の楕円形が流れを阻害せず、乱流も起こしにくくて良いとされます。また、周囲を洗い掘りされなように異なる石で囲みます。」
「そ、それは私が一人でやるのかな?」
「ヒカリ様には無理でも何でも言って見ろと言われています。」
「そっか。石を言われた大きさに切って運んでくることはできるよ。
あと、川の流れを変えるような石を運んできて、川に並べることもできる。
でも、私は道具が無いから、泥を攫って、川に穴を掘れないんだけど、
ここって、何かいい方法は無いかな?」
「泥は川の流れを誘導すれば洗えます。
ただ、深く掘り下げるためには地質調査が必要で、川底が泥や砂が続くようであれば、石の深さで5mぐらい掘った後で、水を吸って固まる砂を投入して、橋脚となる石を固定します。」
「ちょっとは現実的だね。で、<水を吸って固まる砂>って、どっから取ってくるの?
あと、やっぱり掘る道具も必要だし、私一人だと時間が掛かると思う。」
「<固まる砂>に関してはサンプルをお持ちしましたので、ヒカリ様が調達してください。1つの橋脚につき、5立米(立法メートル)必要になります。
また、橋梁部分は、別に石材と<固まる砂>が必要になります。」
「そっか、そっか。随分と大変だね。」
「はい。
そして、橋脚の設計はしますが、人族の指揮は出来ません。ヒカリ様がお願いします。
橋梁のアーチ設計もします。その石の調達もお願いします。」
「わ、分かった。ちょっとフウマやアルさんと相談してくる
出来る範囲で良いので、橋を渡す場所を決めて、測量とか始めてくれる?」
「承知しました!」
ーーーー
「ってことなんだけど、フウマ、アルさんどうしたらいいと思う?」
「人夫の方は僕とアルさんで何とかするよ。
その<固まる砂>ってのが判らない。」
「<固まる砂>に関しては、養父に確認してみましょう。伝手を使えば、いろいろな情報や、在庫、産出地の情報が手に入るかもしれません。それが判れば、買うなり、運ぶなりするだけになります。」
「うん。なんか規模が大きすぎて、ドワーフさん達も手に負えないみたいなんだよね。別に私に丸投げしてる訳では無いんだろうけどさ」
「姉さん、流されない橋脚の設計や、アーチを作る石の形の設計とか、すごい大変だと思うんだ。それをお願いできるだけでも、素晴らしい人達だと思うよ。」
「ヒカリ様、私もフウマ様と同様な意見です。ロメリア王宮も人材が居ない訳でなく、それなりの専門家集団を抱えておりますが、そのようなスケールでの設計は出来ないでしょう。そのため、今回の橋に関するロメオ王子の提案が却下されているのだと思います。」
「そっか、そっか。じゃ、<人夫>と<固まる砂>が手配できるまで私達4人は何してたら良い?」
「トンネルを掘る予定地から、どんどん石や木材を切り出して運んでくれば良いよ。
神器はニーニャさんに借りてきたんだろ?」
「うん。斧もこん棒もシャベルもあるよ。」
「物凄い量の石材が必要になるし、作業者の宿泊用の小屋も必要になるからね。馬車で運ぶのか飛竜で運ぶのか、その辺りは姉さんに任せるよ。」
「川を流す筏を作るのも面倒だから、軽くして飛竜さん達に手伝って貰う」
「じゃ、それでいいね。明日から基本的には別行動にしよう。何かあったら<念話>で連絡で。」
「わかった。こっちでもどんどん進めるよ。」
※2019/01/06 橋の絵を追加しました。
アップロード時に漏れているのが気付きませんでした。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。
年明けの再開遅くなりましたが、
今年もどうぞよろしくお願いいたします。




