16.街にでよう(4)
前向きに進もう!
異世界で初めてのショッピングを楽しもう!
その前にお金を作らないとね。
「ユッカちゃん。相談があるんだけど」
「おねえちゃん、なに?」
「最初、お肉類と毛皮だけ売って、その後、私が買いたいものの値段を見てもいいかな?
それで、足りない金額の分だけ魔石を売りたいの」
「それでいいよ。おかあさんもそうしてたよ」
「そっか。じゃ、ユッカちゃんについていくから、案内よろしく!」
まず、毛皮屋さん。
イノシシとか鹿の毛皮が5枚で銀貨13枚。
安いのか、高いのか良くわからない。
ペンダントが胸にあるせいか、ユッカちゃんがいるせいか、
特に問題なさそう。指を引っ張るサインがないからオッケー。
次にお肉屋さん。
ユッカちゃんが指を2本引っ張る。
むむ?なんかあるんだね。
「すみません。近くの狩人なんですけど、トモコさんのお使いでお肉類を売り来たんですが……」
ちらっと、さりげなく胸のペンダントを見せる。
「トモコ?まぁ、引き取らないことは無いよ。見せてごらん」
「はい、これをお願いします」
と、背負子の中から高そうな大き目の燻製ハムを1つ取り出す。
日本だったらさ、百貨店のお歳暮コーナーとかで2個1万円の値札が付いてるやつだよ。
この大きさのは見たことがないから1万円=銀貨10枚とか期待しちゃう。
「うん?これかい??う~ん……」
ワザとなのか、顰めっ面になって、臭いを嗅いでさらに顔を歪める。
値切る気満々の態度だ。この時点で気に食わないよね。
「お嬢さん、トモコさんには悪いが、これは大オマケで銀貨1枚だ。
普通なら銅貨8枚(日本円で800円)だけど、
お嬢さんたちが可愛いから大サービスだよ。どうだい?」
ユッカちゃんが、指を3本ギュッギュと握る。
「あ、ありがとうございます。
だけど、ちょっとそれで買い物リストの物が支払えるか、買う物の値段みてからまた来ますね」
「お、おぅ。可愛子ちゃんたち、またおいで~」
「ユッカちゃん、どう?」
「ダメ。あれ、一番いいの。レナードさんが買ってくれるの」
「え?ごめん。私が間違えて混ぜちゃったかな?」
「ううん。おねえちゃんのせいじゃないよ。あと、あの人いつもの人じゃない」
「そっか。せっかく持ってきたんだし、どこかで売れるといいんだけどね」
「ところで、おねえちゃん。今日買いたいものって何があるの?」
「小麦粉、塩、バター、砂糖、干しブドウ、リンゴかな。あと、ガラス瓶が何本か必要かも」
ふふ~ん。
こっそり美味しいパンを焼いちゃうんだからね~。
たまにはユッカちゃんをビックリさせちゃおう。
ベーキングパウダーとか、ドライイーストなんてないだろうから、天然酵母で作っちゃうもんね~。
「おねえちゃん?砂糖って、あの砂糖?それと<がらすびん>ってなに?」
「うん。その砂糖。ガラス瓶は……。あれ?ガラスって知ってる?」
「からす?」
「ちょ、ちょっと待ってね。上手い説明考えるから」
<<ナビ!この世界のガラスについて>>
<<ありません>>
<<中世にガラスってないの?ステンドグラスとか、ワインの瓶とか、ああいうの>>
<<宗教行事の非常に高価な用途には使いますが、一般家庭や街にはありません>>
<<あ、ありがとう……>>
<<あ、一応、砂糖に関する情報も教えて>>
<<砂糖一握りがピンポン玉サイズの魔石と等価交換できます>>
<<ぐぅ。ぐうの音について!>>
<<日本のデータベースより、
『【ぐう】の語源は、呼吸がつまった時に発する声とされています。
それがもう少し大きく解釈されると、苦しい時に出す声という意味も含まれています』とのことです>>
<<親切にありがとうね。ぐぅの音は出たよ……>>
「えっとね。ガラスっていうのは、薄くて割れやすい素材って考えてもらえばいいかな。
だから、ガラスが無ければ水が入る陶器のツボとか、そういうのでいいや。
あと、砂糖って高いの?私が住んでた地方だと塩とかと変わらなかったんだけど……」
「陶器のツボならあるよ。
砂糖は一握りが昨日のピンポン玉サイズの魔石と交換ぐらい。私は誕生日のときにおかあさんが買ってくれたよ」
「そ、そっか。陶器のツボは買って帰りたい。砂糖はまた今度でいいや……」
「おねえちゃん、砂糖が必要なら、さっきのハムと砂糖と交換できるかきいてみる?」
「う、うん……。無理しなくて良いけど、聞くだけ聞いみよっか!」
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