15.街にでよう(3)
朝起きると、そこは異世界だった!
いや、既に居たんだけどね。
久しぶりに頭使いすぎで、筋肉痛とは違う疲れが。
やっと初めての街に向かいます。
そこでヒカリは初めての感覚を味わう……。
「おはよ~。ヒカリおねぇちゃん。朝だよ」
う、うん……。
あ、欲張って魔石作って、あの後どうなった?
「ユッカちゃん、おはよう。魔石つくってて、そこからおぼえてないんだけど……。今って、何日ぐらい経った?」
「一晩だよ。お姉ちゃんの魔石も私のとおんなじくらい。ほら!」
そこにはピンポン玉サイズの魔石が2個並んでいる。これで10万円か。
人生の目的がお金だったら、お金にはもう不自由しない。
ここがゴールでいいよね。
これにてヒカリの冒険完結!
皆様のご声援ありがとうございました!!
いや、ちがうって。
お金が目的の人がいてもいいけど私はなんか違うと思ってる。私はまだ自由に研究をしてない。
それにしても魔石製造は危険すぎる。一週間を2時間睡眠で毎日過ごして試験対策したときとか、ああいう脳みその疲れをぎゅっと圧縮した感じ。トモコさんも止める訳だ。
「ユッカちゃん、ベッドで寝かせてくれたんだ。ありがとう。
今度は無理しないようにするね。ご飯たべたら、予定通り街にいこう」
「うん」
<<ナビ、行程と安全確認>>
<<了解。片道約10km 青○表示のみ。ルートを示します>>
「ユッカちゃん、サインを決めない?」
「サインって?」
「手をつないで歩いて、握った指の本数で口に出さずに私に教えるの。
・怖い獣がでてきたり、怖い人が近づいてきたら1本
・嘘つきな商人が居て、こっちを騙そうとしたら2本
・その他に、二人でこっそりお話したいことがあったら3本
どう?」
「うん。面白そう!やろうやろう!」
荷物を背負子にセットする。
毛皮ががさばる。それなりに重い。
干し肉の類は縮んでるからそれほどでも。
ソーセージの類が結構密度が高いみたい。
あっというまに15kgぐらいの重さになった。これ背負って10kmの行程を歩けるのかな?途中までならエーテルさんに手伝ってもらってもいいね。
そうそう。大事なのが魔石。
手のひらサイズの革袋に入れて、胸の谷間にぶらさげる。
なに?私だってちゃんと谷間あるんだからね。
今度は小物入れみたいなウエストポーチみたいの欲しいね。
さぁ、れっつご~!
二人で手をつないで街に向かって歩いていると、突然森の中から盗賊のような恰好をした人が2-3人現れた!
なんて、フラグは立たなかった。
いや、そもそもナビで青○すら表示されてないから問題無し。
街に着く。
街といっても城下町なのかな。かなりきっちりとした兵士の恰好をした人が門を守ってる。
で、初の黄○表示と遭遇。対応を間違えると、死なないけど回復不能になるってやつね。
さて、どうしよっか~。
絶妙なタイミングでユッカちゃんが指3本握って引っ張る。
「ユッカちゃん、なに?」
「おねえちゃん、旅の人で身分証もお金もないよね?」
「うん」
「おかあさんから頼まれたことにして、このペンダント見せればいいよ」
「門通るのにお金いるの?」
「お金は、この小さい方の魔石2、3個で大丈夫。だけど、どこから来たかわからない人は通れないよ?」
「そっか。身分証明書がないや。借りてもいいかな?」
「いいよ。これね?『裏側が大事』っておかあさんがいってたの」
裏側?
先ず、表側にエメラルドだかヒスイだかわからないけど、緑色の石が嵌ってる。ピンポン玉ぐらいの直径だね。それが金の枠にはまっているんだけど……。裏側には、なんか文字が彫ってあるね。
う。読めない。
<<ナビ、文字変換辞書のダウンロード。ついでに、地名とか人物名の記載があれば説明して>>
<<この地域の言語の読解能力を知識としてダウンロードします。
『ストレイア帝国の皇帝がこのペンダントを持つ者の身分を保証する』
と、記載されています。ストレイア帝国とは、エスティア王国を含むこの辺り一帯の国々をまとめる連合国首長の立場になります>>
<<ありがと>>
うん。文字が読めた。
国の上の立場の国があるのね。
日本とアメリカみたいな?
あ、一応独立国同士だけど、なんていうか格上っていうか。
で、そこのエライ人に身分を保証されていると。
これ、チートだよ。チート!
…。
……。
…… ……。
いや、私もチートだ。
トモコさんは、きっと伝説的な何かを残している。
それは、ユッカちゃんの成長、生活、教育、子を守る姿勢から想像できる。
私は何もしてない。なんの努力もしてない。
日本で親の庇護の下で勉強しただけ。生きる努力すらしてない。
なにもしてない人間が成功者を妬んでいるだけ。
グッとペンダントを握りしめる。
そして、精いっぱいの笑顔を作って、ユッカちゃんにお礼を言う。
「ユッカちゃん。とっても大切なものを貸してくれてありがとう。
大事に使わせてもらうね。街での用事が終わったら必ず返すから」
「うん。おねえちゃんならいいよ」
私たち二人はトモコさんのペンダントを見せて門を無事に通過した。
誤字等の修正のみ。




