3-41.飛竜を訪ねて(3)
険悪なムードだけど飛竜との遭遇には成功したよ。
さて、どんな難題がでてくることやら・・・。
あまりも飛竜と歩幅が違うし、かといって背中につかまりながらって訳にもいかないので別々に歩いて後ろをついていく。やっぱ飛竜って鳥の先祖だよ。歩き方がひょこひょこと二本足で体が揺れてる。トカゲとかみたいに摺り足で尻尾で重心を取る感じじゃないんだね。
岩陰の奥まったところに到着すると、年老いた一頭の飛竜が蹲っている。皮とかも皺だらけのよぼよぼ。目もつぶったままで、起き上がる気配もない。本当に生きてるか疑わしいけど、お腹の辺りが呼吸と共に膨らんだり、凹んだりしてる。なんか、老衰で死んじゃいそうなぐらい弱ってるよ。
<<よし、そこな人族の者よ、この年老いた飛竜を治せるか?人間の<針>も刺さっておるぞ>>
<<分かりました。やらせてください。>>
「この飛竜を治すことになった。あの<針>は<形状記憶合金>で良かった?」
「はい。ユッカちゃんが透視診断して、私が冷却しながら抜きましたわ。」
「そう。判ったよ。これは飛竜からの試練だから独りでやってみるよ。長く針が刺さったままで、穴が残ると思うんだけど、そこはどんな風に治療したのかな?」
「ウンディーネから頂いた薬を垂らして、表面の皮の部分を魔術で接着しましたわ。」
「私は傷の治療とかしたことなかったね。止血とか切り裂いた怪我を治療する魔術ってどんなイメージか教えて貰えるかな?あと、ステラはウンディーネの薬も出しておいてくれるかな。」
「おねえちゃん、血を止めるのはエーテルの流れを止めれば自然に止まるよ。傷口を塞ぐのはお肉とお肉をくっつけたあとで、その接続した場所にエーテルの流れを作ってあげるとくっつくよ。」
「ユッカちゃん、ありがとう。やってみるね。」
「ヒカリさん、こちらがメルマの森で飛竜を治療した薬になります。この他にも活力を回復する薬を頂いていますが、経口ドリンク剤なので、傷口に直接流し入れない方がいいと思いますわ。」
「ステラもありがとう。やってみるよ。周りの飛竜に動きが無いか、見張っててくれるかな?ま、魔術が使えないから大した防戦もできないけどね。」
「「ハイ」」
自信満々に振舞ってるけど、実はドキドキなんだよね。余計な不安を周囲に見せちゃだめだ。ステラやユッカちゃんが不安になって、飛竜に気取られるのは不味い。
当然、本人がガタガタブルブルと不安になっていたら、飛竜からのプレッシャーも強くなるしね。
堂々と振舞っていれば、多少のミスをしても<そういうもの>って感じで誤魔化せるからね。あるいは明るみにでるまでの時間稼ぎをしたりさ。
本質的には本人への暗示だし、余計なプレッシャーを感じずにリラックスするための物なんだろうけどさ。
よし、始めよう。
<<ナビ!きこえる?>>
<<通話できます。>>
<<助かる。無理かと思ったけど良かったよ。>>
<<<針>の診断と右目への投影でよろしいですね?>>
<<うん、始めて。>>
<<了解>>
これは、<針>が取り出せても先が長くなさそうだよ。
下手な刺激を与えて、そっちが寿命を縮めることにならなければいいけど。
随分と太い<針>だね。親指ぐらいあるよ。右目の投影画像をみると、確かに木の根みたいに中で広がってる。ところどころ神経に絡まってるように伸びている。これはこのまま引き抜いたらダメだね。
針に触れて、徐々に温度を下げていく。この刺激が飛竜にダメージを与えないことを祈るしかない。なるべく針の芯から冷える様にコントロールできないかな。通じるか判らないけど、右目の画像を見ながら、根の一本一本の中心に冷気を流すイメージをする。
あ、だんだんと細くなって、一本の棒の様に収縮を始めたよ。
形状記憶合金って、多少の曲がりぐらいしか変化できないかと思ったけど、これはどんな仕組み何だろうね。体積変化は見えないから、質量欠損もないとすると、何らかの結晶構造を複雑に絡み合わせて、複雑な変化を制御してるのかもね。この時代にはオーバーテクノロジーじゃないんでしょうかね?
ま、いいや、集中しよう。
ずるずる~~っと、直径2㎝、長さ15cmぐらいの先が尖った金属の棒を取り出す。
やっぱり、飛竜の首には穴が残っちゃったね。
ここにウンディーネの秘薬を垂らしてっと。
次は治療だけど、血は出てないみたいだから、肉同士を圧迫して繋げるんだっけ。
右目に投影をしながら、手でグイグイと押し寄せて、その状態のままエーテルを通すように制御してみる。自分の手が接触しているせいか、エーテルの流れを制御できるね。よしよし、いい感じだ。流れが通った。これで完成!
「ステラ、ユッカちゃん終わったと思う。けど、この傷の上の部分は何かで押えておかなくていいのかな?ばい菌とか入って、傷口が化膿したりしないかな?」
「<バイキン>とか<カノウ>が何か判りませんが、ウンディーネの薬には傷口が腐るのを防ぐ効果もあるようなので、血が流れてこなければ終了で良いと思いますわ。」
「ステラ、ありがとうね。」
案内をしてくれた飛竜の所にもどって、足を掴んで<念話>を始める。
<<<針>は取れた。無事に作業は済んだと思うよ。ただ、高齢のために元々の活力が落ちてるみたいなんだけど、その辺はどうなの?>>
<<あの飛竜は200歳を超える高齢だ。何か気付け薬のようなものはあるのか?>>
<<飛竜用と言われる薬を試してみる。だけど、私たち人間で試せないから効果が確実に出るかは判らないよ。それでもいい?>>
<<ああ、試して良いぞ。その<針>を見せてみろ。>>
もう、私の体温でただの棒がまた木の根みたく広がっちゃってるね。こんなのが首筋入ってるってとんでもないことだよ。
<<これだよ。足元に落とすね。気付け薬を与えに行くよ。>>
「ステラ、ダメ元でいいから、例の<飛竜に活力を与える>っていう経口薬を貰えるかな?そこの飛竜からは許可がでたよ。」
「これですわ。いざとなったら、みんなで逃げましょうね。」
「そんなこと言わないでよ。ステラもついてきてよ。」
「ヒカリさんにも怖い物があるんですね。」
「いっぱいあるさぁ。だからお願い。」
「おねえちゃん、私もいくよ。」
「うん。ユッカちゃんもお願い。逃げるときはみんなで一斉に逃げようね。」
「「ハイ」」
私が頭を無理やり持ち上げる。身体強化は出来てるから重くても頑張れば持ち上がるね。そしてステラが口を広げて、ユッカちゃんがそこに手を突っ込んで薬を喉の奥に流し込む。
老齢の飛竜はゴクゴクと喉を動かす。なんとか飲み込めたようだね。
今まで無反応だった飛竜が口を開けた。何かが欲しいんだね。
「ステラ、ユッカちゃん、この飛竜に何かあげられるかな?」
「まず、ウンディーネ特製の一般的な栄養剤を水分として補給してもらいましょう。」
「おねえちゃん、クッキーがあるよ。」
「じゃ、私はこのまま支えてるから、二人とも順番に与えてあげて。」
「「ハイ」」
ステラが1Lぐらいの水筒のような皮袋の容器をとりだして、飛竜の喉に近づけてドクドクと飲み込ませる。飛竜はゴクゴクと元気に飲み始めた。
次にユッカちゃんがクッキーを舌の上に乗せる。人間用のクッキーは小さいね。ユッカちゃんは袋ごと逆さに、全部を舌の上に空けちゃった。
飛竜は口を閉じてモシャモシャすると、また口を開けた。
「ステラ、ユッカちゃん今のはまだある?」
「もうありませんわ。」
「クッキーはもうないよ。」
「そっか」
<<飛竜さん、ごめんなさい。もう無いんです。私たち人間が住むところまで戻らないと取ってこれません。>>
飛竜が初めて目を開けた。
あれ?なんか女性?二重で切れ長でウルウルとした瞳。
人間なら絶対に美人だ。
ある意味で鳥類らしくないよ!
<<そこにいるエルフはミニアかい?>>
「ステラ、ミニアって知ってる?ちょっと、直接話かけてくれるかな?」
「は、はい。」
<<飛竜さん、お目覚めですね。治療が効いて良かったですわ。ミニアは私の祖母の名前になります。私はステラ・アルシウスです。>>
<<そうか、そうか。そうだね。ミニアに助けて貰ってから随分と時が流れたね。アルシウス家のエルフに助けられるのはこれで2度目だ。何かしてあげたいね。何か手伝えることはあるかい?>>
<<飛竜さん、貴方の名前を伺っても宜しいでしょうか?>>
<<私の名前はグルーシャ・ローズマリー・ヒルベルト・・・・・ニージャだよ。グルーと呼んでくれればいいよ。>>
<<グルーさんは、この飛竜族の族長でいらっしゃるのでしょうか?>>
<<いや、族長は私の息子だね。人間達の罠によって幽閉されているよ。息子に用事なら、会えるようにしてあげよう。>>
<<は、はい!お願いします!>>
「ヒカリさん、聞こえてましたか?」
「うん。グルーさんが族長のお母さんってことだよね。門番の飛竜の所に行って見よう」「「ハイ」」
<<もしもし、グルーさんは目が覚めて、<念話>も出来るようになったよ。>>
<<そ、それは真か!>>
<<私たちが族長のお母さんの名前を知ってる訳がないでしょ?>>
<<むむ、確かに。念のため確認するぞ。>>
<<うん、お願い。あと族長との面談の許可についても確認してきて>>
<<なんと!それも確認する!>>
門番らしき飛竜とグルーさんが何やら音声会話を始めた。
ギーギー、ギャーギャー、グゥグゥ。さっぱりわからないよ。
なんらかの会話が終わると門番が戻ってきた。
<<これから族長の所へ参る。我ら以上に人間に対して警戒心を持っておるので、事情を理解できぬことによる無礼があるかもしれぬが、その辺りは容赦願いたい。>>
<<いいよ。早速行こうか。>>
ふぅ・・・。
緊張の連続だね。
大きな深呼吸をして、堂々と対応したいね。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




