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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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3-29.飛竜見学会(3)

今回は私たちステラ一行が飛竜と面談します。

ヒカリさんの代わりは大変だわ・・・。

ああ、ヒカリさんたら、いつもこんなプレッシャーに耐えて指揮してるのかしら・・・。もう、ドキドキだわ。

飛竜に会いに行く。

その飛竜を助ける。

お土産はクッキーが有効。

それらって、全部ヒカリさんが見つけてくれたことなのよね・・・。


とりあえずユッカちゃんにニーニャを抱えて貰って、3人で姿を消した状態で飛行して、飛竜たちが待機している森へ向かう。上空から見ればすぐわかるような言い方だったから、多分簡単に見つかるのかしら。メルマの街から東へ少し行ったところ・・・。あ、あそこに森の一部が原っぱになってる場所があるわ。きっとあそこね。


「ユッカちゃん、あそこの森の中の広場に着陸するわ。」

「ハイ」


私たちが着陸して様子を伺うと一頭の飛竜が此方を見る。そして口を開けて待つ。ひょっとして、この飛竜がヒカリさんの言っていたクッキーのお土産を待ってる飛竜なのね。


「ユッカちゃん、カバンを貸して。クッキーを取り出したいの。あと、飛竜の頭の兜から針が飛び出てないか確認してもらえるかしら?」

「わかった。」


私はユッカちゃんの例の不思議なカバンからゴードンさんが作ってくれたクッキーを取り出して、一掴み程度をその開いた口に放り込む。飛竜がもしゃもしゃとそのクッキーを食べ終わると、目を瞑って寝そべってしまった・・・。

この状態の方が兜を取り外したり、治療するにしても作業し易いからありがたいわ。


「ステラおねえちゃん、大変なの。」

「ユッカちゃん、どうしたの?」

「針がね。兜から一本でてるの。その針がね。木の根っこみたいに広がって、頭の中に刺さっってるの。これを引っ張ると、脳をぐちゃぐちゃにかき回して、体を動かす神経もズタズタに切っちゃうの。」


「え?」

「兜をこのまま外せないってことなの。」


「ニーニャ、判る?」

「大体わかるぞ。きっと針が植物の根っこみたいに頭の中で複雑に根を張ってるんだぞ。兜の部分と針の部分を分けて、そのあとで、針だけ取り出せるか考えると良いぞ。」


「わかったわ。ニーニャさん、まず兜と針を分けられるように兜を壊してでもいいから外して貰えるかしら。魔道コーティングとかあったら私も解除します。」

「いいぞ。簡単なコーティングなら私の工具類で壊せるから心配ないぞ。兜を傷つけていいなら、その辺は大丈夫なんだぞ。」


「ユッカちゃん、飛竜の頭の中の針が見えた状態をヒカリさんに<念話>で説明して貰えるかしら。私には金属の針が木の根の様に広がる魔術は知らないの。」

「いいよ。ちょっと待っててね。」


何なんでしょう・・・。この絶望的な無力感。

でも、仲間を信頼して指揮を執るってそういうことなのかしら。

ヒカリさんが前に泣きながら言っていた


『私なりに一生懸命で、皆について行こうと努力してただけ』


ってのは、この事だったのかもしれないわ。

その人たちの能力を最大限に活かせるように采配を振るいつつ、総合的に結果を出す力。当然、皆への協力の姿勢を惜しまない。

もっと、ヒカリさんに感謝して私も出来る限り協力をすべきね。

先ずはここをヒカリさんが居なくても乗り切ってみよう!


「ステラおねえちゃん、話しかけていい?」

「はい。」


「おねえちゃんは、こっちに来れなくて、『聞いたことからの想像だけだから、確認しながら進めて』って言ってた。」

「わかったわ。」


「あのね。

ステラおねえちゃんの魔術で金属が制御できないのであれば、科学的な力でその変化をさせた可能性があって、その方法は<形状記憶合金>を使うんだって。

<形状記憶合金>っていうのは、温度によって、その形を自由に記憶できる金属なんだって。金属の種類によって、温度と形状変化の限界はあるんだけど、<温度を変えて形状が変わるか>ここを確認して欲しいって。

そして、生物の頭とかは40℃ぐらいで壊れてしまうから、きっと低温側に冷やしていけば、単純な傘を閉じた状態の一本の棒に戻って、その傘が木の根の様に開いたんじゃないかって。

わかる?」


「ユッカちゃんありがとう。良く判ったわ。ニーニャさん、聞こえてたかしら?」

「聞こえてたぞ。これから兜と飛竜を分けるから飛竜を眠らせてくれると嬉しいぞ。あと、針の正確な継ぎ目をユッカちゃんに指示して欲しいぞ。」


「簡単な催眠なら私が行うわ。

ユッカちゃんは、飛竜の兜から生える針の正確な位置を教えてあげて」


皆が連携して、先ずは兜と針の分離をして、兜のみを飛竜の頭から外すことに成功した。次に私が頭から出ている針の部分を少しずつ冷やし始めた。


「ユッカちゃん、針の形に変化はあるかしら?」

「なんか、木の根が縮んで一本の棒みたくなっていくよ。これなら抜いても脳や神経にひっかからないよ。」

「わかったわ。冷やしながらこのまま私が抜いてみる。

ニーニャさん、兜の補修をすすめてください。この針が必要でしたら、私が抜くまでもう少しお待ちください。」

「いいぞ。なるべく同じ材料で加工した方が跡が残らなくていいから待つぞ。」


飛竜の体温で針が温まってしまわないように、針への冷却は継続したまま。でも頭の組織に付着しないように、ギリギリの温度で冷やしたまま。私の手から熱が伝わらないように、手もコーティングして冷却した方が安全ね。

さ、深呼吸してゆっくり着実に抜こう。


「ユッカちゃん、これから抜き始めるから、もし針の形状とか神経へのひっかかりが見えたらすぐに止めるから言ってね。」

「ハイ」


よし、あとは私の力を信じるだけ。

ぐぐっと抜き始める。特に密着してる様子もなく、柔らかいお肉に刺さった針を抜くだけ。倒した獣の筋肉に刃をいれるのとは全然違うわね。

ふぅ・・・・。

抜けたわ。


「ユッカちゃん、大丈夫だったかしら?」

「大丈夫だったよ。」


「ありがとう。ニーニャさん、こちらが針です。兜の修復おねがいします。」

「よし、始めるぞ。」


そのあいだ、開いた孔へ長老からもらった秘薬を数滴垂らす。そして表面の皮膚の修復をして治療を終了する。あとは、飛竜を催眠から解くだけね。

すると、早速念話が届きましたの。


<<エルフの子よ。お主の名前をなんという?>>

<<ステラ・アルシウスと申します>>

<<ステラよ。何が望みだ?>>

<<あ、ええと・・・。ヒカリさんを助けてあげてください。>>

<<何故おまえでなく、その<ヒカリ>という人間を助けるのだ?>>

<<私にとって、とても大事な人だからです。そして飛竜の皆さんを助けるように指示を出している人だからです。>>


<<何故、ヒカリ本人が来ないのだ?>>

<<今日、昼間に来たはずですわ>>

<<ロメリアの王子に媚びる娼婦なら来た。私に人間の食べ物をくれていったぞ。>>

<<その人です>>

<<娼婦が私に何の用だ。そして名前もリカと呼ばれていたはずだ。>>

<<ロメリアとの戦争を止めるための仮の姿です。関所の領主をしています。>>


<<まぁ、良い。ステラ、お主を信じるとしよう。そのヒカリが本当に戦争を止めるために我らを助けようとしているのであれば、それを証明して見せよ。>>

<<は、はい。ヒカリさんにはどのように伝えれば良いでしょうか?>>

<<飛竜の山へ行き、飛竜族の族長に会え。そして族長から<協力の証>が得られたらなら、また我々の元に来るがよい。それまでは、我々はロメリア軍の飛竜隊として行動する。判ったか?>>

<<はい。あ、あとこれは水の妖精から頂いた薬になります。どうぞ服用ください>>

<<そのような貴重な物は族長に渡してくれ。私はもう十分だ。お主らの幸運を祈る>>

<<はい>>


「ステラ、兜の修復が終わったぞ。これで外見からは針が除去されているかどうかわからないぞ。」

「ニーニャありがとう。ユッカちゃんもありがとうね。関所に戻って、ヒカリさん達が帰って来るのを待ちましょう。」


「ステラおねえちゃん、他の飛竜さん達は治さなくていいの?」

「そうですわね。ヒカリさんなら時間と道具の許す限り全員を助けるわね。

ニーニャさん、材料などは残っているかしら?」

「大丈夫だぞ。ユッカちゃんのカバンに兜を数個作れるぐらいは各種材料を準備してきたぞ。」

「じゃ、3人で残りの飛竜さん達にも同じように針の除去と治療をしてから帰りましょう」

「「ハイ」」


はぁ・・・。

飛竜の存在への恐怖、治療をミスできない緊張感、飛竜との念話への応答、そして仲間のケア。多重のストレスが一気に押し寄せたわ。

エルフの族長というのは、同じ種族の同じ文化や考えを共にしてきた仲間達に支えられた存在。けれど、歴史も背景も全く違う種族と対話して常に自分を打ち出しているヒカリさんの胆力はどこから来るのかしら・・・。

ヒカリさんと一緒に行動して学べることは多いわ・・・。

いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。

今後とも頑張って続けたいとおもいます。

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