13.街にでよう(1)
街にでる準備をする。
服はトモコさんのを借りるとして、
あとはエーテル使わずにレナードさんに
会う方法を考えておかないとね。
<<ナビ、トモコさんが取引していたレナードさんの情報を頂戴>>
<<エスティア王国の侯爵で、この森の所有・管理している人物。エスティア王国の城下町と逆側に40kmのところに侯爵の館があります。門番に『トモコが来たよ』というと、館の執事に面会ができる様です>>
<<侯爵ってなに?ええと、この国で、どれくらい偉くて、この土地のどんな責任者?>>
<<エスティア王国の中では王族>侯爵>伯爵>子爵>男爵の順位です。日本でいうところの都道府県知事みたいなものでしょうか。選挙ではなく、世襲制がほとんどです。侯爵まで陞爵しますと、国の大臣クラスを兼務されています>>
<<トモコさん、そんなに偉かったの?>>
<<この国では偉くないです。狩人です>>
<<夫のハンスさんが偉いの?>>
<<この国では偉くないです。狩人です。が、レナードの命の恩人ということになっています>>
なんか、ひっかかる言い方だね。
なんとなく分かる。けど、今はおいておいて今度じっくりきこう。今は私がレナードさんに会って肉を買ってもらえるかどうかが重要で、ここをなんとかしないとね。一応念のために、他に方法が無いか確認しておこう
<<レナードさん以外で冷蔵庫のお肉を引き取ってくれる人は?>>
<<ゴミとしてならば存在するでしょう。熟成肉という概念がこの時代にはありませんので、色が変色した腐った肉扱いとなります。トモコは熟成肉の理解者と冷蔵技術の情報漏洩の観点から、レナード以外と取引をした記録がありません>>
<<了解>>
それならレナードさん攻略しかないね。レナードさんに的を絞って情報収集を進めよう。
<<私がレナードさんの門番に「トモコさんの代わりに、お肉の配達に来ました」と、言った場合の相手の反応・対応を教えて>>
<<トモコの服装で、トモコの肉を持ち、冷蔵状態が保たれたままであれば、レナードに面会可能となります>>
<<ありがとう>>
レナードさんに会えるまではなんとかなるね。
(1)服を借りる
(2)奥の変色した熟成肉を冷蔵庫から選ぶ
(3)断熱材で包みつつ、エーテルで冷却して運搬
この順番に行動すれば良さそうだね。
でも、先に街にいってきた方がよさそうだ。
物価もわからない。
道も分からない。
危険性も分からない。
私の姿を見て、街の人がどんな反応をするかも分からない。
熟成肉の前に一般的な干し肉類を売りに行ってこよう。そうしよう。
ーーーー
昼食が終わってから、いろいろ作業をする傍らユッカに話しかける。
「ユッカちゃん、出発の準備をしたいから、お願いがあるんだけど」
冷蔵庫と調理場を行き来しているユッカちゃんに声をかける。冷蔵庫といっても、地下室に断熱材を厚く囲って、そこの内側に大量の氷が並んでいるだけ。
日本の昔の文化でいうところの氷室に近いね。ここにある氷自体はエーテルさんに頼んで増やしたり、温度を下げてあるんだろうね。冷蔵庫は電気がなくても、仕組みが判れば実現できる。
これってすごいね。
と、私はユッカちゃんに街へ出かける準備のお願いをしたくて呼び止めたつもりなんだけど、ユッカちゃんは作業中の足を止め、しゃがみ込んで泣き始める。ぐっと、こらえてから涙をこすって、立ち上がると私の方へ振り返って言葉を返した。
「お、おねえちゃん、もう行くの?いろいろありがとうね」
あ、ああ。誤解だよ誤解!
「ち、違うって。お肉とか売りに行くでしょ?そのときおかあさんの服を借りれないかなって。
それに私は世間知らずで何もできないから、できればユッカちゃんにも一緒に街にきて、いろいろなこと教えてほしいかなって」
いろいろ慌てて、説明だらけの言葉をつなげる。
すると、ユッカちゃんが太もも辺りに抱き着いてくる。
そして、まだ泣きながら喋る。
「いいよ。私もついていく」
「ユッカちゃんありがとうね。ところで、いつも街に物を売りに行くときは、どれ位の量でどんな種類もっていくの?」
「お肉、毛皮、魔石。毛皮が一番重くて、お肉は余分になった分。魔石は、おかあさんがちょっとだけもっていく。それで、パンの粉とか塩とかを買うんだよ」
「分かった。明日荷物の準備をして、明後日に近くの街に二人でいってみようか」
「うん」
解体したお肉をソーセージ、サラミ、ハム、ベーコン、干し肉用にそれぞれを分けて、保存食用に下ごしらえをする。
そして今日の夕飯はお昼の残りの細切れ肉の野菜炒め。
あ、顎が……。
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