3-27.飛竜見学会(1)
飛竜隊と一緒に飛竜見学会だ。
と、その前に・・・。
<<ナビ!>>
<<久しぶりですね。アイスクリームは上手くいきましたか?>>
<<こっち来る前に家族で作ってたからね。心配してくれてありがとう。
で、<飛竜>の件なんだけど>>
<<どういった情報をお探しでしょうか?>>
<<正直良く判らないんだよね。>>
<<翼竜、ロプロス、ワイバーンの違いでしょうか?>>
<<そうそう。私からしたらファンタジーの産物なんだよね。>>
<<では、以下簡単に。
<ロプロスについて>
某少年漫画の主人公をサポートする怪鳥ですね。
これは中身がロボットらしいので本件から除外しましょう。
<ワイバーンについて>
これはドラゴンをモチーフとする紋章に使われる形のこと。すなわち、トカゲのような翼を象った形状が<カッコイイ>から使われるようになったとのこと。
すなわち、伝承や物語が発祥ではなくて、デザインとして成立し、そこに後からお話が派生したと考えられます。
<翼竜について>
これはプテラノドンに代表される恐竜の化石から検証されている古代の生物です。検証が進むにつ入れて、単なる爬虫類よりは鳥類に近い性能をもっていることが恐竜の生態として判明しつつありますので、翼竜の種族は飛行性能や走行性能もそれなりに有していたと考えられます。
以上です>>
<<う~ん。生物としては翼竜しか参考になるものがないね。あとは形から入って、そこに伝説や物語が付与されてるだけなんだね。
むむ?この世界の<飛竜>についての情報を頂戴!>>
<<ピー。アクセス権がありません。>>
<<お。久しぶりにきたね。
じゃ、人間が<伝説やサーガ>として語り継いでいる<飛竜>に関する情報を集めて>>
<<ピー。アクセス権がありません。>>
<<ナビ?>>
<<はい。>>
<<私が日本の<飛竜>に関する話題は質疑応答ができるよね?>>
<<はい。>>
<<この世界にいる<ドラゴン>について>>
<<ピー。アクセス権がありません。>>
<<ナビ、ありがとうね>>
<<お役に立てず、申し訳ございません>>
<<ううん。<厳重に秘匿された情報>てのが分かっただけでも十分だよ。ありがとう>>
なるほどね。
飛竜とドラゴンの差も判らないのか。
ただ、魔術ランク7以上が想定されるから、<念話>は当然想定内として、
あとはどれくらい人間に対して許容してもらえるか。
あるいは、いきなり交戦状態に陥ることも想定して会話や探索を進めるべきか。
今日、メルマにいる飛竜隊の飛竜と会ってから情報をまとめていけばいいね。
今朝はナビとの会話を終えてから、クロ先生の指導を受けて、そこからピュアしてクッキー作ってと大忙しだ。ついでにゴードンに手伝って貰ってサンドイッチまで作ったよ。
今日はちゃんとユッカちゃんや関所の人に配れるようにゴードンに量産をお願いしたからユッカちゃんやお妃様から変なことにはならないと期待したい。
さてと・・・。
飛竜隊との挨拶とか交通手段はモリスの采配に任せて、こっそりと1参加者として控えてよう。ここで下手に注目集めると後あと面倒になるからね。
「モリス殿、おはようございます。本日の行動で提案があるのですが。」
「スレイ様、おはようございます。どういったご提案でしょうか。」
「昨日のパーティーをした女の子達と一緒にメルマに向かうことは可能であろうか?昨日のうちに飛竜隊の隊員たちと相談したところ、王族からの許可が出る可能性が高く、一緒にメルマに向かった方が、連絡に戻る時間が省けて良いのではないかという意見で一致したのだ。」
「はい。私の裁量で休暇とすることは可能でございます。飛竜の見学会の件は無理のない範囲で進めて頂ければと思います。もし、許可が下りない場合にはメルマの街中で買い物などを楽しんでくるように伝えます。」
「いやいや。万が一許可が下りない場合には、我々がショッピングに付き合おうと思うので、そこは心配しないで頂きたい。ただ、この提案にはモリス殿にも協力頂きたい事がありましてな。」
「どういった内容でしょうか」
「飛竜隊の全員が馬に二人乗りで女性を連れてメルマの街中を通過するのは、その・・・。傍目に噂になる可能性があってですな。できれば、この関所で所有する馬車をお借りしたいのだが。」
「それは全く問題ございません。見学会の有無にかかわらず、こちらで馬車は用意するのは当然のことです。馬車の運転は昨日の子らは全員心得ておりますのでご心配無用です。」
「それはありがたい。朝食を食べたらすぐに出発する方向で調整を進めて貰えるか?」
「承知しました。朝食は昨日と同様に皆で会食されますか?それとも娼館の皆様の部屋へ個別にお運びした方が宜しいでしょうか?」
「普段はどのように?」
「仕事のタイミングに合わせてそれぞれが食堂を利用します。今朝は飛竜隊の皆様に合わせて、まだ食事は摂ってない様子です。」
「では、皆で朝食をとる方向で進めてくれ。そして準備が整い次第、馬車と馬とで出発しよう。」
「承知しました。」
ーーーー
朝食は昨日のいい感じなムードが持続して進んだ。お互いの思惑を達成すべく、意気揚々と準備を済ませると、馬車と馬とで別々に出発した。これはお互いにハッピーな状態だね。
飛竜隊の皆は<許可を取りに行く>とのことで、先行してメルマに向かった。こっちは馬車でのんびりと2時間ぐらい掛けて進んだ。待ち合わせはメルマの街中の中央広場でごった返してる場所だったので、馬車を預けてから広場の目印の木の所へ向かう。既に飛竜隊のメンバーが徒歩で集まっており、集合までは何ら問題無く順調に進んだよ。
「スレイ様、お待たせしました。」
「ランちゃん、迷子にならなかったかい?」
「はい。道中特に問題なく、こちらの目印の木も分かり易く良かったです。」
「そうか。それでは早速飛竜の見学に向かいたいのだが、準備は良いだろうか?」
「ええっ(慌てて口を押える)」
「ああ。見学の事は重要な秘密事項だ。くれぐれも内緒で頼むぞ。また、目立つ行動は控えて貰いたい。」
「「「「「ハイ」」」」」
メルマの門を抜けて、30分ぐらい歩いた森の中に少し開けた広場のような場所があり、そこに5頭の飛竜たちが居た。立ち姿は3mぐらいある。翼は畳まれているから広げた大きさはちょっとわからない。
飛竜は背中に鞍のようなものを背負っていて、頭には金属製の兜を身に着けて、顎の下でしっかりと革ひものようなもので固定されていた。その兜の耳の辺りから手綱のようなものが垂れ下がっており、鞍から制御できるみたい。手、足、尻尾、翼などは自由に動かせるように配慮されてか、拘束ぐのようなものは何も見えなかった。
あれ?首辺りに刺さっている針とやらが見当たらないね。小さいのかな?それともまさか、兜の内側に針が突き出てて、兜ごと頭に拘束されてるとか?もしそうなら、手綱での制御も針を介して自由自在なのかもしれないけど、それって、ものすごい酷い話だよね・・・。
「どうだ?立派だろう?」
「す、凄いです・・・。」
「寝てるんですか?」
「餌とかあげるんですか?」
「乗れるんですか?」
「スレイ様、ありがとうございます!」
皆が好き勝手に喋り出す。本当にすごいもんだし、感動してる演出も上乗せしてるかもしれない。
「飛竜は今起きているよ。ただ、それぞれの御者には逆らえないから何もしないだけだ。当然木に縄で縛りつけるような必要もない。」
「餌は3日間でイノシシや羊サイズのを一頭ぐらいで済む。海なら大き目の魚を数匹毎日与えれば十分だ。」
「我々は当然乗れるさ。だが、君らを乗せることはできない。できるとしても、我々が背負うか、抱える形での騎乗になるな。」
「リカさん、私がスレイ様に頼んだ甲斐がありましたね。」
飛竜隊の皆もここぞとばかりに会話を続ける。
もう、なんだかぐちゃぐちゃだね。
さて、飛竜隊との会話をそこそこにして、本命の飛竜との接触を試みたいんだけどさ。
折角だから、最初は一番リーダーっぽいのを選んで対話してみたいよね。
あの一番奥にいるのが年寄りっぽい。あれは誰の飛竜だろ?
「ロメオ様、今回飛竜の見学会に誘って頂きありがとうございます。あの奥の立派そうな飛竜はどなたが御者になるのですか?」
「リカさんは、あの飛竜が気になるかい?あれは僕が御者を務めている。良かったら傍まで近寄ってみるかい?」
「はい!是非とも!」
二人して飛竜の傍まで近づいてみる。本当だったらここで<念話>とか試みたいのだけど、もしこの王子が飛竜側の心理状態を読んでると、私との念話で飛竜が動揺するのを捉えられるのは不味い。ここはグッと我慢だ。
「凄いおおきいですね~。話しかけたり触ったりしても大丈夫ですか?」
「ああ。僕が傍にいれば大丈夫だ。居ないときは防衛本能が働いて、何をするか判らないけどね。」
「へぇ・・・。飛竜さ~ん、カッコいいですね!」
「・・・。」
反応なし。見向きもされない。そのまま立っている後ろ脚の方に周って、撫でてみる。鳥の足とか爬虫類みたいな鱗状の皮膚に覆われている。
よく考えるとさ。鳥は羽毛があるけど、爬虫類は鱗は無いんだよね。恐竜にも鱗があったって話はきかないし。ファンタジーの題材の<竜の鱗>って、あれはなんなんだ・・・。
「ロメオ様、飛竜ってとても大人しいのですね。」
「ああ、繰り返しだけど御者が居るからね。多少の事では反応はしないよ。」
「のってみたりできるんですか?」
「う、う~ん・・・。飛竜の能力としては人間二人を載せて飛ぶことは出来るんだけどね。問題はロメリア王国の法律と飛竜隊の隊長の命令があるからね・・・。」
「ああ、すみません。私は興味はあるけど、ちょっと怖いのでいいです。飛んでる姿がみれたらカッコいいなぁって。」
「ああ、それなら。ちょっと待っててね。」
ロメオ王子が隊長の所へ何か話をしに行って、直ぐに戻って来る。
「リカさん、隊長の許可が出たよ。」
「寛容な隊長さんなのですね。」
「いや、今日は特別だよ。昨日のパーティーから隊長の機嫌も良いしね。じゃ、ちょっと飛んでみるよ。」
ロメオ王子が器用に手綱をひっぱりつつ、背中に固定されている鞍にまたがった。そして落下防止用と思われる安全ベルトのようなものを固定してから姿勢を整えた。兜に繋がっている部分を手綱で刺激すると飛竜が翼も広げず、立ち姿のままフワッと浮き上がった。
あ、これは・・・。羽ばたいてないね。風が来ないもん。完全に魔力で飛行術を使ってる。それでもって、森の上まで行ってから翼を広げて飛翔を始めた。あれは、多分飛行しているポーズや、方向転換を急速に行える手段なんだろうね。
ぐるっと、森の上を2-3周してから戻ってきた。着陸するときも翼は殆ど折り畳んだまま降りてきた。翼で風を舞い上げると周囲が散らかるから、この辺りの気遣いはいいね。
「ロメオ様、凄いです。飛竜隊って想像以上にかっこよくて、勇敢なんですね。こんな大きな竜を恐れず、そしてとても高いところで平然と御してるなんて・・・。」
「ああ。褒めてくれてありがとう。それなりに段階を踏んで訓練してるからね。」
「この飛竜に飛行姿を見せてもらったお礼に、お菓子をちょっと与えても良いですか?飛竜隊の皆様の分はお弁当と一緒に馬車に置いてきてしまって・・・。」
「うん。飛竜が食べるか判らないけど、小さなお菓子ぐらい大丈夫だよ。どうぞ。」
ロメオ王子が飛竜の兜についた手綱を引っ張って、飛竜の頭を下げさせてくれた。私は腰のベルトに付けた革袋からクッキーを取り出して、そっと口のところへ持っていく。
飛竜は胡乱な目でクッキーを眺めると口を開けてくれた。
開けてくれた口の中の舌の上に作ってきた小さなクッキーを載せる。
パクっと食べた。喜んでくれるかな?
「・・・。」
飛竜は無言のまま口を開いた。
もう一個置いてみる。
すぐさまパクっと食べた。
「・・・。」
また無言で口が開いた。
う・・・。これ、どっかで見たパターン。
無視すると念話が飛んでくるんだよね・・・。
「ロメオ様、飛竜さんが欲しいみたいだけど、あげてもいいのですか?」
「飛竜は制御のために感情も感覚も殺してあるはずなんだけどね。自分の意思で口を開けるのは珍しいことだよ。リカさん、食べられちゃわないように気を付けてね。」
「はい・・・。」
もう、しょうがない。
腰の革袋を外して、余計な物を地面におとしてから、
クッキー全部(10枚ぐらい)を飛竜の口にいれる。
今度はモグモグ咀嚼してから飲み込んだ。
「・・・。」
口が開いたよ。
無いよ。
どうするよ?
「ロメオ様、もうないんですけど・・・。」
「リカさん、ありがとうね。飛竜がこんなに御者以外の人に興味を示すことは無いんだ。よっぽどそのお菓子が美味しかったんだね。僕も欲しいよ。」
「あ、はい。街に戻って馬車に行けば皆さんの分もありますので大丈夫です!」
「それは良かった。飛竜はこのままにしておけばいいよ。そのうち諦めるさ。」
と、二人でその場を離れて皆の所に戻るんだけど・・・。
飛竜がこっちみてる。念話も使わずにこっちみてる・・・。
これは、なんとかしないとイカンね・・・。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




