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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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3-22.お妃様(2)

ああ、もう!

アイスクリームが融けるよ・・・。

質問攻めは終わりにできないかな・・・?

「他には?」

「え?」


「隠していることよ。」

「す、すみません。何のことでしょう?」


「ロメリアとの戦争に備えて、貴方が準備していることを全部いいなさい。」

「食料の確保の準備でしょうか。」


「そこよね・・・。貴方ですら準備が出来てないのね。」

「は、はい・・・。」


「農業しようにも、農地はないし。」

「ハイ」


「海上を行こうにも船はないし。」

「ハイ」


「メルマの自治権買ったからって、荷が自由になる訳じゃないし」

「ハイ」


「おかしなこと言ってるかしら?」

「言ってません!」


「言ってるのね?」

「わかりません!」


「ヒカリさんに判らないことがあるの?」

「無数に御座います・・・。ご容赦ください・・・。」


「分かったわ。どのような準備をしているか聞いても良いかしら?」

「はい。

1つ目は農地を耕やして自給率の向上を目指しています。第一期の収穫まであと2か月程度掛かると思われます。更なる拡張と安定した自給率のアップにはさらに3か月程度必要が見込まれます。

2つ目は短期的に農作物を購入する方法で、相談できそうな相手が到着するのをお待ちしている状況です。」


「この領地の人数は?」

「総勢で70人ぐらいです。正確な人数が必要でしょうか?」


「自給率が上がるのを待てないわよ。何人飢えるか聞いてないのかしら?」

「約3000人と伺っております」


「数十人で森を切り開いても、種まきすら間に合わないわよ。そこは分かってるのかしら?」

「あの、アイスクリームが・・・。融けます・・・。」


「私は食べてるわよ。食べてないのは貴方よ。何を遠慮してるの?」

「おねえちゃん、とけちゃったよ・・・。」


「モリス!ちょっと!」

「ヒカリさん、アイスクリームのお代わりでしょうか?」


「うちの農地をお妃様に見せてくる。いいね?」

「馬車がご入用でしょうか?」


「ううん。お妃様、ステラ、ユッカちゃんと私の4人で<ぶらっと>行ってくる。ここで話をしていても次に進まない。夕食会の皆と、ベイスリーさん達に<別々に>伝えておいて。」

「承知しました」


ーーーー


「お妃様、高い所は苦手だったりしますか?」

「さっき、ユッカちゃんに連れてきてもらったぐらいの高さなら大丈夫よ」


「承知しました。

これより、この領地での農地の準備状況を説明します。

ただし、飛行術の所有は<夕食会のメンバーのみ>の秘密事項になりますので、これからの視察内容は王子もレナードさんも存じ上げない事項になります。その時が来るまでご内密に頂けますよう、お願いいたします。」

「わかったわ。」


私が全部やるのは不味いから、ユッカちゃんにお妃様を抱えて貰うことにする。私とステラで挟むフォーメーションで飛行することにした。ただ、浮きあがる前に<光学迷彩>を使ってから、飛行開始ね。


上空から見ると、100haの帯状に開墾されてて、作物の種類とか種まきの状況で区画ごとに緑の様相が変わってる。相当広くて、働いている人とか牛なんかは人形以下のサイズだよ。だれが区画線を引いてるのか判らないけど、川の曲がりとか土地の起伏を無視して、東西南北に対して、きっちりと方位が整って区割りされてる。

今度はさらに上空に移ることで、まだ未開の平原が膨大に広がっていて、既に開墾が済んで種が撒かれているエリアは、とってもちっぽけに見えることを共有した。

最後は帰りがけに、野生の牛の群れがいたり、森の奥に石材切り出し用の山があることも説明しておいた。


ーーーー


で、帰還して再度会議室っと。


「ヒカリさん、騙したわね?」

「何をでしょうか?」


「私をよ。」

「私はお妃様を騙したつもりはございません。」


「農地が無いことに同意したでしょ?」

「はい。<今すぐに3000人分の胃袋を満たす、収穫間近の農地>は無いと判断し、同意しました。」


「そうね。あのままでは無理ね。でも、時間が経てば出来そうじゃない。貴方が指揮を執ってるのかしら?」

「奴隷の一人のベイスリーに任せています。」


「ベイスリーって、犯罪奴隷に落とされた騎士団長のことかしら?」

「その通りでございます。」


「悪くないわ。でも彼では数が足りないわね。精々50世帯の引退者の集団を呼び込んで終わりよ。100~200世帯を呼び込まないとダメね。」

「まだ、この領地には自給自足できる食料が無く、呼び込んだ人たちを養えないのです。かといって、急激な食糧の調達はロメリアからの諜報活動が活発になると予想されます。」


「いいわ。後でベイスリーに会いましょう。彼は<夕食会のメンバー>なのかしら?」

「いいえ、残念ながら。」

「わかったわ。飛べないし、どこまで広がっているか把握できてない人と話を進める必要があるのね。」

「その通りでございます。」


「空から見せたらダメなのかしら?」

「飛行術の所有を知られると、個別抹殺あるいは、敵の飛竜隊が制圧にくる可能性がございます。」


「準備すらさせてもらえないのね。」

「制空権を取り戻せれば、行動の自由が広がります。そちらは、敵方飛竜騎士隊の隊長から情報を得られないか検討を進めていますが・・・。」


「何か問題があるの?」

「娼館のお客様であるため、今後の娼館経営に信用がなくなる可能性があり、そこに踏み込めていません。」


「なら、娼館の外にその人物を呼び出して、自分で話したくなる環境を作ればいいだけね。その娼館に案内しなさい。」

「ハイ」


もう、関所が丸裸だね・・・。

いや、いいんだよ。

方向性もやりたいことも一緒で、私より深い知見と大きなスケールでもって、解決に当たってくれるからね。まして、私みたいに<神の奇跡>に頼ろうともしないし。真摯に現実と向き合って、着実に歩を進める姿は惚れ惚れしちゃうよ。


ーーーー


いつものごとく、一旦関所を出て、前庭を通って、門番の二人に軽く挨拶を済ませてからレイさんの館の正門をノックする。


「レイさ~ん、お客さん!」

「あら?ヒカリさん、いつもお疲れ様です。今日は女性のお客様で・・・。」


「レイさん!どうしたの!」

「ぐぅ。くっ・・・・。く、く、・・・。」


明らかに変だ。頭も痛そう、息も苦し気。いわゆるパニックってやつね。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・。ヒカリ殿、お見苦しいところをお見せし、大変失礼しました。ご、ご用件を承ります。」


「こちら、王子のお母さん。この前のパーティーで会ってるよね?」

「ハイ。お妃様に於かれましては、本日もご機嫌麗しく、臣下に属する奴隷をご訪問頂き、感謝の意を奏上いたします。」


レイさん、レイさん・・・。

私に対して敬語になってるよ。

お妃様への挨拶が通じてるかもしれないけど、私には理解できないよ。

まだ、声も上ずってるし、後ろに隠している手や足元もガタガタ震えている。

レイさんの調子、どうしちゃった・・・。


いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。

今後とも頑張って続けたいとおもいます。


ヒカリがお妃様を連れて飛行するシーンですが、誕生会のときにお妃様を連れてきたのがユッカちゃんで、ステラ、フウマが自力飛行したとしても、ヒカリ単体は飛行できないと移動が出来なかったはず。

そこをお妃様に読まれていることを承知で、ヒカリ自身が飛行して案内したという心理描写はくどいので省略させて頂きました。

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