3-08.妖精の救出(2)
よし!
闇の妖精救出に成功だ。
もし、氷の自動生成にヒントが貰えたら助かるんだけどなぁ。
どうなんでしょ。
<<ぴろろ~ん>>
<<ナビ、何?ここ前書きだよ>>
<<最近出番がないもので。>>
<<今回あるよ。>>
<<そうですか。あ、そうでは無くて、タイトルがおかしいかと。>>
<<救出終わっただろうって?>>
<<ハイ>>
<<本文で会おう!>>
もう、念話できるメンバー全員あつめてお茶をすることにした。
モリス、ニーニャ、ステラ、フウマ、ユッカちゃん
あと、シルフとウンディーネと私ね。
もう、このメンバーで国が取れるんじゃないかな。
そんな面倒なことはしないけどさ。
「今日、闇の妖精<クロ>さんを救出してきた。今、娼館に行ってる。情報が集まるまで、うちの関所で住んでもらうことになった。本人がしたいことは、光の妖精の行方、ウンディーネとの会話、自分が閉じ込められていたときの状況。私がお願いしたいことは冷蔵庫を魔術師無しで動作させることかな。」
「先ず長老とシルフだけど意見ある?」
「ワシは構わんのじゃ。冷蔵庫に使う水も協力するのじゃ。けれどシルフの力も借りないと、冷風が上手く倉庫内を巡らず、一ヶ所から氷が生成されて埋もれるだけになると思うんじゃが。」
「シルフは?」
「冷蔵庫の話はクロが居ればすぐだろ。それは構わないし、実際の物を作るのはニーニャと相談だろう。光の妖精の件が僕も気になる。対立しないか、そこは話を聞かないと判らない。」
「妖精さん二人は、光の妖精の話を除いて今まで通りで問題ない?」
「構わんのじゃ。」
「いいよ。」
「ありがとう。何かあったら話すだけ話をしてみて。解決できないことかもしれないけど、なるべくみんなで上手く行くように考えて努力するから。
ニーニャ、冷蔵庫の件は覚えている?」
「王子のお母さんが神器を貸してくれるって話だぞ。属性石3つか、妖精の長の結界があれば魔術師の魔力無しで動作できそうだぞ。」
「うんうん。それで、神器だけど前払いで貰って来た。はい。」
ユッカちゃんのカバンの中から、剣、指輪、ペンダントの3つ取り出して、机の上に並べる。
「ニーニャ、もう一個宿題もらっててね。<空飛ぶ馬車>も必要になった。」
「冷蔵庫はイワノフ達に作り方を教える。魔石と3人の妖精の支援があれば10年ぐらいは大丈夫だぞ。広さと冷やし加減は使いながら冷蔵庫担当が調整して貰わないといけないかもしれないぞ。
ところで、この<神器の剣>は誰のものになるんだ?」
「一応私がもらってるけど、ニーニャが居てくれてるならニーニャが自由に使っていいよ。」
「ヒカリ、大好きだぞ!調べていいか?必要な時には返すから言うんだぞ!」
「うん。今度、時間ができたら<空飛ぶ馬車>も一緒に考えてね。」
「いいぞ。」
「ヒカリ、そのペンダントを僕に見せてくれないかな。」
「はい。」
シルフにペンダントを手渡す。シルフの表情がこわばってる。作り物みたいな顔だからあんまり感情が表面にでないんだけど、なんか内に秘めたる何かが大きく揺れ動いているんだろうね。何かみつけたのかな。
「これ、僕が探していたものなんだ。僕はヒカリに何をすれば、これを貰えるかな?」
「あ、ええと・・・。他の人にも聞いてからにしたいのだけど、いいかな?」
「あ、ああ・・・。そうだね。自分のことしか考えてなかった。ごめん。」
シルフがそのペンダントを隣に座るウンディーネに渡す。
「シルフ!これは!」
「ああ、そうなんだ。結構いろいろな物を犠牲にして探していたんだけどね。やっとここで出会えたんだ。」
「ヒカリさんや、これをシルフにあげてやる訳にはいかないかのぅ?ワシでできることならなんでも手伝うのじゃ。」
「えええ?一応、他の人にも見て貰っていい?」
モリス、ニーニャ、フウマ、ユッカちゃん、そして最後にステラ。
「ヒカリさん、これ、光の妖精が閉じ込められていますわ。」
「流石はステラじゃのぅ。」
「そいうことなんだ。人間達にとっては大したことじゃないかもしれない。妖精達にとって、その長が封印されていることは、とても大きな問題なんだ。」
「あー。良い。良く判らないけど、妖精たちの判断でそのペンダントを自由にして良い。クロさんが戻ってきたら、一応意見を聞きたいけどね。」
「ヒカリさんや。妖精の属性の話もあり、混乱させるかもしれんが、光の妖精<ライト>はクロの子で、シルフの婚約者じゃ。」
「あー。全然わかんない。属性がオカシイ。結婚するとかの概念があるのも判らない。でもいい。クロさんとシルフで決めていい。私が決めた。みんないいね?」
「「「「「ハイ」」」」」
「ヒカリ、ありがとう。」
「ありがとうなのじゃ。」
「でさ、ひょっとして、この封印解くにはエライ大変だったりするの?」
「ヒカリさん、妖精の力と人間の封印はどっちが上とか無いの。その封印の解き方が判るかどうかですわ。」
「じゃ、クロさんが戻って来るまで、皆でこのペンダントの封印の解き方を考えよっか。」
「「「「「「「ハイ」」」」」」
ーーーー
各自が順番にペンダントを見ていく。楕円形の平べったいクリスタルガラスに金のわっかが付いていて、そこから金の鎖が伸びている。クリスタルガラスの中に人の像みたいな何かが写り込んでいるように見える。ガラス表面も外側の枠もつるつるで封印をしてあるとか、鍵穴のような細工があるとか全然わからないんだよね。
「ヒカリ、この金の枠の表面に何かを刻んだあと、もう一度、別の金を埋め込んだ跡があるぞ。ただ、さらにその埋め込みを剥がせないように魔道コーティングがされているぞ。」
「そういうことでしたら、私の出番かもしれませんわ。ちょっとやってみますわ。」
ステラが何かを読み取ってるのかな。触ったり、印を結んだり、詠唱を呟いたり。
<<ぽわわ~~ん>>
なんか音がしたね。コーティングの破壊に成功したのかな。
「ニーニャさん、魔道コーティングは剥がれたと思います。そこの埋め込んである金を除去してもらえますか?」
今度はニーニャが携帯用の道具を取り出して、ごしょごしょと磨いたり、削ったり、ほじくったりしてる。柔らかい金の上に、同じ金が載ってたら、同化しちゃうんじゃないかと思うんだけどね。わずかな純度の違いとか、載せた後の剥離層ができてたりするのかね。
ニーニャが汗かいて真剣な顔をしてるのはあまり見たことが無かった。簡単な事じゃないんだろうね。元の金に掘ってある文字を傷つけると封印自体にダメージを与える可能性もあるんだろうね。
「ヒカリ、文字を掘り起こせたぞ。私はこの文字は読めないから他の誰かが解読してほしいんだぞ。」
<<ナビ、この文字の言語をダウンロード>>
<<了解。日本語へ変換して文字を読み上げます
37962883695・・・
以上です>>
<<ありがとうね。数字ばかりなんだ>>
「誰か、この数字の意味わかる?
37962883695・・・
なんだけど。」
「ヒカリさん、ひょっとして、その数字列は・・・。裏側も全く同じですか?異なりますか?」
「モリス、ちょっと待っててね。」
<<ナビ、裏側もお願い。あと数字の起点とかあったら、その位置を最初で。>>
<<了解
285511393760・・・。
以上です>>
「モリス、
285511393760・・・。
って、読める。何か判る?」
「過去に解いた暗号変換を適用しますと、
『<ナイトメア>の名において封印を施す。風の妖精と闇の妖精による<孤立の封印>を用いて、ここに光の妖精の魂を封ず。』
と、割と意味のある言葉に変換できます。」
「モリス凄いね。変換式を覚えているのもすごいけど、口頭で喋ったのを聞いて、それを覚えて解読後を諳んじるってのもすごい。」
「皆様のお役に立てたならば幸いです。」
「次、<孤立の封印>を解除できればいいみたいなんだけど。誰かわかりませんか?」
「姉さん、<孤立の封印>と<孤独の封印>は違うものかもしれないけど、意味が似てるとしたら、人を埋葬するときにミイラ化させないで封印する方法があるって聞いたことがあるよ。妖精を生きたまま封印してるなら似た発想かもしれないね。」
「ユッカちゃん、それってお母さんたちをお墓に埋葬したときと同じことかな?」
「<魂>が無ければ、封印はできるよ。元に戻すときにはその逆だよ。」
「逆って?」
「シリカ成分を分離、除去するの。」
「それだと、このクリスタルが除去できるから良さそう。あとは魂がどうなるかだけど・・。」
「長老、シルフ、<妖精の魂>ってどう考えればいいの?シルフはその体を<器>って表現してたよね。」
「魂は魂。器は器じゃ。わしのこの体も器じゃ。器が変わればワシの容姿も変わる。容姿が変わってもワシの魂は水の妖精ウンディーネのままじゃ。」
「器はどうするの?」
「なんでもよいんじゃが、人型だと人間と一緒にくらすときに便利じゃのう。」
「シルフもそれでいい?」
「合ってる。」
「器は頻繁に変えない方がいいの?あと、魂のままだとすぐに消滅するとかある?」
「いろいろ消耗するんじゃが、お気に入りの器が見つかると壊れるまで使い続けるのが普通じゃ。妖精の魂自体は寿命で消滅するのじゃ。今回の<ライト>の様に封印されておっても魂自体は消滅しないのじゃ。」
「なんでもいいってこと?」
「本人が気に入る・気に入らないは、ワシは知らんのじゃ。ただ、魂だけだと具現化してるときほど妖精としての力も発揮できないし、人間との交流もできないのぅ。いろいろと不便じゃな。」
「シルフ、どんな器がいいか決めて」
「ぼ、ぼぼぼ、僕は・・・・。」
「ユッカちゃん型?」
シルフが顔を真っ赤にして俯く。
「ユッカちゃん、体の形をもらってもいい?」
「私の妹?」
「そんな風になるかもね。成長しないかもだけど。」
「いいよ。」
「ニーニャ、レイさんのところにあるみたいな、大理石の彫刻でユッカちゃんの形を掘って欲しいのだけど、どれくらい時間がかかるかな?」
「石と道具があって、モデルが居るなら明日の朝には終わると思うぞ。私はやらんぞ。イワノフのところに得意なドワーフが居るから頼んでくるぞ。」
「早速お願いね。」
「じゃ、ユッカちゃん、シリカ成分の除去を開始してね。」
「ステラ、ユッカちゃんサイズの服を一枚欲しいんだけど、なんとかなるかな?」
「エスト達と相談してみますわ。切り詰めて使えそうな服があるかもしれないので。無ければ私の自作で我慢してくださいね。」
「モリス、ここで皆で夕飯にしよう。クロさん以外の分もお願い。」
そこからはてんやわんや。
服がどうの。
ご飯がどうの。
彫刻がどうの。
肝心のクロさんが帰ってこないのね。
ご飯も食べずに寝たらしい。
まぁ、いいや。
ウンディーネとゴードンさんがハーブティーやら<ミルクテロン>やらクッキーやら、いろいろ差し入れしてくれた。で、夜明けも近づいてかなり冷え込んできたころになって、声が掛かった。
「ニーニャ殿、こちらの彫刻は終わりました。修正が無ければこれで失礼します。」
「ヒカリさん、服はこんな簡易なものですみませんが、一応肌は隠せます。」
「ありがとう。お疲れさまでした」
と、石像と服が完成する。最後にユッカちゃんから声が掛かった。
「おねえちゃん、溶けたよ。」
「ありがとね。」
確かに金の輪っかだけ残して、クリスタルが無くなっている。そこにぼんやり浮かんでいた人型みたいなのも無い。でも、肝心な光の妖精<ライト>が見えないんだよね。長老とシルフも疲れて寝ちゃってるね。
しゃあない。エーテルで探査だ。
・・・。
ユッカちゃんに似た金髪の女の子が机の上のクッキーとかミルクテロンの器を舐めてる。目の色が黄色だね。光の反射では金色にも見える。
でも、なんだか不満げだね。そりゃ、そうか、実体がないんだからさ。いろいろ不便なんだろうね。
<<ライトさん、そこの石像を器として使っていいですよ。>>
<<誰?>>
<<ヒカリって言います。お父さんも婚約者も無事ですよ。>>
<<ヒカリさん・・・?この世界の人では無いわね。>>
<<縁あって、主神よりこの世界に転移させてもらいました。そこに居る小さな女の子以外は知らないので、皆には秘密でお願いします。>>
<<ナイトメア本人でないのに、あの封印を解いたの?>>
<<私ではありませんが、私の仲間たちが力を合わせて解呪してくれました。>>
<<貴方の仲間達にナイトメア本人が居るのでは?>>
<<それは考えていませんでした。この部屋で寝てる人で全員だけど、判りますでしょうか?>>
<<調べさせて>>
<<はい。>>
部屋中の全員をいろいろ調べて周る。ついでに石像も確認してた。
<<ヒカリさん、ウンディーネとシルフがいるわ。>>
<<はい>>
<<それに、奴隷の印もついてるじゃない。誰がそんなことしたの?>>
<<あ、え、ええと・・・。>>
<<何?言えないことでもあるの?>>
<<ここにナイトメアが居ないと確認できましたら、その石像に入って頂いてもよろしいでしょうか?私が嘘を言っているか皆の態度からも確認できると思います>>
<<ナイトメアやその奴隷印が付けられた者はいなかったわ。
けれど信用したわけではないわ。いつでも器を壊して逃げられるんだからね!覚悟しなさい!>>
<<はい。お願いします。>>
なんで私が怒られてるんだ・・・。
一応、救出成功ってことでいいよね?
この先どうなるかわからんけど・・・。
ユッカちゃんの形をした石像が動き出す。
大理石の白色が柔軟に動き出すと白みを帯びた透き通った肌色に変化する。
髪の毛はユッカちゃんが茶色なのに、この子は金髪。
目の色はユッカちゃんが鳶色なのに、この子は金色。
ユッカちゃんが日本風の少し目じりが下がっているのに、この子はちょっと釣り目の厳しい感じ。
石像のときは、こんな印象なかったんだけどなぁ。
魂って凄いよ。
「貴方!妖精に奴隷印をつけて何のつもり!
エルフの族長もロマノフ家のドワーフにも奴隷印がついてるじゃない!
死をもって償うべきよっ!!」
私の内股から小さなナイフを奪い取ると、いきなり私の胸に突き刺した。
ナイフが刺さった部分から赤い液体がどぼどぼと流れ落ちる・・・。
「ぐぅ、くっ・・・。」
・・。
・・・。
・・・・・。
これでヒカリの運任せの冒険は終わってしまった・・・。
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




