10.狩人になろう(2)
本当に狩人の仕事をしているの判らないけれど、
研究大好きの性なのか、なにやらエーテルを自分で動かし始めます。
複数の桶に内蔵や肉の部位を分けて納める。先ほど冷やしているので、どれも冷え冷えで、そして獣特有の臭みが漂ってこない。教科書や本では習わない何かがここにはあるね。
「おねえちゃん、皮とか骨とか欲しいです?旅の荷物の邪魔になるなら埋めちゃいます」
「あ、えっと。おかあさんは普段どうしてたのかな?」
「よくわかんない。洞窟で皮を作ってたみたい」
「2-3日、捨てないでとっておく方法あるかな?その間にどうするか考えたいんだけど……」
「う~ん……。おねえちゃんを助けたいけど、今日は私は疲れちゃってるので、谷底のおかあさんのときみたいなのは、エーテルさんにお願いできないです……」
「あ。自分で後でやってみる。ありがとね。
ところで、ここの後処理はしなくていいの?簡単なことなら私が代わりにやっておくよ?」
「ピュアを20回ぐらいやって、臭いを飛ばして怖い生き物がこないようにするの。そのあとで、この辺りに流れている血とか、汚れているのを片付けるの。それが終わたら、最後にもう一回全体にピュアをかけるの。」
「わかった。丁寧におしえてくれてありがとう。わたしがやっておくからユッカちゃんは休憩してていいよ」
ーーーー
さて~。ピュアを20回ぐらいだよね。
せっかくだから、いろいろ試してみよう。
まずは、最初に習ったように……、
「エーテルさん、ピュア~!」
と、ぐっと握りしめたこぶしを開きながら万歳する。自分の周りだけ、臭いがおさまったきがするけど、この辺り一帯の状況は急がないと不味いね。
次に、喋らないでピュアを頭の中で念じて、そこから握りこぶしと万歳の動作を添える。
あまり、さっきと様子が変わらない。ナビが教えてくれた『脳内の思念による干渉』だとしたら、意図がエーテルに伝わればいいのだから、結果は似たようなもんだってことだよね。
3回目は万歳の動作も省略してピュアを念じてみる。あ、あれ?あんま変わらなくない?てか、ほとんど変わらないよ。
<<ナビ、まだ情報をくれなくていいいよ。見てて。笑ってもいいけど、私に聞こえないように>>
<<了解>>
研究の基本は因果関係を掴むこと。そしてその因果関係を掴むためにパラメータを振ってそのランダムな状況から関係性を掴むことができればその本質となるメカニズムにたどり着ける。
ピュアはあくまでイメージであって、トモコさんがユッカちゃんに上手く伝える方法。思念波とか説明してもわからんもんね。
と、すると……。
「声に出す」「ぎゅっと力を溜めて、万歳をする」
これらは、脳の思考をそこに集中させるための触媒的な役って考えられるよね。
じゃ~~~。
臭いを除去するってことは、周囲にある分子の濃度を薄めるか、森の上空へ流すことがで出来ればいいはずで……。
<<ナビ。貴方を呼んで会話をするときと、魔法を使うために思考して思念波をだすので大きな違いはある?>>
<<ヒカリが情報をとりたいときに情報を提供するのが私の機能です>>
<<ありがとう>>
すごいシンプルな回答。
そして謎を解く楽しみを奪わない親切な回答。
じゃ、私のイメージでいける可能性があるね。
<<付近のエーテルさん、この解体跡の雰囲気に対して、周囲から空気を呼び込んで上昇気流に乗せて。そして、ここの雰囲気を森上空へ運んでください>>
すると、森の周囲から風が流れ込んでくる。そしてなんら仕掛けがあるわけでもないのにこの解体跡を中心に空気が上昇していく。私がそうあって欲しいと願っていれば、その間は持続しそうだね。
よしよし。ピュアを使ったやり方とは違うけど、目的は達成できてるね。
次に、この血とかお肉の破片みたいのとか、残っちゃってるやつね。
『汚物は消毒だ~』とかって、火炎放射器で燃やす。
いやいやいや……。
炭化させてしまうのは悪くないけど森が壊れるね。仮に今回の血肉に限定して炭化できる方法があれば、それはそれでありかもしれないけど……。
微生物による分解を促進させる
これは有だね。ただ、大きな塊の処理に時間がかかるようならこの上昇気流をずっとお願いし続けているのはちょっと面倒。夜に獣がよってきたらいろいろと不味い。
穴をほって埋める
悪くない。肉体労働系。
掘る道具とかあるかな?ユッカちゃんに聞いてみよう。
ただし、上昇気流の思考はつづけたままでね。
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誤字などの修正は行っていますが、本筋に影響はありません。




