01.エレベーターの中
ここからヒカリの異世界への旅の始まり~~。
それなりに恵まれた家庭で育った。
理系の本を小学生の頃から好き好んで読んで、夏休みの自由研究も自由にお金を使わせてもらった。親からの遺伝子もあったのだろうけれど、自分で一通り完成させて県内のコンクールで毎年入賞できるレベルだった。
より進んだ「自由研究」をするためには包括的な基礎学力が必要だと分かった。大きな望みのために、大学へ進学するための受験勉強をすることを決意。そして、理系として割と有名な大学に進学が決まった。
よ~~し!
こっから自由な研究ができるはず!
と、意気揚々と専門書を求めて、ある書店のエレベータで移動中に突然それは起こった。
エレベーターがガタガタと激しく揺れたと思うとシャッフルシャッフル!
私はその衝撃で気を失ってしまった……。
目を覚ますとエレベータが非常停止の状態。
頭を打った痛みはあるけれど、その他骨折などしてない様子。
周囲を見渡すと非常灯が薄暗くついている。
っていうか、これ、斜めってない?
なんで、斜めになっていてもエレベータ落下していないのか不思議。あるいは、建物ごと斜めになっちゃったとか?まぁ、放っておいても仕方ないので、斜めになった上方にある扉の脇のボタンまでなんとかたどりついたよ。
【開】ボタンを押す→反応なし。当然か。
【閉】ボタンを押す→反応なし。なにやってるんだろ……。
【呼】ボタンを押す。初めて押してみた♪
すると、スピーカー越しに、
『呼んだ?』
って、返事が聞こえた。
いや、ちょっとまってね?
助かりたいです。閉じ込められてます。
かなり、ヤバイ状況ってのは分かってます。
だから、いろいろボタンを押すわけで……。
っていうか、普通はそんな反応じゃないでしょう?
『大丈夫ですか!』とか『今開けます!』とか、なんかそういうの。
『呼んでない?』
と、また声が聞こえた。
「すみません。助けてください。エレベーターの中に閉じ込められました」
と、縋る思いでスピーカーに向かって返事をする。
『助からないよ?』
「え?いや、助けてください。がんばりますので」
『無理だし』
「あ、いや、私は今、生きてます!
できることならなんでもします。
出来る限りのお礼もしますので、どうか助けてください」
粘るよね。
そりゃそうさ。
これからやっと自由な研究を始められるっていうのときにさ。
なんとか、なんとかならないかな~。
外が相当酷い状態なのかな……。
でも、そこをなんとか……。
『なんでもするの?そして生きたいの?生きて、研究したいの?』
「はい!私ができることならなんでも!研究までできるんですか?」
てか、私は研究のことしゃべってないよ。
身内?
あれ?
『そっか~。異世界でもいい?』
なんか、ファンタジーな返事がきた。
2020.04.12
改行位置等を修正しました。
内容は変わっていません。