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神に愛されている俺が一番不幸な訳 〜愛を知らない最強ボッチの伝説〜  作者: 鷹宮 真
異世界生活の始まり ~大いなる歴史~
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燃えるドラゴンと不幸 2

投稿ペース落ちてます。すみません。

誤字・脱字あればすみません。

俺はドラゴン達の元にいるエリナのところへ走った。自分のしてしまった罪に恐れて。


「どうして私の大切な街を……ギルドを壊したんですか!」


そこにはまだ俺と同じ17歳の少女が、自分の4倍以上もある三体のドラゴンに臆せず抗議する姿があった。今はもう壊れて無くなったギルドのあった場所で、無くなったギルドのため、そして街のために。


「どうして! 答えてください!」


フェイルスは少しバツが悪そうな顔をした。根は優しい性格なのだろうか、済まなかったと前置きしてから俺の方を見てこう続けた。


「そっちの若造にも言ったが、わしの大切な森をお主らに壊されたからだ。しかし犯人がお主たちとは限らないのに同胞が済まないことをした」

「えっ……ファルアの森が壊された……?」


フェイルスは頭を下げて謝ったが、エリナは最初の部分で少なからず衝撃を受けたようで固まって聞いていなかった。俺はしょうがなくエリナの横に並び言葉を繋げた。


「ああ、焼かれたように荒れていたらしい。どうみても人の手によるものらしいんだ」


(そして、多分それは俺の仕業だろう。狼に襲われた時に引火して火事を起こした森がファルアの森だったんだ)





ーー俺の不幸は周りを巻き込む。


自分に起こった不幸が伝染して他人をも不幸にする。前の世界からそうだった。異世界に来て変わったと思っていたがそんなことはなく、俺は不幸を味わい、他人をも巻き込んだ。


そんな俺がするべきことは一つしかない。





ーーそれは、その責任を取ることだ。





「エリナ悪い。このドラゴンたちと話がある。少し席を外してくれ」

「……あ、はい。それなら、私はみんなにこのことを話して来ます」


エリナはそれまで固まっていたが、その言葉で我に返ったようで被害の出ていない街の方に走り去った。これでここにいるのは、俺とドラゴン三体だけである。


「それで若造、話とはなんじゃ?」

「ああ、フェイルス……様」


俺はそこで一回区切って、それからーー





その場で丁寧に土下座した。


「すみませんでした! ファルアの森を焼いてしまったのは俺です」

「なんと!? そうだったのか」


フェイルスは静かにそう言った。残りの二匹のドラゴンは咆哮したが俺の体が炎で焼け焦げることも、爪で切り裂かれることもなく、恐る恐る顔を上げるとそこには二匹のドラゴンを止めるフェイルスの姿があった。


「何故だ!? フェイルス様、こいつは俺らの森を壊した犯人だぞ!」

「だからといって何もかもやり返せば良いという訳ではない。どんなものでも、ことでも、理由はあるのじゃ。お前らも先の娘を見習え。まずは歩み寄ることが共存の一歩に繋がるのじゃよ。それに理由を聞かぬままとはいきまい……」

「理由を聞いたからって何になるんだよ!」

「こいつをどれくらいむごく殺してやるか決めるのに必要じゃろ」


そう言ったフェイルスの目が顔を上げた俺の目とあった。鋭く全身を凍てつかせるように尖った眼光が俺を捉えて離さない。肉体的恐怖がこみ上げ、俺はこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。


(こ、殺される……逃げないとし、死ぬ……)


そう思いドラゴンたちに背を向けようとした時、不意に全身を悪寒が駆け巡る。


(な、なんだ……これ……?)


俺の体は完全に硬直して動かなくっていた。まるで蛇に睨まれた蛙のように。


「若造、動かないようだがどうかしたのか」


フェイルスと二匹のドラゴンが近寄ってくる。フェイルスは口元を隠しクックッと小さく嗤い、二匹のドラゴンは声を張り上げ大笑いしながらである。


(フェイルスのせいか……体が動かねぇ……!)


「もしやワシの前で背を向け逃げようとしたのではあるまいな。たかだか人間如きが逃げれるとでも思うたか」

「て、てめぇ……」

「そっちがお主の本当の顔か。怖いのぅ」


そう言いフェイルスたちは嗤う。


(このままだと、マジで死ぬ。だけど逃げれば街の人が攻撃される危険性もあるし、どうすれば……そうだ、あれさえあればーー)


俺は屋根すらも壊れて瓦礫しかない店内に目を配る。そして目当てのそれを見つけた。


「もう良い、逃げようとした腰抜けの相手はつまらん。お前を殺した後さっきの娘をいたぶることにしよう」


フェイルスのそれに同調して二匹のドラゴンはまた嗤う。そしてフェイルスは動かない俺に鋭く尖った爪を突き立てーー


「いくら自分が不幸だろうが……俺は他人を巻き込むことが一番嫌なんだよ!」


あと数ミリのところで俺は後ろに跳んで避けた。そして素早く立ち上がり、金髪から奪ったバタフライナイフを取り出す。それをカチャカチャとして刃を出し、フェイルスに向ける。


「エリナのところへは行かせない。俺がここでお前らを止める」

「ほう、一度逃げようとしたお主が刃向かうか。面白い、あんまり早く死んでくれるなよ同胞たちの無念が果たせなくなる」

「俺もお前の森の狼もどきには痛い目合わされたからな。その分の借りは返させてもらう」

「俺らもやりましょうか、フェイルス様」

「お主らは下がっておれ、ワシが一人で片付ける」

「俺は別にどっちでも良いぜ、まぁ逃げたいって言うならそれでも良いがな」

「抜かせ、若造が。お主如きワシ一人で十分じゃ」


(これである程度焚きつけることが出来た。あとは目的のあれを取ればいいな)


フェイルスの後ろ、店が壊れる前はカウンターがあった場所にある二つのバッグが俺の狙いである。


「余所見か若造!」

「おっと」


ほんの一瞬、バッグに目をやった隙にフェイルスの爪が俺の喉元に伸びてきた。俺はかろうじて避けることに成功したが、少し切れたのか血が垂れる。


(さすがドラゴンだぜ。早くて避けれたのが奇跡みたいだ)


「あれを避けるか。人間にしては、少しやるではないか」

「そりゃどうも」


フェイルスの息は全く上がっていない。依然余裕な素振りでジッと俺を見つめてくる。


(一瞬でも目を離せば即死だな)


俺は視線を外さず、そっと上着の胸ポケットに手を入れ目的のそれを取る。フェイルスは俺が手を入れた瞬間に詰め寄って再度爪で引っ掻こうとしたが、先ほどとは違って視線を外していなかった俺は後ろに若干引くことで避ける。そして俺は手に持ったそれを間近にあるフェイルスの顔に向ける。


「くらえ、人類の発明。防災時役立つ懐中電灯の力を見ろ!」


俺は手に持った懐中電灯の電源を入れた。光はちょうどフェイルスの右の眼球にあたりーー


「ぐわぁぁっ」


フェイルスはその場に膝をついて、目を抑え苦しむ。俺はその隙にフェイルスの肩に足をかけて踏み台にし、後ろのバッグがあるところまで跳んだ。そしてバッグを背負う。二匹のドラゴンは呆然としていたが、すぐに我に返ったように俺に向かって炎を放つ。フェイルスもすぐに痛みが治ったのか炎を放つが、しかしそれを軽々と避け俺はーー





すぐさま後ろを向いて街とは逆、つまり森の方に向かって逃げ出した。


「悔しかったら俺を殺してみろ、ドラゴン風情が」


フェイルスたちは激昂し追いかけてきた。


(これでいい、作戦通りだ)


俺は心の中で静かに笑い、エリナにそっと別れを告げた。


(さよなら)




読んでくれてありがとうございます。


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