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神に愛されている俺が一番不幸な訳 〜愛を知らない最強ボッチの伝説〜  作者: 鷹宮 真
異世界生活の始まり ~大いなる歴史~
6/19

度重なる不幸

誤字・脱字あればすみません。

まだ主人公のキャラがブレてます。すみません。

「……うっ……! こ、ここはどこ……だ?」


目を覚ますと見知らぬ天井が俺を出迎えた。シャンデリアが眩しく目を細めてた俺に答えたのはマスターの女だった。


「ここはギルドです。すみません、大丈夫ですか?」


(そうか、シンジャオリースを食べて死にかけてたんだった。それにしてもさっきの夢……最後のって——)


「——ますか? 大丈夫ですか?」

「ああ、悪い。考え事してた。大丈夫だ」


(話しかけられてるの忘れてた。考えすぎるのも俺の悪い癖だな)


すると突然マスターは笑い始めた。


「フフッ、良かったです」

「……? 何で笑ってるんだ?」

「だってさっきと話し方が違うんですもの」

「……っ!! 」


言われて俺はその時やっと気づいた。自分が普通に喋っていたことに。今までこんなことは一度も無かったので、あまりの衝撃に俺の思考は完全に機能停止していた。


(そ、そうだった。俺が他人と普通に喋れていたなんて。それにしてもさっきの言い方……嫌われたんじゃないだろうか。別に嫌われても良いのだが、感じ悪い喋り方だった気がするし、なんか本当は嫌な奴だったみたいに思われることが嫌ってことは誰に対しても思うことで、それで、その——)


「あの、また固まってるんですが大丈夫ですか?」


心の中で早口に色々言い訳していた俺はその一言でようやく落ち着きを取り戻した。


「あ、は、はい。だ、大丈夫です」

「……喋り方」

「あ、さ、さっきはそ、その、それまで気を失ってて、お、思わず素が出たというか何というか、その——」


そんな俺の言い訳にもなってない言い訳を遮りマスターはこう言ったのだった。


「私、さっきの喋り方の方が好きです」

「…………へっ?」


あまりに唐突なことだったので思わず変な声が出てしまった。


(こ、この人は何を言っているんだ。いや、待てよ。俺が好きと言われたわけではないのに何を焦っているんだ俺は。と、とりあえず落ち着いて)


「そ、そうですか。あ、ありがとうございます」

「……さっきの喋り方になってくれないんですね。残念です」


唇を少し尖らせてそう言ったマスターは口惜しそうにしていた。


(なんで残念そうなんだ? というか急に可愛らしいのだが)


「そういえばまだ名乗っていませんでしたね。私はエリナって言って、ここのマスターをしています。先程は私の料理のせいでごめんなさい」

「い、いえいえ。お、お気になさらず。俺はみ、翠って言います」

「翠くん……ですか。良い名前ですね」

「そ、そうですか? ありがとうございます」

「そういえば寝ている時うなされていたようですが、何か悪い夢でも見てたんですか?」

「あ、す、少し怖い夢を見て——」


その時俺は物凄く大変なことに気づいてしまった。俺は目が覚めてそのままの姿勢、つまり寝たままの状態なのだが、何故かエリナさんの顔が近い。別にしゃがみ込んでいる訳でも無いのにだ。それに枕も柔らかい。


(こ、これって……ま、まさか……!)


俺は勢いよく起き上がった。エリナさんが驚いて顔を避けてくれたためぶつかることは無かった。


そして案の定俺は膝枕をされていたらしい。

座ったままのエリナさんが急に立ち上がった俺にキョトンとした顔を向けている。


「す、すみません。そ、その膝枕してもらってたなんて、き、気付かなくて……す、すみませんでした」

「あぁ、いえいえ。気にしないで下さい。好きでしてただけなんで。急に立ち上がったからビックリしましたよ」

「す、すみません」

「それで怖い夢ってどういった——」


バゴォオォォオォン!!


エリナさんがまた話を戻そうとした時、急に入り口のドアが蹴り破られた。エリナさんは小さく悲鳴を出し、俺が庇うように前に出る。蹴り破られたドアからは複数人の若い男たちが中に入ってきた。その中の金髪で柄の悪いジャケットを着た、いかにも街の不良って感じのやつが、リーダーなのか一人近づいてきた。


「こ、この人たちは?」

「新しく出来たギルドの人たちです。ここを売れといつも言ってくるんです」

「よぉ、マスターさんよぉ。これでも客だぜ。そういう言い方はねぇんじゃねぇか」

「何も頼まないなら帰って下さい」

「ケッ、誰がお前の飯なんて頼むかよ。それにしても相変わらず客いねぇな。そろそろ俺らに譲ってくれねぇかな」

「ここは父から任された大事なギルドなんです。だから売れません。帰って下さい」

「はっ、こっちもはい、そうですかとは帰れねぇんだよ。ウチのマスターもかなり怒っててな。何としてでも手に入れろだってさ」

「……!?」

「言ってる意味分かるよな」

「だ、だとしても渡すわけにはいきません!」

「そうか。なら——」


男はそう言い右の拳を大きく引いた。


「力づくで奪わせてもらうぜ!」


同時に金髪は正面突きを俺の後ろにいるエリナさんの顔めがけて繰り出した。エリナさんは咄嗟に目を瞑った、しかし顔に拳が当たることはなく男の手はピクリとも動かなくなった。


「て、てめぇ……!!」


エリナさんはいつまでも拳が当たらないことに違和感を感じたのか、そっと目を開き息を呑んだ。


「み、翠くん!?」


俺の左手が男の右手を掴んでいたのだった。


「う、動かねぇ! どうなってやがる!?」

「それはそうだろうな。だって俺が掴んでいるんだから」

「何だと、てめぇ!!」

「落ち着け、何も喧嘩しようって気は無いんだ」

「あ? おい、てめぇらこのガキやっちまえ!」


それまで入り口で待機していた男たちが一斉に近づいてくる。エリナさんを近くのテーブルの後ろに避難させ、金髪のリーダーをそいつらに向けて投げ飛ばし一人、前に出る。5人の男たちはリーダーを受け止めてから俺を円になって囲み、そしてその内の一人が殴りかかってきた。


「チッ、やれ」

「「おぉぉぉぉっ!!」」

「翠くん、後ろ!!」

「だから落ち着けって」


俺はそいつの攻撃を軽くいなし、後ろから迫っていた別の男に横蹴りを繰り出す。最初に攻撃した男は前のめりになって転びかけ、その顔面に膝蹴りを繰り出した。二人の男たちはその場に倒れる。その様子を見ていた金髪のリーダーは目を見開く。


「ば、バカな……!?」

「少しは落ち着いたか?」

「う、うるせぇ! 他のやつもかかれ!!」

「「「おぉぉっ!!」」」

「まだ続けるのか、面倒だな」


一人の男がまた殴りに来たので、とりあえず俺は近くに転がっている二人を両手で持ち、そいつに投げてやった。残りの二人は一瞬怯んだが、すぐに気をとりなおし、殴りにくる。


「はぁっ!!」


俺はそれを難なく躱し、そこをもう一人が殴るもさらに躱す。


(連携はそれなりに良いが攻撃が単調過ぎる。異世界って聞いたから魔法とか剣とか使ってくると思ってビビってたんだけど、これじゃあ少し強いただのチンピラだな)


考え事している間も殴られてたらしい俺は、しかし全てを躱していたらしく二人の男たちは息を切らしていた。


「まだやるのか?」


目つきを鋭くして、かなり低い声で聞いてみる。チンピラ二人はビビって止まったけどリーダーが怖いのか、それでも俺に殴りかかる。


「あ、そう」


二人は交互に正面突きを繰り出した。しかし今回は避けず、その拳一つ一つに俺は全力で拳を合わせにいった。骨と骨とがぶつかる音が複数回鳴る。しかし徐々に男たちの殴るペースが遅くなりそして——


「 「ま、参った……」」


二人のチンピラは手を抱えながらその場に座り込んだ。


「おい、てめぇら! ガキ一人に何手こずってんだ!!」

「あんただって最初やられてただろ。俺に」

「調子乗るなよ、ガキが!!」

「やれやれだぜ……今日も不幸が続くなぁ」

「あ、不幸だ? ケケッ確かにな。俺を怒らせたことが一番の不幸だ。死んで後悔しろガキが!!」


金髪はそう言い後ろからバタフライナイフを取り出した。カチャカチャと開けたり閉じたりしながら、徐々に近づいてくる。


(マジか、武器使うのかよ。こりゃ強盗クラスにレベルアップだな。それにしても——)


「それ、かっこいいな。俺にくれよ」

「あ? 言いてぇことはそれだけか? 死ね」


金髪はナイフを突き出す。俺はそれをやっぱり躱し、手首を軽く叩いてやった。


「ぐはっ……」


その衝撃でリーダーはナイフを床に落とした。俺はそれを拾ってカチャカチャと開けたり閉じたりしてみた。


「うぉ、これ良いな。ありがとう、貰うよ」

「てめぇ……お、覚えてやがれ……!!」


ナイフを取られただけで戦意喪失したのか金髪のリーダーを先頭に男たちは素早く立って、逃げるように壊れたドアから出ていった。その姿を見届けてからエリナはテーブルの後ろから出てきて俺の側にやってくる。




「み、翠くん……ありがとう」

「別にいいよ、バタフライナイフ貰えたし気にするな」


そう言い俺はエリナの頭を撫でてやった。エリナは恥ずかしいのか嬉しいのか顔を赤くして俯いた。そして小さな声でこう言った。


「こっちの翠くんの方がかっこいいですよ」

「こっちの?」

「はい。気づいてないんですか? 喋り方」

「喋り……方? ………………ッツ!!」


(また、素で喋ってた……それに女の人の頭を……!!)


今度は俺が恥ずかしくて俯いた。多分耳まで真っ赤になってるに違いない。


「やっぱりこっちの方も可愛くて好——」


ドドドォォォォォオオンン!!


そしてエリナが何かを言いかけた時、急に天井が壊れた。否、壊されたのだった。咄嗟にエリナを庇った俺の上に大量の瓦礫が乗っかる。






「……痛いなぁ」


俺は瓦礫を退かして立ち上がり、エリナの手を引いて立たせる。


「何が起こったんですか?」

「て、天井がこ、壊されましたね。多分……あ、あれのせいです……ね」









——俺たちの上空をドラゴンが旋回していた。



読んでくれてありがとうございます

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