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武神は異世界を闊歩する。  作者: カケル
30/53

内乱。

  うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。


  覇気に満ちた声がそこかしこで響き渡る。それと同時に血しぶきが舞い、反乱軍の兵士は絶命する。どう見ても劣勢なのは反乱軍だった。

  焦りの表情を見せる反乱軍のリーダーである青年。まだだ、まだ大丈夫・・・と自力で落ち着きを取り戻す。

「大丈夫か?リック。」


「ああ、大丈夫だ。まだ始まったばかりだ。この革命のためにどれだけ準備してきたと思ってる。」


「ああ、そうだな。まだ始まったばかりだ。腰を据えていこう。」

こんなところで弱気になってはいけない。何のためにジャミールの首を取る準備をしてきた。全ては今までの被害者達のためだろう。


反乱軍リーダーであるリック シラーズは被害者の弟だ。

兄であるラング シラーズはジャミールのもとで調査隊として働いていたが、とあるダンジョンの調査で帰らぬ人となった。そのダンジョンはピッツバーグ領内でも危険と名高い場所だったが、調査をする人たちはそれを知らされていなかったらしい。それは最悪の結果を生んだ。ジャミールが何を思ってそんなことをしたのかはわからない。わかろうとも思っていない、ただ兄が受けた屈辱を、兄が抱いた恐怖を、味合わせてやるという一心だった。


  反乱軍は主に外部地域にいる民兵で構成されている。なかには冒険者もいて腕の立つ者もリックらの思いに賛同してくれた。今も彼らが最前線で戦っているおかげで首の皮一枚繋がっている。

  無謀だという意見があるのも知っている。というよりその声の方が大きかった。それでも行動しなければならない時だとリックは判断した。このまま黙っているならば死んだ方がマシだった。


「ルイス・・・これが終わったら酒でも飲もう。」


「へへ、そりゃあいい。その時はお前の奢りだぜ、リック。」


「ああ、いくらでも奢ってやるよ。」

 リックとルイスは笑い合った。


 二人は中央区画に入り込んだ反乱軍の後方部隊にまじっている。後方からの支援や迎撃を主に行う部隊でほとんどが弓での攻撃になっている。

 ここ数か月で猛特訓したものの、ほとんどの者が弓の扱いに慣れていない。リックとルイスも相手兵士を狙うが、明後日の方向に飛んで行ってしまう。


 長引けば個々の力の差がそのまま勝敗に直結する。なにせ相手は湯水のように湧き出る兵力を持っている。ジャミール公爵邸に続々と王国兵士が集結しているのだ。ただ少し気になるのは周辺貴族の援軍が一切見られないことだ。こんな近辺で衝突が起こってるのに反乱軍に攻撃してくる貴族がいないことが不思議だった。まあいないならいないに越したことはないが。


 リックとルイス、そのほかの弓兵がいるのは西側に広がる中央区画と外部地域を分ける外壁の上。そこに簡易的な障壁を作り、遠方射撃を行っている。


「ち、やっぱ距離が遠すぎる!」


「全然当たらねぇ!」


手を止めることなく連射しているが、目標に届く一矢を射ることができている者はほとんどいない。


そんななかで風を切り裂くような一矢が放たれる。空気が揺らぎ、その一撃を手助けするかのように重厚な圧力が生み出される。弓矢という中距離武器にこんな威力があるなんて誰も知らない。そう思ってしまうくらい驚愕な光景だった。

 その一矢は兵士に当たることなく、地面に鋭く突き刺さった。同時に刺さった矢を中心にして放射状に風圧が広がり、近辺にいた兵士たちを一瞬にして吹き飛ばした。


「おっと、すまないね、君たち。邪魔するよ。」


 リックとルイスは背後からの声に振り向いた。

「やっぱりここが一番眺めがいいみたいだ。侵入するならここだな。」


「あ、あんたは?」


「ああ、ただの一般人さ。ちょっとこの屋敷に用があってね。まあ君たちは遠慮なく仕事をしてくれ。じゃあ。」


  リック達が呆気に取られている間にグロウは外壁の上から躊躇することなく飛び降りた。その身のこなしは当然ながら一般人のものではなかった。

  屋敷の屋根に跳び乗り、流れるような動きで屋敷の中へと侵入していった。


「何なんだ・・・あれは・・・・」

 ルイスはグロウが跳んで行った屋敷の方向にじっと視線を向けていた。

「味方、なのか?」

 リックもまたルイスと同じ気持ちだった。まさに風のように去っていった男の姿が目に焼き付いて離れなかった。一目見ただけなのに何故だか俺もあんな風になりたいという憧れを抱いてしまう魅力があった。

「敵ならば俺たちを無事で済ますはずがない・・・そう考えると味方なのかもしれない。」

  ルイスの言葉は予想というよりも懇願の意味合いが強かった。

  リックもルイスも再び手を動かし始める。弓を引き、矢を放つと今度は兵士の足に突き刺さった。

「よし。」

  それからというものの、後方部隊は次と次と矢を放っていくが、先ほどよりも確実に精度を上げていた。状況が一変することはないけども、一つの突破口になり得るだろう。それも予想というよりも願いだったが、不思議と当たるような気がした。

  

 

 

  音を立てることなく窓を割るというあまり見たことのない技能で屋敷に入ったグロウはすぐに魔導器を取り出し、キコに連絡を取った。


「・・・・・・キコかい?今、屋敷にどの辺りにいるのかな?」

  グロウの問いからキコの返答まで数秒かかった。しかもキコの声はさっきよりも微小になっていた。それが意味していることは・・・

  

  敵意を持った何者かが近くにいるってことかな?

 

  グロウはそのまま無言で良いとキコに伝えて、今から助けに行く趣旨を伝えた。

  返答はないが、魔導器の奥で大きく頷くキコの姿が想像できた。


  ジャミール公爵の屋敷はテトラスの屋敷と比べても遜色ないくらいに広大な面積を有していた。これは容易に迷う人が続出してもおかしくはない。

  屋敷に侵入してジャミール公爵を探し出すのでも一苦労だろう。最終的に反乱軍側が痺れを切らし、屋敷に火を付けてしまう可能性もあるが、いくらなんでもそこまではしないとグロウは予想している。それをするとジャミール公爵邸だけでなく他の貴族の屋敷にも延焼してしまう恐れがあるからだ。反乱軍はその展開を望んでいるわけではないだろう。


「誰だ、貴様!!」


衛兵はグロウを発見すると殺気立った雰囲気を醸し出して腰にある剣を抜いた。騒ぎになるのはグロウにとっても不利益になる。ここは大人しくしといてもらおう。

グロウはすかさず駆け出し、衛兵の懐に入り込む。瞬きを一度しただけで目の前に移動してきたエルフの男に衛兵は驚愕を禁じ得なかった。

目の前が反転し、苦しみが訪れ、すぐに視界が暗転した。衛兵は自分に何が起こったのか分からずに気絶させられた。

相手を無力化する体術はグロウの苦手な分野だ。接近戦の経験値がタケミカヅチの神下の中でも圧倒的に低く、それを求められる場面もなかった。ただ、現状ではそうも言ってられない。苦手ながらに相手を瞬時に気絶させることができたのはグロウ自身も満足いく結果だった。


「ここに置いておくわけにもいかないな。どこかに隠すか・・・」


左右を見渡してもだだっ広い廊下が続いているだけ。廊下に敷いてあるふかふかの絨毯が足音を消してくれるのはありがたい。

廊下の途中にある簡素な扉は見るからに誰もいない様子だったので、グロウはその部屋に侵入し、グロウの背丈を超えるくらいのクローゼットに気絶した衛兵を隠した。


部屋は整理整頓されていて、目に見えるような埃はなく、きちんと掃除はされているみたいだったが、生活感は一切なかった。使用人の部屋か、お客用の部屋か。どちらにしても重要視はされていない部屋であることに疑いはなかった。


 部屋から出ても衛兵と出くわさなかった。おそらく屋敷の前方に兵士たちを集結させているのだろう。窓の外から聞こえる反乱軍の叫声が猛々しく騒めき、本格的な戦闘を予感させる。

 数か所の部屋を探したものの、キコの姿は見当たらない。


「下の階か?」


 グロウが下へ続く階段を下ろうとしたとき、何者かが階下から慌てた様子で上がってきた。

 身を隠そうと身を翻したが、耳に聞こえてきたのは少女の声。それも聞き覚えのある、つい最近耳にした声だ。


「はあ、はあ・・・はあ、はあ、アローマ、早く!」


「待ってよ、キコちゃん!置いてかないで!」


 二人の少女のやり取りで確信する。グロウが探している人物だと。

 

「キコ。」


「あ、グロウさん!」


「え?誰?」

 アローマは目の前に突然現れたエルフの男に多少の困惑を示す。が、すぐにキコに聞いていた人物だと理解したのか、表情が和らいだ。

 グロウから見て、アローマという少女はキコよりも年下に見える。実際そうなのだろう。何も知らない人が見れば姉妹と間違うこともあるかもしれない。それくらい雰囲気は似ている気がした。ただし、アローマは身に着けているものが華やかで、貴族の娘らしさが滲み出ている。そこはキコとは大きく異なる部分だろう。キコの服装は平民の女子といった感じで貴族とは正反対だ。


「二人とも大丈夫かい?」


「う、うん。でも後ろから・・・」

 キコが指を差した方向にタイミング良く姿を見せたのは反乱軍の兵士。髭面で睨みを効かせた、見るからに野蛮な様相の大男だった。


「女の子二人を追いかけるなんて気色悪いことするね、君。」


「何だ、おめぇ。誰だか知らねぇが、そこのガキを渡せ。そいつだろう?ジャミールの孫娘は。」

 大男はアローマを力強く指差してそう言った。

 絡みつくような恐怖と重圧にアローマは一度身震いした。

「いや、それはできないな。これが男だったら君の要求に応えたかもしれないが、こちらのアローマは女性だ。女性を無下に扱うのは看過できないな。」


「てめぇの主義主張なんざぁ知らねぇよ、カス。」

 大男は斧をブンブンと振り回し、グロウを威嚇する。その姿はまさに猛獣。巨体も相まってとてつもない迫力があった。


「まあ君にとっては興味がないだろう。ただそれはこちらも同じこと。俺の主義を分かってもらおうなどとはなから思っちゃいないよ。」


 グロウは一気に魔力を爆発させて収束させる。形作ったのは翡翠色に輝く弓。仄かに風力を宿し、滲み出る魔力はまるで生き物のようにグロウの周囲を漂っている。


  空気が変わったのを大男もキコもアローマも・・・・・・理解した。細胞が理解させられた。


  身構える大男に向けて、翡翠に輝く矢を放つ。目視できている位置から矢を放たれても避けられると大男は思っていた。弓術を極めし者ならばそんな行為はいない。つまり奴は素人だ・・・無理やりそう思い、目の前で起きた言い知れぬ空気を見て見ぬ振りした。


 矢を避けるのは難しくなかったが、放たれた時に纏わりついた風が放出され、それによって大男は軽々と吹き飛ばされた。


「ぐふ・・・」


「殺しはしないよ。まだやるっていうなら次はないけどね。」

  大男の意識は途切れ、ピクリとも動かなくなった。グロウの言葉が聞こえていたのかは分からない。


「ふう、キコと・・・アローマだったか?」


「はい、アローマです。この度はあの、ありがとうございます!」


「別にいいよ。俺にとっては当たり前のことをしたまでだよ。」


「グロウさんはどこにいたんですか?」


「テトラスっていう貴族のところでちょっとした話を聞いてたんだ。」


 はやいとこ城塞都市ノームと連絡を取り合う必要がある。テトラスから聞いた内容からピッツバーグには神槍はない。フェザーランド公国には国宝として槍が置いてあるらしく、それがもしかしたら神槍である可能性がある。かなり低い確率だが、情報が不足しているなかでは有力で貴重な情報だった。


ドガァンという重々しい爆音が鳴り響き、屋敷が小刻みに揺れ動く。アローマはバランスを崩して倒れそうになったが、グロウがそっと腰を支えた。


「あ、ありがとうございます・・・」


「どういたしまして。それよりもここは危険だ。いつ崩れてもおかしくないね。なるべく早く避難しよう。」


「でもどうやって?」

キコは心配そうな声で呟く。


「この屋敷、裏口はないのかい?」


「あります。でもたぶん反乱軍に占拠されてると思います・・・」


「まあそうだろうね。前も後ろも駄目・・・・ってことは・・」

グロウは目の前に広がる窓に目を向ける。特別な細工をされているわけではない至って普通の窓。反乱軍からの攻撃を今はまだ受けていないみたいで、綺麗なままだ。

グロウがその窓に手を翳すと急に突風が吹き、窓を粉々にした。砕け散った破片は風に乗って外に持っていかれた。


「ここから跳ぶしかないみたいだね。」


「こ、ここからですか!?」


悲鳴にも似たアローマの声が屋敷の廊下に伝播した。


「そんなに怖がる必要はないさ。俺に掴まっていれば問題ない。」


 グロウは窓際に近付き、下の状況を確認する。手入れされた外庭に色付きの良い花が咲き誇っている。今のところ人影はないが、反乱軍が来るのは時間の問題だろう。


「よし、覚悟はできたかい?あんまり時間は無さそうだから無理やりにでも行くよ。」


「え、あ・・・」


 グロウはアローマを抱える。それと同時にキコはグロウの身体にしがみついた。

 魔力を解放。次の瞬間、屋敷の中に微風が吹き抜けて、ふわりとグロウの身体を浮かした。グロウの腕で震えるアローマに、風で浮いた仕組みに興味津々のキコ。二人の反応が正反対で少し面白かった。


 アローマの我慢の時間はほんの少しで終わった。微風はグロウを優しく地面まで送り届けてくれた。


「ふう、なんとか出れましたね。」


 キコは一安心したのか、大きく息を吐いた。


「まだ安心できないよ。ここにも反乱軍は来るだろうしね。」


「・・・外壁を上って避難するしかないですね。」


「ああ、そうなるな。風に乗って上に行くと今度は狙い撃ちされそうだな。・・・どうした、アローマ?」


「は、はい。お父様は大丈夫かなって・・・」


「お父様っていうのは・・・ジャミール公爵のことかい?」


「はい・・・そうです。」


 アローマはジャミール公爵の所業について何も知らない。もちろん貴族として一般国民からの信頼があるとは思っていなかったが、反乱軍を組織され、こんな風に狙われるなんて想像もしていなかった。父がどれだけ嫌われていたのか、この出来事で思い知らされたのだ。

心の整理がつかないうちに、アローマのもとを訪れたことで深く考えなくて済んでいたが、ずっとそういうわけにもいかない。父のことを憎らしいと思う気持ちは少なく、それ以上に自分がどれだけ無知だったのかを気付かされ、自分に対する苛立ちが募った。


「あまり自分を責めるのは良くない。君が悪いことをしたわけではないだろう?」


グロウはアローマの表情から彼女の心中を読み取った。


「キコ、お父様はどんな悪いことをしたの?」


「それは・・・・」

キコは言い淀んだが、アローマが覚悟を決めた顔つきをしているのを見て、話すことを決めた。

ただ・・・・・・

「もう少し落ち着いた場所で話した方がいい。何か来るみたいだ。」

グロウに焦りは見えない。それがかえって二人の恐怖心を煽った。


  ドゴオオオオオン!!!!!!


  今までとは比較できないくらいの轟音が鼓膜を激しく揺らしたと思ったら、屋敷の入り口の方から黒い煙が上がり始めていた。

  反乱軍も屋敷を守護する衛兵たちも慌てふためいている。

彼らの視線が屋敷の屋根の上に集まる。そこには黄金色の鎧を身に纏った一人の男が立っていた。濃密な存在感と強者の覇気を発し、上に立つ者としての力強さを感じる。あれは間違いなく、ピッツバーグの頂点に君臨する王だ。


「国王様・・・。」


キコは遠くからその顔を窺うことしかできないが、一目見れば分かる。この国で生きている人間ならば絶対に。


「静まれ。」

決して大きくない声だったが、頭に重く響き、自然と全員が黙ってしまう気迫がこもっていた。


「・・・あれがピッツバーグ王国の現国王、バルト・シャングリ・ラか。」

十三代目ヘラクレス。

どんな人物なのか話は聞いていた。ただこうして肉眼で見るのは初めてだった。印象は想像通りの巨大な体躯、どうやらこの国最強の戦士であることに偽りはないようだ。

  S級冒険者ですら倒すことができない魔物を単騎で仕留めたとも言われ、他国の実力者からも一目置かれているらしいが、実のところはどうなのだろうか。非常に気になる。

  かといって相手が危害を加えていないのにこちらから攻撃を仕掛けるというのは理不尽だろう。

  いつか・・・機会があれば、だな。


  

「我がピッツバーグ王国でこの騒ぎは何だ?双方、代表者は今すぐ私の目の前に出てこい。」


 静まり返ったなかで、屋敷の扉がゆっくりと開かれる。現れたのは少しふっくらとした体型の貴族の男。

アローマがお父様・・・と呟いたのを聞いて、あの男がジャミール公爵なのだとグロウは理解した。

ジャミールが姿を現した瞬間、ぞわっと周囲の空気が殺気立つのを肌で感じた。


「これはこれは、国王陛下。我が屋敷まで足をお運びいただきありがとうございます。」


「ジャミール、この騒ぎ・・・どう説明するつもりだ。」


「説明してほしいのはこちらの方です。私の屋敷、そして大切な兵士達に怪我を負わせるなど許されざる行為。国王陛下には反乱軍を厳罰に処してほしいと考えています。」


ニヤリと不気味な笑みを浮かべるジャミール。彼の態度は国王に何ら尊敬の念も持ち合わせていないのは明白だ。


「お前には何ら落ち度はない、そう言い張るつもりか?」


「認識の違いでしょう。私から見る角度と相手側から見る角度にはやはりどうしてもズレが生じてしまいますからねぇ。」


反乱軍の集団のなかから掻き分けるようにリックが姿を現した。みすぼらしい格好の若者が前に出てきた時、王国の兵士達は少しだけざわめいた。誰もその若者が反乱軍をまとめている人物だなんて思っていなかったのだ。


リックの存在に気付いて国王ヘラクレスは屋根から飛び降り、無謀なる挑戦をした若者の前に歩み出る。

「・・・・お前がこの騒動の首謀者か?」


目の前に立ち塞がる圧倒的な存在感を放つ国王にたじろぎながらもなんとか表情には出さず、堪えている。

リックは初めて国王ヘラクレスを肉眼で捉えた。この乱を起こせばそうなるかもしれないという思いはあったが、いざ相対してみるとやはりびびってしまう。

だが自分は後ろにいる同志達の思いも背負っている。こんなところで挫けてはいられない。


「ああ、俺が首謀者だ。リック シラーズ・・・ジャミールに兄を殺された男だ。」


「何の話だ?全く身に覚えがないな・・・」

ジャミールの不埒な態度に怒りを覚えたリックだったが、ここで感情を爆発させても何の意味もない。自分達にとってはマイナスにもなりうる。

それを分かってジャミールはそういう態度を示しているのだ。


「・・・もういい。話は城で聞こう。ジャミール、それに・・・リックだったか?お前ら二人、城に来るように。」


「まあこうなったら仕方ないですねぇ。」


「・・・・・・・・」


リックは後ろで武器を構える反乱兵達に武装解除を促す。兵士達は戸惑いながらも武器を納めた。同時に殺気立った雰囲気が幾分か緩和した。



屋敷の庭にある木陰からグロウ達はその様子を見ていた。

ジャミールの孫娘であるアローマは貴族としての祖父の姿を初めて目の当たりにしたようだった。いつもの優しい祖父ではない、とすぐに理解できるほどの変わり様だ。

何の関係もない人間が目の前の状況を見たら、まず間違いなくジャミールを支持することはないだろう。

俯くアローマの背中にキコはそっと手を置いた。


「流れが変わったね。ここから逃げる必要はなくなったみたいだ。」


「そう、ですね。でも留まりすぎると関係者だと思われそうです。」

キコの不安にグロウをあははと笑う。


「関係者っていえば関係者だけどね。」


グロウとキコの間にいるアローマ。彼女はジャミール公爵と血縁関係だ。これ以上ないくらいの関係者だ。騒動に直接関係しているわけではないが。


そんな三人のもとにピッツバーグ王国の軍服を着た屈強な男が近付いてきた。グロウ達に気付いたみたいだ。なかなかに目敏い。


「君達はこの反乱の関係者のようだな。私について来てもらえるか?」


予想をすればこうなる。グロウは笑みを浮かべながら一度大きく頷いた。













 



 






 


 







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