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武神は異世界を闊歩する。  作者: カケル
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再びデモテルへと・・・

豪華絢爛で優美な回廊を歩きながらタケミカヅチは一度欠伸をする。眠気という概念は本当に鬱陶しい。人族の欲求のひとつである睡眠欲は自由を奪う枷のようなもので、抗う術を持ち合わせていない人族という種族はなんと矮小で弱々しい種族なのだろうと常々思う。それでも工夫する力・・・だからこそどうするのか?という力はどんな強大な種族よりも強く持ち合わせている気はする。やはりなってみなければ、その種族について完全に分かるなんてことはないみたいだ。


「寝不足ですかあ?タケミカヅチ様。」


「そういうミミも眠そうだな?」


「あ、わかります?実は昨日、チュチュとよなかまで遊んでて。」


「ああ、だからチュチュはまだ寝てんのか。」


「起こしてきますか?」


「いやいい。今日はチュチュには休んでもらおう。リリフに来てもらうし、たぶん大丈夫だろう。」


 今日はデモテルへと赴く日。なんとかして五つの町の町長が一堂に会する機会をつくりたい。今日はそのための事前準備といっていい。多少強引なやり方で押し通しても問題はないだろう。というよりあまり時間を掛けていられないというのが正直なところだ。一番の目的である神槍探しを疎かにし過ぎたとタケミカズチはちょっと反省している。


「そろそろナバール連合の外にも調査に出かける必要があるな。」


「本格的に神槍探しですか?」


「ああ、近いうちに最上級神下を呼び出して、各地に派遣しようと思う。」


「おおお、それは・・・楽しみですね。」


「ああ、まあ今日はデモテルに集中するか。」

 廊下を渡り終え、城の入口から外に出ると、日差しが体に暖かさをもたらす。

 城からすぐ出たところにリリフ、背後に黒い皮膚を持ったサイクロプスとミノタウロスが控えていた。


「あれ?何でサイとミノが?」

 

「護衛として連れてく。まあ実際のところ相手の反応を見たいってのが本音だ。」


「そうですよね、護衛としては物足りないですよ。というかミミがいるから大丈夫です。」


「ああ、期待してるぞ。」

 タケミカズチがミミに笑いかけるとうさ耳をピーンとさせて、恥じらいの表情を浮かべた。

「タケミカズチ様、そろそろ十二時になります。」

リリフはもう準備万端のようだ。

「お、そうか。じゃあ出発しよう。エルンドー、城の外の見張りを頼んだぞ。」


「はい、お任せください。」

 お見送りのために顔を出していたエルンドーは城の入り口のところで一礼する。


 リリフは転移門を展開する。行き先はデモテルの中央広場で、送る人数は三人と二体。

 サイクロプスとミノタウロスが軽々と潜れる大きさの転移門を即座に構成する魔力の操作はタケミカヅチでさえも感心するほどだった。

転移門を潜った瞬間、視界に一瞬でデモテルの冒険者ギルドが現れた。一度だけだが、訪れたことはある。カロリーナのギルド長が逃げ込んで助けを求めたのがここだった。あのギルド長は今はもうギルド長を辞したらしい。遅かれ早かれそうなると予想はできたが、予想よりもずっと早かった気はする。


「うわあ、一月も経ってないのになんか久しぶりな感じがしますね。」


「あんまり長居しなかったのにな。」


冒険者ギルドを出入りしていた冒険者達がこちらを奇妙な視線で見ていた。自分達が見慣れない顔がいることに戸惑っているのだろう。デモテルの冒険者ギルドに出入りする者達のほとんどがナバール連合のなかで活動している冒険者なので、新参者の顔はすぐに分かる。そういう奴には古参の冒険者からの洗礼があるものだが、タケミカヅチ達の放つオーラはおよそ新人とは思えないものだ。それが理由でほとんどの冒険者が遠くから様子を見ている。絡まれるよりは何倍もマシで、遠目から見といてくれた方がいい。

タケミカヅチが歩き出し、リリフ、ミミがそれに続く。

周囲の人間は三人だけを視認していた。それは間違いではない。事実、三人しか中央広場には降り立っていないように見える。ただそれは見えるだけ。


A級魔法インビジブルを発動していたミノタウロスとサイクロプスが魔法を解除し、姿を現した。一瞬時が止まったかのような錯覚を起こすほど奇妙な時間が流れる。

そして時が暴発する。


魔物だ!!という誰かの驚愕する声と同時に中央広場に叫び声が響き渡り、大騒動と化す。

突如としてやってきた恐怖に思考することなく、体が反射的に動き出し、逃げ惑う。そんな冒険者の姿を見て、タケミカズチは確信する。

 少なくともナバール連合では魔物を使役する魔法についての知識はなさそうだと。


「ミノタウロスやサイクロプスは逃げるほど怖い魔物ってことか・・・」


「ほんと凄い勢いですねーー。」

 ミミはもう誰一人としていなくなった中央広場に視線を彷徨わせる。


 冒険者ギルドの扉が開かれてギルド長であるベルトリアが姿を現した。ベルトリアは少年が来るという情報だけは知っていたが、その特徴まで聞いてはいなかった。


「な・・・・・・・」


 タケミカズチ達の姿を一目見たベルトリアは絶句した。まあ無理もない。数十日前、ギルドに押し入ってきた三人がそこにいたからだ。あのときはすぐに眠気に襲われて意識を失ったが、顔はハッキリと記憶していた。


「久しぶり、というか覚えてるか?俺達のこと。」


「なぜ、なぜお前達がここに!?」


「何故って・・・もう聞いてるだろ?だからこうして出てきてくれたんだろう?」


「北方平原の巨城・・・・お前がそこの城主ということか。何の目的だ?何がしたいんだ?」


「話が早いな、良いことだ。五つの町の町長が集まるとき、その場に俺も呼んで欲しいんだ。町長会議の時期はもうそろそろだろ?」


「そこで正式にナバール連合に加入することを宣言する気か?」


「まあそうだな。」


「五人の町長がたとえ承諾しても世界連盟の許可がなければ加入は不可能なんだよ。正式に、加入するなんて事実上無理だ。お前らにはな。」


「ああ、それくらい知ってるさ。世界連盟への働きかけは難しいこともな。ただ差し迫った驚異がある場合、連盟も動かざるを得ないだろう?」


「差し迫った驚異だと?何の話だ?」


「リリフ、調査結果を教えてやれ。」


タケミカヅチは後ろを向くことなく、リリフに説明を促す。

はい、畏まりましたと一礼し、リリフは喋り始める。


「数日前から他国に動きがありました。その国はフェザーランド公国。ナバール連合に侵攻する機会をずっと伺っていた国です。」


ベルトリアが最も敵意を抱いている貴族国家。国庫にある豊富な資金で大軍勢といっていい数の兵士を雇っており、その多大な兵力でナバール連合に何度か攻め入っている。

現状では収まりつつあったフェザーランド公国がまた侵攻を始めたとでもいうのか?


「何故そんなことがわかる?」


「それを説明する必要性を感じません。私は知り得る事実を話すだけです。」


「まあいい。それが事実だとして何故連盟が動き出す?」


「連盟は仲裁機関でもあります。国家間の戦争などを収める役割があります。」


「ああ、その通りだな。だが、それならばいいではないか。こちらに攻め入られたとしても連盟が間に入ってくれるだろう?」


「それで事が収まればいいでしょう。しかしそれだけでは終わらないのはあなたも深く理解しているはず。」


ベルトリアはリリフの顔をじっと見る。変わらない表情は不気味だが、話していることは当たっている。世界連盟が仲裁できる戦争の規模には限界がある。間違いなくナバール連合とフェザーランド公国の間で争いが生じた場合、連盟が仲裁し、被害を抑え込むなんてのは夢物語の話だ。実際のところ、今の世界連盟は名ばかりの組織とまで言われるくらい機能を果たしていないのだ。


「・・・・・それで?もう一度聞く。何故連盟が動くんだ?」


「私たちがナバール連合に加入すればフェザーランドの戦力にも引けをとらないでしょう。」


「それが理由か?」


「ええ、連盟も仲裁機関としての働きを維持したいでしょうから。私たちがナバール連合に加入することを承諾してくれるでしょう。」


「ま、とりあえず・・・町長会議の開催を頼むよ。そこで話をしよう。強引な話だと思うだろうけど、あんたらの不利益なることはないはずさ。むしろ逆、って感じだ。」


「それを信じる奴はいない。」


「今はそうだろう。とにかく頼んだよ。まあ他の町長にもアプローチしてみるけど。」


  それだけを告げて、タケミカズチはリリフに顔を向け、一度首を縦に動かす。

  それだけでリリフは理解し、即座に転移門を展開した。滞在時間はおよそ十分間。サイクロプスもミノタウロスも周囲を攻撃することも、威嚇することもなくただ黙って立っていただけだった。それがまたベルトリアに衝撃を抱かせる結果となった。


  ベルトリアもタケミカズチ達を止める理由はない。どちらかといえば早く立ち去って欲しいと思っていた。一刻も早く周辺の町の町長と話をしなければという気持ちになっていた。


  中央広場から消え去る転移門。何もなくなったその空間を少しの間見つめていたベルトリアは背後に控えていた部下に出かける意図を告げた。

  その一時間後にベルトリアを乗せた馬車はカロリーナへと続く道を進むのであった。



  











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