第3話 カフェ
とあるカフェ。
鶴美はとあるカフェにおいて、セナと一緒にお茶を飲んでいた。
この日は、リアンの撮影を見学しにやってきたのだが、途中で飽きたので抜け出してきた所、セナに見つかってしまい、近くのカフェに寄ったのであった。
「おしゃれだね~」
鶴美はポワポワとココアを飲みながら店内の感想をいう。
隠れ家的なこの店は不思議のアリスをモチーフとしたデザインであり、ファンシーでありながらも、どこか大人っぽい雰囲気がある。
まだ開店前であったのをセナの人脈で空けてもらっているらしく、現在二人しかいない。
「よかった…この店、ココアが美味しいんだ」
「うん~ウフフ~」
カップを両手で支えて鶴美はニコニコ顔でココアを飲む。
「(うっわ、コクコク飲んでて可愛い……っ……ココア好きそうだし、よかった)」
ぶっちゃけ、ココアを好みそうというのはセナの勝手なイメージであり、鶴美はどちらかと言えばブラックコーヒーが好きで、ココアの良さなんぞ分かっていない。
「あんさ!」
「ん?」
セナが意を決したようにいう。
鶴美は首をコテンと傾げて様子を伺った。
「連絡交換しない?」
「わたし、スマホは水没したよ~」
ポワポワと片手を左右にふって遠まわしにいうと、セナはポケットから何かを取り出した。
「だったら…これやるよ。これに連絡いれろよ」
その小さな物体はスマホであった。しかも新品であり、ピカピカだ。
「私の為に買ったの~?」
「あ…あぁ」
恥ずかしそうにセナは目をそらしつつ肯定した。
鶴美は一瞬だけキョトンとしたが、すぐにホケボケと笑いながら、セナから渡されたスマホを両手で受け取る。
「ありがとう~大事にするね~」
ニコニコポワポワと鶴美は嬉しそうにもった。
常識ならば、こんなものを渡された所で気持悪いだけかもしれないが、彼女の初めてのスマホがリアンから購入されたものだったなので、あまり違和感はなく、純粋に嬉しがっていた。
「(やべー…マジ可愛い。何かポワポワしてるし…うわ、何かフワフワしてる。やっぱココアとかスゲー似合う…時間さえあれば一緒にパンケーキとか食べれたのに)」
実を言えば、鶴見はパンケーキはあまり好きではない。メロンパンが好きだ。
というより、クラスの男子と女子の大半にパンケーキを事有るごとに食べさせてくるので、鶴美はパンケーキが苦手になっている。
「なんか、鶴美っていいよな……なんつーか、清楚っつーかなんつーか……」
「ッアハ~」
清楚な女は初対面の男にキスをした挙げ句にホテルで一緒に一夜を過ごし、『そういう行為』を行うわけがない。
しかも、恋人もちだと分かった上でだ。
恋は盲目というか、鶴美のキャラクター故かそんな事実を知る由もないセナは、自身の恋人であるリンカにはない魅力を鶴美に感じて癒されつつ、時計をチラリと見た。
「やべ…もう時間だ」
「撮影がんばってね~」
「スマホの使い方わかるか?……なんか、機械とか苦手そうだし」
「もう~私はお婆ちゃんじゃないよぉ~?」
ぷくぅっと頬を膨らませて怒る鶴美に、セナはごめんごめんとあやまって席をたった。
「じゃあ、撮影に行ってくるわ」
「行ってらっしゃい~」
つるみ間延びした、ゆったりな声で席を立ったセナに対して手をヒラヒラさせて見送った。
「…ふぅ………」
カチカチカチ
鶴美がその後とった行動は、スマホを開き、GPSの機能や録音、メール、その他の設定を確認する事であった。
幸いというべきか、可笑しな点は何もなかった。
☆☆☆
町中
「わあ、リアンはお盛んだね~」
鶴美は店を出た後、セナから貰ったスマホを使い、ネットに繋いでニュースサイトを見てみると、リアンのスキャンダルがあった。
どうやら、共演者のあの肉体的な美女をホテルに連れ込んだらしい。確かあの美女はリアンのハーレムメンバーだった筈だ。
普段ならば鶴美を迎いにいくリアンだが、スマホを損失してしまい、しかも鶴美の姿が見えないので帰ったと判断したのだろう。
「まぁ、実際に戻らなかったけどね~」
撮影所に戻る予定は元から無かったので楽だった。
鶴美は例の如くポワポワとした雰囲気を出しながら、家に帰るために道を歩いていると……
「わあ!!鶴美ちゃんだ」
聞き覚えのある声が自分を止めた。
後ろを振り返ると、リンカだった。
ショートパンツにTシャツというカジュアルな格好だが、そこから覗く長くしなやかな手足と、豊かな胸という黄金比のような体のおかげで一種のファッションにも見える。
「鶴美ちゃん、よかった。会いたかったんだよーやっぱ可愛いねー癒されるー」
鶴美に軽く抱き締め、小動物にするようにうりうりと頬擦りをした。
「ん~?どうしたの~?」
鶴美は抱き締められたまま聞くと、リンカは満面の笑みを向けた。
助かった……とでもいいそうな笑顔で。
「あのね、合コンいかない?」
「はぁ?」
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