第7話 バレた。
佐吉くんと会えたからか、私はとても気持が軽くなりました。
そのお陰で、私は結構毎日を頑張って生きていけます。
リアンくんと一緒に住んだり、セナさんと若干浮気したり、リンカさんには可愛がられたりと…。
気持悪い愛情を持たれたり、理想を押し付けられたり、見下されたりとしましたが……
なんとか、生きてこられたのです。
しかし、今、ピンチが起きました。
「これは…なんだ?」
リアンくんが顔面蒼白になりながら私に質問しました。
彼が手にとっているのはスマホです。セナさんから貰ったやつです。
はい……バレてしまいました。
バレた理由は単純で、充電してたからです。
私のスマホは水没したので、なんだコレはとリアンさんは不思議に思ってスマホをとって中身をみました。
んでもって、この状況です。
「セナって、あいつだよな?なんで……どうして」
リアンさんは少し困惑気味です。
セナさんにはリンカさんというモデルの彼女さんがいらっしゃるので、不思議で仕方がないのでしょう。
ここで『俺がハーレムを作ってるからか?』とか言い出さない辺りはとてもお利口でよいと思いますよ。
「ん~っと、ねぇ~」
私は取り合えず考えます。
現状、私の生活を養ってくれているのはリアンさんなのです。ちゃんと機嫌を取らなければなりません。
ハーレム要員として、なんとか機嫌をとらなければならないのですが……
バシャ
「……」
私は、近くにあった花瓶を手に持ち、あろうことかそのまま花ごと水をリアンにかけたのでした。
バカです。アホです。何故かけてしまったのか分かりません。
リアン、無表情です。これはこれは謝らなければいけませんね。
「死ね」
けれど、私の口は私の脳を無視してそんなことを言い出すのです。
ニコニコと……顔は崩れないままに。
「鶴美?」
リアンは怒りません。いっそ怒ってくれればいいのに、何故怒らないのでしょうか?
私が可愛いからですか?
私がか弱いからですか?
私が可哀想だからですか?
『こんなことで怒るなんて可哀想だよ』とか『弱いものいじめはよくないよ』とかですか?
えぇ、確かに素晴らしい感情ですこと。
いえ、素晴らしい理性ともいうのでしょうか?
でも、それってつまりは……
本気にしない、相手にしないって……ことですよ?
人間扱いしてないってことですよね?
何か、学校とか色々な場所で……。
でも、いいません。こんな事を考えてるだなんて恥ずかしいですから。
だから……
「……っ……鶴美!?」
逃げることにしました。
リアンから回れ右をして、そのまま玄関へと走って……逃げましたとも。
☆☆
「佐吉……」
気がつけば、佐吉の家の前に来てしまいました。
なんででしょうか?どうしてでしょうか?分かりません。
『何かあったら言えよ……なんとかすっから』
なんて、言われたからでしょうか?……バカバカしいです。
「…………帰ろう」
私はクルリと回ってそのまま帰ろうとしましたが……。
「あれ?鶴美ちゃん?」
可憐ちゃんにあってしまいました。
彼女は……佐吉の恋人さんです。
勝ち気な目と、優しそうな造形の顔が特徴な美人さんです。
「大徳寺くんに何かよう?」
大徳寺くんとは佐吉の名前です。
そんなことはどうでもいいです。私がやるべきことは、また別のことです。
「ううん、なんでもないよぉ~」
ニコニコスマイルを貼り付けてそういいました。
それで、何処かへと行くつもりだったのですが……。
「鶴美ちゃん……ちょっとうちに来てくれる?」