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不思議噺 ファックス 其の四

 香川さんのおばあさんは、幼馴染みの心配をずっとしていたが、為す術もなく日が経つばかりだった。

 そんな頃、孫の香川さんの所に妙なファックスが届いたと聞いて、おばあさんの不安はどんどん増すばかりで、幼馴染みだから当然知っている、麦川さんの兄弟にも連絡を取って聞いてみたが、麦川さんが痴呆になって、話はおろか認識すらできない状態だと言い張って、会わせて貰う事は叶わなかったらしい。

 麦川さんには、五人のきょうだいがいたが、上の二人と久子さんの母親である妹が他界している。

 田舎に元気でいるのは二人の弟達だが、かなりの老人だからなす術もなく、香川さんのおばあさんだけではなく、弟達までもが不安に思い始めた頃、香川さんのおばあさんは、意外な人物から連絡を貰った。

 それは、麦川さんの亡くなったお金持ちのご主人の次男の克郎さんで、転々と転勤を繰り返していたが、やっと此方の方に戻って来れていた。

 麦川さんの生活に困らないように、駐車場やアパートなどを数か所残してあるはずなのに、仕事で通りかかった時に違う物になっていたので、少し心配になって他の物件も調べてみたら、幾つか売った事になっていた。

 もしかしたら麦川さんに何かあったものかと、たまたま連絡先を知っていた香川さんのおばあさんの所に連絡をくれたのだった。

 仕事の事情や家庭の事情で疎遠になり、父親が亡くなってしまっては、縁が切れても仕方がないと互いに思っているし、血の繋がった親戚縁者に残しているだろうから、身内が始末しているのは当然の事だと思っているが、最後まで父親の面倒をよく見てくれて、自分達にもその家族にも、いろいろと気を使ってくれた人なので、もしもの事があったのならば、せめて墓参りにと思ったが、自分達は父と同じ墓に入っているとばかり思っていたが、そういう事でもないらしいので、麦川さんが今どうしているのか教えて欲しいという事だった。

 香川さんのおばあさんは、姪に老後を見て貰っていたが、年を取った所為で少し我儘も出てきて、姪のやり方が気に食わず、最近はいろいろと揉めて縁を切ると言い出していた事を話し、それからというもの連絡が取れない状態だと伝えた。

 克郎さんはいろいろと手を尽くして、麦川さんの姪と連絡を取ったが、理由をつけて麦川さんに会わせようとはしなかった。

 だが麦川さんの姪よりも、麦川家の知り合いは今は亡き父親の代からもあり、かなり力を持っている人達がいた為、直ぐに麦川さんは克郎さんによって、施設を探し当てて貰い其処から出て、今までかかっていた病院に入院する事ができた。

 以前よりも確かに痴呆は進んでいるものの、どうにか次男の事も解り、姪夫婦が財産を勝手に使っているらしい事も解っていた。

 麦川さんの貯金管理を任されていた姪夫婦は、段々と生活が派手になってしまい、とうとう麦川さんが邪魔な存在となったので、財産の全ての管理を任せていた弁護士とグルになって、麦川さんが老人性の痴呆になっているのをいい事に、金に物を言わせて施設に入れて、親戚縁者から隔離して、麦川さんが生きているにも関わらず、財産を好き放題にしていたのだ。

 自分の子供たちに家を建ててやる為に、幾つかの物件を売ったのが、たまたま次男の目に止まり、悪事が露見する事となったという事だが、ドラマのような話だ。

 お金がある人は、お金がない人間には想像さえできない程の怖い事が、ニュースでやっているように本当にあるんだ……と、香川さんの家族はぞっとして思った。



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