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十五夜のあと 神無月と木霊 其の終

 友ちゃんはその日目を覚ました。

 心配していた家族には、ずっと夢を見ていたが、家族の呼ぶ声で目が覚めたと言ったらしい。


 本当にそつがない友ちゃんだーと圭吾を感心させた。


「参ったよ、こんなに大事になろうとは……」

 数日後見舞いに行くと、最早元気を取り戻した友ちゃんは、デイルームで笑って言った。

「笑い事じゃあないよ。(あや)うく眠ったままか、死んじゃう所だったんだぜ」

「まぁ……。がま殿やいえもりさま、けいちゃんにも心配かけちゃったね」

「まじ笑い事じゃあないから」

「はは……退院したら観音様にお詫びに行かなくちゃな」

「もう直ぐ退院だろ?」

「うん。病気じゃあないからね。いろいろと検査もされたらしいが、至って健康だったよ」

「よかったじゃん。白鼻芯殿や観音様には、まじ挨拶しに行かんと駄目だわ」

「今回の事は反省してる。自分としては、がま殿やいえもりさまや観音様やぬし様や白鼻芯殿や木霊……。不思議なもの達とも、他の人よりも理解もできて、いい関係も築けるって思っていたけど、まだまだ駄目だなぁ。結局変な情報の先入観で先走り、本当の所を見ようとしないし、理解しようとしないもんなぁ……こんな事じゃあ先に進めない」

「まじ木霊と先に進むつもり?」

「うん。けいちゃんじゃあないけど、まずはお友達から……。俺が大学卒業して就職して、時期がきて結婚する時に一緒にいたいと思ったら……。その時まで側にいてくれたらいいけどね」

「そしたら観音様は、木霊を友ちゃんの元に差し遣わすって……」

「そんな事有りって解ってれば、こんな騒ぎにならなかったのになぁ」

「解らないから、あいつらと暮らすのは大変だぜ」

「まったくだな」

「まったくだよ」

「だけど、あいつらと関わり合える俺らって、超絶ラッキーじゃね?」

「えっ?」

「不思議な事だらけだけど、本当の事が解ってさ」

「本当の事?」

「人間の尺度ではなくて、地球の……いやいや宇宙規模の尺度で、いろんなものを計れる気がする」

「う〜ん……」

「ちょっとややこしいかぁ……」

「う〜ん……かなり……」

「はは……だけど、こんな話しけいちゃんとできて、本当に嬉しいよ」

「へっ?」

「けいちゃんがいてくれて、よかったってこと」

「うん。俺も……。友ちゃんが一緒でよかったよ。俺の尺度じゃ計り知れない事だらけだかんね」

「はは……言えてる言えてる」

 友ちゃんの笑い声は、とても明るくて楽しいものだった。

 彼方で木霊と交わした会話は、きっと友ちゃん……いやいや、二人にとって良い事だらけだったのだろう。



「まったくビビッたぜ」

 友ちゃんも無事退院して、ホッと一息の圭吾といえもりさまは、まったりと秋の気配が濃くなってきた、心地の良い休日にベッドに横たわり開け放たれた窓から、とても高く感じる秋晴れの空を眺めていた。

「しかしながら、今回は観音様や白鼻芯殿がお助けくだされたり、ぬし様や我が知己が彼方におりました事は幸運だったとしか言いようがありませぬ」

「そうだよなぁ……」

 ……というか、あれだけ出入りが厳しくなるだのと大騒ぎをしていたが、なんと雑というか、おおざっぱな結末だった事……。まぁー、神々様の世界というのは、おおらかで雑ぽいものかもしれない。

 神々様達と共に生きていた昔の人々は、今のこの時代に生きている圭吾達より、おおらかで寛容だったような印象を、死んだばあちゃんの話しから想像させられる。

 今の時代はいろいろな意味で、緻密というよりちまちましていて、せせこましいように思われる。

「まぁ……兄貴分様のご人徳にござりまするが……」

「そ……そうだよな?友ちゃんの人徳だよな」

「はい、さようにござります」

「そうだよそうだよ……流石友ちゃんだわー」

「ところで若さま……我が知己が元気を取り戻しまして、主人さまがいたくお喜びで、私めと若さまを新居にご招待くだされましてござりまする」

「茂木さんが?」

「はい……是非にと……」

「うーん、友ちゃんの事もあるし、お礼がてら行くか」

「はい、知己は竹林堂のいちごの大福を楽しみにしておりますゆえ……」

 いえもりさまは、この世で最もお気に入りのいちご大福の存在を、知己様に自慢したようだ。

 いやいや、他の物も話していて、きっとそれ以上の物を知己様は、茂木さんに与えて貰っているだろうが、竹林堂のいちご大福は、此処にしか存在しないいえもりさまの自慢の美食だ。

「わかったわかった、いちごの大福を買って行こうな」

「はい……とても楽しみにござりまする」

 いえもりさまはそう言うと、圭吾のようにひっくり返って秋空を眺めた。

「気持ちの良い秋晴れでござりまする」

「うん。気持ちいいな」


ハラハラもドキドキも無く、今回も終わりました。

そんな〝いえもりさま〟を、最後までお読み頂き、本当に本当にありがとうございます(≧∇≦)お読み頂ける方がいるだけで、私は幸せ者です。

ありがとうございました。

以前にも書きましたが、我が家の家守様達が、居なくなってしまいました(>_<)

寂しいです……あのキモい姿が見えないなんて……

家守様達の姿が見えなくなって、我が家の不思議が、起きなくなってしまいました。

どうしよう……不思議に妄想を一杯一杯にして書いているのに…>_<…


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