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残りの月 猫殺しばばあ 其の四

「母君様の場合、お祖父様、母君様、若さまと三代迄の呪いでござります」

「ちょ……ちょっと待てよ!おかん?いやいやー。俺?俺?」

「はい……。お祖父様はかなりお悪うござりまして、殺生もなされております」

「まじか?」

「はー。母君様に聞かれればおわかりかと存じまするが、子猫を生き埋めになさるなど、非道な事をなされておりまする」

「まじか……まじかよ」

 圭吾が渋面を作ってベッドへ倒れ込んだ。

「怨みとはほんに恐ろしいものにござりますー。怨みを残すのは、人間だけとは限りませぬ。怨みがはらされるまでは、永遠と続くのでござりますー。故にお祖父様は早くに命を落とされ、妻と子に苦渋を与えたのでござります。されど母君様は、金神様に護られておいでのお陰様で、あまりにもの苦渋は味われずに済み、若など全く感じる事すら無くお育ちかとー。しかしながら母君様が生き物……特に猫に並々ならぬ憐憫のお心をお持ちになるのも、その為にござります。間を置くことなく世話をし報いなくてはならず、哀れみ憤り悲しみ……心を痛める苦しみを与えられる運命なのでござりまする。お祖父様は命をもって償われましたが、それでは済まず、親の因果が子に報いー親の罰が子にあたるーというやつにござります」

「マジか」

「それを母君様は、多少気づいておられるようでござりまするがー」

「えっ?」

「ー流石は母君様にござります。本来ならばお祖父様には、子は授からぬはずでござりました」

「罰……?祖父さんの血筋は絶えるはずだった……ってこと?」

「さようで。ですがお曾祖母様?が、心根もよく信心深かったゆえ、金神様が哀れんでお授けになりましたが、やはり報いは受けねばなりませなんだ。先代様は、信仰心をお持ちでござりませなんだが、心根が優しく真面目でおいででござりましたし、お祖父様がもはや報いを受けておられました故、此処へ戻って来るまでは、苦渋も嘗められましたが、此処へ戻ってからは〝私めの護り〟も幸いし、若には関わり無く過ごせて参りました。なにせ此処の家が摩訶不思議なものでござりまする故、それも幸いしておりましたがー」

「まじか……じゃ、まだ呪いは解かれてはないんだ?金神様といえもりさまと家のお陰で無効になってはいるけど?」

「はい……。お祖父様は自らの命で償われましたが、残念な事に母君様は祟られました。が、それも終わりでござります」

「終わる?呪いは解けるってことか?」

「はい、さようで。以前母君様が、鬼の邪気に当たられた事がござりました」

「ああ、あったあった。いえもりさまとのくされ縁が始まったやつね」

「わわわ!若さま何を申されまする」

 いえもりさまは、うるうると瞳を潤ませた。

「マジ冗談……冗談……」

「ご冗談はおやめくださりませ」

 いじいじといえもりさまは言った。

「……んで、何?おかんが死んだやつね」

「さようでござります。あの時金神様は鬼頭様に、母君様を元にお戻しくださるよう、直談判をなされました。その折、鬼頭様は契約の娘を差し出すようお求めでござりましたが、ぬし様が彼方へ行かれる折、お共された猫殿達に、あの者へ子々孫々の呪いを、かけたいと訴えられたが為、哀れと思われた金神様のお力でその契約を反故とされました。金神様が直々に、一肌脱がれ鬼頭様にお話しを通されたのでござります。その時の恩を感じ、猫殿達が呪いを解いてくだされたのでござります。呪いはご一族でないと解けませぬ故。つまりお祖父様の罪は全て帳消しとなりましたゆえに、若さま迄は報いる事はなくなったのでござります。ほんによろしゅうござりました」

「うーん。おかんと俺が宜しくなったのはわかったけど、猫さん達の呪いって……?」

「鬼の契約の娘にござります」

「鬼の契約の娘って浜田さん?マジマジ?って事は、マジ〝猫殺しばばあ〟ってことか?」

「呪いをかけられるという事は、そういう事にござります」

「まじか……」

「子々孫々迄祟られ、愛する者達の不幸を、死の間際迄見る事となり、嘆き血の涙を流しながら、死ぬ筈でござりました。が、ぬし様の所替えにお供する事を許されましたゆえ、今居る者達だけの呪いとし、あの者を償わせる事といたしたのでござります」

「今居る者ーって、子供達も?」

「あの者の孫の代迄ということにござります。嫁いだ娘がおれば、その者達もでござります」

「マジ……どうなんの?」

「若さまのお祖父様は、命を持って償われました……私めにははかり知れませぬ、ただもうせる事は、決して幸せにはなれぬということでござります」

「ひぇー」

「まさに〝ひぇー〟でござります。怨みは厄介なものにござりますれば、人間のみならず万物全て……決して怨まれませぬよう、お気をつけくださりませ。私めは無論のこと、金神様ですら手に負えぬものもござりますれば……」

「あっ……はい」

 流石の圭吾も、素直にいえもりさまに返事をしてしまうほど、かなりショッキングな話しだ。

 特になんにも持たない者にとってはー。



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