進歩 見習い霊能者 其の終
「あー、偶にいるんだよなぁ、そういう人………」
斗司夫さんは、空き家となった斗司夫さんの家の二階で、雅樹の話しを聞いて言った。
「死が間近にある人物の側に居るだけで、影響受けちゃう人間」
「………って、ちょっとした能力があるって事?」
「うーん?どうだろう?そんなに無くても、思いが強いと関わっちゃう事もあるし、当然そういった体質の場合もあるね……ただ、あっちの世界に逝きかけてる人の孫だっけ?………って事は、大事に思っている相手だろうから、一度病院に行った方がいいかもなぁ……」
「病気があるって事?」
「………って事もあり得るかなぁ?君に何か言いたそうだったんだろう?」
「あれ、そういう事です?」
雅樹は、間近でガン見する老婆の、ちょっと不気味な顔を思い浮かべて聞いた。
伊豆の話しを、斗司夫さんに相談するかどうか、電車内で思案していた雅樹だったが、どうも気になる男性と彼に憑いている、かなりヤバ目の霊の事があった為、ついつい男性の降りる駅迄乗ってしまった為、ちょっとその先の駅からバスに乗って来る、斗司夫さんの家に来てしまった。斗司夫さんの家の鍵は、一人娘の枝梨が持っていて、雅樹とは順調な交際をしている為、無論斗司夫さんの事も話しているので、この家の合鍵など持っていて、雅樹と斗司夫さんの事情によっては、泊まる事も了解済みとなっている。因みに枝梨も偶に来て、家の片付けや掃除などして行くので、すぐ近くに住んでいる親戚のおばさんが、電気水道代を出してくれている。まっ、其処の家に誕生するはずの、この村の護り神にお仕えする者が大きくなる迄の間、雅樹がその者の代わりを務める事になる為、おばさんが助力してくれるのは、神様の思し召しというヤツらしい。
「はは………たぶんね………彼らは実に、面白い表現をするからね。ちょっと見える人間には、恐ろしくて仕方なかったりするかもなぁ?じっくり話しをしてみれば、そうでも無い事が解るけどね………」
「………とか斗司夫さんは言うけど、僕はずっと慣れないな。どう見たってグロいし………」
「それはまだまだ、君が未熟だって事だなぁ……まぁ、精進するんだね」
斗司夫さんはそう言って笑うと、ふっと真顔を作った。
「………とは言ったものの、またまた君はレベルを上げたみたいだね」
「えっ?」
「関わってはいけない霊を、見極められる様になったみたいだ………」
「ああ……かなりヤバ目の霊と遭いました」
雅樹はそう言いながらも、ピロリロリーン〝雅樹は見極めを覚えた〟感が半端ない。
「………って言うか斗司夫さん、解るンスか?」
「俺程になるとね……〝彼方〟にも行っちゃってるし」
とか言って笑う。
「彼女………あの男性には関わらない方がいい。彼女みたいな霊がいっぱいいる………」
「死んでるって事?」
「ああ………ああいったタイプは、女を喰い物にするからね。当人は、悪いとは思っていない………いずれ閻魔様の裁決を受けるタイプだ………」
「………………」
「どの道俺とか君とかは、どうもしてやれない相手さ……」
「えっ?」
「あの男の事は、理解できないタイプだからね。理解できなければ、そんな男に怨みを持つ相手を救えない」
またまた斗司夫さんは、同じ霊ではあるものの、彼女の様な怨霊ではなくて、神様からお墨付きを頂いた霊?なので、朗らかに笑って言った。
まだまだ修行の身の雅樹には、神とそうで無いもの達との、いろいろな違いが解らない。同じ超常現象とか怪奇とか奇跡みたいなものなのに、其処の違ってなんなのだろう?そうそう……神様だって、天罰もあれば祟りだってあるのに………。
さて斗司夫さんの助言もあって伊豆堵波は、祖母が入院している病院で検査を受ける事になり、それで小さなポリープを見つけてもらった。それは決して悪性の物では無くて、簡単に除去できる物であったが、先々悪性へと変わる可能性もあったという。否たぶんそれは、良くない物だったのだろう………だから伊豆は、不思議な世界に入っていた。それを心配した祖母は、アレでも可愛い孫を一生懸命守っていたのだ……。
お読み頂き、ありがとうございました。
早い物で、いえもりさまを楽しく書かせて頂き、何年も経ちます。
とても嬉しく、倖せだなぁ………と思います。
ハラハラドキドキが、殆ど無いお話しですが、読んでくださる方がいて、とても倖せでございます。
ありがとうございました。