表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
287/299

建替えの時 蜘蛛殿のお引越し 其の四

「えっ?花子さんは何時体育館へ?」


「………かれこれ……30年程前?いや……もっと前?」


 ………いえもりさまに、聞いたのは間違いだ。いえもりさまの、時間の観念は人間とは違っている………


「つまり俺が小学生の頃は、〝トイレの花子さん〟と騒がれていたけれども、もはや〝体育館の花子さん〟だったわけね?」


「………さようかもしれませぬ………若。厳密に申しますれば、〝体育館のトイレの花子様〟にござります」


「あーーー!」


 圭吾は体育館にあったトイレを思い浮かべて、ちょっと身震いをしてみせた。


「あったわ、そんな噂………一階の直ぐ側に在るヤツじゃなくて、二階の女子トイレの三個ある内の一番奥………部活の女子達が騒いでたわ……」


「………女子トイレ、ばかりとは限りませぬ、若……」


 とか言って、キモ可愛く笑うからマジで怖い。


「トイレの花子さんって、一人じゃねぇの?」


「はい?」


「いや、だから……花子は何人いんの?」


「はぁ?」


 なんだか、ちょっと痛い処を突かれた様な、怪しいと言うかキョドッてる感が丸分かりないえもりさまだ。


「ええ???花子って複数いる説?」


「えええ???若。若達は、花子様は何人いると言われておいでで?」


「いや………何人???花子さんは花子さんだよ?………だから、本当の処を教えて………あっいや、いいや……知りたく無い……えっ?でも複数いる説あり?」


 チキンな圭吾と、隠し事ができないいえもりさまで、変な押し問答になっている。


「………若。花子様には、最近妹様がおできとなられた由にござります……」


 いえもりさまは、此処までが精一杯という様に、重〜く意味ありげに囁いて頷いた。


 ………それも複数説ありだろ?………


 圭吾は思ったが、それ以上追及しないのが圭吾だ。

 どの道卒業しているから、小学校のトイレには入る事は無し、万が一大学で出て来たとしても、トイレの花子さんなら負ける気はしない。

 いや待てよ!大学には魔物の実篤様とか言われ、怪しいヤツら内で有名な、現代では大学生として生活している賀茂が居る。賀茂が居るくらいだから、花子さんも居るかも?それも複数……………圭吾は余計な事を聞いたが為に、余計な事を知った感を持って後悔した。

 



 結局小学校の護りの蜘蛛は、どうしたのだろう………。


 なんて圭吾が思ったのは、それからずっと後の事………。

 小学校の体育館が、建て替えとなると聞いた、ミニバスの保護者達によって、旧体育館で最期のクラブチームの練習の時、そのクラブチームに在籍していた、代々のOB、OGを募って旧体育館お別れ会をする事となり、圭吾にも連絡が入った時だった。

 

「護りの、蜘蛛殿にござりますか?」


 夏の暑い盛りとなり、冷房が効いた部屋で、天井に張り付いたいえもりさまは、圭吾が珍しい事を聞くと、それは訝しげに言った。


「………そうそう……体育館が建て替えになるって事は、校舎は建て替え済んだって事だろ?」


「さようで……今年の初めには新校舎となり、それは快適なご様子でござります」


 いえもりさまは、圭吾よりよく知った顔で言った。


「俺らが埋めたタイムカプセルを、校舎を壊す前に掘りに行った時には、まだどうするか………とか、グチグチ言ってたじゃん?」


「若。よく覚えておいでで………」


 とか、とても嬉しそうに言う。


「まぁ……それくらいはな……」


「………あの時は、もー大変にござりました。蜘蛛殿は、近くの幼稚園に移ると言い出され………」


「幼稚園?」


「蜘蛛殿は、子ども好きなのでござります」


「ええ??蜘蛛って………子どもは好きじゃないぞ?俺嫌いだもん」


 圭吾がきっぱりと言った。


「若………若が未だ母君様のお腹においでの頃、我が家には大きな蜘蛛が居りまして………」


「あー聞いた事あるわ。マジでデカかったって………」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ