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建替えの時 蜘蛛殿のお引越し 其の一

「若……若の通われた小学校が、建て替えとなるをご存知で?」


 ある夜いえもりさまは、暖房のぬくぬくと効いた圭吾の部屋で、何時もなら天井に張り付いている処だが、ぬくぬく効いたエアコンのぬくぬく空気は、天井へと上がる為、ちょっとぬくぬくでは済まなくなって、一応変温動物のいえもりさまは、温度環境によって体温というか、温度というか……変化してしまうので、圭吾のベットの適温になる処を見つけて、そこに張り付いて言った。


「んー?知ってるよ〜」


 とにかくいろんな事に気を留めない圭吾だから、いえもりさまの諸事情なども気にせずに、スマホを弄りながら適当に返事をしている。


「俺が通ってた頃から、何時倒れてもおかしくない、って言われてたかんね。なんか体育館もだって?」


「体育館は、校舎の後だそうにござります」


 すると圭吾は、ベットの脇の壁に移動するいえもりさまに視線を移した。


「俺より知ってんねぇ?」


「ああ……知己の蜘蛛殿が、こぼしておりまして………」


「へっ?」


 圭吾は変な声をあげて、寝そべっていた身体を起こした。


「いえもりさまって……知己様以外に友達いるんだ?」


「いるんだ……にござります。兄貴分さまの所の、がま殿でござりましょう?坂の下の、猫又さまでござりましょう?おお!ちょっと公園の先の、白眉芯殿に……おおおお!!坂の下に鈴転(すずころ)殿……それから……」


 いえもりさまは、一生懸命吸盤指を指して言っている。その一生懸命さが、可愛ゆくもありキモくもあり………ついつい放置して見ていたいレベルだ。


「………なるほどね」


 圭吾がそれでも素っ気なく言うと、パッと表情を明るくして圭吾を見つめた。

 実にキモ可愛ゆい。


「昨今は若のお陰様で、福の神さまとも懇意とさせて頂いております」


 なぜか意味有りげに、肩を上下して笑って言った。


「………そりゃ、よかったね……」


 圭吾は、またまた素っ気なく言った。

 福の神様とは……圭吾のガールフレンドより、少〜し進歩する一歩手前の、三上真鈴の処に居る神様で、耳が聞こえない三上真鈴を護ってくれている神様だ。

 いえもりさまは我が家の為に、福の神様とのご縁をとても望んでいて、ちょっと(はかりごと)などを画策した事もあったが、我が家の楽しい正月に気をよくした福の神が、分身を置いて行ってくれた……という縁と、圭吾と真鈴の良縁も手伝って、今では親しくお邪魔をさせて頂く間柄となっているようだ。


「………で?()()()()()の建て替えが、どうしたって?いえもりさまに関係するわけ?」


 真鈴との縁を意味有りに言われて、ちょっと動揺してしまったのか、決して気にしたりする素振りを見せない圭吾が、ついつい聞いてしまった。


「あそこの小学校を、お守り致します蜘蛛殿が申しますに………」


 しまった!と思った時には遅かった。

 いえもりさまは、大体の処面倒くさいので、何にでも気に留めようとしない圭吾が、()()()()()()()()()感を露わにして、こちらを見ている事に気が付いた。

 本当の処こういった事すら、気にしなかった圭吾だが、昨今のいえもりさまとの関わりが、鈍ちんの圭吾さえ鋭くさせている。


「うわぁ。ちょい待ち!」


 圭吾は、ストップをかけて思考を巡らせた……と言った処で……の圭吾だ。


「小学校を護っていたのって、蜘蛛なのか?」


 心の声が、口を突いて出てしまった。

 するといえもりさまは


「………まぁ……さようで………」


 と予期しない圭吾発言に、ちょっと戸惑ったりする。

 圭吾にしていえもりさま、いえもりさまにして圭吾……。

 

「へぇ……もっとさ、こう……」


 とか圭吾にも、長年通った大事な小学校の、守護神的理想が一応あるようだ。手を大きく動かして、何やら形を表そうとしているが、何せ芸術的センスは皆無に等しいし、それに語彙力語学力、想像力もかなり怪しいから、表現のしようもないようだ。

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