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感度 見習い霊能者 其の終

 今日面倒がって雅樹に会いたがらないのも、大黄泉津大神に会った事を黒歴史の様に言うのも、なんだか田川らしいし、そんなだから巡り合わせとして、田川は経験するのだろう。

 神という存在は、たぶんに欲の無いものを好むものだと聞く………。


「………しかし今の時代黄泉……っていうのは珍しいね?天国とかあの世とか地獄とか言われるだろ?」


「松田さん。そこの処なんスけど、小神様の言い方だと、ちょっと違うぽいんスよ」


 松田が今度は、体制を変えて言った。


「黄泉と地獄とか天国とか極楽とかは、どうやら一緒じゃないぽいんス……って言っても、詳しく教えてもらえ無くて……まっ、あの世とは言うらしいんスけど……」


「ああ……彼方、其方、此方的なあの世だろうな……」


「なんスか?」


「ああ、僕も斗司夫さんと知り合って知ったんだが、そういう所が在るらしい………」


「へぇ?あの世とこの世だけじゃ、ないんスね?スゲェな……」


 松田は、素直な性格だから感心して見せた。


「あ!そうそう……そんでその人、黄泉に行くらしいんスけど……」


「天寿を全うだろ?長寿なんだろ?」


 おじさんの息子が気の毒だ。ちょっと雅樹は思った。


「それが、天寿を全うするって、長寿とは限らないらしくて……あと四、五年の生らしいんス」


「えっ?」


「なんか、兎に角決まっているらしくて……そんで、今生でどんな生き方をするとかは、神様って関与してないらしいんス。兎に角決まっているから、黄泉に行ったらもうその先は無いって言ってました。だからあと四、五年の事の事なので、どうにか周りの者が忍ぶようにと……」


「忍ぶ?」


 ………余り悪意を向ければ、我が身に返って参るからな……


 ちょっと甲高くて心地よい声音を聞いて、雅樹は視線を松田の隣の席に向けた。小さく輝く光が、大のドリンクを飲みながら揺れている。


「小神様……昨日はありがとうございました」


 ………よい。我も大神様にお会い致し、身に余るもてなしを受けた。ここの勘定を其方が払うたから、貸しは無しと致そう………


 さっき松田が、大のドリンクと中のドリンクを選んでいたが、小神様がお飲みになるとは、何にしても適応の早いお方達だ。

 

 ………話せば長く、理解も今は無理であろう……ただアレが今生で、如何なる様生きたかは関係なく、アレは黄泉に行き二度と生まれる事は無い………


「黄泉とは、そういう所なのですか?」


 ………はて?………


「生まれ変わる事の無い、生の最終地点……」


 ………いや、違う。黄泉は黄泉だ。黄泉津大神がお呼びになり、二度と黄泉より出る事は無い………そう決められた者だそうだ……我にもそれまでしか知らされぬ……偶々我が大神様がご存知だった故、其方に伝えられたが、そうでなければ、アレの子を案ずる者達の思いは返って、その者達を傷つけたであろう。能力者より〝力〟を得たのであるから、速そうにアレの周りの者達を救うようにせよ。四年……五年……アレの好きにさせよ。それを全うさせた者達には、黄泉津大神より恩恵を授かられるであろう………


 眩しい程に輝きながら、小神様はドリンクを飲んでいる。

 その隣で、それは嬉しそうに頬張りながら、ウンウンと頷いて見せる松田が、フッと雅樹と視線が合って笑った。

 それは何とも、幸せそうな顔だった。



 親戚のおじさんは、相も変わらず好き勝手をしているそうだ。

 この間も、灯油ストーブを点けっぱなしで外出して、久しぶりに帰宅した奥さんが吃驚したそうだが、火の災いから護ってくださる神様がおいでだから、大事になる事も無く奥さんの手でストーブは消された。

 雅樹は斗司夫さんに頼んで、奥さんのご先祖様から、小神様からの言付けを伝えてもらった。

 ご先祖様からの伝え聞いた事を、きちんと守っている奥さんは、ご先祖様の言葉を素直に聞いて、あと五年辛抱する事にしたそうだ。

 ………だがそれよりも早く、おじさんは大病を患いギャンブルどころではなくなり、奥さんの介護の元天寿を全うするべく日々を過ごしている。



最後までお読みくださり、ありがとうございました。

我が家にも荒神様がおいでで、ずっとおばあちゃんに習ってお祀りしていますが、心臓が止まりそうな事がありましたが、本当に危ない処をお守りくださっています。

松田ではありませんが、神様ありがとう……です。


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