感度 見習い霊能者 其の七
「………で?君の見解は?」
斗司夫さんが珍しく、雅樹の所に来て聞いた。
斗司夫さんは一般的認識上の幽霊だが、真実の処……と不思議なもの達は云う……幽霊では無いと言う。
意外と大雑把でおおらかでこだわりを持たない輩なのだが、真実の処……と言い出すと、それは細かくいろいろとあって面倒だ。だから霊と言っても、怒りもしないし拗ねたり訂正を求めたりしない、が真実の処は違うんだがね、と一言だけ付け足される。それを気にするかしないかは、それぞれ人によって違うだろうが、雅樹はいろいろと気にする方だから、その真実にこだわり近づこうと思うのだが、どうやら今の雅樹ではまだまだの様だ。
そんな斗司夫さんは、彼方からやって来るわけで、それはあの世とは別らしく、其処の処もかなりややこしくて、どうやら斗司夫さん自身も行ってみて、初めて分かる様な処らしい。其処からやって来るのだが、一番簡単かつ労する事無く来れるのが、斗司夫さんの家だった所で、あそこなら別にずっと住んでても構わないよ、的な扱いだそうだが、そうなると地縛霊とかそんな感じに思えたりもしたが、全く違うと斗司夫さんは言い張るし、確かにそんな感じでは無い。そして斗司夫さんの力と、雅樹の力がどんどん開花して来ているので、斗司夫さんを雅樹の家に呼び寄せる事もできる様になった。つまり召喚的な感じ?かと言うと、招待的なのだそうだ。大してこだわりを持たないなんて大嘘で、かなりいろいろとこだわりを持っている様に思える。
………そんな感じに最近いろいろと思える様になった雅樹だが、やはりそれは斗司夫さんを始め、いろいろな不思議もの達と、関わりを持てる様になったから思う様になった事だ。
………というわけで斗司夫さんは、雅樹に招待されて、雅樹の家の雅樹の部屋にやって来て聞いた。
「斗司夫さんの思っていた通り、生き霊〝も〟ですね」
「生き霊〝も〟か?」
斗司夫さんは、ちょっと呆気に取られる様に言った。
「生きてる人の怨念……というより、アレは願望?願いですね。早くいなくてなって欲しい……それも皆んな家族を思っての願望です」
「へぇ……そんなに?」
「母に聞いた処だと、かなりギャンブル好きで、退職金も使い果たし、今じゃ年金の殆どを、毎日のギャンブルに注ぎ込んじゃうみたいで、足りなくなれば子供やきょうだいに借りに行く様で………」
「………そんな身内が一人居ると、家族は大変だもんなぁ……借金苦で死んでくれればいいが、子供に苦労をかけかねんからな、そういうヤツは……」
「たぶん奥さん……奥さん方のおばあさん……無心に来られたきょうだいかな?ああ、死んだご先祖さん的な人も、連れて行こうとしてるんだけど……」
「そう!そこなんだ。何でそんな力を掻い潜れてるんだ?」
「神様ですよ」
「神様?」
「例えば家の神様は、家を護ってくれてるわけです」
「ほほう?……で家事にならずに、災難を逃れてるってわけか?」
「車の事故もです……」
「なるほど……」
「……そしてどうやら、ギャンブルで運をつけたくて、神頼み的な事をしてる」
「あー、だから護ってもらえてんのか?」
「神様は家族の不幸とか困窮とか、将来的な不安なんて、お考えになりませんからね」
「うーん?確かに……神様は、殆どが人間には関心を持たないが……気まぐれを起こす事はあるし、氏子なんかには慈悲深い……願い事を叶えてくれる事もままある事だ………そうか……神様に人を呪うというか、殺してくれとは頼みづらいもんなぁ……」
斗司夫さんが神妙に言うと、雅樹は
「そこの処をしっかりとお伝えしたら、願いを聞いてくれますかね?」
気づいた様に言った。
「さて?どうかな?」
斗司夫さんは、面白そうに笑って言った。
神系松田に、神様の事は聞くのが一番だ。