感度 見習い霊能者 其の一
時の経つのは早いものだ……。
街並みはどんどん変わって行く。圭吾が幼い頃在った店が潰れて無くなり、違う建物が建って、その建物も倒壊されまた新しい店が建つ。
確かにこの街の移り変わりは激しくて、十年一昔なんて諺は当てはまらないし、これ程移り変わり行くのは、この街を護って行く為に必要不可欠な、自然界の大事なもの達が、この開発に見切りを付けてしまい、所替えを〝彼方〟という所にしてしまった為らしいが、そうなると一体何処まで此処は変わって行き、何時まで人間達は住む事を許されるのだろう………。
圭吾は、フッとそんな事を考えながら、またまた大きな建物が建とうとしている、工事現場を見ながら、母が偶に働かせてもらっている喫茶店が、ちょっと先に在る、大通りの交差点を渡った。
「えっ?」
交差点を渡った所の工事現場の前で、圭吾は鈴木雅樹を認めてガン見した。
「鈴木?」
「おはよう……否、こんにちは……」
雅樹は唖然顔の圭吾を見て、ニンマリ笑って言った。
「……どうしたんだ?」
「新しく葬儀場が建つと聞いてね……」
「葬儀場?……何でそんな事知ってんの?鈴木んちって、この辺だったっけ?」
相変わらず、恍けた事を言うのが圭吾だ。利発な雅樹は気に留めない。
「同じ県内だけど違うね……」
「………だよなぁ?………って、お前んち何処だっけ?」
何事も無頓着な圭吾の事だ、雅樹の家を知ろうともしない。そういう処が雅樹は気に入っている。
「……それより、田川の家の近くに、こういった物が建つ……その方が興味あってさ……」
「はぁ?その為に見に来たのか?」
「そればかりじゃないけどね……何時もこの道を通って、駅まで行くのか?」
雅樹は、工事の状態を見つめながら聞いた。
「いや。普段は住宅街を通って………」
と、圭吾は信号の向こう側を指して言った。
「……ほら信号の向こう側も、工事してる所在るだろ?………俺の子供の頃は、あそこにファミレスが在ってさ、よく母親とばあちゃんと食べに行ってた。それからコンビニになって……それから……」
「あそこは、土地神様がお許しになっていない。何時まで経っても、店は長続きしない……」
「えっ?そうなのか?」
圭吾がガン見する。
「第一地主が許されていない……」
「地主が許されていない?」
「地主自体が土地神様から、その土地を許されていないのさ……たぶん……たぶんだけど……農地改革で手に入れた土地なのだろうが、土地神様が許した者は、それ以前の者で、此処に永くいた主が許した相手だ。だが人間の勝手で賃貸されているのだろうが、神が認めていないから、その土地の物は上手くはいかない」
「えーどうしらいいんだ?……っていうか、住宅にも言えることなん?」
「当然許されぬ者が売った土地に、建てた物なら上手くはいかない。余程の事が無い限り、一代限りだろうな……土地神様又はその界隈を、土地神様に任された主が与えた物なら、永きに渡り家は存続するし栄える。例えば田川の家なんかは、土地神様から主を通して下げ渡された物で、それには家守りが上手い事携わっている。だからずっとお前は、此処に住む事になるんだろうなぁ……?」
なんてわざとらしく、遠い目をして雅樹が言った。
「はぁ……そんな事まで見通せるんか?たぶん俺はメタくそ働かされて、その尊い土地を広げさせられるんだ……」
「クク……それを解っているだけ、田川も凄いぞ?」
「いや、全く凄くない……そういう風に、諦めねばならん事が、俺の周りにはあり過ぎる……はぁ……仮令そうなる運命とはいえだなぁ……知らん方が生きて行くには楽な気がしてならん……」
雅樹はハハハ……と笑いながら、それでも信号の先の工事現場を見つめた。
「………土地神様がお許しになる事は、もはや叶わんだろうな……」
小さく呟いた。地獄耳の圭吾には聞こえたけど……。