不思議噺 巫姫さんは夢を見た 其の後編
そんな巫姫さんが夢を見る……と、ちょっと形が違ったり、人が違ったりするものの、物凄くデジャヴ的な感じで現実に起こったりするから、最近では巫姫さんは神経過敏になっている。
大体巫姫さんにとって良い夢は、きっと誰かの所に行ってしまい、嫌な夢ばかりが当たる様な感じだ………。
予知夢というなら、良い夢も当たって欲しい!巫姫さんは心底そう思っている。
………だったら今頃、巫姫さんは大富豪だ。
………だがそれは当たらない。
巫姫さんは、夢を見るのが怖くなった。
インターネットで検索してみると、意外とそういう人がいるもので、記憶に残る夢は書いておくといい……とあったので、巫姫さんもそうする事にしている。
そして書いてある夢は、形を変え相手を変え、当たっている。
その時は、直ぐ現実となる事もあれば、忘れた頃訪れる時もある。
さてそんな巫姫さんが見た夢は、結婚して十年程の夫が死ぬ夢だ。
それも癌と言われて、それはショックを受けて悲しんでいる夢………。
巫姫さんは、物凄く心配になってしまった。
子供はまだ小さいし、最近建てた家もある。
巫姫さんは、夫が煩がる程に健康には気を使った。
だからか、夫は子供を大学迄出して結婚迄見届けた。
………だが、孫の顔を見る迄は行かなかった。
仕事先で倒れて、そのまま還らぬ人となったのだ。
死因は脳梗塞………癌ではなかった。
夫が倒れる何週間か前……巫姫さんは、とても不思議な物を見た。
子供に連れられ買い物に行く途中、葬儀の案内の立て札が目に止まった。其処には巫姫さんの夫の苗字で、巫姫さんと同じ苗字が書かれてあった。そんなに珍しい苗字ではないが、そうかといって、今迄一度も目にした事は無かった。そして母が亡くなった時にも、同じ経験をした事を思い出した。
その時、車で走っているにも関わらず、その文字は判然とゆっくり、巫姫さんの目に映って行く………それは不思議で、そしてとても恐ろしい光景だった。
最近巫姫さんは、夫が生まれ変わって来る夢を見た。
すると結婚して未だに子供ができない、巫姫さんの子供の所に子供ができたと連絡を貰った。
誕生した子は男の子で、子供に似ている………という事は、夫にも似ている。
ある日、巫姫さんの孫がハイハイしている時に、巫姫さんは
「お父さんの、生まれ変わりかもしれないね?」
とつらつらと、夫に似ている所を連ね談笑していると、孫が巫姫さんの足元をハイハイしながら
「ちぇ、バレたか……」
通り過ぎながら言った。
「えっ?………」
それはしっかり判然と聞こえたが、側で談笑していた人達には、全く聞こえていなかったそうだ。
孫は夫の面影を残して、それでも可愛いく笑っている………。
ちょっと短いお話しでしたが、お読み頂きありがとうございました。
ほんのちょっとだけ、不思議な事ってありますね。そんな些細な不思議を、また書けたらな……と思います。
それではいえもりさまで、お会い出来たら……と思います。
ありがとうございました。