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法事 母親の話 其の終

 母親の目の病気は、案外重症だった。

 知らず識らずのうちに進んでしまう、一番厄介な手合いだったが、運良くかそれこそ神様のご加護か、いえもりさまのお陰様か………。

 いえもりさまが鎮守の神様の祭りに招待され、主人の圭吾も同行を許された。

 其処で不思議な金魚掬い………眼球掬いをやって、それはグロいが健常な亡者の目玉を持ち帰った。

 するとその亡者の眼球と、病魔に侵されていた母親の眼球が入れ替わり、アッと言う間の痛み知らず当人知らずで、母親の目の病気は完治してしまった。

 たぶんそんな母親の異変に気づいていたいえもりさまは、疾うに眼球を手に入れていたので、万が一の為にもう一つの目玉は大事に保管してあるらしいが、一体何処に保管してあるものかほんのちょっと気になる圭吾だが、直ぐにそんなの忘れてしまうだろう。

 そんな目玉の事もあるので、今日母親がチラリと言った目の事と、以前奇妙な体験をした話を、自室で天井に張り付くいえもりさまにしていると


「あー?あの時でござりまするか?」


 といえもりさまが天井から、ベットに横たわる圭吾に言った。


「あの時?どの時だ?」


「ああ……お母君様が田舎にお越しの……」


「田舎……ああ、母親の方の祖父さんの、お兄さんの法事の時な……???って、その時っていえもりさまって居たの?」


「なななな、なんと若主人様……居たの?ではござりませぬ。私めはずっと居ります。ずーと先々代様よりずーとずーと………」


「ああ……わかった、ごめん。こーゆー風にじゃなかったが、家を守ってくれてたわけな?」


「さようにござりまする。特に先代様、お母君様はお好きではござりませぬゆえ、姿を隠して外に居りました………」


 そうだそうだった。死んだばあちゃんは、最強昆虫Gすら素手で捕まえられる、それは凄腕の持ち主だったが、爬虫類にはメッキリ弱いタイプで、蛇は元より家守も蜥蜴も触れなかった様だ。それより昆虫すらダメな母親は家守も怖がって、我が家の外の家守を悲惨にも惨殺してしまった黒歴史がある。その時はかなり落ち込んだ様子だったが、まっ、生き物は余程でない限り好きな家系なので、外の窓や壁に張り付いている分には危害は加えない。

 そんなばあちゃんと母親に気を使い、いえもりさまは外の家守同様、家の中に入って来る事はなかったが、圭吾とはこんな感じで親しい仲となっている。


「ああ……あの時でございまするかぁ………」


 いえもりさまは、ちょっと懐かしい様な表情を作った。


「丁度その頃は、先代様がお年を召されまして、どうしても同行はかなわず、お母君様お一人でのご旅行となりまして……以前にも申しました様に、アチラの家系にはいろいろと因縁事がござりましたゆえ………」


 とか言いながらまたまた遠い目をして、なんだかちょっと微笑んだ様に見えなくもない。


「?????」


「………新幹線とやらに乗りましたは、お初でござりましたゆえ楽しゅうござりました……」


 と呟いた。


「えっ?いえもりさま新幹線に乗ったの?」


 地獄耳の圭吾だ、ほんの小さな呟きすらも聞き逃しはしない。


「あー?はい。ああ見えましてもお母君様はお持ちゆえ、アチラに参りましたら、よからぬものが付け入るやもしれませぬ………ゆえに私めがお供を………」


「マジか……って?何かあったのか?」


「はあ……小物でござりましたが、厄介事を引き寄せるものが………あ?ご心配には及びませぬ。あの程度のものならば、私めで充分にござりました。サササ……と追いかけ取り抑えパクリでござりました」


 かなりのドヤ顔を、見せて言う。


「………それってカーテンだな?」


「は?」


「カーテンの裏をサササ………だな?」


 さすが、ああ見えても持っている母親だ、爬虫類………確かに家守ならそんな感じだ。

 いえもりさまは気付かれていないと思っているかもしれないが、母親じゃなきゃ、とっくの昔にバレている。ボーとしているというか、物事を深く追求しない母親だから、だから気付かれずにいた事は、いえもりさまの為にも、黙っていてやろうと思う圭吾だった。

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