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遭遇 分からない物 其の四

 それは重々危険であると想像がついているし、以前抜けられなくなった事もある。その時は偶々、あの間抜けな田川が関わってくれたから、抜け出せる事ができたが、雅樹の過信に違い思い込みは、危険な事は察して来ているが、どうにもならない程にのめり込んでいる。たぶんこれは斗志夫さんも気が付いている事だろう。


 一晩中の修行を終えて、雅樹が仮眠を取って家に向かったのは、もはや昼を過ぎていた。

 斗司夫さんの家には、ちょっと霊能力のある知り合いが、今は亡き斗司夫さんと、その忘れ形見である一人娘の枝梨から承諾を得て来ている事を、近所に住む親戚のおばさんが承知しているので、合鍵なども持っていて勝手に出入りができる状態にまでなっている。

 そしてこの家を相続した枝梨が、偶に来ては片付けをしているから、以前よりも住める小綺麗な状態にもなっているし、雅樹は余り使う事はないが電気も水道も使用可能だ。

 大きな声で言う事では無いが、枝梨とデートしてそのままお泊り……なども、斗司夫さんの許しを得てしている。つまるところ雅樹は先々の斗司夫さんの後継者であり、婿となる予定でありそれは本当となるだろう。

 そして此処に存在する大木と自然を護る為に、枝梨と此処で住む事となるはずだ。

 この地に(いにしえ)より座す、神様のご意向のままに……。

 そしてそのご意向がある限りは、この地、村、町、国は護られている。

 

駅迄のバスの停留所が在る国道まで、田舎道を頭上を通る国道を仰ぎ見るようにして歩いて行く。

 最初〝此処〟に来る方法が分からず、それは難儀した事を思い出しながら、頭上の国道を通り過ぎて、かなり廻り道をして国道に出なくてはならないが、慣れてしまえば大した事ではない。

 バスに揺られて30分、田園が広がる景色が徐々に変わって行き、建物が多くなって来ると駅は近い。

 ロータリーを回って駅に着くと、人の動きも多い。

 ファミレスに入って腹拵えをすると、太陽が少し傾いていた。

 改札口を抜けてホームに入ると、雅樹は一瞬眉を顰めた。


 ……今日は一体何の日だ?……


 ホームにかなりの人数の喪服の人達……。

 その人達の間を歩いて来る、あの老人と一緒にエレベーターに乗っていた三十代と思しき女性。

 女性は雅樹の脇を、気にも止める事なく通り過ぎて階段を降りて行く。

 雅樹は階段から、その姿を追う様に見送った。


「……………」


 そして雅樹は黒服の団体の中の一人と、再び視線を合わせた。


 この間とは違う中年の女性。

 今度は細っそりとして、黒い髪を後ろに一つに束ねて、極々普通の化粧に普通の礼服、少し踵の高い黒い靴に履いている足には黒のストッキング。

 だが何故か雅樹は視線を離せない。

 まるで時が止まった様に釘付けとなる。

 ……するとホームの人混みが動いた。と同時に音楽が聞こえ、そして音を立てて電車がホームに入って来た。

 一瞬雅樹が視線を動かしたその隙に、再び女性の姿は消えていた。

 雅樹が黒服一団が乗車する姿を追っても、あの女性の姿は見つからなかった。

 電車の中にも彼女の姿は、見回す限りなかった。


 ……何かが違っていた。この間とは確実に今日は、何かが違っていた……


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