秋祭り 鎮守の神様 其の終
それを見て松田が同様に頭を下げる。
圭吾も同様にする。
するとパァーと、神輿が神々しく輝いて辺りを照らした。
一瞬響めきが起こったが、直ぐに陽の光が奇跡の様に注がれている事が分かった。
当然の様にスマホのシャッター音が鳴り響く。
「ご挨拶とお礼を言ったら、返してくれたんだよ」
「えっ?まじっすか?」
「はは……マジマジ」
死神様は明るく笑うと、社殿の方に目を向けた。
日本太鼓が大きく鳴り響き、それは見事に大太鼓が威勢良くかっこ良く揃う様に、乱れる様に鳴り響いている。
「これが終わると、五穀豊穣を感謝する踊りが始まるよ」
「え?盆踊り?」
圭吾がまたまたやらかす。
「田川さん、さすがに盆踊りじゃないんじゃ?」
「マジかー?」
「まっ、神楽とか雅楽とかで神をおもてなしする事もあるし、村人による感謝の踊り……盆踊りみたいなものもある……鎮守の神や地の神の場合、地元に根付いて残っているものが大半だから、時代と共に変化して行くのが当然で、神達はそれを喜んでるんだよ」
死神様は松田と圭吾に顔を向けた。
松田は視線が合ったかもしれないが、圭吾は青光りが邪魔をして顔はわからない。
「神だって尊んでくれて、楽しくやってくれれば嬉しいさ。この移り変わりの激しい時代に、忘れずに尊ぶ気持ちを忘れないでくれたらさ……」
「そうっすよねー?忘れちゃダメっすよね?」
「そうしてくれたら嬉しいね……まっ、僕はあんまり、親しくしたくない様だけど……」
死神様がそう言った時に、社殿の日本太鼓がそれは見事な乱れ打ちを披露して、大きな歓声が上がった。
「おっ、小神様が君を探しているよ」
死神様がそれはソフトな声音で言った。
本当に人間の想像で描かれている神仏達は、大方違うご容姿だろう。それを真に受けているって云うのが現状だ。第一ガチで神仏を見れる人間なんて、そう存在するものじゃない。其処の処を忘れちゃいけないが、案外忘れがちだし、安易にしか考えていないから真に受けるヤツが存在する。
あえて圭吾だとは、言わない事にしておくけれど……。
「若主人様」
いえもりさまは、何故か圭吾にも見える神々しく光り輝く、かなり御チビさんの小神様の肩に乗って手を振っている。
手を振っているはいいが、子供サイズの小神様の肩辺りで、ゆらゆらと金魚を入れる水の入ったビニール袋に浮かぶ、目玉袋が揺れていてそれはそれはかなりグロくて、そっち系最弱の圭吾は当然の様に顔面を歪めている。
「いえもりさま……」
「若もお捕りで?何よりにございます」
圭吾は思いっきり歪めたままの顔面をいえもりさまに向けて、さすがに小神様に申し訳ないと、目玉金魚と言う事で……の袋を手に取った。
「おかんの為に?ありがとうね……いえもりさま、小神様……」
しおらしく圭吾が言った。
「さすが若もご存知で?」
「いやいや解るわけねぇだろ?ここに来るまでマジ知らんかった……おかんの目の病気……かなり悪いらしい……じゃないと、きっと死神様にお会いしてないんだろ?」
「それはどうかな?」
死神様が朗らかに言った。
「君達とは、そんなんじゃなくても、きっと会ってるよ。特に君とはさ……」
死神様が松田に向かって言った様で、松田は凄く嬉しそうな顔を向けた。
「……それでも、ありがとうございます……」
「まだまだ、君の家族は恩恵を授かるさ……」
「えっ?マジで?金神様っすか?」
「違う違う、家護りのさ……」
「まさか……」
そう圭吾が言った時に太鼓が再び叩かれて、同時に踊りの音楽が流れた。
「なんだ?盆踊りじゃん?」
無知な圭吾が呆れる様に言う。
「時代と共にさ……」
本当は優しくて〝命〟を、それは大事にする死神様が心地いい声音で言った。
死神様でも鎮守の神様でも地の神様でもなんでもいい……。
圭吾の大事な人を助けてくれた、それは有り難い神様達だ。
圭吾がそう思った矢先、二つの目玉が圭吾に笑いかけた様な、もの凄ーく厭な感覚を圭吾は無視をした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
お読み頂き、倖せでございます。